CSI:クラナガン   作:アイバユウ

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新暦76年4月1日午後00:35

 

午後00:35 中央パトロール本部庁舎 8階捜査部3係主任捜査官執務室

 

ウルはそこで街灯観測システムの監視カメラ映像を改めてチェックしていた

主にアンドレア・ゲーリー大佐の両親の自宅周辺の監視カメラ映像を確認していた

何か事件解決の糸口になるヒントがあるのではないかと必死になって探していたのだ

 

「何も手掛かりがないというのは疑問だね」

 

監視カメラに何も映っていない。

念のため港湾パトロール安全保障局が監視カメラの映像に改ざんがないか調べてもらっている

魔法を使われたのではないかと疑ったが魔力波長は探知されていない

つまり魔導師の仕業ではないという可能性は濃厚である

 

「どこいるのか」

 

ウルはそんなことを呟きながら報道番組をチェックしていた

 

『クラナガン原油先物価格が聖王教会の安定化につながると報道されてから大きく下落』

 

『今後の原油高は収束すると見られ、石油製品であるガソリン価格も大きく下がることが期待されます』

 

今は原油先物価格の影響でガソリン価格が以前に比べると高値で推移している

それが収束すれば大きく安定した価格で供給されてクラナガン市民も安堵するだろう

話は戻るがいまだに犯行声明は出されていない。

政治的要求があるならどこかのマスコミに挑戦状が送られているはず

それも確認されていないとなるとおかしなことばかりである

単なる誘拐事件ではなく、裏に何か隠されている可能性は極めて高い

 

「本当に何も要求してこない誘拐なんて存在しないはず。一体何があったんだ?」

 

『ピーピーピー』

 

ウルの携帯電話に着信が入ってきた

 

「ウル・ミズノ」

 

『港湾犯罪捜査部です。先ほどノースクラナガン港で男女の遺体が発見されました。指紋から捜索対象者と確認』

 

最悪の結末を迎えてしまった。

ウルの執務机にある情報端末に関連データが送信されてきた

そこには間違いなくアンドレア・ゲーリー大佐の両親であることが確認されたことを示す情報があった

誘拐どころかとっくに殺害されていた。できることなら避けたかった終わりだが問題はこれからだ

死亡した以上、殺人で捜査を進めるしかない。

 

『ブランダ・ヴァレンティア首席港湾犯罪捜査官は鑑識作業を進めるとのことです』

 

「こちらも僕が現場に向かうよ。遺体が発見されたのはノースクラナガン港のどのあたりかな?」

 

遺体が発見された場所はノースクラナガン港の第9埠頭であるとのことだ

そこに止めていたセダン車両の車の後部トランクから発見されたとのことだ

 

「どうやって殺されたのか報告できる?」

 

『検死官によると後頭部に穴が開いていると。おそらく銃撃の可能性が高いとのことです』

 

詳細に関しては検死をしてみなければわかりませんと。

ノースクラナガン港分署のラボで検死を行うとのことだ

ならばウルもノースクラナガン港分署に向かう必要がある

この事件が何かの始まりの可能性は十分にある。単発で終わるとは思えないからだ。

もしかしたらこれは序章に過ぎないかもしれない。さらなる大きなことにつながっていくかもしれない

 

「あとはノースクラナガン港分署で話を聞くよ。それじゃ」

 

ウルは捜査キッドを持つとすぐに屋上へリポートに向かった

すぐに現場に向かうにはヘリが最も有効な手段である

 

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東区東部 上空1200m ヘリ

 

ラジェットたちは港湾本部基地に向かっていた

すでに港湾本部飛行場ではF/A-18Fがスタンバイされている

戦闘機で空母に向かって直接拿捕に参加しようというのだ

 

「本当に戦闘機に乗るんですか?」

 

「俺は戦闘機運用資格を持っている。問題はない」

 

「捜査官なのに戦闘機の運用資格を持っているんですか?」

 

「港湾パトロールで訓練を受けていた期間があったからな。その時にいろいろと資格を得たんだ」

 

ラジェットは携帯情報端末を操作しながらはやてと話をしていた

彼は空母ワルキューレの現在位置と拿捕を依頼した貨物船の位置関係を確認していた

すでに戦闘機が空母から発艦していた

 

「俺達の基本給は安月給だからな。いろいろと資格を得ることで手当てがついてくる。それで何とか生活している」

 

ちなみに中央パトロールに所属している者は市内にクラナガン捜査局が所有しているマンション、

そこに住むことができる。もちろん家賃や光熱費なども必要ない

だからこそ基本給が安くても生活が成り立っているのだ

 

「戦闘機でのドッグファイトは自信があるから心配するな」

 

「本当に大丈夫なんですか?」

 

「心配するな。港湾パトロール管轄区域でトラブル発生確率は低い」

 

港湾パトロールがクラナガン市や近隣州などの軍事管轄区域をすべて掌握してからは海賊なども大幅に減少

かつては数多くいた密輸船や密漁船はほとんど現れることはなくなった

港湾パトロール艦隊の艦船が数多く海洋監視をしている。

さらに港湾パトロール飛行隊からは早期警戒管制機や戦闘機などの航空機が上空から監視を行っている

 

『港湾本部から各員へ。クラナガン市内の港湾関連施設の警戒態勢を強化せよ』

 

「戦争でも始まることにならなければいいんだが」

 

もし貨物船の拿捕に手間取ってしまうと戦闘になるかもしれない

貨物船が武装していた場合は危険な戦闘になるかもしれない

そんな事態になるのは避けたいところだが、

現実は簡単に進まないことはラジェット自身がよく理解している

現実というのは非情なものであるからだ

 

「はやて。念のために言っておくが空母に到着したら俺から離れるな」

 

空母はかなり複雑な構造になっているから迷子になるからと警告した

空母の構造はかなり複雑で乗組員ですら迷うことがあるとも言われている

だからこそ離れられると迷惑なのである

 

「わかったわ」

 

「はいです」

 

「良い返事だ」

 

はやてとツヴァイの返事を聞いて安心した

本当にこれからはどうなるかはわからない

 

「戦場にならなければいいんだがな。本当に」

 

ラジェットは口には出さなかったが戦場では命は簡単になくなってしまう

だからこそ戦場は恐ろしいのだ

 

「トラブルが起きることなく拿捕できればいいが」

 

貨物船が協力的である可能性は低い。

仮にも密航者を乗せているのだ。その事実をこちらが知っていることを理解していれば逃げるだろう

もっとも素人相手にこちらの本物の軍人となるとこちらの方が分がある

大型貨物船の拿捕は簡単なことではない。どんな武装をしているかわからないからだ。

密航者を受け入れるくらいならそれなりの武装をしている可能性が高い

 

『ノースクラナガン堰水力発電所とクラナガン堰水力発電所のすべての発電機を稼働させて運用する』

 

2つの水力発電所の最大出力は合計すると4000万kwにもなる。

普段は1つの水力発電所では半分の出力で運用している

しかし今回は全力運用に切り替えることにしたのだ

クラナガン市の市政府行政機関施設や市内の連邦行政機関施設の電力源として独立回線となっている

水力発電所であることから電力の安定供給ができる。それも火力発電などと違って燃料代が必要ではない

何せ水さえあれば発電することができるのだから。

ここで発電された電力や交通設備や通信設備の維持だけでなく、

市内の必要最低限のライフライン設備運用に利用される

 

「何か問題が発生したのか?」

 

「どういうことや?」

 

はやても無線連絡を聞いていたので質問をしてきた

 

「2つの堰水力発電所はクラナガン市にとっては最も重要な発電所の1つだ。市内の主要ライフラインの維持に回されているんだからな」

 

「そうなんか」

 

「だからこそ、あの発電所の警備は港湾パトロール海兵隊が担当している」

 

ちなみにクラナガン自然保護区にも重要な発電所が存在している

自然保護区内には地熱発電所が存在しているのだ。

こちらも水力発電と同じで燃料は必要にならないので重要な発電所となっている

地熱発電所は3か所あり、最大出力1億2000万kwになる。

この電力も水力発電と同じで市内の主要ライフラインの維持に回されている

こちらの発電所の警備も港湾パトロール海兵隊が行っている

 

「とにかくクラナガン市内には貴重な電源であることは間違いない」

 

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中央区中央部セントラル地区2番街 ホワイトハウス(大統領府) 大統領執務室

 

「聖王教会の問題は今のところは順調に解決に向かっているようね」

 

アンナ・ランシング連邦大統領は国家安全保障問題担当大統領補佐官のマディソン・ビュローから報告を受けていた

聖王教会の本部があるのはミッドチルダ連邦国内なのだから大変である

上手く国際外交バランスを保つことが求められる

 

「今回の査察では問題は出なかったというだけかもしれませんが」

 

「だけど、聖王教会の財務状況を改善するために不動産物件の売却も認可を受けたから少しは金融市場に安定につながるかもしれないわ」

 

それは誰もが思っていることだ。

今のミッドチルダ連邦国内の金融市場が大きく揺さぶられることは避けたいところである

 

「金融市場は安定化しつつあります。今後は良い方向で流れる方向に進む可能性はかなり高いです」

 

クラナガン証券取引所や商品取引所での原油先物価格は大きく下落している

連動する形でガソリン価格も大きく下落してくるだろう。少し時間はかかるだろうが

 

「次元世界連合常任理事国として次元世界国の安定化のためにあらゆる外交政策を実行するしかないわね」

 

「大統領。リスクのない政策など存在しません」

 

マディソンの言う通りだ。政策というのは必ずどこかにリスクがつきものである

何もリスクがない政策というものは存在しない。1つを優遇すれば1つを蹴落とすようなことになるのだから

 

「マディソン。問題なのは時空管理局の後始末ね。当分の間は厳しい監査をかけるしかないけど」

 

「当然の判断です。我が国内にも多くの時空管理局の地上基地が存在しています。厳しい監査は当然必要です」

 

フローレンス州にある時空管理局の地上基地はそれなりの規模を持っている

以前はクラナガン市や近隣州には数多くの時空管理局の基地が存在したが、

治安機能が警察機構に、救急消防権限が地元の消防署などに移管されてからはほとんどすべてが閉鎖された

クラナガン市と近隣州で時空管理局の基地があるのはフローレンス州だけである

そのため以前よりも少し規模が大きくなった。

ちなみに国内全域で比較した場合、国内の9割の地上基地は閉鎖された

多くの権限は地元政府の行政機関に返還されている

 

「国内すべての警察機能はクラナガン捜査局が教導官を派遣してくれていますので問題はありません」

 

「連邦軍の方はどうなのかしら?」

 

「それに関しても海軍・海兵隊・空軍に港湾パトロール各部隊から教導官が派遣されているので問題ありません」

 

「アレストル・ハンパース統合参謀本部議長からの報告書が上がっているけど問題はないわね」

 

アレストル・ハンパース統合参謀本部議長は以前は港湾パトロール海兵隊で統合軍司令官をしていた経歴を持つ

部隊運用に関してはプロフェッショナルといっても過言ではない。大統領の軍事政策をサポートしている

 

「今の国際政治は苦労することばかりね。こっちは時空管理局本部と聖王教会本部を抱えている」

 

「大統領の言いたいことはわかります。面倒な拠点が多すぎる。違いますか?」

 

「さすがはマディソンね。よくわかっているわ」

 

2人はその後も安全保障にかかわる会議を続けた

 

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南区北部 中央パトロール本部庁舎 10階捜査長官執務室

 

ユウ・ミズノ捜査長官は聖王教会の査察が無事に終了した報道を受けてとりあえず安堵していた

問題はこれからの聖王教会の不動産物件の売却でどれくらい聖王教会が資金を確保できるかだ

誰だって買い叩こうと待っていることを彼らはわかっていないだろう

 

「聖王教会の財務状況については常に監視をしておいて」

 

その言葉に首席補佐官であるエテルナ・ジンガーはもちろんですと回答した

室内にはイーサ・フィヨルクラナガン捜査局安全保障問題補佐官やグレーヴェ・シェトラン情報補佐官がいた

 

「イーサ。市内の聖王教会の不動産物件の評価額はどれくらいになるかな?」

 

「最低価格で見積もって50兆ミッドほどになると思われます。しかし売れない物件もあるので難しいです」

 

さらに情報補佐官であるグレーヴェもある意見を発言した

 

「仮に聖王教会が保有する不動産の売却に成功しても一時の時間稼ぎだけです」

 

根本的な問題解決にはつながりませんと意見具申した

確かに彼の言う通りである。今後の財務状況も厳しいものが続く

今は良くても後々影響を受けるのは間違いない

来年の財務状況が悪化することは金融市場の多くの関係者は理解している

寄付などの収入が不足するからといって再び聖王教会債を発行しても、

高い金利を付けないと買ってくれる投資家はいないだろう

 

「聖王教会の財務状況は引き続き監視を続けます」

 

「次は何を仕掛けてくるかわからないから特に念入りに監視を強化して」

 

「了解です」

 

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南区北部ビューロー地区1番街3丁目 クラナガン市政府第3合同庁舎 市長執務室

 

「クラナガン原油先物価格が大きく値下がりましたが、しばらくはガソリン価格は高値で推移します」

 

サンディ・マウント市長の首席補佐官をしているクロウ・フォードの報告に頭を痛めていた

ガソリンだけでなくナフサなど石油製品のすべての値段が上がる

一時的な要因ではあるが、それでも問題なのは一時的とはいえ物価が上がるということだ

これはこれで大きな問題である。すでに備蓄原油の放出などの政策を行っている

しかし実際に市民が以前の価格までに戻ったと感じるまでには時間が必要である

 

「苦労させられるわね。原油価格の高騰には」

 

市長であるサンディは大きなため息をついた。

すでにガソリン価格が一時的に上昇基調にあることが問題なのだ

上昇するのはすぐ出るが、価格が下がるには多くの時間が必要になってくる

 

「ガソリンや軽油などの燃料については補助金を出す方向で議案が出せないか市議会と掛け合うしかないかしら」

 

クラナガン市の財政状況は極めて良好である

かなりの黒字であり、財務基金としてかなりの貯蓄を持っている

だからこそ補助金を出すこと自体に問題はない。

しかし簡単に補助金を出していたら財政状況に危険になるかもしれない

それだけに慎重な対応が必要なのである

 

「市民は自動車燃料価格の高騰を受けて、すぐにでも対応してほしいとの要望が出ています」

 

クロウ・フォードは速やかに市民に与える最小限にするべきですと回答した

今の自動車燃料はレギュラーガソリンで1リットルで190円台まで上昇している

JS事件前までは100円台であったことを考えれば実質的には2倍になっている

補助金を出して自動車燃料価格を引き下げなければ市内の物価が大きく高騰することは間違いない

運送業界に燃料価格は大きな負担になるからである

 

「補助金を出すとするなら市議会に法案を出すしかないわね」

 

サンディ・マウント市長はイオスコ・マコーム財務長官とイザベラ・アントリム商務長官を呼ぶように指示した

 

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東区東部 上空1000m UH-60

 

カリーとシグナムは出頭してきたゾーイス・タンエルに関する情報を確認していた

今のところは爆弾製造に関しては認めているとのことを報告を受けていた

しかし銀行強盗に関しては認めていない。船の捜索も行ったが盗まれた紙幣の発見もなかった

ただの爆弾製造を請け負っただけの可能性は極めて高いとのことだ

問題は誰からその仕事を引き受けたかだ

 

「サウスクラナガン港分署の取り調べに対しては郵送で仕事を引き受けたと証言しているみたいね」

 

爆弾を荷物で送るとはかなりリスクのある方法だが、身元を明かしたくないということなら最適な方法である

よほど依頼主は素性を明らかにしたくないのだろう

 

「爆弾を荷物配達で送ることなどあるのか?」

 

「シグナム。絶対にないとは言い切れないわ。少数ながらもある話だから」

 

「だがリスクがあるだろ」

 

そう、郵送先でおおよその住所がわかってしまう欠点がある

だがすぐ引き払えば追跡される心配はない。

いつ頃製造を依頼されたかなどの詳細情報がわかれば大きく捜査が進むことは間違いない

 

「それにしてもわざわざ自ら分署に来るとは。何か狙いがあるのかもしれないわね」

 

詳しくは調べてみないとわからないけど、今は問題を最優先にして対応しなければならないことは間違いない

 

「爆弾を製造しただけの犯人なんているのか?」

 

「爆弾屋はそういうものよ。彼らにとっては麻薬密売人と同じで爆弾製造を生業にしている犯罪者は多いわ」

 

爆弾を作ればもうかるから特にねとカリーはシグナムに話した

確かに爆弾を簡単に製造できる人間はいない。あれは爆弾の専門家だからこそできる生業だ

そうでなければ自ら製造した爆弾で自爆することになる

安全対策を何度もしなければ命がいつ亡くなるかわからない内容なのだ

スリルはあるが報酬もそれなりに良い。

生業にしている人物にしてみれば麻薬や銃火器の密売よりも儲かる

 

「酷い話だけどそういうことを生業にしている犯罪者も存在するのよ」

 

カリーとシグナムは情報収集を続けながらサウスクラナガン港分署にヘリで向かていた

 

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