午前11:55 中央パトロール本部ラボ棟 2階マルチメディアラボ
ラグナ・ヴェルサティス分析官がシエルから分析依頼をされた音声データの解析を行っていた
声紋鑑定で確実に取り調べを行った時空管理局員の割り出し作業をしていた
割り出すことができればすぐに時空管理局犯罪捜査局と協力して当時の捜査担当者を見つけ出す
そして事情聴取をしなければならない。ただし大量リストラでミッドチルダ連邦国内にいるかどうかはわからない
もし国外となると時空管理局犯罪捜査局が前面に出る形になる
クラナガン捜査局は援護をするだけの立ち位置になってしまう
大量リストラされた時空管理局員はかなりの人数になっている
全体の半分以上の時空管理局員がリストラにさらされた。
おかげで今の時空管理局の人員は大幅に圧縮された
「誰か特定できると良いが」
ラグナは取り調べをしている時空管理局員の声紋を時空管理局のデータベースと照合していた
『ピッ』
一致したのはサレイバーグ・ゴレイス3等陸尉。現在は大量リストラで退役。
北区南部イーストカタラウガス地区8番街2丁目9番地に住んでいる
「シエル首席捜査官。録音されていた音声の声紋は退役時空管理局員のものと一致」
『そう。名前は?』
ラグナは関連データをシエルの情報端末に送信した
するとシエルからは背後関係を調べてもらえるかしらとの指示が飛んできた
今は別件で手が離せないのでわかる範囲で良いから探りを入れてくれとのことだ
報告は分析を依頼したシエルと捜査担当者のダイナの情報端末に送るように指示した
その指示を受けてラグナは様々な情報収集を行った
サレイバーグ・ゴレイスはコンビニを数店舗を経営している。ただしかなりの借金を抱えている
金融機関から5000万ミッドも借り入れを受けている。
コンビニ店舗の土地は担保として押さえられている
コンビニの経営そのものは順調であるが借金の理由はギャンブルが原因だった
カジノがかなりの好きな人物で休日になるとカジノに言っていることがわかった
そこで遊ぶための資金を使ってしまった結果、金融機関から多額の融資を受けることになった
「カジノで転落のお決まりの人生か。仕事よりもカジノのほうが好きというわけか」
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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部首席捜査官執務室
「酷い話ね。時空管理局をリストラされても仕事先はあった。だけどお金に困るほどカジノにはまるなんて」
シエルは時空管理局勤務時代からカジノが好きであったと予測される
給料のほとんどをカジノで使っていたのなら再捜査依頼を受けるたびに金を受け取っていたのなら
そのお金をカジノに使っていた可能性が極めて高い
「ギャンブル好きで金遣いが荒いとなると他にも借金があるかもしれないわね」
それは表立って借りることができない犯罪組織から借りたお金
闇金などから融資を受けていた可能性は十分に考えられる
時空管理局員は高給取りであったことから犯罪組織や高利貸しから金を借り入れている例が多く存在した
おかげで犯罪組織にとってはかなりの資金源になっていた。
今は彼らからの利子などの返済が途絶えたことで財務上で大きな問題を抱える犯罪組織も存在する
「犯罪組織も大変みたいね」
組織にとってお金は最も大事なものである
高利で融資をしたのに回収できないとなるとどんな手段を使ってでも回収するだろう
命を代償にしてでも金を返せと脅迫することは容易に想定できる
「時空管理局の大規模縮小で犯罪組織にも大きな影響が出ることは間違いない」
その時デスク机上にある電話機が鳴り始めた
発信者は統合管理官をしているエリ・ミズノからだった
『ピーピーピー』
「エリ、シエル・ミズノよ」
『連邦政府が急激なミッド高を抑制するために為替介入に踏み切ることが分かったわ。経済犯罪が起きるかもしれない』
今は通貨ミッドは通貨為替市場でかなりのミッド高になっている
そのため、連邦政府はいつでも介入できるように準備をしていた
口先介入だけでは効果が薄いと判断して強硬手段に入ったのだろう
「経済犯罪の管轄はFBIか証券取引委員会でしょ。私の管轄だとは思えないけど」
『万が一、こっちに話を振られてきたときのための保険よ。とにかく情報収集を行うように』
「仕方がないわね。了解」
それじゃあとは任せるわと言うとエリは通話を切った
シエルは大きなため息をついた。
とんでもないお荷物をまたしても背負うことになるかもしれないからだ
できることなら背負いたくないのだが仕方がない。
事件が起きれば捜査をしなければならないことは事実なのだから
「経済犯罪に介入するのは嫌なんだけど」
上からの指示なら準備はしておくしかないわねというと、
シエルはすぐに捜査に入ることができるように体制づくりをした
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セントラルクラナガン港 沖合15Km地点 7000t級駆逐艦(艦船形式:あきづき型護衛艦)キート 飛行甲板
ラジェットたちは無事に駆逐艦に到着すると後部飛行甲板で副長が待っていた
ちなみにキートは港湾本部基地を母港とする艦船である。
「中央本部捜査部のラジェット・ハングリーだ。今回はとんでもないものを釣り上げたようだな」
彼がそう挨拶をすると出迎えた副長の男性はこちらも帰港を前に仕事が増えて大変ですと回答した
任務が終了して補給のために港湾本部基地に戻るところだったのに、
それを止める遺体発見というトラブルに遭遇した
幸運には恵まれていないことは間違いない
「それはこちらからも言えますよ。機動六課組の教導を任されて苦労されているとか」
「まだ教導を始めて数時間だが噂話好きだな」
もう港湾パトロールの下々まで噂話が回っているとはさすがというべきかどうなのか
「今は退屈な時間が多いので」
それだけ安全な状況になっているということである
時空管理局が管轄権を握っていた時は状況はかなり悪化していた
今はきわめて安全な海上と空域になっているのだ
「だからと言って死体発見はとんでもない迷惑な話だろ。帰港は遅れる。こっちが到着するまで港に帰れない」
「確かに言えていますね。周辺海域に遺留品らしきものが漂流していないかボートで捜索中です」
「捜査協力に感謝する」
海上にまだ証拠になりそうなものが浮遊している可能性は極めて高い
それらも証拠になりうる可能性は極めて高いことは大きい
見逃すことができないのであらゆる角度から証拠回収は当然のことである
「苦労を掛けて悪いな」
「お互い様ですしね。部屋は艦内に用意しています。狭いですが」
「気にするなら。必要なら後部甲板の格納庫の空きスペースを使って寝袋で寝ることも覚悟しているからな」
寝袋は借りることになるがとラジェットは冗談めかしたように言った
もちろんそんなことをするのは冗談でもない。本気でそんな経験をしたこともあるので慣れている
はやてとリィンフォースツヴァイにとっては厳しいことになるだろうが
これくらいのことは経験するには良い事である
4人は艦内の狭い通路を歩いていき医務室に到着した
医務室には遺体を保管するための冷蔵スペースが数袋分が確保されている
万が一に備えてである
「検死は俺がする。簡単にだがな」
本格的な検死はラボで行うべきだ。
とりあえず見た目で判断できる限りの軽い検死作業を行って事故か事件かを判断する
事件なら捜査をする必要があるが、何らかの事故なら話は別になってしまう
担当する部署も異なるので極めて重要な簡易検死作業になる
「最近の海上での密輸は増えているのか?」
船舶を強襲する連中は大幅に減少したが銃火器だけでなく麻薬の密輸は話は別である
「増加率は昨年に比べると2倍。かなり危険になっている」
麻薬の密輸が増えたのはクラナガン市内の犯罪組織が資金確保のために動いているからだろう
時空管理局が管轄権を握っていた頃は麻薬の密売が頻繁に行われていた
中央パトロールは市内でかなりの量を摘発していたが、大元の売人を逮捕すると時空管理局が乗り出してくる
密売人の身柄引き渡しを求めてきた。当時は強権があったので拒むのが難しかった
今は逆にその売人から時空管理局に金を握らされていたことがわかっている
時空管理局は売人を軽い罪で裁いていた。ほとんどが執行猶予処分だ
酷い場合は書類送検だけ。誰がどう見ても売人とつながっていたと言える
「最近の傾向はなんだ?」
「メタンフェタミンとコカインが多い。沖合で貨物船から落とされて小型ボートで回収されて街に流入だ」
過去1か月で海上で押収された量は5000kgにもなる
末端価格はかなりの金額になる。最近は市内で密造する例が増加している
市外から密輸することが難しくなっているからである
密造する方が効率的と考える犯罪組織は増えている
しかし密造するとなると電力消費量や麻薬の原料調達のために危険な橋を渡らなければならない
もし不審な動きをこちらが察知したらすぐに捜査令状を請求して調べる
電力の消費量が急激に増加した施設の捜索に1日あたり数件は行っている
おかげでこちらも摘発量が増加している。嫌な話ではあるが
麻薬は最も犯罪組織にとってうまみのあるビジネスだ
野放しにすることは絶対に認められない。少しの量でも見つけ出して検挙しなければいけない
「今回の被害者は男か?」
「ああ。そうだ。ただし全裸だ。今指紋をデータベースで照合している」
「素早い対応に感謝する。身元が分かれば背後関係もわかってくるかもしれない。事件か事故かも判断できる」
「だが、照合をかけて10分以上も経過しているのにヒットなし」
「それはついてないな。スパコンで照合を?」
「港湾本部のスパコンを借りた。あとで申請書を書いてくれると助かるが」
わかっているとラジェットは返答するとすでにその書類を作成していた
港湾パトロールのスーパーコンピュータを利用するには申請が必要である
事後でもいいのだが、正当性がなければ問題になる。
それに軍人である彼らが刑事事件のために使ったとなると少し問題になる
だからこそラジェットの使用申請書が必要になる
「面倒をかけてすまないな」
ラジェットがそういうといつものことだろと副長は返答した
問題は被害者の身元が分からなかった場合はかなりの面倒な捜査になる
犯歴者や公務員などならデータベースに指紋が登録されている
もしミッドチルダ連邦の国外の人間なら登録されていない確率はさらに高まる
そうなると次元世界連合全加盟国が参加している次元世界警察機構のデータベースで照合する
国際的なデータベースになら何かヒントがあるかもしれない
もし国内のデータベースでヒットしないならさらに範囲を広げて照合する
時間はかなりかかる。照合には特に。膨大なデータが存在しているからだ
「身元を割り出すことができなければ真相を暴くのはかなり困難になる」
「コールドケース化になる確率が高まるといつも苦労してくる案件だな」
『ピーピーピー』
ラジェットの携帯電話が着信を告げていた。
発信者は意外な人物だった
「CIA長官から連絡とはどういう風の吹き回しだ?」
連絡してきたのはCIAの長官をしているテイラー・ビルからだった
かなり珍しいこともあるものだと思いながらも、
この状況で電話をかけてきたことは事件関係であると彼はすぐに察しした
『そっちが照合している指紋の持ち主はCIAの工作員をしていた人物だ』
つまり簡単に言えば連邦関係の事案になるので手を引けと言いたいのだろうと
ラジェットはすぐに理解したが口には出さなかった。はやて達がいたからだ
「なるほど。死人に口なしというわけか。まずい案件に絡んでいたのか?」
『時空管理局の潜入捜査をしていた。だからこそ貴重な情報を握っている可能性が高い』
「捜査権を奪うつもりか?」
ほとんどの場合は捜査権を奪っていくものであるが今回は事情が異なっている様子だった
『共同捜査をしようと提案したい。すでにこちらの担当人物を送った』
「ずいぶん仕事が早いな。まぁ待っている。いろいろと調べながらな」
珍しい言葉に驚きながらも素早い対応にラジェットは感心した
よほど重要な案件らしい
『情報は常に共有してくれ。お互いの信頼関係がかなり重要だ』
「隠し事はなしだぞ」
『わかっている。お互い仲良くやろう』
通話を終えると副長にこの案件にはCIAが絡むことを伝えた
彼には話して問題ない。問題ははやて達だ。彼らも機動六課組に知られたくない情報もあるはず
難しいかじ取りに迫られていることはよく理解した
「面倒な案件になりそうだ」
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西区南西部 エルガがトラックを止めた場所(一般道の路肩)
エルガとヴィータは相変わらず現場鑑識を手伝っていた
「それにしてもかなり武装だな。RPG-7ランチャーを市内に持ち込むとは」
エルガは今後、大規模な犯罪組織同士の抗争があるのではないかと懸念していた
そうでもなければこんな派手な武装を持ち込むとは思えない
テロ組織御用達の武器に素人の犯罪者が買うとは考えにくい
「念のため今回のこのトラックに関係するすべての施設の家宅捜索令状の請求をしてくれ」
必要であれば『犯罪組織対策法』を適用してもいいとエルガは伝えた
連邦法で定められている犯罪組織対策法はミッドチルダ司法省が指定した犯罪組織・個人に対して、
令状なしで通信・銀行口座記録の調査が認められる
現在国内外問わず1000近い組織と個人が犯罪組織対策法で指定され、リストに載せられている。
通称[ブラックリスト]。リストはネットで公表されており、
不当である場合は連邦裁判所に申立が可能となっている
ちなみに聖王教会の傘下であった企業のいくつかはブラックリストに登録されていた過去がある
「いろいろと大変だな」
「ヴィータ。これくらいのことは当たり前のことだ。こんなことで愚痴を言うようだとまだまだ甘いな」
エルガの言う通りである。武器の押収は珍しいことではない
特に貨物コンテナなどを利用した密輸は珍しい話ではないのだから
積み荷を満載した貨物コンテナを利用した密輸は重量検査を比較的楽にクリアすることができるので
密輸には最適と言われている。だからこそ取り締まりのほうを強化しなければいけないのだ
かなり難しいことは百も承知であるが、やらないわけにはいかないのがこの仕事のつらいところである
「このコンテナを押収だ。中の機械部品についても調べてくれ。問題がなければ引き渡すと」
「そこまでするのか?ただの機械部品だぞ」
「機械部品に麻薬が詰まっていることもある。すべてのチェックが終わるまでは関係ありと判断する」
つまり完全に問題ないと判断されるまでは押収物として扱うとのことだ
市内に麻薬や銃火器を入れるわけにはいかないからこそ徹底的に調べる
至極当然である
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中央区中央部ルイス地区1番街4丁目5番地 バンクオブクラナガン ルイス支店
カリーとシグナムが現場に到着するとすでにマスコミが集まっていた
その他にセントラル分署の刑事やパトロール捜査官も大勢集まっていた
銀行強盗は組織的な犯行が多い。今回の場合は廃棄予定の紙幣を盗んだ
支店の関係者に手引き、あるいは協力者がいるはずだ。
そうでなければこれほどの強盗ができるはずができない
「今回の強盗について中央パトロールではどのような見解を持っているのですか!」
「コメントを1つお願いしいます!」
マスコミ関係者は次々と質問してきたがカリーはノーコメントと伝えるとルイス支店の中に入っていった
今はマスコミに回答するべき内容は何もない。
ただわかっているのは犯人はかなり利口な人間であるということだ
用意周到であることが最も大きな理由である
犯人側にこちらの情報が漏れると逃走される可能性がある
銀行の地下貸金庫に入ると横壁に大きな穴がけられていた
穴の大きさは直径1mほどの円形だ
「派手に開けたわね」
カリーの発言にセントラル分署の刑事がかなり派手なこと仕掛けてきていると返答した
「同意見です。魔法は使われていません。AMF装置が貸金庫に取り付けられているので」
「爆薬を使ったとしてもかなり静穏性の高い物ね。絞りこむのが大変だけど」
爆薬でもかなりの種類が存在する。大きなものから仕掛け方次第では極めて静穏性の高い爆薬も
さらに配合の量次第でも変わってくる。それだけ爆薬は難しいのだ。扱うのは
「今、最も問題なのは貸金庫に誰が侵入したかということね。監視カメラの映像は?」
「それが・・・犯人はスキーマスクをかぶっていたので顔はわかりません」
「だけど骨格情報である程度は識別できるはずよ」
スキーマスクを着用していても目の位置や口の位置などから骨格情報で照合することができる
絞り込むのはかなり難しいことはわかっているが何とかするしかない
リストがあるなら照合して少しでも捜査の手掛かりになるものなら何としても洗い出すしかない
「これだけの犯行をできる奴はかなり限定されてくるわ。金庫破りのプロね」
「どうしてそう言える?」
「シグナム。考えてもみなさい。朝の開店してすぐに警報が鳴った。犯人は夜の間の警報作動装置解除を待った」
夜間は大きな物音や振動を検知すると警報が鳴る仕組みになっているシステムを導入している金融機関は多い
つまり狙うなら営業中か開店直後が好ましいということになる
「相手はプロよ。これは苦労する案件になりそう」
「盗まれた金額は50億ミッド。しばらくは遊んで暮らせるわね。逃亡資金としても十分」
カリーは別の証拠も期待していた。それは声である
声紋も指紋と同じで個人を特定する重要な証拠である
声紋は音のDNAと言われているので判別ができる
もし監視カメラに音声が記録されていたら、
何かのデータベースに登録されていたらすぐに身元が特定できるはず
今は現場の証拠採取と分析を急がなければならない
「監視カメラの映像を見せて」
カリーは携帯情報端末を使って銀行から借りた貸金庫室の監視カメラ映像を確認した
そこには確かにスキーマスクをかぶった男が2人が記録されていた
犯人たちは迷うことなく貸金庫の廃棄予定の紙幣が保管されている金庫室を襲っていた
必ず内部に協力者がいるはずだ。まずはそこから洗い出しが必要になる
さらに鑑識作業の報告を聞こうとしたとき金庫室の電力が落ちて停電した
それどころか支店内だけでなくかなりの広範囲で停電になっていることがわかった
『中央本部から各員へ。クラナガン市内で大規模停電が発生しました』
クラナガン市内で停電とはかなりの大きな珍しいものである
バックアップ体制が整えられているのに大規模停電が発生するとは異例のことである
非常用電力回線や無線や有線通信回線はバッテリーがあるので、最大240時間は停電でも問題なく通信はできる
『停電エリアは中央区を中心です。信号などは非常用バッテリーがあるので最大240時間は連続稼働可能』
『復旧作業は他の予備回線を利用して行う。復旧は5分以内でできると思われます』
その無線連絡を受けてすぐに停電が復旧した。
送電網の予備回線を使っての送電が開始されたのだろう
「とりあえずは安心だけど。停電の原因が何かも確認しないといけないわね」
この強盗事件と絡んでいる可能性があるからだ。偶然にしてはタイミングが良すぎる
万が一に備えて停電の原因の調査結果を見なければならないことは間違いない
「まずはこの金庫を襲った連中の人物特定をしないと」
カリーは捜査の範囲が大きく増加することが間違いないことを感じるとため息をついた
「因果な商売ね」
面倒なことばかりを背負うことは捜査官にとっては宿命のようなものである
真実の追求のためにはありとあらゆる方法を使う。もちろん合法な方法ではあるが
非合法な方法で情報収集を行えば裁判では証拠として採用されない
そんなことになれば犯人は無罪放免になってしまう
「誰もが平和な世界を望んでいない。50億ミッドも奪ったとなると早くしないから逃げようとするはず」
カリーは携帯電話を取り出すとスキーマスクをかぶった人物の特定のために顔認証システムでの照合を急がせた
今は何よりも犯人の逮捕が求められるのだから当然である
「身元が分からないと犯人は捕まらないわね。ご丁寧なことに犯人は手袋を着用しているから」
ほかに何か証拠になりそうなものを探さないと。データベースとの照合を待っているだけでは捜査は進まないと
カリーはこの視点の銀行行員の人事記録にアクセスするために支店長に話を聞きに行った
シグナムもその後についていった
「捜査官のカリー・ドーランです。金庫室の情報について知っていた者の人事ファイルの閲覧をしたいのですが」
ご協力をお願いしますというと支店長の男性は素直に人事記録のデータが記録されたディスクを手渡してくれた
意外なことだ。普通は裁判所から情報開示令状を請求。それがなければ簡単に開示してくれることはない
「我々にとっても信用問題になります。早期解決をお願いします」
その言葉を聞いてカリーはすぐに察した。
貸金庫を利用している人は簡単に強盗にされる銀行の顧客になるのをやめるからだ
早く解決して警備態勢が万全であることを証明したいのだろう
「感謝します」
人事記録情報が記録されたディスクをすぐに携帯情報端末で確認した
カリーは不審な経歴の持ち主がいないかを探した
「誰か怪しい人がいればいいけど」
この銀行の支店にはそれなりの社員がいるのだ。
絞り込むのは簡単なことではないが、貸金庫の情報にアクセスできる人間に絞り込んだところ不審人物が1人出た
「名前はコレナード・フレス。38歳。両親は退役時空管理局員ね。今は隠居のみだけど」
「親が時空管理局員だから疑うのか」
シグナムの言葉にカリーは理由はあるのよと答えた
「時空管理局犯罪捜査局の捜査対象になっているなら話は別でしょ」
捜査の理由は時空管理局に所属していた頃に手ぬるい捜査をしたとの一件がある
密輸の摘発ですべてを摘発することなく一部を裏社会に流通させた容疑がかかっていた
麻薬や銃火器などの危険物を密輸の手引きをしたとされているがまだ捜査の段階で拘置所に収監されている
さらに犯罪組織から裏金をもらっていたとの容疑もある。叩けばいくらでもホコリがあるとも言える
「まさに悪い事の典型例ね」
とりあえず情報を流したかもしれない内通者に関係する人物は出てきた
事情を聴こうとして支店長に今はいるかと聞くと有給休暇を取得して休んでいると
逃走の恐れがあるとしてカリーはすぐに指名手配をかけることを決断した
「逃げ足だけには自信がある奴ならもう市内にはいないかもしれないわね」
「その時はどうするんだ?」
「シグナム。私たち捜査部捜査官はどこまでも追いかけていくのよ。連邦法で認められている権利だから」
連邦法でクラナガン捜査局中央パトロール本部捜査部捜査官権限法によってあることが定められている
クラナガン捜査局中央パトロール本部捜査部捜査官に連邦捜査機関の捜査官との同様権限を与える事を認めた法律
市外での捜査逮捕権を認めた法律。これにより市内からほかの州に逃げた犯罪者を追いかけることができる
「早く追いかけるしかないわね」
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