CSI:クラナガン   作:アイバユウ

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新暦76年4月1日午前10:05

 

午前10:05 中央パトロール本部庁舎 9階第2会議室

 

第2会議室には中央パトロール本部の各部署の責任者が集まっていた

受け入れを行う機動六課組に関する協議を行うためである

誰だって彼らの受け入れを喜んでいない。

 

「この案件については次元世界連合からの正式な要請を受けているから断るという選択肢はないと」

 

中央パトロールのトップである統合管理官のエリ・ミズノの発言に多くの幹部は表情を曇らせた

問題ばかり押し付けられて、次元世界連合や時空管理局は高みの見物だと思っているのだろう

事実そうなのだからしょうがない。問題はどこまで抑え込むことができるかだ

 

「上層部は良いものよね。機動六課組の配属先は捜査部。他に部署と比較すると我々捜査部は面倒を背負う」

 

「現場に面倒なトラブルを持ち込ませないでもらえないですか。エリ・ミズノ統合管理官」

 

パトロール部のプレオ・ドミング首席パトロール捜査官の発言にほかの部署の責任者も同じような意見を発言した

確かに現場に迷惑ばかりをまき散らすことになるのはわかっている

それをどうにかするための会議とはいえ、これは事実上の最後通達のようなものだ

すでに路線は決まっている。機動六課組は捜査部の預かりになるということは

 

「これは要請ではないわ。命令よ。我々は明確な命令を受けている。見返りは今後の情報共有を行える」

 

エリの言葉にこの会議室の中にいた人間のほとんどの幹部は驚きの表情を浮かべていた

そこまでしてでも機動六課組を時空管理局が彼らを引き離したいということを示している

機動六課組の主要メンバーには時空管理局や聖王教会へのコネがあることはわかっている

はやて・八神たちは時空管理局制服組の幹部にコネがある。おまけに聖王教会のカリム・グラシアともコネがある

それらを考えるといろいろと面倒なことになるからこそ引き離したいのだ

 

「結局のところは面倒ごとを押し付けたいだけなのではありませんか?」

 

事務部首席事務官のリーザ・コンパーノの発言は当たっている

当たり障りなく言っているとしても単純な話ではない。

問題をこれ以上拡散されることを避けたいということだ

その後も議論が続くか問い思ったが一時休憩の時間を迎えるとシエルとプレオは1度会議室から退室

廊下であることについて話を始めた

 

「プレオ。あなたは機動六課組のことをどう思っているの?」

 

「シエル首席捜査官と同じですよ。正直なところは面倒なことを押し付けてくるだけ」

 

面倒を押し付けられるのはいつものことである。安全保障の観点から機動六課組の受け入れはしたくはない

ただしやらないと大きなトラブルがさらに発生することになる。

それはそれで面倒になることはだれが見てもわかることだ

 

「長官は何かたくらみがあるのかもしれないわね」

 

陰謀論があるなら何か裏で動いている可能性がある

常にリスク管理を考えるなら当然である。味方の中にも敵は存在する

問題はその敵がだれを相手にしているのかを知ることが最も重要である

敵が狙っているターゲットがわかれば少しずつ答えが見えるかもしれない

そのためにもじっくりと時間をかけた作戦をしなければならない時もある

 

「パトロール部としても同じですよ。まぁ捜査部捜査官ほど苦労がないので気楽と思っているようですが」

 

パトロール部に異動させられるわけではないので少しほっとした表情でプレオは話した

 

「私たち捜査部にすべてを押し付けて上は高みの見物。今度こそ長官を殴りたいわ」

 

「捜査長官をぶん殴るなんてやめてくれ。後でとんでもない武勇伝が作られるだけだぞ」

 

「かまわないわ。私は大切な部下を守るためなら手段を択ばない。正義のために任務遂行中のトラブル解消」

 

それが私たち部署責任者の仕事よというとシエルは会議室に戻った

確かに部署の責任者は部下を守ることが仕事だ。時には管轄越えの指揮命令系統に手を出すこともある

これも緊急時なら許可される話である。守るためには手段など選んでいる暇はない

臨機応変に対応しなければいけないのだ。安全確保のためには特にそれが重要になってくる

 

「シエル首席に逆らえる連中がいるなら見てみたいものだね」

 

プレオはそういうと会議室に戻った。シエルの影響力はかなり広い。

必要であれば大統領権限の行使を要請することもできるくらいに

もちろんそれは部下を守るために行使するのだ。乱発しているわけではない

必要に応じて適切な指揮命令系統を通じて物事を動かすことはいつものことである

連係プレーが上手くいくときもあれば上手くいかない時もある

すべてはタイミングである。見逃したらもうチャンスはないのだ。見極めることが重要である。

会議室では議論が始まったが話し合うのはシエルとエリだけだ

ほかの参加者は高みの見物だ。押し付けられることがないということを知っているからだ

 

「エリ。捜査部で受け入れについて多少の無茶は容認してくれるのよね?」

 

「もちろんよ。それで何を希望しているのかしら」

 

「それは今は言えないわ。必要に応じて要請を出すけど、その時は円滑な行動手配の要請といったところかしら」

 

「認めるわ」

 

エリは素直に了承した。今は納得させることを中心にしているのだ

 

「管轄越え時の権限行使に現場責任者に調整権を与えること。これが私が彼女達を受け入れる最後の条件よ」

 

その事もエリは承認した

現場責任者というのは現場で犯罪捜査指揮をしている捜査部捜査官のことを示している

彼らに一定の権限を与えることについては連邦法であることが容認されている

『クラナガン捜査局中央パトロール本部捜査部捜査官権限法』という連邦法が存在する

この法律は捜査部捜査官に連邦捜査機関の捜査官との同様権限を与える事を認めた法律

市外での捜査逮捕権を認めた法律。これは市からの逃走犯を追跡するためにクラナガン捜査局が求めていた

もちろんこの法律にもそれなりの束縛されたルールは存在している

それでも簡単に権限移管の手続きの許可をもらっていることで運用がよりスムーズにできる

 

「ほかにあなたの希望はあるのかしら?」

 

「私は部下の信頼を守りたい。それだけの話よ。もしこの話を覆すようなときには覚悟する事ね」

 

シエルはそういうと会議室の椅子から立ち上がると退室していった

誰もがそれを見届けるかのように会議室から退室したのを確認すると少し緊張感がある空気が緩んだ

 

「少しは落ち着けるわね。シエルとの話し合いは緊張感があるから」

 

シエルははっきり言うと相手に回したくない人物である

正義を絶対に信じているし、捜査官として人々の平穏の暮らしを守る仕事を誇りに思っている

だからこそ許せないのだ。犯罪などの違法行為をする者は絶対に許さない

仲間であってもそれは同じだ。何もしていなければバックアップのために何とかする

ただし違法行為をすれば自ら解雇処分を通達して追い出す。

人々が平和に暮らせることを第1に考えているからこその強硬な態度をとる

 

「シエル首席捜査官は相当の実力者。彼女を簡単に相手にできるのは統合管理官だけですね」

 

プレオの言葉にエリは私でも止めることができないこともあるわと返答した

時にはとんでもないことをすることでもシエルは有名人である

人々と静かな平和な暮らしを守っているという任務に命がけで任務遂行をしている

 

「シエル首席捜査官を敵に回すことだけはしたくないわね」

 

中央パトロールの各部署の責任者の意見は同じだ

シエルを敵に回せばどうなるか。そんなことはできることなら想像などしたくない

最悪の結末を迎えることはわかっている。だからこそシエルを敵にするような行動は最低限にしている

常に人々の平穏な生活が送れるように仕事ををしているシエルは怖いのだ

 

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西区中央 ウエストクラナガンカジノ地区4番街2丁目と3丁目の間の通り

 

クラナガン市は近隣州では禁止されているカジノが合法的に行うことができる

ただし、市内でカジノができるエリアはかなり限定されている。基本的には市内の主要空港のすぐそばなど

本土側では4つの空港の周辺に基本的には限定されている。

沖合の島々ではノートン島だけが唯一カジノの運営が認められている。

その島にとってはカジノは基幹産業である

カジノという娯楽を満喫しようと近隣州から多くのギャンブラーが来ている

それだけにトラブルもかなりの多さになっている。カジノで全財産を失う者もそれなりにいる

ギャンブル依存症といっても過言ではない。そういうケースは今までも数多くの件数で確認されている

今後もそういうことは間違いないだろう。それだけに市内のカジノがある場所の警戒レベルは厳重である

カジノ街には様々な高級品を扱う店舗もある。ブランド物のバックや服や宝飾品など

それだけに犯罪発生率はかなり高い。少しでもトラブル件数を減らすには問題発生後のトラブル拡大を止める

そのために動くことが求められる。

この周辺の地区パトロール事務所は他の地区パトロール事務所と異なり、かなり多めの人員が確保されている

臨機応変に対応することが求めるのだから当然である

その地区ではエディがSUV車で巡回をしていた。何かあればすぐに対応できるようにである

この辺りはカジノ街だけに事件発生率もかなり高い。それも強盗などの発生率もかなり多いのだ

大金が集まってくるのだから当然である。銀行などの金融機関の支店や無人ATMも様々なところに設置されている

その他にも質屋なども数多く存在しているので、まさにお金が様々なところで動くと言える

 

「今のところは平和だな」

 

エディは平和ではあるが人通りが多いのは相変わらずだと感じていた

クラナガン市の近隣州ではカジノは非合法とされている

そのためカジノをするためにクラナガン市に旅行に来る者はかなり多い

成功する者もいれば大金を失い者もいる

 

『西分署から各員へ。金融機関への警戒態勢を厳戒にせよ』

 

『中央本部からSA38。バナースカジノホテルから通報あり。銃を持って暴れていると』

 

「こちらSA38。了解した。ただちに現場に急行する」

 

エディはサイレンなどのスイッチを入れると緊急走行で向かった

その間にも情報は次々と入ってきた。カジノには常にパトロール捜査官が2人以上が警備している

カジノを構えたホテルや店での強盗対策として無料で提供しているサービスだ

犯罪抑止効果としてはかなり高い機能を果たしている

それでも完全に止めることはできない。必ずどこかに穴は存在するものではある

 

『バナースカジノホテルでは激しい銃撃戦が展開中。接近時は警戒されたし。相手はアサルトライフルを所持している』

 

「かなり危険な状況だな。負傷者は増えないでほしいが」

 

現場に近づいていくほど銃声の音が少しずつ大きくなっていった

かなり危険な状態であることははっきりしている。問題は相手がどこまでやる気があるかだ

素早く降参するつもりならこんな展開にはなっていない。

つまり徹底抗戦の構えでやる気があることは間違いない

 

「SA38はまもなくバナースカジノホテルに到着する。安全のために規制線は展開されているのか?」

 

『すでにホテルの玄関はすべて封鎖中。銃撃戦が起きているところだけで隔離状態にある』

 

ということは現場はかなり限定されているということになる。

それでも派手な展開になっていることは銃声を聞いただけで容易に想像できる

次々と乱射していることがわかるかのような銃声が鳴り響いていた

反響してあちこちから銃声が聞こえている。現場は超危険地帯のど真ん中

地雷が大量に埋まっているところを歩くのと変わりがないようなものだ

 

「SA38から中央本部。こちらはまもなくバナースカジノホテルに到着する」

 

『現在も銃撃戦が展開中。相手はかなりの武装をしている可能性が高い。警戒しろ』

 

「了解。こちらもH&KG36で対応する」

 

H&KG36は中央パトロールでは常にパトロールカーに積み込んでいる

アサルトライフルであることから拳銃よりもかなり派手な攻撃をすることができる

ただし発砲された弾の威力もかなりの物なのでしっかりと構えて扱うことが求められる

捜査部捜査官のSUV車にも当然ではあるが常に1丁を持っている

ちなみに有効射程は最大で800mである。

遠距離で敵を狙うなら狙撃に適した狙撃銃を使うのは当たり前である

アサルトライフルでそれをするのは無茶がありすぎる

 

『ホテル内での銃撃戦は現在も続いている。警戒態勢を厳重にして対応せよ』

 

危険なことが間違いない。

できることならそんなところにはいきたくはないのだが時には必要なこともある

問題が拡大する前に止めることも重要であるのはわかっているが今の状況では難しい

 

「最悪の現場になっているかもな」

 

エディが現場に到着するとすでにホテル内ではかなり激しい銃撃戦が展開されていた

敵はかなりの武装をしているのだろう。

ここまで派手にするとなると徹底抗戦の構えで死ぬ気でやりあうつもりかもしれない

それはそれで嫌な話だ。犯人はできれば生け捕りにしたい

殺したら真相解明が難しくなるからだ。犯人の身元からどこか裏のつながりがわかればさらに捜査は続く。

マフィアやギャングなどの犯罪組織に対する強制捜査に踏み込むことができる

ただし現実的に考えた場合、その道をたどるのはかなり難しいことを理解しておく必要がある

時には非情な手を使うことも求められる

エディが現場に到着すると現場のホテルの外は完全に出入りを規制していた。

内部では激しい銃撃戦が展開していることがわかるくらい数多くの銃声が鳴り響いていた

 

「死者が出なければいいがな。特にこちらの仲間が傷つくことは最も避けたい」

 

エディはSUV車の後部トランクからH&KG36を取り出した

そしてホテルの正面玄関からではなく裏口のほうに向かった

そこも爆弾などの何か仕掛けをしているかもしれないが、正面突破をするのはあまりにも危険すぎる

すぐにでも銃撃戦を止めるためには必要なら多少の無茶を通すしかない

もちろん犯人は生け捕りにしなければならないことはわかっている

 

「通用口に到着したが、何も対策はしていないだろう」

 

エディは慎重に通用口のドアに仕掛けがないか調べた

もしかしたらとんでもないものが仕掛けられているかもしれない

準備もしないで不用意にドアを開けた瞬間に爆発ということもある

それは避けなければならない。彼は慎重に確認するとドアノブを回した

そしてゆっくりと明けたが幸運なことに何も仕掛けはしていなかった

あとは中に入って容疑者がどこにいるかである

 

「生け捕りにできればいいんだがな」

 

エディは慎重に通用口から慎重に入っていった。

その間も激しい銃撃戦の音が建物内を反響していた

かなり派手な展開になっていることは間違いない。

アサルトライフルや拳銃など様々な銃火器が使われているようだ

ここまで派手な展開になると後始末がかなり苦労することは間違いない

 

「銃声が激しいな。弾薬を大量に持ち込んでいるようだ」

 

すでに銃撃戦を始めてそれなりに時間が経過している

それでも銃撃戦が終わらないということはかなりの弾薬を抱えていることを意味している

どれだけ持っているかによって作戦を考えなければいけない

 

「本当に嫌になる仕事だ。こればかりは」

 

慎重に裏口である通用口から入るとホテルの玄関ホールで派手な銃撃戦が行われていた

それも相手もアサルトライフルを所持していることからド派手な展開になることは間違いない

もしも爆弾まで所持していたら最悪である。一線を超えるようなことになる前に制圧しなければならない

 

「奴はどこにいるかだな」

 

エディは慎重に銃撃戦が行われている場所に向かった

正面玄関ホール付近に到着するとホテルの受付カウンターを盾にして銃撃戦をしている犯人を確認した

パトロール捜査官や刑事たちは何とかしようとしていたが問題があった

犯人のすぐそばには数名のホテル関係者が人質の形で存在していた

これでは思い切った作戦ができるはずがない。人質がいるのは想定外の情報だ

 

「人質がいるとなると派手な方法は難しいな」

 

うまく犯人の集中力を減らす必要があるがさらに大きな大問題があった

犯人は防弾ベストを着用していた。9mm弾ならある程度は防げる

もちろんアサルトライフルの銃弾は難しいかもしれないが、それでも犯人が負傷したらより危険になる

人質は無傷で救出する。犯人は生け捕りに。これが今のところの方針だが簡単に事が進むことはない

上手く進んだとしても大きなリスクがあることを理解しなければいけない

犯人がもしドラッグをしていたら一瞬で態度変えて何をするかわからない

それに爆弾を持っていたら犯人と人質だけでなくこちらにも大きな影響が出る

銃撃戦の中でも今回のこの事例はかなり慎重な対応が求められる

 

「SA38から中央本部。犯人は数名の人質を取っている。無茶な対応作戦はしないでくれ」

 

『こちら中央本部。了解した。指揮権をSA38に移管したい』

 

現場にいるものに指揮命令権限があったほうが効率よくチームの運用ができる

もちろんミスをすればエディに全責任が降り注ぐことになるが

それでもこちらのほうが現場は常に見えている。判断を素早く求められるときには有利になる

 

「あとはプランを練るしかないな」

 

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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部3係主任捜査官執務室

 

ウルは自らの執務室の執務机上の情報端末でベルカ州の状況を見ていた。

正確には中央パトロールが運用している中央パトロール支援衛星で撮影された衛星画像である

ベルカ州(旧ベルカ自治区)中央地方ベルカ市郊外にある聖王教会本部施設の画像を様々な角度から分析していた

聖王教会に存在する教会騎士団の動きなどを中心に探っていた

もちろん通信傍受も行っていた。もちろん非合法なものである。

それに中央パトロールが行っているのではなく、実際に盗聴をしているのは港湾パトロール安全保障局だ

こちらが責任問題に立たされることはない。

港湾パトロール安全保障局は諜報機関なのでこっそりと情報収集するのは当たり前である

裁判などでは証拠としては機能しないが、情報は何かの助けになるかもしれないのだ

 

「怪しい動きがありそうだね。聖王教会騎士団の動きは」

 

今の聖王教会騎士団は次元世界連合の承認がない限りは好き勝手に行動することを禁止されている

聖王教会騎士団にも不正行為があることが分かったため監査対象になっている

今は独立調査委員会を次元世界連合が組織して時空管理局と同じで監査の対象になっている

 

「委員会の現地調査は順調とは言えないみたいだね」

 

通信傍受とマスコミ報道などの情報を見る限りでは聖王教会は地震の機密事項には触れられたくない様子だ

それに関しては理解できる。誰だって自分の腹の中を探られるのは良い気分ではない

痛みを伴うものだとなおさらだ

 

『聖王教会は次元世界連合が行う監査について協力すると公表しましたが現場では難しい状況のようです』

 

『教会内部でも主導権争いが起きていることがわかりました』

 

聖王教会の教皇はカリム・グラシアであるが派閥争いは起きている

組織内にはほとんどの場合で強硬派と穏健派の2つが存在する

2つの派閥が常に争いをしているのだ。簡単に組織が動くことはない

人脈争いでいろいろとトラブルが多発するのはいつものことである

そうでもなければ問題解決に多くの時間が必要になるのは当然のことだ

 

「派閥争いか。時空管理局と同じだね。ただ、時空管理局にあった派閥はほとんど機能停止しているけど」

 

時空管理局にあった強硬派と穏健派の派閥はすでに機能停止だ

大量リストラの影響で多くの局員がいなくなったためである

おまけにシビリアンコントロールがしっかりと機能している。

 

『ニュース速報です。クラナガン市政府は備蓄原油の放出の準備に入っていることがわかりました』

 

『これはクラナガン原油先物価格が高値で推移していることから値下げ効果を狙ったものと思われます』

 

『このニュースを受けてクラナガン商品取引所のクラナガン原油先物は大きく値下がりをしました』

 

一気に1バレル5000ミッド台まで下がった。

今後も下がるかもしれない。クラナガン市の原油消費量は1日で700万バレルと言われている

市内で採掘される日産は約1000万バレル以上と言われている。

しかしそれらがすべて市内で消費されることはない

クラナガン市外に輸出されることも多くある。

クラナガン市から陸続きである近隣州との間にはパイプラインがあるのでそこを使って近隣州に輸送される

逆に近隣州でも豊富に石油が埋蔵しているのでクラナガン市の海側に向かってパイプラインで輸送されることもある

それだけにクラナガン市には大きな石油化学コンビナートが3つも存在している

石油化学コンビナートで仕事をしている人間は数多く存在するのでいつも求人がかけられている

今はまさに売り手市場といってもいい状態である。それだけ好景気である証だ

しかし大量リストラされた退役時空管理局員の再雇用はかなり難しい

かなり厳しい視線が浴びることから、長くその職に就く者の割合はかなり低い

次元世界連合は差別をしないようにと声明を発表。次元世界連合全加盟国政府も同様の声明を発表しているが難しい

簡単に事が進むことはないことは間違いない

 

「疑われている状況が簡単に好転するとは思えないかな」

 

退役時空管理局員に信用がないことが再就職を難しくしている最大の要因だ

信頼ができないということは会社の秘密に触れさせるわけにはいかない

つまりホワイトカラーの仕事ではなくブルーカラーの仕事を肉体労働に就くことが求められる

今も差別が行われている事から次元世界連合は罪なき退役時空管理局員に関しては差別的な感情をしてはならない。

そのような記者発表をすでに何度も行っているが現実は簡単に進むことはない

 

「本当に大変だね」

 

『港湾本部からベルカ基地管制へ。聖王教会本部の監視を強化せよ』

 

『了解した。現在は穏やかな状況にあるがいつ爆発するかわからない状況である。警戒を継続する』

 

「聖王教会の監視も苦労させられるね。どうやって問題解決に進める方法があるか検証しないと」

 

聖王教会にも時空管理局と同じで黒い闇に足を突っ込んでいる連中がいた

かなり危険な行為をしているも同然である。彼らは時空管理局の暗部である『HR』と組んでいた

そしてJS事件を起こすことになったのだから

 

「過去24時間の偵察衛星画像を検証してみようかな」

 

中央パトロールも独自に多機能型人工衛星をかなりの数を運用している

市内の監視と通信設備の確保のためである。

もしも地上有線回線が使えなくても人工衛星を経由した衛星回線を使えるようにしたものだ

また独自に衛星測位システムの運用も行っている

おかげでほとんど誤差がない衛星測位性能を確保。通信・偵察・早期警戒など、運用目的は多岐にわたっている

これらのおかげで地上の有線回線がダウンしても問題なくクラナガン捜査局は機能する

ウルはすぐに人工衛星から撮影されたベルカ州中央地方の聖王教会本部の状況を確認した

 

「教会騎士団は今のところは動きはないようだね」

 

人工衛星からの画像では魔導師の魔法粒子を観測できる装置が取り付けられているので、

魔導師として行動している場合はすぐにセンサーに反応する。今のところはそれがないというのは良い事だ

だがいつ行動を起こすかわからないというのが難点である

ウルはさらにベルカ州内のことを専門に扱っている報道番組を見始めた

 

『ベルカ州証券取引所ではベルカマジックパワー社の株価が急落』

 

『AMF装置の開発で魔力精製炉発電に危機感を覚えたためです』

 

ベルカマジックパワー社は魔力精製炉発電をベルカ州内で専門に行っている電力会社

送電網は保有していないので発電のみを行っている。

AMF装置の発明で電力安定供給に危機感を投資家は感じたための下落だ

今後も値下がりが続くことが想定されている。新規設備投資で火力や水力などの電源分散化をするとしている

それまでは不安定な株価の値動きになることは間違いない。魔力精製炉発電所を6施設を保有している。

最大出力はすべて合計すると3億6000万KWになるが、AMFが機能すると魔力精製炉発電が停止してしまう

それでは経営の安定化は難しいとして株価が急落している

一方でベルカ州内の送電網や火力発電所や水力発電所を保有しているベルカパワー社の株価は急上昇している

ベルカ州に移住する人々はかなり急増している。

そうなれば電力消費量も増加することから電力会社の利益も多くなるのだから買い注文が入る

そして株価も急上昇しているのだ。今後もその動きは当面の間は続くとみられている

ベルカパワー社はベルカ自治区時代は聖王教会傘下の企業だったが、

州政府に移行後は聖王教会が教会の組織維持を目的に新設されたベルカ州政府にすべての株式を売却した

州政府は50%の株式を保有して、残りの50%はベルカ州証券取引所で取引できるようにした

今は株価は急上昇している。州政府はその他にベルカオイルカンパニーという企業も持っている

名前の通り州内で石油や天然ガスなどの採掘をしている。1日の原油産出量は200万バレルになる

 

「ベルカ州の経済発展で犯罪発生率の増加しているね。今ごろ州警察は苦労しているだろうけど」

 

ベルカ州内にある様々な警察組織はクラナガン捜査局で教導を受けた関係者が今はベルカ州内で教導官を務めている

彼らは自ら正義を行い真実を明らかにするために必死になって戦っているのだ

 

『ベルカ州商品取引所ではベルカ州原油先物価格が高値で推移しています』

 

ベルカ州原油先物価格はベルカ州内で採掘される原油の先物取引価格のことを示している

ベルカ州内の原油価格を決める指標に近い数字である

 

『ベルカ州政府はベルカ州原油先物価格が急激に上昇しているため、備蓄原油の放出を検討していると公表』

 

「どこも経済的な落とし穴に入らないようにするために必死だね。何とかしないと」

 

ウルはさらに中央パトロール支援衛星から撮影された衛星画像を情報端末を使って分析していた

何か大きな手掛かりがあるかもしれないと想定したからだ

 

「ベルカ州の通信傍受は楽しいけど、証拠能力はないから情報収集のために使うしかないね」

 

そう呟きながら人工衛星から撮影された画像の分析を行っている

なにか面白い発見があるかもしれないと考えた。分析を続けているとある反応を見つけた。

聖王教会本部内からの通信だ。それも衛星回線を利用したものだ。

あちらはこちらが通信回線を傍受していないと考えているのだろう

それは大きな間違いだ。こちらは有線回線はもちろんだが、衛星回線を含むすべての通信を傍受している

 

「通信傍受の中に何か面白い情報があればいいけど」

 

ウルはいくつかの聖王教会内の通信を確認するとある情報を見つけた

それは聖王教会騎士団によるクーデターを起こそうというものだ

過激な思想を持った連中がいるかもしれない。これはかなり危険であることは言うまでもない

 

「聖王教会内部の状況が知りたいから友人に聞いてみるしかないね」

 

ウルは港湾パトロール安全保障局の友人に電話をかけた。外事情報分析部の友人にだ。

外事情報分析部は様々な犯罪組織や反政府組織の情報を分析している部署である

様々な情報分析を行うことで国内の安全保障に大きな問題が出ないように活動している

 

「プリマス。元気にしているかな?」

 

『こちらは相変わらず何とかやっています。ウル主任から連絡とは珍しいですね』

 

プリマス・ストーンは外事情報分析部の部長をしている

国内に存在するあらゆる犯罪組織や反政府組織の情報を把握している人物を呼ばれている

 

「聖王教会内の情報は何かつかんでいるかなと思ってね」

 

『聖王教会内部はかなり派閥争いが激しいようです。カリム・グラシアはお飾りの状態です』

 

予想通りの展開である。派閥抗争が起きることはわかっていたことだが

問題は彼らがどこまでやる気があるかによってことが大きく変わってくる

そこが最大の悩みどころであることは間違いない

 

「予想通りの展開だね。今後の展開次第では事がもっと酷くなりそうかな?」

 

『十分あり得ます』

 

その返答を聞いてウルは大きなため息をついた。問題がこじれているからだ

 

「情報開示を頼めないかな?時空管理局と聖王教会の関係を断ち切りたい」

 

『何を考えているんですか?そんな危ない橋を渡るとかなり苦労します』

 

「無理なら次元世界連合安全保障理事会の調査委員会にいる友人に聞いてみるよ。当たり障りのない形で」

 

公式な記録が残るとかなり危険になる。そのリスクを回避するためにするために

ちなみに次元世界連合安全保障理事会では時空管理局調査委員会と聖王教会調査委員会の2つが存在している

2つの組織は時空管理局と聖王教会の今までの活動の中で問題がなかったかを調査している

1つでも疑惑が出ればすぐに対象者の身柄拘束を行って真実を明らかにしている

 

『こちらでわかっていて開示できる範囲の情報を渡します。少しは恩返しをしないといけないですから』

 

「できるだけ早くお願いするよ」

 

通話を終えるとウルはある経済ニュース専門報道番組を見していた

今まで時空管理局債のCDSの引き受けはワンワールド保険が独占していた。

しかし時空管理局債が紙くずになった影響は大きい

その結果でCDSによる『トラブル』でワンワールド保険は破綻した

時空管理局債は紙くず同然になり、保険としてかけていたCDSでも投資した資金の回収ができなかった

まさに天国から地獄に落ちてしまったといっても過言ではない

資産を失って借金ばかりを作って自己破産する人間はかなりの人数になってくるのだ

彼らは財産を失って路頭に迷っている状況にあるのだ

今後の見通しは全く予測できるものではないことは間違いない

 

『ワンワールドグループ企業の金融部門のワンワールド保険が破綻したことで金融市場に動揺が走っています』

 

『今後、連鎖破綻につながるのではないかと懸念する関係者もいることから難しい判断に迫られています』

 

『連邦準備銀行と連邦財務省は公的資金の注入は行うつもりはないと正式に発表』

 

「ワンワールドグループ企業がすべて破綻した影響は大きすぎて対応には苦労するだろうね。次元世界国政府は」

 

『すでにグループ企業の破綻の影響で多くの次元世界国の金融市場では少しずつ混乱が発生しています』

 

「為替市場にまで影響が出るのは間違いないね」

 

新暦75年までは時空管理局から無茶な予算要求を受けていたため、

その資金を用意するために一部の次元世界国政府は国債をかなりの量を発行していた

今はその国債の償還に追われている。しかし時空管理局の予算編成は次元世界連合に権限が移管された

そのため時空管理局の予算要求は無茶なことはできなくなってしまった。

多くの次元世界国政府は今まで発行してきた国債の償還ができなければ国家の信用問題に発展する

リスク回避のためには全力で対応することが求められる

 

「次元世界連合全加盟国の国債償還作業はかなり多くなるだろうね」

 

国債償還が次々と終ると投資家は新しい投資先を探す

そうなれば新たに経済発展につながることは間違いない

大きな事業を行うには大量の資金が必要になる。それを出すのは投資家だ

彼らにとって今の金融市場は不安定であることは間違いない。

しかしうまくその不安定感を見定めることができれば大きな利益につながる

そこが最大の難しいところである

ミッドチルダ連邦は時空管理局の予算負担を求められていた。他の次元世界国政府と同じで

しかしミッドチルダは景気が良かったこともあり国債を発行する必要はなかった

それどころか時空管理局が過剰な予算負担要求をしてきても余りあるほどの歳入があった

 

「大きな企業の破綻処理はいろいろと大変だね。時空管理局の利権をすべて握っていた組織となるとなおさら」

 

『次元世界連合は時空管理局への透明化を進めるために物資納品を競争入札制に完全移行』

 

『さらに無駄な予算の大幅カットをすることで大規模予算削減目指すとしています』

 

以前は時空管理局は最も多い時で最大数十京ミッドの予算を出すようにと多くの次元世界国政府に求めていた

しかし次元世界連合は時空管理局の給与水準の大幅引き下げと完全競争入札制。

それだけでなく時空管理局の人員カットと管轄の大幅削減などのあらゆる対策で予算カットをした

今年度から時空管理局の予算は5000兆ミッドになった。まさに極限まで抑え込んできた

人員の大量リストラで削減された。給与水準も大幅引き下げで予算カットに貢献している

今後もさらに予算カットのために必要のないものは削減するだけである

 

『ピーピーピー』

 

ウルの携帯電話に着信が入ってきた。発信者はFBIに所属している友人である

 

『ウル・ミズノ主任捜査官。お久しぶりですね』

 

「ヘセルボ・リッティ。君からのコールなんて何か問題が発生したのかな?」

 

へセルボはFBIの国家公安部に属する連邦捜査官であり、時には諜報活動を潜入捜査も行っている

かなりのベテラン捜査官であることは間違いない。JS事件までは時空管理局に潜入捜査をしていた

今は引き上げているが彼女がもたらす情報は極めて大きなものになった

 

『退役時空管理局員の身柄をこちらで確保したのですが面白い話が』

 

「具体的には何かをしゃべっているのかな?」

 

『時空管理局がかなりの裏金作りをしていたと証言する代わりに司法取引をしたいと』

 

裏金作りなど珍しい話ではない。そんなことで司法取引するメリットはない

ウルすぐに否定したが次の情報に驚きの表情を浮かべた。

 

「今はその容疑者はどこにいるのかな?」

 

『これからセントラルクラナガン拘置所に移送しますが、そちらが求めるなら身柄を移管する用意はできています』

 

ウルは今度はこちらから落とせるだけの情報を吐かせたら連絡するから身柄の移送を要請した

へセルボはウル主任の手腕に期待していますというと通話は終わった

 

「時空管理局暗部のHRに関する詳細な情報は見逃せないね」

 

時空管理局の暗い闇の組織である『HR』は時空管理局に利益をもたらす工作活動をしていた

もちろん違法行為がかなりの割合を示すことになっている

今後のことを考えるとさらに大きな影響がでるだろう

時空管理局調査委員会では時空管理局に関係する事件を捜査する『時空管理局犯罪捜査局』と連携捜査を行う

2つの組織はHRの関係者の追跡調査と関係する事案の捜査を徹底的に行っている

ちなみに時空管理局犯罪捜査局に在籍している捜査官は中央本部捜査部で教導を受けていた

捜査能力は捜査部と力量は変わらないくらいのハイレベルである

 

「HRの暗い闇を暴くのは簡単にはいかないだろうね。苦労することも多いから」

 

情報端末を操作してある情報を確認していた。

時空管理局犯罪捜査局がどれくらいの事案を抱えているのかを確認したのだ

 

「国内だけでも1万件ほどとはすごいね」

 

ミッドチルダ連邦国内関係の捜査対象件数は1万件近くある

次元世界連合全加盟国内の事案をすべて数字に加えて計算すると何億件にまでなる勢いだ

まさに最悪と言ってもいい状態であることは間違いない

すべてが明らかになるにはどれくらいの時間が必要になるかは全く予測できない

 

「とにかくHRの情報を持っているならしゃべらせるしかないね」

 

HRに関する情報はあまり多くはない。闇の部分が多かったのだから当然である

そこに光を当てるのは簡単なことではないことはわかっている

証言者が必要になることがわかっているからこそ、何かきっかけになる情報は有益である

ウルは情報端末を使ってベルカ州内の経済情報に関して確認した

そこには極めて危険な記事が掲載されていた

 

『セントラルベルカバンクが抱えている不良債権は3000兆ミッドになることがわかりました』

 

『聖王教会債のCDSを引き受けていたことが不良債権を大量に抱える結果になっています』

 

セントラルベルカバンクは聖王教会傘下の金融機関だった

ベルカ自治区時代は自治区内の銀行業務をすべて独占していた

さらに聖王教会債のCDSを引き受けていただけでなく、聖王教会関係者にかなりの融資をしていた

それらの大部分が不良債権になった。おまけに財務諸表も大幅な赤字を迎えたことで業務停止をしている

この状況では破綻処理に向かうことは間違いない。誰かが救済するかと思っていたがそれは難しい

救済するにはかなりの資金投入が必要になる。民間の金融機関ではそれはかなり難しい

ただでさえワンワールドループ企業の問題がある。セントラルベルカバンクに集中している暇はない

連邦政府は公的資金の注入は考えていない。破綻の道を歩むことは間違いない

 

「教会関係者がどれだけ逃げているか想像もつかないね。危険なことになっていることは間違いないけど」

 

聖王教会の関係者はセントラルベルカバンクからかなりの金額の融資を受けていたが返済不能になった

その結果が大量の不良債権である。何度も言うが総額3000兆ミッドもあるのだ

どうやって処理するかはかなり困難で、おそらく回収不能になるだけ

債務者は破産申請をするしか道は残されていない。全財産を差し押さえられる

 

「どれくらいの人間が逃げたのかわかるかな?」

 

ウルは聖王教会関係者の足取りについて記録しているデータベースにアクセスした

そのデータベースを作成しているのは連邦政府機関のCIAなどの諜報機関がそれぞれ情報を集めて作られたものだ

簡単にアクセスすることは本来ならばできることではない。

だが彼らと連携することが多い捜査部捜査官ならアクセス権を持っている

 

「今のところは100人ほどだね。さらにSEC(証券取引委員会)が調査を進めれば増えることは間違いないね」

 

良い話題は全くないことは間違いないとウルはため息をついた

 

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中央パトロール本部庁舎 屋上へリポート

 

ステラとマイアは聖王教会のスパイ活動のためにベルカ州に行くことにした

偶然にも港湾本部基地からベルカ基地行きの軍事物資輸送機があった

そこに乗せてもらうことにしたのだ。もちろん貨物スペースにであるが

これも慣れている。今回が初めてのことではない

 

「さっさと港湾本部基地に行かないと」

 

2人はヘリで中央本部から港湾本部基地の飛行場に向かう

 

「マイア、久しぶりに潜入捜査ね。こっちの顔がわかってる連中が少ないと良いけど」

 

「リスクはある程度覚悟しないといけないですね。内部工作時は何か別の姿のほうが良いかもしれません」

 

マイアの言うとおりだ。

捜査部捜査官というだけで聖王教会には2人のことが漏れているかもしれない

もしそれが事実ならステラとマイアの命が危険になるだけというのは間違いない

 

「それにしても捜査部にスパイ活動しろなんて無茶な話を持ってきたわね」

 

「はい。まぁ何度も経験はありますから特別な緊張感はないですが」

 

「だからと言って任務を放置するわけにはいかない。今は緊急事態に近いのだから」

 

2人はヘリに乗り込むと機体はすぐに離陸していった

ベルカ基地行きの輸送機は[ C-5 ]でありその機体に乗り込む予定になっている

C-5は最大積載量は120tほどになる。今回はベルカ基地に向かって弾薬を運ぶことになっている

ベルカ基地にも一定の武器弾薬備蓄はあるが万が一の大規模戦闘に備えての対策だ

大規模戦闘が発生するととんでもないことになるかもしれない

もし途中でこちら側に弾薬不足が発生すると敵に負けてしまう。それは非常に困ることになる

 

「それにしても港湾パトロール海兵隊と本気で戦争するつもりなら結末は最悪になるわね」

 

海兵隊は最も厳しい訓練を受けている。港湾パトロールの地上戦闘をすべて担当するからだ

敵を撃滅することを任務としている。その他にも港湾パトロール艦隊や飛行隊と友の連携して戦闘を行うが、

基本的には陸上での戦闘行動が主任務である。結末は最悪になることは間違いない

 

「敵を生け捕りにしてくれることは期待できないわね」

 

戦争中にそんなことを言っている暇はない

戦争において唯一の解決法は勝利をすることだ

その勝利を手につかむにはかなりの死者が出てしまうことは当然である

今回ばかりは戦闘が開始されたら負けるわけにはいかない

負けたら真実が闇に隠されてしまう。白日にさらすためには勝つしかないのだ

 

--------------------------(42ページ)

 

東区東部 時空管理局機動六課基地 司令官執務室

 

「はやてちゃん。状況はどんな感じになっているの?」

 

執務室にははやてとなのはとフェイトの3人が集まっていた

時空管理局の上層部からの話で機動六課組はクラナガン捜査局に異動の通知は届いていた

反論することは認められないとも伝えられていた。

 

「うちらはこのままクラナガン捜査局に異動することになるって。それとうちの隊員の半分以上はリストラと」

 

はやての言葉になのはとフェイトはそんな無茶なと驚きの声を上げていた

確かにやり方は無茶苦茶である。強引すぎることは事実なのだから

そこまでしないと時空管理局は新しく生まれ変わったと、アピールすることはできないと言われている

自ら痛みを伴う改革が必要なのははやても理解している

それくらいのことはわかっている。司令官をしていたのだから

社会情勢を読むことも極めて重要であることは間違いない

 

「今日の午前中に異動先の担当官が来ると聞いているから」

 

詳しい話はそれからだとはやては言うとため息をついた

確かに時空管理局の闇を暴いたのははやてたち機動六課組である

しかし、それが時空管理局にとってパンドラの箱になるとはだれにも予測できていなかった

今の時空管理局は機動六課組が暴いたパンドラの箱に収められていたありとあらゆる災難が飛び跳ねている

このままいけばどうなるかは全く予測することなどできるはずがないのである

はやてはある問題について話を始めた

次元世界連合の全加盟国政府が締結した国際条約にある1つの国際法がある

それは『子どもの権利条約』というものだ。幼い子供を戦場に送り込むことを禁止した条約である

17歳以下の就労について禁止事項が定められている。法執行機関で戦闘を行う部隊への配属を禁止している

また小学校と中学校で教育を受けることを義務付けている

次元世界連合全加盟国では中学校までは義務教育を受けさせることを国内法で定めている

ミッドチルダ連邦政府も連邦法で定められている。時空管理局はリンカーンコアのランクで青田買いをしていた。

これは聖王教会も同じである。そのため幼い子供が戦場に出されることになっていた

このようなことは許されることではない。子供には未来を自由に選ぶ権利があるはずだ

そういったことになればあまりにも子供に対して残酷な運命である

本来であれば大人が子供を守ることが当たり前になるべきだ。

それができなければ子供たちは明るい未来を選ぶことができない

 

「それじゃ、エリオとキャロはどうなるの?」

 

「戦闘行為が発生しないとされる部隊への一時的な異動扱いになる予定と聞いているけど」

 

実際は時空管理局を除隊することになるかもしれないと、

はやてはため息をつきそうになりながらも我慢をしてなのはとフェイトに伝えた

こればかりはどうすることもできない。エリオもキャロも10歳である。本来なら即座に除隊にするべきだ。

特別配慮ということで動物保護部隊などへの異動になることを条件に、

時空管理局に所属することを認めるとしている。表向きはであるが

実際のところはどうなるかは全く予想がつかない

 

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東区東部 港湾パトロール本部基地中央 港湾パトロール本部庁舎(ペンタゴン) 港湾本部長執務室

 

「相変わらず捜査部は問題は抱えることになっているわね」

 

港湾本部長をしているリヴィナの言葉にサイノスは面倒を抱えるのはいつも捜査部だと話した

 

「あなたほどのキャリアを持っている人間が港湾パトロールから中央パトロールに移った時は大騒ぎよ」

 

今もその時のことをよく覚えているわと話をした

中央本部捜査部に行く前は港湾パトロール海兵隊で鍛えられた兵士であった

そのため予備薬に移る時にかなり止められることになっていた

しかしそれでも中央パトロールに異動することを望んだ

多くの同僚から異動願の撤回を求められたが、サイノスは異動を認めてくれないなら除隊するとまで宣告した

最終的には中央パトロールに異動した。もちろん定期的に港湾パトロール海兵隊で訓練を受けている

それが交換条件のようなものである

 

「港湾パトロール海兵隊に戻ってほしいと部下からの嘆願書を裁く立場になってほしいものだわ」

 

「今は捜査官のほうが性に合っていますので。ところで機動六課組の受け入れに港湾パトロールの反応は?」

 

「誰もそんなことを認めていないわ。仲間にすることなんてありえない話だとも言っているくらいだし」

 

「仕方がないですね。あちらは時空管理局側ですから」

 

「でもその面倒なことを背負わされる捜査部は苦労するわね。あなたも担当官ができるって話を聞いているけど」

 

サイノスは機動六課組のティアナの教導官を担当することになっている

もちろん最初は様子見だが戦場では生ぬるいことは言っていられない

厳しい状況は現場も見せる必要がある。それが越えられないなら捜査官になることなどできない

鉄の胃袋が必要なのだ。捜査官には。

悲惨な現場を見たとしてもすぐに食事を食べることができるというくらいの精神力が必要である

 

「こちらとしては苦労する立場になることは大変なことになることは覚悟していますよ」

 

「新人の教導官役っていうのは再度勉強するいい機会と考える人もいるけど」

 

あなたは違うのかしらとリヴィナは質問してきた

 

「それについては同意するよ。改めて勉強する機会ってなかなかないからね」

 

捜査官になれば勉強も重要だが抱えている事件捜査のほうも重要だ

それも複数の案件を抱えて徹夜は当たり前の日常なのだから、時間的余裕が少しでもあれば仮眠に使いたい

 

「それで?あなたが自ら私のところに来たのは何かの用事があったかしら?」

 

「この情報を提供しようと思いまして。見返りは求めないので。ただし処理は早急によろしくお願いします」

 

サイノスはリヴィナに1冊の報告書を渡した。

 

「これは間違いないの?」

 

報告書にはベルカ州内における反政府武装組織の構成組織に関する内容が記載されていた

簡単に入手できるものではない。このような報告書は機密事項に該当する

手渡しで報告書の内容が外部に漏れないようにするのは当然の配慮である

 

「CIAにいる友人に頼んで裏を調べてもらった。嘘ではないというのは間違いないみたいだね」

 

「大至急対応するわ。何かこちらで対応できることがあるならいつでも連絡してきて。恩返しはちゃんとするから」

 

サイノスは気にしなくてもいいと言いながらも敬礼をして港湾本部長執務室を退室した

 

「あとはお祭り騒動がどこまで発展するか」

 

リヴィナはもう1冊の報告書を見ていた。内容はベルカ州内の経済に関して報告が記載されている

今はベルカ州政府や州内の各自治体が行っている様々な公共事業で潤いを見せている

競争入札制で業者を選定しているが、今はベルカ州内には様々な建設会社が誕生して入札に参加している

そして道路建設などが行われている。また共同溝を設置のために地下トンネル工事も行われている

多くの公共事業によって州内の景気はバブル景気寸前の状態にある

州政府は過剰な好景気になる前に増税などを行うことで州内の景気過熱を抑えようとしている

また州法で一時的な景気過熱に対する対応する法律制定も目指している

 

「今後のことを考えると苦労するのは間違いないわね」

 

それにしても問題なのはベルカ州内に存在する反政府武装組織の情報だ

これはベルカ州における安全保障に大きな影響を与えることは間違いない

今後のことを考えるとリスクは最小限にしたいことから何が何でも止めるしか道はないのだ

 

「思わぬ祝福になりそうね」

 

サイノスから提供された報告書を利用すればベルカ州内の安全保障に大きく貢献できる

人々が犯罪や反政府活動に巻き込まれることがない社会の実現につなげることも可能だ

それこそが真の平和に導かれる道である

 

「とりあえずベルカ州内の警戒レベルを引き上げるしかないわね」

 

まだ本格的な『戦争』は始まっていない。

だが戦闘が開始されたら血まみれの惨状になることは間違いない

そうなる前に止めることができればもっとも最高のことの進め方であるが現実はそれほど甘くない

 

「今は時間稼ぎだけでも出来たら楽なんだけど」

 

--------------------------(46ページ)

 

中央パトロール本部庁舎 2階事務部人事管理課 主任人事管理官執務室

 

ミラ・クオーレは機動六課組の受け入れについての最終調整を行っていた

捜査部には人事受け入れ通達書を送付。クラナガン捜査局全体には機動六課組の受け入れ情報を提供する

現場での対応が行いやすくするためである

 

「問題は局員たちの反抗心でしょうね。時空管理局から追い出された局員の受け入れに良い顔をするわけないし」

 

当然と言えば当然のことである

自ら自爆したからと言ってその迷惑をこちらで引き受けるなんて誰が望んでいたか

そんな者がいるはずがないことはわかっていた

影響が出る範囲を最小限にするにはいろいろと情報通達が必要になる

そうなると人事管理をしているミラたちの業務が求められる。苦労するのは現場だとはいつものことであるが

 

「私たち人事管理課がここまで他の局員から嫌な目で見られるなんて最悪ね」

 

今は人事管理課にはクラナガン捜査局内の部署によって心情は大きく異なる

面倒ごとを取り寄せたという考えもあれば、苦労人であるという考えもある

1人1人それぞれ別の考えが存在していることは間違いない

 

「今のうちに何とか対応するしか道はないわね」

 

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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部1係オフィススペース

 

ジャネット・パウワーは自らのデスクで報告書の作成をしていた

彼女には機動六課組の教導官役は任されていないことに本人は少しほっとしていた

もし任されたら大暴れするつもりでいたのだから。

ちなみにジャネットは今日は夜勤もあるので明日午前9時までの24時間勤務だ

明日の午前9時以降は翌日午前9時まで休日になる。

捜査部捜査官には基本的には週に1度か2度の24時間勤務が存在している

 

「報告書を作成したらカフェに行きましょうか」

 

中央本部庁舎1階にはカフェテリアがある。そこで食事や休憩するのは珍しい話ではない

よくあることである。

 

『クラナガン商品取引所では備蓄原油放出の動きからクラナガン原油先物価格が大きく値下がり』

 

『今後さらに値下がりを見せることが予測されています』

 

エネルギーの安定供給にとっては最も重要である

自動車燃料価格の急激な上昇を抑え込むことができるのだから

今は安定的な値動きが求められるのだから当然ではあるが

 

『一方で電力価格の値上げ申請がミッドチルダ連邦国内で多くの電力会社が州政府や連邦政府に申請しています』

 

『今後の資源価格の値動きによっては大きな変動が起きることは間違いないでしょう』

 

エネルギー資源の価格の不安定は物価の安定を失うことにつながる

安定がなければリスクが大量に発生するだけ。その時、別のニュースが入ってきた

 

『ミーミルパワー社は先ほどベルカ州に新しくダム建設を行うことを検討していることを発表』

 

『ダムは発電だけではなく洪水などの水害対策や水源確保などの多目的な運用を目的としています』

 

発電だけにこだわるのではなく水害対策やダム湖の水を水道水として利用する予定でいるのだ

こうすることで下流には安全な生活圏確保ができる。ただしダム湖になるところは移住を迫られる

それらの調整にはそれなりの時間が必要になるが仕方がない

 

『火力発電と異なり石油製品などの燃料が必要がないので安定的な電源確保では重要であるとプレスリリースをしたと』

 

「電源開発はかなりのコストがかかることは間違いないわね」

 

短期間で工事を終えることはできない。発電所を建設して送電網をつなげる

簡単な作業でないことはだれでも理解している

都市圏に入ると安全保障の観点から共同溝に電力回線や通信回線が設置される

しかし都市部から離れると電力や通信などのケーブルは電柱によって供給されている

高圧電力ラインは鉄塔を使って都市間を結んでいる。

通信ケーブルは大陸間では海底ケーブルで数多くの通信ケーブルネットワークが構築されている

 

『中央本部から各員へ。機動六課基地周辺でトラブルが発生。警戒されたし』

 

ジャネットの無線機から聞こえてきた。機動六課基地でトラブルが起きるのは良いとは言えない

ただでさえ時空管理局関係で問題を抱えているのに、これ以上の問題は嫌な話である

 

『東分署から各員へ。機動六課基地周辺に立ち入り警戒ラインの設置を決定した』

 

立ち入り規制を行うために規制線を敷くのだ

これ以上トラブルが大きくなる前に問題を解決したいという思惑が完全に見えている

東分署も自分の管区内に大きなトラブルなど嫌なことは簡単に想像できる

だからこその立ち入り規制ラインを敷くのだ

 

「東分署も本気で対応するつもりね。影響は最小限にしたいのはわかるけど」

 

ジャネットはその無線を聞いてあきれてしまった

まだ問題を作るような根性があるとは。たださえしないの時空管理局基地はほぼすべて廃止された

残されたのは文民統制の観点から西区東部クルック地区に時空管理局本部庁舎が設置されている

今まではしっかりとしたシビリアンコントロールが機能として働いてなかった

しかし今は文民統制で制服組と背広組の2つがしっかりと別れているというだけでなく

時空管理局の様々な決定権は次元世界連合に移管された。つまり飼い犬と同じで首輪がつけられているのだ。

JS事件の前のように好き勝手に自由に暴れることなどできるはずがない

 

「国内の時空管理局の基地の9割は閉鎖されるから、経済的な問題を抱える村や町が多いかもしれないわね」

 

クラナガン市内と近隣州には首都防衛のために数多くの基地があったがほとんどすべてが閉鎖された

土地は民間企業にオークションで売却されて、今は新しい施設が建設されている

クラナガン市や近隣州だけでなく、ミッドチルダ連邦国内でも同じような状況である

これらはミッドチルダだけでなく次元世界連合全加盟国内でも同じである。

多くの次元世界国の国内では時空管理局の基地は大幅減少した。

おかげで時空管理局に頼っていた町や村の経済は破綻しているところは多い

時空管理局の基地が閉鎖されて経済が成り立たない町や村では、住民がいなくなった

そういう町などの自治体は完全に住民がいなくなり、廃墟ばかりの場所になっているところが多い

しばらくの期間は痛みを伴う改革が続くことは間違いない

 

「廃墟の町がどれくらい増えることになるか見当もつかないわね」

 

時空管理局の基地があったからこそ小さな町で経済は回っていた

しかし今はその基地がなくなってしまって自治体の経済は大きく下がった

そして過疎化が進んで街から人がいなくなってしまった

そういうケースはかなり多く存在することは間違いない

 

「カフェに行くのは後回しにして、とりあえずコーヒーでも飲みましょう」

 

ジャネットはそういうと捜査部の休憩室に向かった。

そこにはコーヒーメーカーがあり、彼女は自らのマグカップを持って向かった

捜査部のコーヒーはかなりおいしい豆を使用している。

ちなみにクラナガン捜査局では一定の範囲でコーヒー豆などの軽食について各部署に裁量権を与えている

毎日命をすり減らしている業務であることから少しくらいの働きやすい職場を目指す一環で、

そのため各部署によって使われているコーヒー豆や軽食の内容は異なる

ちなみに捜査部のコーヒーはかなりおいしいことで有名である

理由は簡単で捜査部1係のエルガ・ジャーニーが最高のコーヒー豆を見つけてきてそれを使っているからだ

コーヒーの味としてもかなり良い事で評判になっている

 

「エルガのおかげで捜査部のコーヒーはおいしいわね」

 

そうでもなければやっていられないとジャネットはスペースに到着するとコ-ヒーカップに注いだ

これがなければやっていられない。休憩スペースには冷蔵庫も設置されている

ちょっとした休憩時に食べるような軽食などが冷蔵庫に入っている

その他にもジュースなどもある。これらはすべて各部署が一定の裁量権で与えられているので

購入希望の商品を毎月リストアップして事務部に提出。

承認されると各部署に軽食やジュースなどが届き保管される

 

「どうして私たちに責任を押し付けることを上層部は考えているのか文句が言いたいわね」

 

彼女は冷蔵庫から軽食として入っているサンドイッチを取り出すと、少し食べた

少しは休める時間だ。こんな時間はそれほど長くないことはジャネットもよくわかっている

休めるうちにしっかりと休まなければ捜査部捜査官の職務遂行はできない

 

「それにしても正義の味方が悪役になるなんて悲劇ね」

 

私たちは正義の味方であり続けることができるけど現実的には簡単に

ジャネットはコーヒーメーカーでカップにコーヒーを注ぐと自分のデスクに戻った

情報端末でニュース専門チャンネル番組を見始めた

そこには次々と時空管理局と聖王教会の悪評が流されていた

今後の2つの組織にとっては大きなダメージになることは間違いない

どこかで誰かが助け舟を出すことができればいいのだが、現実はそうはいかない

茨の道を歩むしかないのだ

 

「苦労するわね。まぁ自業自得だけど」

 

そこに2係主任捜査官のミカ・ミズノが現れた

彼女の手には1枚の報告書があった。

 

「ジャネット。あなたに仕事を依頼したいの。ちょっとしたお散歩をね」

 

ミカは2係だ。ジャネットは1係だが係を超えて対応することはよくあることだ

捜査部の基本方針は必要ならどんなものも利用するとなっている

もちろん違反行為はだめだ。しかし合法であれば合法の範囲で手段を問わずに対応する

 

「これは金融事件の捜査要請ですか?」

 

「ええ、ワンワールドバンクローンが貸し出ししていた融資の中に気になる融資内容があったの」

 

要請書に書かれている内容はシンプルなものだ。ある金融商品の購入を目的として借り入れをしていた

時空管理局債を額面価格で200億ミッド分を買い入れするためだった

そのうち返済されたのは20億ミッド。全体の1割。残りの180億ミッドは不良債権になってしまった

 

「何かおかしいところでも?」

 

「借主を見てみたら驚くわよ」

 

確認してみると驚きの名前があった。ある大物の犯罪者で金融事件でいくつもの容疑がかけられている

生かして身柄を引き渡せば1億ミッドを受け取ることができる懸賞金がかかっている

多くのハンターが狙っている超大物賞金首だ。逃走される前に預金口座などの様々な財産を差し押さえた

しかしほとんどのお金が様々な形で動かされた後だった

おかげで今はだれでも狙っているのだ。1億ミッドの懸賞金がもらえるなら喜んでい追いかける

追いかける人間はギラスト・コレク。42歳。旧時空管理局地上本部事務部所属

事務部の中でも物資納入業者の選定などの業務に携わっていた

おかげで時空管理局に物資を納入したいとされていた企業からかなりの資金を受け取っていた

見返りに高額な取引を成立させることで甘い汁を吸っていた

 

「この男が市内にいると?」

 

「ええ。私の友人から情報によるとね。本来は時空管理局犯罪捜査局が担当する案件だけど」

 

ミカはあちらはあちらで大量に事案を抱えているので協力要請が来たとジャネットに話した

確かに時空管理局犯罪捜査局は多くの事案を抱えている

今いる人員で対応するのが無理な場合は他の法執行機関に協力要請をするのはいつものことである

そうでもしなければ大きな問題になることは間違いない

 

「わかりました。早急に対応します」

 

ジャネットはそう返答すると協力要請書を持って自分のデスクに戻った

まずは目撃現場付近に設置されている街灯観測システムの監視カメラ映像で顔認証システムを使う

これで追いかける。まずは現場捜査の前にある程度の活動範囲を調べることは着手する

そうすることで犯人の行動範囲を絞り込むことが可能になってくる

より効率の良い捜査を行うことができることは間違いない

 

「あとは逃亡資金をどこに隠しているのか探さないと」

 

逃亡生活には通常の生活とは異なりかなりのお金が必要になる

クレジットカード決済などができないのだ。すべて現金での決済となる

おまけに金融機関にお金を預金するわけにもいかない

逃亡生活をするにはすべてを現金決済で行うことが求められる

だからこそ多くのお金が必要になる

 

「現金決済で泊まれる場所を調べてみましょうか」

 

クラナガン市法ではホテルに宿泊するときは写真付きIDの提示が義務付けられている

もちろん偽造IDを使って宿泊する者もいるがまともなところでは難しい

格安ホテルなどのお世辞にもホテルと呼ぶのは難しいと言われる場所になるが

犯罪者にとってはその日の宿が確保できるなら文句は言わないだろう

そのような行為はもちろん法律違反に該当するが、

お金さえもらえば満足というような格安ホテルなどはかなり存在する

ただし、ホテルの設備としてはかなり質は落ちてしまう

安いホテルなのだから当然である。最もひどいところはベッドが設置されているだけという宿もある

これは仕方がないことだ。何もチェックしないで寝れるだけでも幸せだと思うしかないのだから

もしそれでも嫌なら車で寝泊まりをしながら逃亡生活を続けるしかない

それはそれで嫌な話ではあるが

 

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西区東部 クラナガンハイウェイ8号線(西線) 西行き

 

ユウ・ミズノ捜査長官は次元世界連合本部に車で向かっていた。

彼自身が車の運転席に座って運転手をしていた。

運転手を付けるくらいならその経費を別に使うという方針だからだ

今後の旧時空管理局本局機動六課組の取り扱いに関しての最終協議に入る

これをもって当面の間は時空管理局は機動六課と距離をとることができる

次元世界連合はその間に時空管理局の内部を徹底的に改革する方針。

今度こそ汚れのない綺麗な国際組織に生まれ変わらせることが求められてるのだから

 

「それにしても時空管理局犯罪捜査局の捜査官は事件を大量に抱えて大変だね」

 

助手席には捜査長官首席補佐官のエテルナ・ジンガーがいた。彼女は1冊のファイルを見ていた。

そこにはかなり詳しい機動六課組と関係する人物の身辺調査情報が記載された報告書があった

 

「そうですね。かつてのクラナガン捜査部を思い出すくらいに。今は少しは休憩が取れますが」

 

クラナガン捜査局の前身の組織であるクラナガン捜査部時代は事件を担当する件数はかなりの数になっていた

銃や麻薬の密売はあの頃は時空管理局の影響があったので摘発が難しかった

今はあの頃に妨害工作をした関係者の捜査が行われている

ただし件数はあまりにも多いことは言うまでもない

 

「でもあの頃とは時代が違う。時空管理局に存在した闇の影響はどれくらい出てくるか?」

 

「早くけりをつけたいところですが簡単には進まないでしょう。ところで長官。今日は私が運転をと」

 

「毎日、完全警備下に置かれると自由に車の運転もできないなんてつまらない人生は嫌だからね」

 

「今は運転中なのでいじめるようなことはしませんが、戻ったら覚悟してくださいね」

 

つまりお叱りの言葉を言われることになるということだ

そんなことは日常的なので彼は別に気にするほどではない

 

「それにしてもだれが考えたんでしょう?AMFは」

 

AMF装置の開発に伴って魔導師の行動は大きく制限された

今後は質量兵器である銃火器が威力を出してくる

魔導師の魔法など意味がないようなものである

 

「真実はわからない。知らない方が幸せなことも。それに真実がすべてわかるには長い時間が必要になることも」

 

「知らない方が幸せだと?」

 

「そうは言わないけど。そういうこともある。違うかな?」

 

「ところでこの車は防弾仕様ですよね」

 

「もちろんだよ。窓もタイヤも防弾仕様。完全な装甲車。おかげで車の燃費は悪いけど」

 

防弾仕様ということは車の重量が重いということだ

燃費が悪くなるのは当然である。それでも命が守れるなら安い投資である

車は交換できるが人間はそういうわけにはいかないのだから当然である

人の命は大切に扱わなければならない。罪なき人の命なら

しかし、罪がある人の命となると、時と状況によっては仕方がないという時もあるだろう

エテルナが経済ニュースを携帯情報端末で見始めた

 

『ワンワールド保険は緊急の記者会見を開き、時空管理局債と聖王教会債のCDSの契約をすべて解除すると発表』

 

『CDS契約していた投資家はかなりの資金を失ったことは間違いありません』

 

一方で次元世界連合全加盟国の証券取引所では様々の企業の株がかなり売りに出されていた

ほとんどがワンワールドグループ企業が抱えた資産だが、破産処理のために現金化をする必要があった

そのために金融市場で売却して資金確保に動いていた。

おかげで多くの次元世界国の金融市場では取引が活発に行われている

 

『ミッドチルダ連邦準備銀行は緊急の声明を発表。政策金利を12%から14%に引き上げを決定したと』

 

この声明を受けて金融機関では今後もさらなる政策金利の引き上げがあるのではないかと、

警戒心を持って行動することが予測されますとマスコミは報道していた

ミッドチルダ連邦国内で使用される通貨ミッドは次元世界国間の国際貿易で使われる基軸通貨である

政策金利によって通貨安や通貨高になれば他の次元世界国の経済に大きな影響を与えることになる

それだけにミッドチルダ連邦準備銀行は慎重に為替市場を監視しなければならない

必要に応じて連邦政府とともに為替介入することもある

基軸通貨だけに通貨ミッドの安定は極めて重要なことである

些細な変動でさえ自国だけでなく他次元世界国の経済に大きな影響を与えることになるかもしれないのだから

慎重になるのは当然のことである。こればかりはミスが許されない完璧な仕事でなければいけないのだ

 

『連邦準備銀行が政策金利の引き上げを受けてより通貨ミッド高がさらに発生するなるかもと懸念しています』

 

『一方で国内経済の過熱を抑えるためには必要な措置であることも事実であると』

 

「連邦準備銀行は大変だね。ワンワールドグループの破産と時空管理局債と聖王教会債が紙くずになった影響で」

 

「長官。連邦政府も同じでは?」

 

「もちろんそうだけどね。経済をうまくコントロールすることは難しいことだから」

 

そう、経済というのは簡単にコントロールすることはできない

規模があまりにも大きすぎるからだ。仮にコントロールするには単独ではあまり意味がない

多くの次元世界国政府が参加した協調介入でもしない限り難しい

 

『中央本部からクルック分署へ。捜査長官が移動中。警戒されたし』

 

クルック地区は次元世界連合や新しい時空管理局本部などの様々な国際組織の本部が設置されている地区

国際政治の中心地である。それだけに警備体制は極めて厳しくなっている

些細なトラブルも即座に解決しなければいけないことは法執行機関の人間なら誰もがわかっている

 

『東分署は時空管理局機動六課基地への警戒態勢を最高レベルに引き上げを』

 

『クラナガン市内の魔力精製炉発電所施設に対して警戒態勢も最高レベルに引き上げを』

 

さらに港湾パトロール管轄州域内にある魔力精製炉発電所には港湾パトロール海兵隊が配置されている

そのため、施設の安全対策はかなり厳重である。

今はAMF装置による停電が起きても即座に対応できることは求められる

 

「本当に苦労するね。AMF装置は」

 

魔法だけを信じすぎたからこそ、魔法が使えない状況になればここまで影響が大きくなっている

被害を最小限にするためにはすぐに対応しなければいけないのだ

それができなければ安全保障に大きな問題を抱えてしまう

 

「ですが魔法だけが世界の絶対という指標をなくした。そういう意味では効果があったと考えますが」

 

「魔法至上主義がなくなったことは大きな進歩ではあるね」

 

時空管理局には魔導師の魔法至上主義という考えを持つ人間は多かった

魔法ランクを人事評価のすべてにしていたことが大きな影響だった

時空管理局では魔法ランクが高いほど簡単に出世をすることができる構造になっていた

ランクが低いものはあまり出世することはできない。そのことに対する不満を持つ者は多かった

 

「すべてが解決するには長い時間が必要だね」

 

 

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ベルカ州中央地方ベルカ市 郊外 港湾パトロールベルカ基地 基地管制センター

 

そこでは聖王教会の動きを監視していた

人工衛星や無人偵察機などを投入して何か変化がないか常時監視を行っている

すでにこの基地に配置されている港湾パトロール海兵隊はいつでも派兵できる状態だ

問題行動が確認されたら即座に出動になる。ベルカ州政府とミッドチルダ連邦政府。

さらに次元世界連合も同様に監視している。

 

「今のところは動きはないようだな」

 

ベルカ基地統合軍司令官であり基地司令官であるレパーズ・サットン大将はベルカ基地の最高責任者だ

それと同時にベルカ基地に配置されている港湾パトロール飛行隊と海兵隊の部隊活動責任者でもある

ベルカ州の安全保障を担っている。特にベルカ州中央地方ベルカ市郊外には聖王教会本部がある

それだけに常に警戒態勢のために聖王教会上空には無人偵察機が常時展開している

監視は入念に行われて少しでも奇妙な行動を起こせば、ベルカ基地の部隊も準備をする

派兵に向けての準備を。今のところは作戦立案をしているだけだが。

ベルカ基地管制センターでは様々な情報分析を行って危険な行動がないかを常時チェックしている

 

「これからの時間が大変になりそうだな。おまけにスパイのために捜査部から人員を派遣してくるとは」

 

レパーズも潜入捜査の必要性については理解している

しかし今の段階でするにはあまりにもリスクがありすぎると考えていた

もしミスをすれば死を意味する事にもなる。

そんな大きなリスクを覚悟してまで潜入捜査をするには度胸が必要がある

 

「相変わらずの無謀な任務の割り振り。今後の展開次第では大きな動きになるだろうな」

 

ベルカ州のベルカ基地とフローレンス州のイーストフローレンス基地の統合軍司令官は、

他の基地と異なり港湾パトロール飛行隊、あるいは港湾パトロール海兵隊の隊員から選出される

理由は他の基地は海辺にあるためそれぞれの基地に艦船が配備されている

しかしベルカ基地とイーストフローレンス基地の周囲には海がないので艦船は配備されていない。

だからこそ港湾パトロール飛行隊か港湾パトロール海兵隊の隊員から選出される

これが通常の決まりだが、どちらの基地もかなり重要である。

特にイーストフローレンス基地にはクラナガン捜査局の様々な研究施設が設置されている

ベルカ州には聖王教会本部があるので重要な拠点である

2つの基地は極めて重要視されている。

 

「捜査部から人員が配置されたら偽造IDが必要だな。用意するか」

 

ステラとマイアの本名で潜入させることはできない

偽造IDを用意することが求められる。リスクを回避するためには必要な措置である

それも完璧な『偽造ID』が必要だ。少しでも怪しい経歴があれば見破られることになる

 

「港湾パトロール安全保障局に依頼するか」

 

港湾パトロール安全保障局では工作員が活動するために必要な『完璧な偽造ID』を作成する専門部署がある

もちろん機密事項のランクとしてはかなり高い。発覚すると様々な潜入捜査に影響が出るからだ

扱いには慎重さが必要になる

 

『港湾本部からベルカ基地。いつでも聖王教会を落とせるように準備に入れ』

 

「ますます危険なことになりそうだな。ベルカ基地から港湾本部。警戒態勢をデフコン3にする」

 

デフコンとは防衛準備指標のことを示している。ちなみに5段階で区分されている

デフコン1は戦争状態。デフコン5は平和な状態。

今のデフコンレベルは4になっている。連邦軍も同じように対応している

すでにベルカ州の西隣と北隣の州にある連邦軍基地ではいつでも出動できる

連邦軍は海軍と海兵隊と空軍の3つの組織に分類される

今回は連邦空軍と連邦海兵隊がいつでも動けるように準備はできている

 

『ピーピーピー』

 

レパーズ・サットンの携帯電話に着信があった。発信者はカザーナ・ステージア港湾パトロール安全保障局長だ

 

「ステージア局長。何か問題でも発生したのですか?」

 

『中央本部捜査部の捜査官のIDはこちらで用意をしておくわ』

 

それも完璧の物をねとカザーナは話した

確かに港湾パトロール安全保障局長自らが陣頭指揮を執ってくれるなら感謝するべきだ

しかしそこまでする理由を探ることが求められる。何かを隠しているかもしれない

 

「なぜそこまで協力してくれるのか理由は何ですか?」

 

『私たちにとっても聖王教会内の情報は極めて貴重よ。潜入捜査をするならもっと好都合』

 

聖王教会内部の情報を得られるなら協力するという意味だ

諜報機関としても仮想敵組織の情報は何よりも貴重な物である

それが得られるなら何でも協力するということを意味している

 

「つまりそちらも情報が欲しいということですか?」

 

『そういうことよ。今は腐敗を許すわけにはいかないのだから。もしかしたらとんでもないお宝が出るかもしれないし』

 

だから全面的に協力するのよと回答した。レパーズはすぐにID作成を要請した。

迅速に行うことで速やかに内部に潜入できるように。

カザーナはもう作業に入っているわというと通話は終了した

下準備はあちらがやってくれる。こちらは潜入に必要な機材の用意である

 




機動六課組の移動の話が少しずつ見えてきたかと思いますが本格的な登場にはまだまだ時間が必要です。
もしはやてやなのはやフェイトたちの登場を待っている方はしばらくお待ちください。
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