CSI:クラナガン   作:アイバユウ

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新暦76年4月1日午後00:25

 

午後00:25 中央パトロール本部庁舎 8階捜査部資料室

 

3係主任捜査官のウルはそこである事件捜査資料を見ていた

資料室に保管されているのは捜査部が担当した事件の中で未解決のままになっている物である

ウルはある事件に興味を示していた。3年前に発生した事件である

ワンワールドバンクの支店で起きた銀行強盗だ

奪われた金額は10億ミッド。かなりの金額である。犯人は全部で5人

スキーマスクを着用していたので顔はわかっていない

犯人はわずか数分で犯行を行ってすぐに逃走した。残された証拠はほとんどない

未解決事件として処理されている

 

「死人もけが人も出ていないけど、盗まれた金額としてはかなりのもの」

 

おまけにその日は時空管理局員の給料日であることから支店にはかなりの金額のお金があった

偶然にしてはうますぎる話。内部に内通者がいることは十分考えられる

強盗事件で唯一の手掛かりは逃走に使用した車だけである

セダンタイプの車がサウスクラナガン港で発見された。

当時のマスコミは船で逃走したと報道していたが捜査部では見解が違っていた

それはただのフェイクであり、実際は市内にまだ潜伏しているのではないかと想定している

市外に出る道路と鉄道と航空機のルートはすべてつぶしたのだ

港ももちろんである。車だけ発見されたことが気になるところである

 

「もう1度照合作業をしてみようかな」

 

当時の事件捜査には時空管理局が絡んできたため、途中でこの事件の捜査権限を奪われることになった

今は再捜査ができるが何か証拠があればの話であるが

唯一の証拠となるのは支店内を記録していた監視カメラの映像だけである

スキーマスクで顔はわからないため、当時は照合することはできなかった

しかし今は顔認証システムが技術進歩によって当時より精密な照合ができるようになった

ウルは自分の執務室に戻ると当時の監視カメラ映像の分析を実行した

スキーマスクからでも確認できる目の間や口の位置などを数値化して顔認証システムで照合した

それを犯歴者のデータベースで照合をかけた。

膨大なデータがあるが中央パトロールのスーパーコンピュータで早く照合できる

 

「早く一致すればいいけど」

 

『ピッ』

 

「一致した人物がいたみたいだね。問題は正確に一致しているかどうかだけど」

 

あくまでも数値上の一致なので確率的な問題からして完全に一致しているとは限らない

問題はここからである。地道に手作業で照合作業を進めるのだ

 

「これでどうかな?」

 

照合作業を続けたが結果は不一致になった。完璧に一致はしていない。

さらに別のデータベースで照合することにした。車両免許のデータベースでの照合だ。

これならさらに範囲を広げて照合できるがこちらは数がさらに増えるので照合には時間がかかる

 

「地道に頑張るしかないね」

 

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中央区中央部 セントラル分署ラボ棟 3階レイアウトルーム

 

カリーとシグナムはサウスクラナガン港の周辺の建物のデータを確認していた

地道な作業になるので大変ではあるが行っていくしかない

 

「面白い情報はないわね」

 

2人はひたすら確認作業をしていたが今のところは全く当たりはない

何か小さな証拠でも出れば良いのだが、それもないとなると問題は今後の捜査方針である

今分析されている塗料のブランドがわかればさらに絞り込むことができる

 

『ピーピーピー』

 

『塗料のブランドがわかりました。ミッドペイント社のもので、VIPの個人顧客向けに試験的に製造されたものです』

 

つまり一般に流通している物ではない製品である

これはかなり絞り込むことができる。その塗料はミッドシップドッグに販売された

それもある個人のクルーザーを作る際の特別注文であることだった

 

「クルーザーの持ち主は?」

 

『名前はゾーイス・タンエル。54歳。退役時空管理局員でサウスクラナガン港のクルーザー停泊場が住所に』

 

つまり船で住んでいるということになる

別に珍しいことではない。船を住居にしている市民は他にも確認されている

郵便は港近くの郵便局で私書箱にしていれば受け取ることができる

サウスクラナガン港の近くに作業場として小さな小屋を持っていた

そこにいろいろと保管しているのかもしれない。

例えば爆弾の製造場所として利用できるように各種道具や部品を隠している可能性は高い

 

「あとは現場に行くしかないわね」

 

カリーは携帯電話を手にすると知り合いの判事に連絡した

令状を請求するためである。家宅捜索令状を請求することで建物内を強制捜査をするのだ

判事はすぐに令状を許可すると言ってくれた。電話を終えるとシグナムともにレイアウトルームを退室

駐車棟に移動した

 

「シグナム。大急ぎでサウスクラナガン港に向かうわよ」

 

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ベルカ州中央地方ベルカ市中央区 セントラルベルカ医療センター 伝染病治療隔離室

 

「マイア、状況はどんな感じ?」

 

「主ステラ。今のところは大きな波はありません」

 

ステラが病院に到着したが今のところは大きな変化はない

まだワクチンと抗ウィルス薬はまだ来ていないが隔離室にいる患者は大きく悪影響は出ていない

ベルカ市内でもパンデミックも起きていない

 

「このまま落ち着いてくれたらいいけど」

 

『ピーピーピー』

 

マイアの携帯電話に着信が入ってきた。

イーストフローレンス基地の統合軍司令官であるヴィーク・レイキャ大将からである

 

「レイキャ大将。天然痘の抗ウィルス薬はどれくらいで到着しますか?」

 

『すでにこちらから航空機を出した30分もあれば到着できる』

 

「素早い対応に感謝します。大至急こちらで必要ですので」

 

『こちらからも天然痘に詳しい感染症専門家の医務官を派遣している。彼らとも連携してくれ』

 

「強力な助っ人の派遣に感謝します。連携して対応します」

 

そうしてくれと言うと通話を終えた。本当に忙しいことになる。

天然痘などの感染症対応の専門家が来てくれることはありがたい

今後の市内の公衆衛生の対応に大きな助言をしてくれるはずだからだ

 

「封じ込めと隔離で被害を最小限に抑えることを最優先にするしかないわね」

 

できることはそれしかない。マスコミにはあとで報道することになる

今報道されたら大規模パニックにつながる恐れがある。恐れではなく確実にパニックになる

そんな事態は避けなければならない。すべての後始末が終了してから報道させるほうが安全である

問題なのはどこまで秘密を守ることができるかだ。いつかは漏れてくるものである

水漏れと同じで情報というのはどこかで漏れてくるものなのだから

 

「あとは時間との戦いですね」

 

「マイア。私はベルカ市警察に行ってくるわ。ここのことは任せても良いかしら?」

 

「問題ありません。こちらで何か変化がありましたらすぐに連絡を入れます」

 

ステラはマイアの言葉を受けてベルカ市警察本部に向かった

市警察ではこれ以上天然痘の広がりが収めるためにあらゆる措置を取っている

感染者の住宅は衛生上の問題があるとして隔離して洗浄処置がとられている

完全にクリアになるまでは民間人の立ち入りは禁止される。

近隣住民の人間にも衛生上の問題が出ているとして屋内待機命令が出ている

 

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クラナガン市南区北部 中央パトロール本部庁舎 8階捜査部首席捜査官執務室

 

シエルはいよいよ港湾犯罪捜査部に連絡する準備に入っていた

その前に依頼主であるアンドレア・ゲーリー大佐に連絡を入れることにした

 

「アンドレア、悪いけど港湾犯罪捜査部に協力を打診するわ」

 

こちらで対応できる範囲を超えている以上仕方がない

アンドレアもそのことはわかっている。仕方がないことを決断するにはいろいろと苦労することも多い

 

『ヒットなしですか?』

 

「ええ、私の立場だけで処理できたら良かったんだけどそうはいかないみたいなの。悪いわね」

 

『両親と連絡が取れなくなってもう何日も経過している。シエル首席捜査官には本当に感謝しているわ』

 

「私だけで対応できたら良かったんだけどごめんなさいね」

 

シエルは後は捜査部と港湾犯罪捜査部の合同捜査で見つけ出すと伝えると通話を終えた

そして港湾犯罪捜査部のトップであるブランダ・ヴァレンティア首席港湾犯罪捜査官に連絡した

 

「ブランダ、シエルだけど少し合同捜査の提案があるの」

 

『もうこちらでも把握しているわ。アンドレア・ゲーリー大佐の両親の件よね』

 

港湾犯罪捜査部を仕切っているだけあって情報はすでに回っているようだ

それならそれで好都合である。早急に見つけ出す必要があるのだから

 

『こちらでもすでに捜査を開始しているわ。内密という形をとってだけど』

 

でももう大事にしても問題ないわねと言うと両親の自宅の鑑識作業の提案が出された

こればかりはベテランに任せておきたいとのことでシエルはウルを出すことにした

機密情報に触れることを考えるとかなり機密情報に触れることができる人物が好ましい

ウルなら条件にピッタリである。今まで様々な機密情報にアクセスしてきた

今さら些細なことである

 

「それにしても中距離弾道ミサイル搭載型潜水艦の艦長の両親を誘拐したとなると政治的な動機かもしれないわね」

 

『もちろんそのあたりも考慮に入れているわ。可能性は0ではないから』

 

そうアンドレアは中距離弾道ミサイルを搭載している潜水艦の艦長である

つまり政治的な要求をするために両親が誘拐された可能性がある

もしそれが事実ならとんでもないことになることはわかりきっている

今は可能性の段階ではあるが、まったくないとは言い切れない

問題が拡大する前に対応するにはまずは今どこにいるのかを確認するかだ

 

「ウルを現場鑑識の責任者として派遣するわ。機密情報扱いの必要性もあるし」

 

『そうしてくれると助かるわ。とにかく共同で最優先で捜査をしましょう』

 

ブランダとの電話会議を終えるとシエルはウルを呼び出した

ウルはすぐにシエルの執務室に入室してきた

 

「ウル、港湾犯罪捜査部との合同捜査で捜査部側の責任者の任せるわ」

 

事件内容はあなたの携帯情報端末に送信したからそれを確認してと伝えた

ウルは内容を確認すると大きなため息をついた。

とんでもない面倒なトラブルを背負うことになったことを理解したからだ

 

「それで個人プレーをしても良いんだよね?港湾犯罪捜査部と連携を取りながらも」

 

「そのあたりはウルの裁量に任せるわ。とにかく両親の発見を最優先に」

 

「つまり、手段を択ばず最優先で取り組めってことかな」

 

「そこまでは言わないわ。ルールを守ってくれたら助かるけど」

 

了解というとウルはシエルの執務室を出ていった

これで手はずは整った。あとはどんな展開になるかである

 

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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部1係オフィススペース

 

フィリーは銀行強盗犯であるベレス・モーラスと、

機動六課組に対する攻撃を仕掛けてくるであろうデクス・マークレの到着を待っていた

中央本部に到着次第、取り調べを行うことになる

なのははフィリーの隣のデスクで鑑識に関するマニュアルを読んでいる

 

「早く来てほしいわね」

 

フィリーは簡易報告書の作成をしながらあるニュース専門報道番組を見ていた

 

『クラナガン原油価格は1バレル6500ミッドまで下落しました。さらに下落基調になる展開になりそうです』

 

『一方でクラナガン証券取引所のクラナガン平均株価は5万ミッドまで回復しています』

 

『聖王教会の問題が落ち着き基調にあることから経済指標が安定しつつあるようです』

 

「平和になれば経済は安定になる。良い基調ね」

 

『今は民営化されていますが以前は聖王教会傘下のベルカ不動産とベルカ建設の社債の利払いが難しいと表明』

 

ベルカ不動産とベルカ建設は聖王教会の関係施設の建設のために設立された会社だ

両社ともかなりの社債を発行しているがその社債の利払いができなくなると破綻するしかない

2社の社債発行金額は数千兆ミッドにもなる。

すでに社債を買い手はいないため債券市場で取引価格は紙くず同然である

多くの投資家は資金を失った。2社の社債の多くは聖王教会の関係者が購入していた

その関係者の中にはすでに自殺をしたり、自己破産をする者もあらわれている

 

「社会不安にならなければ良いけど」

 

金を失ったら人間というものは本性が見えてくる

どんな方法を使っても資金を回収しようとする

社債の購入者の中には購入した社債を担保にして、金融機関から融資を受けていたこともあった

そんな人物は融資を返済することができず、

金融機関は不良債権になったことで大きな損失を出しているところが存在する

 

「本当に困ったことも多いわね」

 

『一部の金融機関では資本増強のために新株発行を想定して動いているケースもあります』

 

『時空管理局の予算が大幅縮小されて、管轄範囲の規模も並行して大幅縮小したことで物資納入量は大幅減』

 

『そのため時空管理局との取引しかしていなかった企業は資金繰りに行き詰って破綻するケースが増えています』

 

『失業率が多くの次元世界国で上昇している問題について各国では再就職支援を行うとしています』

 

苦労するのはいつも現場であることはわかっている

 

『ピーピーピー』

 

「捜査部1係のフィリー・アクシオムです」

 

『中央本部1階受付です。面会人が来ています』

 

今日は面会の予定は入っていないのに何か気になるところだ

 

「相手は誰なの?」

 

『それがエレスコ・フォーゲルと伝えたらわかるとしか言わなくて。それに年齢も15歳で今日は学校のはずなのに』

 

サボってきているということになる。

フィリーは面会人の名前を聞いてすぐに降りるわと言った

 

「カフェテリアで軽食を出してあげておいて」

 

お金は私が払うからとフィリーは1階の受付に伝えるとなのはと一緒に1階のカフェテリアに向かった

なのはは知り合いですかと聞いてきた

 

「以前にある事件の証言を頼んだのよ。それ以来何度か会ってね」

 

その事件とはエレスコ・フォーゲルが13歳の時にあるひき逃げ事故の目撃をした。

ひき逃げ事故の目撃者として裁判でも証言してくれた勇敢な少年であった

犯人は懲役10年の判決を受けて今も刑務所に収監されている

学校をさぼってまで来たということは何か緊急事態が起きた可能性が高い

メンタルケアをするのも当然の仕事である

エレベーターで1階に降りてカフェテリアに行くとサンドイッチを食べていた

 

「エレスコ君。待たせてごめんなさいね」

 

「フィリーさん。すみません。お仕事中に」

 

彼は礼儀正しく対応した。服装もブレザータイプの中学校の制服を身に着けていた

 

「気にしないで。今は暇だから。何かあったの?」

 

「実は父親が薬物を使っているみたいなんです。自分ではどうしたらいいのかわからなくて」

 

良くある話だ。どこに相談したらよいのかわからなくて困ってしまうような話

薬物中毒者の問題はクラナガン市内だけでも大きな問題である

 

「どんな風に使っているのかわかるかな?」

 

「隠れて注射器を使っているみたいで。今日は証拠になればと思ってこれを」

 

紙袋をカバンから取り出すとフィリーに手渡してきた

フィリーはラテックスの手袋を着用すると紙袋の中を確認した

そこには注射器が5本も入っていた。ドラッグを使っている可能性は極めて高い

注射器の残留物を調べたらすぐにわかる。

これを預かるけどお父さんが薬物中毒の場合はつらい経験になることは覚悟してねと伝えるしかなかった

その言葉に覚悟はできていますと言った。

 

「僕はただ正義を果たしてほしいんです」

 

「わかったわ。学校までは車で送らせるからあとは任せて。今日はこのあたりで」

 

フィリーは近くにいたパトロール捜査官に彼を中学校まで送るように伝えた

あとはラボで分析をするだけだ

 

「もし薬物であることがわかったら父親を逮捕するんですか?」

 

なのはの質問に当然でしょと答えた

 

「なのは。私達には妥協は許されないのよ。時には非情な決断も必要なのだから」

 

とりあえず行きましょうと言うと2人はカフェテリアからラボ棟の質量化学ラボに向かった。

質量科博ラボに到着するとコティーナ・マスタングが待機していた

 

「コティーナ。悪いけどこの注射器の残留物を調べてもらえるかしら」

 

「任せて。すぐに調べるわ」

 

コティーナは紙袋を受け取るとすぐに分析を始めた

注射器から麻薬が検出されたらエレスコ君の父親を逮捕することになる

息子が親を告発する。正義感がなければできないことだ。親のことを心配していることとも言える。

真っ当な道を歩んでほしいことを願っていることがわかっている

だからこそ親の犯罪を告発しようとするものなのだ

 

「子供が告発するなんてすごい話よね」

 

「あの子は私に以前こう言ったわ。自分もいつか捜査官になりたいと」

 

正義感が強いことは間違いないとフィリーは断言した

あの子のためにも真実を明らかにすることは極めて重要である

正義というものを信じているのだから当然のことであり、期待にこたえなければならない

 

「フィリー。メタンフェタミンが検出されたわ」

 

注射器から検出されたとなるとあとは身柄を拘束して尿検査などをしなければならない

体内からも検出されたら麻薬使用の容疑で逮捕することができる

 

「引っ張ってくるしかないわね」

 

フィリーはそう言うとなのはと一緒に子供の自宅に向かうことにした

その前に令状などを受け取る必要がある

すでに注射器などの物的証拠はそろっている。令状を請求するには十分である

 

「できればこんなことはしたくないのは誰もが思っているけど仕事なのよ。なのは。親兄弟でも犯罪は犯罪よ」

 

親しき中にも犯罪は割り切って捜査をすることが求められることを十分に理解しておくことねとなのはに伝えた

 

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南区北部 クラナガンハイウェイ12号線( 外環状線 ) 時計回り路線

 

サイノスとティアナはカーチェイスに参加しようと緊急走行で大急ぎで向かっていた

 

『中央本部から各員へ。クラナガンハイウェイ8号線(西線)東行きでカーチェイスが展開中。警戒されたし』

 

「本当にまだカーチェイスをしているなんて根性があるね。逃げ切れるわけがないのに」

 

「どうしてですか?」

 

ティアナの質問にヘリからも追いかけられているのだからとサイノスは答えた

確かに上空から監視されていたら逃げることは難しい。それでも逃げるとは根性がある

 

「SA25から中央本部。現在カーチェイスに参加するために急行中。正確な位置情報を車載情報端末に送信求む」

 

『了解。直ちにそちらの車載情報端末に送信する』

 

車載情報端末に位置情報が送られてきた。

サイノスはティアナに追跡するためのルートを設定するように指示した

最速で追いかけることができるルートを調べることは極めて重要である

 

「想定到着時間まで20分以内です」

 

「もっと急ぐしかないね。そんなにのんびりしているような暇はないから」

 

できるだけ急がないとカーチェイスに参加する前に終わってしまう。

それではせっかくの楽しみがなくなってしまうのだから仕方がない

カーチェイスに参加できる機会はそれほど存在しない。訓練としては最も最適でもある

車の運転テクニックを鍛えるには十分である

 

「パーティーに遅れるわけにはいかないから早くしないと」

 

サイノスはハイウェイをかなりの速度を出して走行していた

制限速度をかなりオーバーしている。緊急走行なので問題はないがリスクはある

それでも間違いないのが鍛え抜かれたドライブテクニックだ

 

『中央本部からSA25。カーチェイス車両はまもなく12号線に入る。予測進路は12号線の時計回り路線』

 

「了解。カーチェイスの支援に入る」

 

サイノスはティアナに車載情報端末を操作して正確な位置情報を見張り続けることを指示した

 

「これ以上好き勝手できると思っていたら大間違いだよ」

 

サイノスは無線のハンドマイクでパトカーを集めるように指示した

さらに逃走進路を狭めるようにも要請を出した。のんびり追いかけるだけでは済まない

強引な手段を使ってでも止めるのだ

下手な行動をされるよりもましであることはわかっている

こちらから何らかのアクションを起こすことで停車させたほうが一般車両を巻き込まないで済むかもしれないからだ

 

「今は追いつくことを優先しないと」

 

サイノスはさらにアクセルを踏み込んだ

 

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クラナガン市サウスクラナガン港 7000t級駆逐艦(艦船形式:あきづき型護衛艦)キート

 

ラジェットとはやてとツヴァイ達を乗船させていたキートは無事にサウスクラナガン港に入港していた

ラジェットたちは港で降りると他の艦船がけん引していたプレジャーボードが停泊している場所に向かった

 

「海上の案件となると管轄権の調整に苦労しそうだな」

 

ボートが停泊している桟橋に向かいながら、ラジェットは思わず愚痴っていた

共同捜査はいつもよくある事なのだが、主導権をどちらか握るかはもめることはそれなりにある

 

「そんなに大変なんか?」

 

「少し調整に手間取るぐらいだけだ。捜査に影響はそれほど出ることはない」

 

時空管理局とは違うからなとラジェットは言った。時空管理局では縦割りだったが

クラナガン捜査局では事件管轄が広範囲にわたる場合は調整するための部門が存在する

そこが捜査の管轄権を上手く調整することで円滑な捜査を続行するのだ

 

「今頃上が調整に入っているはずだ。あとはその結果待ち次第だな」

 

誰が主導権を握るかについてはそこの審議を待つしかない

 

「ラジェット。お子様を連れてご登場か」

 

「そう絡むな。こっちも仕事だ。割り切れよ」

 

すでにプレジャーボートは港湾パトロールサウスクラナガン港分署の現場鑑識チームが調べていた

ラジェットに声をかけてきたのは港湾パトロール本部港湾犯罪捜査部2係のバネット・リバティ捜査官だ

港は彼らの管轄でもあるのだから参加するのは当然である

 

「これからは共同捜査だろ。今は敵味方じゃないんだからな」

 

「そうだな。一応わかっているつもりだ」

 

誰もが機動六課組の受け入れを賛同しているわけではない。

というかクラナガン捜査局のほとんどが受け入れを嫌っている

なぜ自分たちに貧乏くじを引かせるのだろうかと思っているのだから

迷惑なことだけを現場に押し付けて上は高みの見物。誰だって良い感じはしない

捜査部は押し付けられて可哀そうな部署だと思われるかもしれないが。実際のところはその通りである

面倒事を押し付けられていると思っている捜査官は多い

特に教導担当官にはひどいお荷物を押し付けられてと思われている

 

「それで何か出たか?」

 

「銃器がいくつか出た。今、ラボで調べている。指紋についても照合作業もな」

 

「銃器の種類は?」

 

「拳銃の他にアサルトライフルもあった。おまけに麻薬も出ている」

 

コカインだとバネット・リバティ捜査官が語った

別に珍しい話ではない。事件の裏に麻薬が絡んでいることはよくあることだ

 

「指紋がヒットした。フレイス・ハントーズとドベレス・ハウニンクスのものだ」

 

フレイス・ハントーズはクルーザーの持ち主なのだから当然だが、

その他にも複数の退役時空管理局員の指紋が出た

かなりの人数がこの船を使って逃げ出したことを示している

すでに市外に出ていったであろう

 

「追跡することは難しいな」

 

あとはFBIに管轄になるであろう。もちろんこの街に戻ってきたら捜査をして逮捕する

だがそれまではコールドケースになるかもしれない

 

「そうだな。ボートで沖合に言って貨物船を使って他の大陸か他次元世界国に逃げられたら終わりだからな」

 

どうする?とラジェットにバネットは質問した

このままではいつまでも捜査を続けるしか道がない

だからといって他にも事件は抱えているのだからある程度は選定が必要である

コールドケースにするか。それともこのまま捜査を続けるか

どちらにしても苦労することはわかっている

 

「サウスクラナガン港分署のラボを借りても良いか?」

 

「どうするつもりだ?」

 

「少し確認したいことがある」

 

ラジェットはあることを確認しようとしていた。

プレジャーボートと接触することができた貨物船があったかどうかである

それで最終判断をしようというのだ。管轄権があるのかどうかを。バネットは好きにしろと返答した。

はやてとツヴァイを連れてラジェットは分署のマルチメディアラボに向かった

マルチメディアラボで沖合の船舶情報を確認するためである

 

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南区北部サウスウエストハーディー地区1番街2丁目5番地603号室 アズレエル・バーシンの自宅

 

エルガとヴィータが到着したころにはすでに現場鑑識チームが調べていた

 

「状況はどんな感じだ?」

 

「死因は側頭部から銃弾が入ったことによるものです。銃はすぐそばに落ちていたので自殺の可能性が高いです」

 

検死官の報告にそんな単純なものではないかもしれないとして念のため入念な検死解剖を依頼した

些細な疑問が発生した場合はすぐに連絡するようにとも伝えていた

 

「本当に何を抱えて自殺をしてくれたんだろうな」

 

最近は死体の山が多すぎるとエルガは愚痴っていた

死ねばすべてなかったことにできると思っているのだから

そんなことはあり得ない。死んでしまっても真実を暴くために捜査をすることには変わりはない

真実を明らかにして小さなことでも事件を解決していくのだ

 

「線条痕の照合は最優先で行ってくれ」

 

線条痕で過去にどんな事件で使用されたのかわかれば何か大きな手掛かりになる

今後の捜査では大きな物的証拠になることは間違いない。

エルガは現場鑑識チームにそのことを伝えると了解ですと返答した

 

「これ以上、事件が大きくなることは避けたいからな」

 

すでに事件が何件も重なっている。すべてを把握するのはかなり苦労するのだから

山小屋の事件にこの遺体の人物がどのように関係しているのか

そのあたりが極めて重大な関心事項である

 

「ヴィータ。現場の写真撮影を頼む」

 

できるだけ多くの写真を撮影しておいてくれと指示した

現場写真は多いほうが良い。あとで再現する時に写真というものは物的証拠になるからだ

現場はいつまでも保全できものではない。

できる限りの保全は行うが、鑑識作業が終わるとほとんどの事件で現場は清掃されて新たな賃貸物件になる

そうなれば事件検証の時は現場を記録した写真などが大きな力を発揮する

 

「とりあえずゆっくりと解決していくしかないな。焦っても仕方がない」

 

エルガはそう言うとこの部屋で鑑識作業を進めてラボで分析を行うしか今は道はないと考えていた

 

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