正午 南区北部 中央パトロール本部庁舎 8階捜査部首席捜査官執務室
『クラナガン原油先物市場は1バレル8000ミッドまで急上昇。一部関係筋によるとさらに上昇すると』
『この情報を受けて、近隣州の商品先物市場でも原油先物価格が上昇しています』
「聖王教会の関係で問題が大きくなるなんて。経済的には大きなダメージね」
シエルは経済報道番組を見ていた。最悪の事態になっている
新たに建設されたベルカ州からクラナガン市まで結ぶパイプラインを使って供給される原油と天然ガスの取引価格
それもかなりの上昇している
聖王教会関係の影響で供給が途絶えるのではないかと市場関係者は疑心暗鬼になっている
ヘッジファンドはかなりの先物買いを入れている。
おかげでベルカ州原油先物価格はかなりの価格になっている
「安定している首都圏の経済に悪影響が出ると犯罪発生率が上がる。嫌な話ばかり」
捜査部にとってはできれば犯罪は減ってほしい。
仕事が少なくなればもっと別のことに時間を割くことができる
ただでさえ忙しいのにこれ以上問題を持ち込んでほしくないというのは誰も同じ考えである
『ピーピーピー』
シエルの携帯電話に電話をかけてきたのはある連邦政府機関の局長である
「シエルよ。ICE(移民税関執行局)が何の用件?」
移民税関執行局。ミッドチルダに他管理世界から移住の事務業務・輸入される物品の税関などを所管している。
また、ミッドチルダ内にある大陸間の物資や人の動きに関しても、調査を担当している
『他次元世界国から次元空間を航行する貨物船を使って大量の銃火器を密輸するタレコミが入った』
「なんで私に言ってくるのよ。そういうことはあなた達連邦治安機関か港湾パトロールの管轄でしょ」
『情報提供者があなたしか信用できないと。提供者の名前はディスラリー・コルベール。32歳』
その名前を聞いてシエルはそれなら話は別ねと話した
彼は犯罪組織に潜入捜査をしている人物でシエルの教え子である
今はFBIからICEに出向して潜入捜査を行っている
だからこそシエルに連絡してきたのだ。
接触するときに最も信頼できる人物としてリクエストがあった
「接触場所は?」
『詳しいことは不明だがいつものバーで待っているとのことだ』
場所を教えてもらえるかと聞いてくるとそれは秘密よとシエルは答える
通話を終えたシエルは出かける用意を始めた。近くにあるバーで接触することがいつものことなのだ
「シエル。お出かけかな?」
「ウル。悪いけど少し捜査部の指揮権を預けるわ。近くで情報提供者と接触してくるから」
シエルはそう言うと捜査部オフィスを出るとエレベーターで1階にまで下りていった
彼女はこの近くにあるバーに向かった
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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部2係オフィスフロア
ダイナはヘリで戻ってくるとシエルがラグナにラボで分析させていた声紋について確認作業をしていた
サレイバーグ・ゴレイスに関係するありとあらゆる情報を集めていた
5000万ミッドの借金があるのはわかっている。カジノが好きなことも
コンビニを数店舗経営しているからこそ多額の融資を受けることができているのだ
その雄姿は本来はコンビニ店舗関係に使わなければならないが、
実際はカジノで遊ぶために使っている。完全に沈んでいる状況である
ここまで沈むと戻るのは簡単ではない
「あとは現住所を調べて事情聴取だな」
現住所は北区南部イーストカタラウガス地区8番街2丁目9番地に住んでいる
とにかく事情を聴くために向かうことにした
「今度はヘリではなく車を使うか」
ダイナは捜査キッドの中を確認すると足りないものを補充すると駐車棟に移動
SUVに乗り込むと北区南部イーストカタラウガス地区8番街2丁目9番地に向かった
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セントラルクラナガン港 沖合15Km地点 7000t級駆逐艦(艦船形式:あきづき型護衛艦)キート 艦内
ラジェットたちはまずは遺体の状況確認を行うために遺体保管室に向かった
まずは死因について簡単に確認をしたいからである。
身元はCIAの諜報員であることはわかっている。それも時空管理局に潜入していた
何かのトラブルに巻き込まれて殺された可能性もある。自殺という線はかなり薄い
他殺なら殺し方によってはある程度絞り込みができるかもしれない
プロの殺し屋ならば、素人と異なり確実に殺すところを攻撃していることが多い
そのあたりで判別することができる
「水死体はできれば嫌なんだがな」
ラジェットの言葉に副長は仕方がないだろと言った
確かに仕方がないことである。そんなことを話しながらも艦内を歩いていき無事に遺体保管室に到着した
そこで簡単な検死を行うことにした。検死と言っても遺体の写真を撮影するのだ
さらに死因が何かを調べる。解剖はしないが。本格的な解剖は検死官が行う
中央本部のラボで行ってもらえるように手はずは整っている
今回の遺体はCIAの諜報員だ。検死するには機密を扱うことができる検死官が必要になる
幸いなことに中央本部ラボ部検死ラボのリエ・ミズノ検死官は機密を扱う資格がある
彼女なら検死をしてもCIAは問題ないと評価するだろう
「早速見てみるか」
ラジェットはそう言うと冷やして保存している遺体保管庫から遺体を検死台に移動させる
遺体保管室は数は少ないが4体の遺体を保管できるスペースが確保されている
さらに狭いながらも検死台も存在している。そこである程度の確認をしてみることにしたのだ
「血液サンプルは取っているのか?」
遺体保管室の責任者にラジェットが話しかけるとすでにサンプルを取っているとのことだ
血液サンプルから麻薬や毒物が検出することができたら、
さらに自殺か他殺か判断するのに十分な材料になる
「血液サンプルは分析に回すために大切に扱ってくれ」
「もちろんです」
ラジェットは早速遺体の簡易検死を開始した
はやてとリィンは死体を見ることに慣れていないのか表情は良くない
「はやてとリィン。これから毎日死体を見ることになるんだ。こんなことで嘔吐をするなよ」
そんなことだと捜査官にはなれないからなと厳しく伝えた
確かに捜査部捜査官になるには鉄の胃袋が必要になる
どんな時でも飯が食えるような体が必要である
「身元はこちらですでに把握しているが機密事項に該当する。身元はジョン・ドウという形にしてくれ」
「わかりました」
ジョン・ドウとは身元不明の男性という意味である。
身元不明や身元を明かすことができないときにはこういう形で対応する
「外傷はない。水死体だから解剖してみないと正式な検死結果はわからないが」
遺体保管室の責任者は検死官資格の保有が義務付けられている
だが艦内で検死解剖をすることはない。あくまでも簡易的な検死を行うだけだ
本格的な検死はラボで行う
「あとは血液サンプルの分析だがそれは中央本部のラボで行うか」
「簡易ではありますがここにも分析装置はあります」
「それじゃ、少し借りるとしよう。血中の毒物検査だけでもしておきたいからな」
ラジェットは遺体保管室の責任者にそう伝えると血液サンプルを分析装置にかけた
その結果はある成分が検出された。かなりの量のアルコールである。
血中アルコール濃度は0.4%を超えていた。これでは泥酔状態でまともな意識を保つことはできない
自ら歩くこともできないほどの濃度なので、海に落とされたら生存することはかなり難しい
「酒で殺したのか自殺なのか判断が難しいが、死んだ人間が諜報関係者となると殺しで捜査を進めるか」
「アルコールを過剰摂取させて自殺に見せて殺すとはかなり過激な方法ですね」
遺体保管室の責任者の言葉にそうでもないぞとラジェットは反対の意見を持っていた
「シンプルな殺し方だ。アルコール依存症の人間ではよくある死に方かもしれない」
自殺に見せかけるにはよくある方法である
アルコール依存症である人物の死因ではよくあることだ。
過剰なアルコールを摂取したことで意識混濁になってしまうことで死亡することはよくある
通常であれば自殺か他殺かの判断がかなり難しいところである
しかし今回は相手が諜報員である。それを考えれば殺しで捜査するのが当然である
「とりあえずCIAの人間を待つことにするか」
どの程度の潜入捜査をしていたのかわからない限りは捜査を簡単に進めることはできない
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西区南西部 エルガがトラックを止めた場所(一般道の路肩)
エルガとヴィータはコンテナトラックの案件を西分署の組織犯罪課に引き継ぐことにした
こちらはこちらで早く取り掛かりたい案件があるのだからできるだけ早く行いたい
南区サウスウエストハーディー地区1番街2丁目5番地603号室に住んでいるアズレエル・バーシンに会いたい
今は仮釈放中だからおとなしくしているはずだ
「あとは任せてもいいか。こっちも別件で捜査を抱えている。何か追加で捜査が必要なら並行して行う」
「任せてくれ。何かあればすぐに連絡する」
「それじゃ、あとは頼む。ヴィータ。俺たちは当初の目的地に向かうぞ」
エルガはヴィータにそう伝えるとすぐにサウスウエストハーディー地区に向かった
できることならこれ以上の問題が拡大することは避けたい
誰だって当然である
「SA12から中央本部。これよりサウスウエストハーディー地区に向かう」
『了解。現在アズレエル・バーシンの自宅周辺に刑事を張りこませている。自宅内にいるのを確認している』
こちらで身柄確保をしようかと協力要請してきたが今はまだ放置するようにした
こちらの動きを察知されることはあまり好ましい事とは言えないからである
できれば気づかれていないことのほうが都合がいい
「どうしてすぐに踏み込ませないんだ?」
「奴を今確保したら他の関係者にも察知されるかもしれないだろ。そんなリスクを背負うのは避けたい」
今はこちらは何も知らないと思わせるほうが良い
とにかく今は事情聴取を当たりさわりなくすることが必要だとエルガがヴィータに話した
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中央区中央部ルイス地区1番街4丁目5番地 バンクオブクラナガン ルイス支店
カリーとシグナムはコレナード・フレスの勤務状況について支店に勤務している銀行員に聞いていた
何か不審な行動をしていなかったかどうかについて入念に
「真面目な人です。信用もできます。いくらお金に困っていたとしても銀行の情報を盗むとは思えません」
支店に勤めている女性の答えにカリーは金に困れば人間は何でもするものですと返答した
確かにその通りである。金に困れば人間は親兄弟でも裏切ろうとする
自らの保身のためにどんなことでも仕掛けてくる
「ここ最近でおかしな行動はありませんか?何か奇妙な行動とかでもいいんだけど」
「いえ。何もありませんでした。ただ親が退役時空管理局員で追い詰められているという話で聞いていますが」
それでも銀行を裏切るようなことはしませんと答える
「何か情報があれば連絡してください。名刺を渡しておきますので」
カリーはそう言うとシグナムと一緒に地下金庫室に戻った
「何か隠しているわね。真実はどこかに眠っているはず」
「どうして疑っているんだ?従業員は何もないと言っているのに?」
シグナムは従業員の証言を信用しているようだがカリーは違う
全く信用していなかったのだ
「人は誰もが嘘をつくものよ。嘘がない人間なんて存在しない。何か隠し事は存在しているはず」
確かに人は簡単に嘘をつく。だからこそ証拠という名の物証がものを言ってくる
何が何でも証言だけではなく証拠を見つけるしかない。
「捜査官は嘘を見破るコツがあるのよ。見ていなさい。銀行員の嘘を暴いてあげるから」
カリーはそう言うとある人物に電話を掛けた
「カリーよ。ちょっと調べてほしいことがあるの。時空管理局犯罪捜査局に恩を売れるかもしれないわ」
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南区北部ハーディー地区5番街1丁目と5丁目の間の通り
サイノスとティアナはそこにSUVを止めて張り込んでいた
ある人物をマークしていた。この辺りで最近派手に稼いでいる麻薬の売人である
1週間で100万ミッドも稼いでいる。しかしマークをしているが今まで検挙に成功したことはない
上手いことにこちらの動きに気が付いてすぐに売るのをやめている
「早く麻薬を売ってくれると助かるんだけど」
「そんなに早く検挙したいなら麻薬の不法所持でも立件することができるんじゃないの?」
「不法所持だけだと執行猶予判決になる可能性が高い。密売なら確実に刑務所に送り込める」
サイノスはもう見逃すわけにはいかないという気構えでいた
確実に刑務所に放り込んで長いお勤めをしてもらいと考えていた
麻薬の持っている量によってはかなりの長期刑になる場合がある
特に麻薬の売人でかなり稼いでいる場合は特に。
「こっちの様子は筒抜けだが売るような行動を示してくれるだけでいいんだが」
「あっちはこちらの行動を分かっているんですか?」
「僕はもう2週間は張り込んでいるんだよ。検挙したくてね。こちらの顔は割れている」
サイノスはこの場人を捕まえるためにかなりの長い間張り込みをしている
当然相手はこちらの動きを察知している。だからこそ余計に検挙しにくいのだ
だが相手もそれは同じだ。見張られているということは密売ができないということだ
商売ができなければ、金が作れない。いつかは焦ってへまをする。
その一瞬を狙っているのだ
「売人は金が作れないなら焦りだす。上手くいくことができなくなれば慌てだす」
売人は麻薬の密売でかなりの儲けを出しているとなると犯罪組織から圧力がかかってくる
犯罪組織は必ず密売人に利益を出すように命令してくる。だからこそ苦労するのだ
密売人を1人逮捕してもまた1人の新しい密売人が出るだけ。
モグラ叩きと同じのようなものである。
「できるだけ早くあいつを刑務所に放り込みたいよ」
サイノスの視線はどこか何か恨みを持った視線で監視をしていた
ティアナはその視線に疑問を持っていた。麻薬の売人はこのあたりにたくさんいる
たった1人に執着するには少し過激すぎる気がしたのだ
「何か恨みがあるんですか?」
とても怖い視線で見ていますよと伝えた
「僕はいつも犯罪者を逮捕するときは怖い視線で見張り続けるだけだよ」
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東区中央部 クラナガンハイウェイ14号線(大外環状線) 時計回り路線
アルシオーネは東区西部サウスフェアファックス地区に向かっていた
爆弾に付着していた血痕のDNAの持ち主であるグエンスト・バーリに会うために
早く会って真相を知りたい。捜査官として当然の使命である
できれば早く爆弾事件を解決するためには爆弾の製造主からいくつ作ったのか聞くのが早い
ただしこれは製造主が生きていればの話であるが。本当のテロのプロなら証拠を残すようなことはない
爆弾のプロだからと言ってもテロリストにとっては道具にすぎないのだから
証言されたら致命傷を負う。身元がばれるくらいなら受け渡しの段階で殺している
テロリストを追いかけるときはいつもこうである。証拠や証人は残さない
すべて消す
「できれば生きていればいいけど」
『東分署から各員へ。サウスフェアファックス地区で爆発事案が発生。付近の緊急車両は速やかに向かえ』
「予想的中じゃない。相手はプロね」
アルシオーネは緊急走行に切り替えるとワーニングライトとサイレンを鳴らして現場に向かった
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