CSI:クラナガン   作:アイバユウ

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新暦76年4月1日午後00:45

午後00:45 中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム

 

「ラジェット。よく港湾パトロールが許可したわね」

 

『コネを利用すれば何とかなるものだ。そっちでは何か情報をつかんでいるのか?』

 

シエルはラジェットと通信をしていた

彼女自身も驚いている。港湾パトロールが許可したことに。

通常ではありえないことだからだ

 

『とにかく空母が拿捕してくれるはずの貨物船について情報が知りたい』

 

「コンテナ船でセントラルミッドチルダ大陸に向かう船。船の持ち主はサウスミッドチルダシップラインよ」

 

サウスミッドチルダシップラインは大小さまざまの合わせて1万隻の船舶を保有している

基本的には石油タンカーやコンテナ船などの貨物船の運用をしている

 

「貨物船の乗組員の記録を調べたわ」

 

『何か不審人物がいたのか?』

 

「いえ。不審人物は該当しなかったわ。残念だけどね」

 

『それはついてないな。連邦判事に掛け合って船舶の確保を認めさせてもらえないか?』

 

もし拿捕が完了した時にクラナガン市の領域を出ていたら面倒になる

そこで連邦裁判所に掛け合って強制差し押さえ令状が必要だった

そんなことはシエルはすでに分かっていたので手配は完了していた

 

「もう手配済みよ。いつでも拿捕できるわ」

 

『感謝する。俺の携帯情報端末にデータを送ってくれ』

 

「港湾パトロールにも送っているわ。すべて問題はないから心配しないで」

 

『了解した。さすがはシエル首席捜査官だ』

 

ほめても何も出ないわというと通信は終了した

シエルはレーダー情報の監視を強化していた

 

「ギブリ。何か問題が出たらすぐに呼び出して。私は少し休むわ」

 

「了解」

 

シエルはそう言うと捜査部オペレーションルームを退室した

そして仮眠室に向かうとそこで休息をとることにした

休む暇がないほど今日は忙しい。まだまだ本番はこれからなのだから球速は必要である

少しは体力を温存しておかないと今後に大きく影響することは間違いないと彼女は考えていた

 

「本当に疲れるわ」

 

シエルはすぐに仮眠に入った

 

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東区東部サウスクラナガン港 沖合50Km F/A-18F(ノスリ7) 高度8000m

 

ラジェットが操縦するF/A-18Fは順調に空母ワルキューレに向かっていた

 

「快適な空の旅になればいいがな」

 

「快適じゃないときがあるんですか?」

 

「こっちは武装をしている意味を考えてみろ。対艦ミサイルに対空ミサイルを搭載しているんだ」

 

攻撃された時に備えていることがまるわかりだろとラジェットははやてに答えた

確かにその通りだ。安全が担保されていたらこんな武装はいらない

万が一に備えてこれだけの武装をしているのだ。最悪の大惨事に備えて

 

「本当に悲劇が起きることがあると?」

 

「はやて。本番はこれからだ。空にいればいろいろと問題は生じるものだ」

 

ラジェットはいつでもアクロバット飛行ができるようにサイドスティック型の操縦桿に手をかけている

火器管制システムもオンにしているのでミサイルも発射できる

 

「嫌な問題ばかりが出てくるわけだな」

 

ラジェットはコックピットにある情報端末を操作してレーダー情報を確認していた

何か問題のあるものが接近していないか入念に警戒していた

 

「何もなければいいがそんなことはまずないからな」

 

『ビー!ビー!ビー!』

 

「レーダーロックされたか」

 

ラジェットは一気にサイドスティック型の操縦桿を操作して機体を急降下させた

同時にミサイル防衛のためのフレアの用意も開始した

 

「いったい何が?!」

 

「歓迎してくれているみたいだな」

 

まだコックピットでは警報音が鳴り続けている。

レーダーロックされていることを示しているがミサイルの影は確認されていない

つまりこれは演習であることを示している可能性が高いことを示していることを理解していた

 

「そろそろかくれんぼやめないか?」

 

ラジェットは訓練用の交信で利用する無線周波数で呼びかけたところ、すぐに反応があった

 

『さすがはラジェットだな。バレバレか』

 

高度5000mまで降下したところで急降下をやめて再び高度8000mまで少しずつ上昇しながら、

ラジェットはある人物と無線のやり取りをしていた。するとレーダーロックの警報音が停止した

同時にラジェットが操縦するノスリ7の右隣りに新たな戦闘機が現れた

 

「フルトン・ミーヴァトン大佐。FRX-00の性能を見せつけられたらこちらは負ける」

 

港湾パトロールが独自に開発したことから『FRX-00』(モデル:戦闘妖精雪風に登場した機体)と呼ばれている

かなりの高性能で高度な機体運用が可能である。

フルトン・ミーヴァトン大佐はFRX-00の機体開発でテストパイロットをしていた

つまりFRX-00について操縦面ではプロフェッショナルということになる

事実彼は港湾パトロール飛行隊第1航空軍第102教導飛行隊の隊長をしている

ラジェットも鍛えられた経験がある

 

『エスコートを依頼された。ワルキューレまで航空支援をする』

 

「頼もしい応援だ。感謝します。隊長。こちらも攻撃を受けたら自衛権を行使する」

 

『それについてはこちらも同じだ。そのためのミサイルが搭載されている。その力をよく理解しているだろ』

 

「火器管制システムはすでに立ち上げている。こちらはいつでもミサイルを発射できる状態で対応中」

 

『備えは万全だな。空母ワルキューレからも護衛のために戦闘機が発艦している。今のところ問題はない』

 

最高の歓迎ぶりだがそれだけが理由ではないことをラジェットはすでに理解していた

問題を抱えているからこそのエスコートがついているのだから

 

「嬉しい限りの歓迎っぶりだな。戦闘機1機にこれだけのエスコートがつくとは」

 

『警戒しているの間違いだろ。お前の相棒のことをな』

 

「そんなことは言われてなくてもわかっている。手荒い歓迎が待っていることは特にな」

 

ラジェットはそう言うとレーダー情報を監視しながらも安定飛行を続けた

 

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東区西部 高度1500m UH‐60

 

ウルはノースクラナガン港分署に向かっていた

すでにマナサリ・グースルの捜査指令は出ている

逃走に使用していると思われる車についても発見次第、追跡命令が出されている

包囲網は完成しつつあるが、どこで抜けられるかわからないので警戒を厳重にしている

さらに空港を利用されると面倒なので空港パトロール本部にも連絡している

空港パトロールは市内にある空港敷地内を管轄区域としている

本土の沿岸には大規模空港であるノースクラナガン空港・セントラルクラナガン空港・サウスクラナガン空港がある

3つの空港は24時間常に運用されている。つまり眠らない空港とも言える

一方で西区にある中規模空港に該当するウエストクラナガン空港は周辺には町があるので運用時間は制限がある。

その他に沖合の島々の空港敷地内も管轄エリアとなっている

それらすべての空港パトロールの分署にも警戒情報が流れている

 

「逃走方法はかなり絞り込んでいるから、すぐに見つかると良いけど」

 

『中央本部からSA03。応答せよ』

 

「こちらSA03。何かあったのかな?」

 

『捜査指令を出していた車が発見されました。場所は東区東部ノースクラナガン貨物ターミナルです』

 

ノースクラナガン貨物ターミナル。敷地面積は南北5km×東西2kmの大きさになる

かなりの数の貨物列車が出入りしている。貨車に乗り込んで逃避行とでもするつもりなのかもしれない

 

「すぐにそちらに向かう」

 

ウルはヘリパイロットに行先変更を伝える。

ノースクラナガン港分署からノースクラナガン貨物ターミナルに行先が変わった

 

「ノースクラナガン貨物ターミナルから貨車に勝手に乗り込んで逃げられていたらもういないかもしれないね」

 

彼はすぐに貨物ターミナル内に設置されている監視カメラ映像に顔認証システムで照合をかけた

今は最優先で取り組む内容である。

 

「それにしても貨車に乗って逃走されたらもう終わりだね」

 

ノースクラナガン貨物ターミナルには1日で何百本もの列車が、

クラナガン市から様々な場所に向かって貨物を運んでいく

すべてを捜査することは現実的ではないが、ターミナル内には様々な場所に監視カメラが設置されている

密輸や密行などに対応するためである。その映像の量は膨大だが調べる価値はある

 

「早く調べて見つけ出さないと」

 

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東区東部 港湾パトロールサウスクラナガン港分署庁舎 3階刑事課オフィススペース

 

カリーは聞き出した携帯電話の番号から位置を探ろうとしていた

GPS追跡装置が取り付けられているなら携帯電話の電源さえ入っていればいつでも追跡ができるはずだ

すでに裁判所から情報開示令状は出ている。

簡単にアクセスできるはずだが、もしも起爆したらいけないので慎重に対応していた

 

「慎重にアクセスすることにしましょう。上手くいけばいいけど」

 

カリーは本当に慎重に携帯電話の衛星測位システムによる位置計測を行った

結果は意外なところに向かっていた。西区にある時空管理局本部の方向に向かっていた

すべての元凶とは自分たちを大量リストラされた時空管理局本部への復讐をするつもりなのだろう

 

「自爆するつもりかもしれないわね。どこかで止めないと」

 

今はクラナガンハイウェイ14号線( 大外環状線 )時計回り路線を走行している車に爆弾が積み込まれている

街灯観測システムで撮影された映像から運転手の車をだれが運転しているかを調べようとした

 

「一致すればいいけど」

 

顔認証システムで照合した結果、ガレス・ファーミルと一致した

あとは追跡するだけだが。今から車で向かっても間に合わないだろう

捜査指令を出して大至急止めるしか方法はない。幸運な事に運転席以外には誰も乗り込んでいない

止めるなら今がチャンスだ

 

「SA31から中央本部。車両ナンバークラナガンサウスSWA-1033の車を緊急停止させろ。ただし爆弾には気を付けろ」

 

『こちら中央本部。すぐに手配をかける。爆弾処理チームも派遣する』

 

すぐに止めることができればいいが相手は爆弾を持っているのだ

簡単につかまるほど甘い奴ではないだろう。

かなり抵抗することも考えられるし自爆する可能性も否定できない

とにかく最悪の状況を想定して対応するしか道はない

 

「この仕事をしていると嫌になるわね。人を信じることができないから」

 

「そんなに人を信じることができなくなるのか」

 

「シグナム。信用できるのは自分だけっていう場面はかなり多いわ。時には身内にさえ嘘をつかないといけない時がある」

 

それもまた事実だ。

大切な仲間であっても身内であっても嘘をつくことが求められる場面が存在する

仕方がない事なのだ。あとで謝罪するしかない道を選ばなければならない時もある

それが捜査というものである。

 

「つらい捜査なんて私達にとっては日常的だけど。できれば嫌な仕事は避けておきたいけど現実は待ってくれない」

 

「酷い話だな」

 

「まだこれは可愛いほうよ」

 

とにかく今は車両を追跡しましょうと言うとカリーとシグナムは車に向かった

追跡するためである

 

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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部1係オフィススペース

 

エルガとヴィータは3年前の銃器押収記録について調べていた

とりあえず報告書を閲覧していた。当時の記録によると100以上の拳銃やアサルトライフルを押収して処分した

しかし現実は違っていた。横流しされていたということになる

これこそ最悪の結末である。どうやって対応するべきか

捜査と押収を担当したのは当時の時空管理局地上本部首都防衛隊である

ブラックマーケットで売りさばけばかなりの良い金銭の収入になっただろう

横流しが当たり前になっていたことを考えると珍しい話ではないが

 

「それにしても100以上の銃火器を押収して横流しとは、法執行機関の機能がまるでなっていない」

 

だらしないにもほどがあるなとエルガは愚痴った

確かに彼の言う通りである。問題行動がありすぎる

 

「ヴィータ。時空管理局の闇を見て感想を聞かせてくれ」

 

「あたしたちは正義のためにやっていたのに裏切る奴がいるなんて」

 

「そうだな。最悪の結果になる」

 

銃火器を100丁すべて横流しされていたらとんでもないことになる

すでに1丁の流出は確認されている。ほかにもあるかもしれない

当時の記録をいろいろと調べているとある共通点があった

銃器の補完と処分を担当した人物が同一人物である。

名前はカラスト・リーグス。今はクラナガン市内の拘置所に収監されている

別の事件で保管中だった大量の麻薬を横流しをした容疑だ

末端価格で数億ミッドのコカインを横流ししたとされている

 

「証拠の横流しは日常的に行われていたら最悪だな」

 

事実、時空管理局犯罪捜査局が捜査している事案で、押収品の横流しで疑われているケースはかなり存在する

そのため時空管理局犯罪捜査局はあまりの件数が多すぎて対応が後手に回っているというのが現実である

できれば早期解決を目指しているが、数が多く。

それだけでなく関係者もかなりの人数になっているので、摘発にはかなり苦労している

 

「酷い話だな」

 

時空管理局犯罪捜査局が把握しているだけでも何千件もの横流し件数が確認されている

すべての捜査が完了するには何年もの時間が必要になることは間違いない

もちろんこれらの捜査には各国の警察などの法執行機関との連携が極めて重要になる

クラナガン捜査局も大きく関与してくることは間違いない。今回の事案が良い例である

 

「とにかく時空管理局犯罪捜査局に連絡するしかないな」

 

証拠が漏れている情報を連絡しなければならない

彼らがこのことを知ったとしてもすぐに対応することはできないだろう

すでに彼らは数多くの案件を抱えているのだから当然である

だからといって何もしないという話は無理である

エルガはすぐに時空管理局犯罪捜査局の友人の捜査官に連絡した

あちらはすぐに対応するというと通話を終えた

 

「あとはこちらでも記録を調べるしかないな」

 

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東区中央部 東分署ラボ棟 3階レイアウトルーム

 

アルシオーネは回収された証拠や資料を見ながら今後の捜査方針を検討していた

今は完全に詰んでいる状況である。何か良い方法がないか検討していた

爆弾を作っていた人物は検死ラボで死体となっている。

回収された爆弾に付着していた指紋に製造者のものしか確認されなかった

 

「どうしたらいいかしら」

 

彼女は本当に悩んでいた。今後はどのように捜査をするかだ

間違った捜査方針を立ててしまうと捜査は闇の中に進むだけである

そういったコースを取る事は許されない。だからこそ方針決定は極めて重要である

考えていた時あることに気が付いた。爆弾予告をしてきた音声分析をしてみることにしたのだ

東分署のマルチメディアラボに連絡してすぐに分析をするように手配をかけた

 

「大至急爆弾予告の音声を詳細に分析して」

 

するとすでに分析を行っているとのことだ

それはそれで好都合である。できるだけ早く結果を知るために最優先で取り組んでもらうように手配をかけた

 

『すでに行っています。今は声紋のデータベースで照合作業をかけていますので結果が出ればすぐに報告を』

 

「ありがとう。結果を期待しているわ」

 

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