午後00:55 サウスクラナガン港 沖合90Km地点 空母ワルキューレ [ 形式:ジェラルド・R・フォード級航空母艦]
ラジェットたちは無事に空母ワルキューレに着艦。
F/A-18Fから降りると対Gスーツを脱いで艦内を移動していた
「状況はどうなっている?」
「貨物船は微速前進で針路90度を取って航行中。我々は後方から追尾を。貨物船の周囲には哨戒ヘリが2機展開中」
ラジェットの質問にワルキューレの副長が回答した。今は艦橋に向かっている
本来であればラジェットも貨物船に乗り込みたいが犯人2人を刺激するわけにはいかないので
空母から状況観察に変更したのだ。自爆されて貨物船が沈没するようなことになれば大損害になる
今は刺激しないほうが安全であると考えるのは当然である。
「それにしても何とかしないとな」
「換気ダクトから催涙ガスを入れられないか検討中です」
催涙ガスで行動不能の状況に陥った時に強行突入するという案だが、
かなりリスクがあることは誰が見てもわかっている。
それでも何もしないよりも対応できるなら実行したほうが良いかもしれない
しかしラジェットはその方針を反対した
「強引に事を進めないでくれ。催涙ガスでもリスクはあるからな」
催涙ガスをきっかけに爆弾で自爆するかもしれない
できればこれは最後の手段にするべきである
「わかっていますが何もしないわけにはいきません。違いますか?」
「それはそうだが」
「とにかく事態収拾のために最善を尽くします」
「それはうれしいことだ」
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東区東部ノースクラナガン貨物ターミナル 駐車場
ウルはそこに止めてくれている車の鑑識作業を行っていた
マナサリ・グースルの指紋が様々な場所に付着していた
「これで決定的。貨物列車に乗って逃走中であることは間違いないね」
「問題は貨物列車の貨車はかなり多いことです。すべてを調べるにはかなり苦労します」
ノースクラナガン貨物ターミナルパトロール事務所のパトロール捜査官の言うことは正論だ
貨物ターミナルには多くの貨車がある。乗り換えられたら捜索するのは極めて困難になる
できるだけ素早く確実にチェックしていく必要がる。ミスは許されない
それでも何とかしてもらうしかないのが現実的な話である
粘り強い捜査をしなければならない。手抜きをすればいづれは犯人の逃亡を許してしまって未解決事件になる
未解決事件にすることはあまり良いことではない。だからといってことを早急に運ぶこともいけない
証拠を固めて確実に有罪だと断定できるまでは推定無罪なのだから
「問題は犯人は2人組。1人はわかったけど、もう1人は今もわからないまま。どこに逃げたのか追跡しないと」
車の持ち主であるエレス・カルガルートは今もどこかに逃走中
こちらも顔認証システムで照合作業をかけている。市内のどこかにいればわかるはずだ
問題はどこに隠れているかだ。マナサリと同じで貨物列車に便乗して逃走するか、
それとも別の車を使って逃走するか。すでに公共交通機関には手配がかけられている
旅客系のバスや航空機や船舶を使っての逃走は不可能である
残る手段は貨物の荷物として逃げる方法か市内にほとぼりが冷めるまで潜伏するかだ
だが簡単にほとぼりが冷めるまで潜伏するのは難しい
となると市外に逃げるほうが安全である。かつての友人を頼って逃げるかもしれない
その線については組織犯罪課に調べてもらっている
退役時空管理局員で構成されている組織を利用するかも
その線については港湾パトロール安全保障局が調査している
連邦組織である中央情報局(CIA)も調査している
退役時空管理局員で構成された組織は時空管理局の暗い過去を抹消しようとしている
時空管理局の闇であるHRと連携している
時空管理局の暗部ともいわれている組織だ。資金も人材も豊富でかなり規模の大きな組織
時空管理局の規模縮小後は、かなりの大ダメージを受けていたが今は再編成の真っ最中だ
「HRまで動いていると厄介になるね」
もしすべての時空管理局の暗部組織が絡んでいるとなると大きなことになる
組織にとっては面倒な人物になりそうなものはたとえ仲間でも殺すかもしれない
HRや時空管理局の闇についての情報が漏れると面倒だからである
HRや退役時空管理局員に対する調査がより厳しくなることが間違いないからである
それを考えると情報元を抹殺したほうが効率的である。酷い話だが現実は現実である
「金融機関の口座記録を調べてみようかな?」
「金の流れを追うということですか?」
「そうだよ。逃走生活にはかなりのお金が必要になる。ATMでお金を引き出していたら追跡できるかもしれない」
ウルはそう言うとすぐに検事局に連絡した。金融情報開示令状の請求に入った
すでに事件に関係していることはわかっている。裁判所はすぐに令状を出してくれるだろう
令状さえあれば対象者の様々な金融情報にアクセスできる。
追跡など、楽勝なはずだ。金を使っていればの話ではあるが
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東区東部 クラナガンハイウェイ5号線( 南東線 ) 北西行き
カリーとシグナムは車両ナンバー『クラナガンサウスSWA-1033』の車を追跡していた
まだ確保はされていないが、パトロールカーによって追跡されていた
クラナガンハイウェイから一般道に降りるようにパトロールカーが指示したが無視している
それどころかかなりのスピードで逃走している。ハイウェイの制限速度である時速120Kmを大幅に超えている
かなり危険な走行であることには間違いない
「追いつけるのか?」
「だから頑張っているんでしょ。緊急走行で走行しているから。でも時速150Kmも出すのはどうかと思うわ」
わたしでもという。確かにカリーとシグナムが乗っている車もかなりのスピードで走行している
ハンドル操作を誤ったら大事故になる。それを避けるためにも安定した運転テクニックが求められる
クラナガン捜査局員は訓練で機敏な運転テクニックの訓練を受けている
常にあらゆる状況に対応できるように訓練を受けているのでこの程度なら問題ない
問題はカーチェイスに入ったらである。最も緊迫する状況になる
「状況はさらに最悪になることは間違いないわね」
『中央本部から各員へ。『クラナガンサウスSWA-1033』はパトカーに体当たりをしている。警戒されたし』
「余計に最悪ね。面倒をかけさせてくれる。SA31から中央本部。上空からの追跡に切り替えて」
カリーはカーチェイスに発展している現場での交通事故を避けるために車での追跡を断念した
ヘリからの追跡や各種監視システムを使っての追跡なら犯人も気が緩んで手を出せるかもしれない
『了解。車での追跡は中断する。ヘリからの追跡に切り替える』
「良いのか?」
「シグナム。けが人を出すわけにはいかないのよ。ヘリの方が安全だわ」
これからが本番である。カリーは逃走車の進行方向を確認しながら追跡方向を考えていた
そこで追跡のためにハイウェイを利用するのではなく一般道に降りて近道をすることにした
緊急走行時に使用する交通信号機変更装置によって進行方向の信号機が次々と青になっていく
緊急走行にはよく使用する装置である。安全に緊急走行をするためにこの装置は極めて重要である
「中央本部に信号機を最優先に変更させないと。シグナム、無線で信号変更装置を最優先で行うように要請して」
「そんなことを最優先で行って追いつけるのか?」
「良いから!黙って指示には従う。今はあなたの文句を聞いている暇はないから」
カリーはさらに自らが運転する車を最優先に通すために交通優先度合いを最上位にするように中央本部に要請した
そうすることで想定よりも早く追いつけるかもしれないからである
何よりも早く追いついて止めることである。それも安全にである
今は上空からの監視だけだが余裕が出れば覆面パトカーでの追跡も追加する
『中央本部からSA31。交通最優先コースの誘導情報を車載情報端末に送信した。確認せよ』
「了解。現在SA36が確認している。スタンバイされたし」
SA36、シグナムのコールサインである。
カリーはシグナムに車載情報端末でコース情報を確認するように指示した
今はなりふり構っていられるような状況ではないのだ。どんな協力も借りたいところだ
まさに猫の手も借りたいほどに
「コース情報を確認したがどうするんだ?」
「それをもとに私の運転をサポート。交差点で曲がるところの手前で言って」
「わかった」
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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部1係オフィススペース
エルガとヴィータは時空管理局が押収した物品の横流し状況を確認すると、
かなり雑な扱いをしていることにあきれていた
銃火器に麻薬など様々な重要な押収物が横流しされていた
末端価格にして数兆ミッド規模になる。それらの資金は時空管理局の闇の活動に充てられている
酷い話どころか反吐が出るほどのネタである
「いったいどれだけの人物が関わっていたんだろうな」
膨大なデータと格闘しながらもエルガは必死になって情報を確認していた
それでも余りの件数にあきれるしかなかった。
これだけの横流しがありながら実際に事件化されたケースはかなり少ない
組織内部の機能正常化がしっかりと仕事をしていないと言われても仕方がない話だ
問題はかなり悪質だ。さらに問題なのは押収した銃火器や麻薬を再押収しているケースが複数確認された
線条痕が一致している銃が何度も押収されているからだ。呆れてしまったのは仕方がない
ここまでまともでないとは、想定もしていない
「それにしても時空管理局犯罪捜査局が捜査官をよこすとはな」
「俺のことを考えしてくれていないようだな」
「身内の捜査はやりにくいのはお前がよくわかっているだろ。リドカイ」
時空管理局犯罪捜査局からはリドカイ・ヘランス捜査官が派遣されてきた
事が重要だと判断されたためである。この問題は大きすぎる。クラナガン捜査局だけでは処理できるはずがない
だからこそ派遣されてきたのだ。問題はどの程度の事件に発展するかである
すでに横流しに該当する事案は数百件以上確認されている
おまけに銃火器の押収した後、再押収することで検挙率アップの偽装工作までしている
点数稼ぎをしているようなものだ。少しでも検挙ノルマをクリアするために無茶なことをしている
「ここまでくると呆れるな。そうだろ?リドカイ」
「いろいろと時空管理局の内部犯罪を捜査してきたが俺も同感だ。驚きを通り越してあきれるばかりだな」
「いくつも組織の不正について調べてきたことがあるが、ここまで悪質なのは初めてだ」
捜査部でもクラナガン捜査局内の内部不正について捜査を行うことはある
もちろん査察部と連携して極秘裏に捜査を行うことになるが
それでも査察部が直接動いていると不正行為者に知られると証拠を抹消される
捜査部が別件で動いているように思わせるために協力することは珍しいことではない
今回は時空管理局犯罪捜査局が単独で動けばすぐに時空管理局の闇の部分に属するものが証拠を消すかもしれない
それを押さえるためにクラナガン捜査局との連携捜査を行うのだ
「リドカイ、お前はどう思う?」
「大量リストラによって多くの時空管理局員は人生が変わったからな」
「それはそうだな」
時空管理局の規模の大規模縮小に伴い大量リストラを行って組織のスリム化を図った
活動が認められる領域や管轄権も大幅に縮小されて権限も失った
予算面でも大幅圧縮されることになったのだから高給取りだった時空管理局員の給与体制、
そこから手を付けるのは当然である
「退役局員の多くが受け取れるはずの年金のほとんどを受け取れず生活に困窮している」
犯罪組織に今の時空管理局の情報を売って生活費に充てている連中も確認されている
次元空間の取り締まり内部情報を売ることで小銭稼ぎをしているのだ
「リドカイ、まさに不正のデパートになっているわけだ。今の時空管理局は」
「そうだな」
エルガの言葉にリドカイは同意した
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東区中央部 クラナガンハイウェイ4号線(東線) 西行き
アルシオーネはギリス・フォラスを追いかけるために中央本部に戻ろうとしていた
声紋鑑定で犯人であることは間違いないと思われる
あとは見つけるだけなのだが、すでに自宅は引き払っているが念のため現場鑑識チームに調べさせている
住所は南区北部サウスイーストハーディー地区7番街3丁目12番地301号室である
そこは短期賃貸者向けだがまだ新しい人に貸し出すための清掃をしていないので証拠が残っているかもしれない
だからこそ念のため鑑識作業を要請していた
「何か出れば良いけど」
逃走先のヒントになりそうなことをつかむことができればいいが
今のところは手掛かりは何もつかめていないとのことである
「街灯観測システムにも引っかからないとなると苦労するわね」
アルシオーネはラジオでマスコミ報道を確認していた
『次元世界連合総会では時空管理局の今年度予算は総額で約5000兆ミッドにすることを決議しました』
今までの時空管理局の予算は毎年度、数十京ミッド近いことを考えると大幅な圧縮に成功した
かなり身を切る改革に成功したことを意味しているが、影響は甚大である
『一方で身を切る改革を行った影響で次元世界連合加盟国では経済に大きな影響を与えています』
時空管理局に物資を納入していた企業や関連企業の多くが倒産した
失業率も高くなる傾向にあり、各国政府は失業者対策に追われている
ただし多くの次元世界国では景気は良い方向に進んでいるので影響は深刻というほどではない
問題なのは退役時空管理局員ということだけで雇い入れる企業が少ないことだ
どこの企業も問題児を入れたくないというのはわかるが、それでは公平な社会が成り立たない
『一方で金融界ではワンワールドグループ企業の倒産が大きなお荷物となっています』
『特にワンワールドバンクやワンワールド保険の破綻で生じた不良債権化した証券化商品の影響は大きいです』
金融業界では今もワンワールドグループ企業と取引があった企業に向けての不信感がかなりある
だからこそ金融機関がそれらの企業への融資をすることに慎重性が大きくなりだしている
今後それが拡大していくと資金の供給不足につながればさらに企業倒産件数が増加する
それが信用収縮であり、だれもが恐れていることである
「どこも金に困っているわけね」
『中央本部からSA33。応答せよ』
「こちらSA33。現在一般道路を走行中。何か問題が発生したか?」
『パトロール捜査官がギリス・フォラスを確保。南分署に連行中』
珍しく良いニュースである。素直に逮捕されたのか確認すると時限爆弾を振りかざしていたが、
何とか建物1つの損害だけで抑えることができたと情報が入ってきた
それはあまり良い状況ではないが身柄を押さえれたことは良いことだ
「SA33も南分署に向かう。留置場に放り込んで監視をさせておいて」
『こちら中央本部。了解した。南分署にも通達を出す』
無線交信を終えるとアルシオーネは安心した
追いかける必要がなくなったからだ。だが爆弾はまだどこかにあるかもしれない
「念のため、容疑者の身体検査は通常よりも厳重に行うように通達を出しておいて」
不審物を持ち込まれるわけにはいかないのだから当然の対応である
しかし、あっさりと捕まったことに彼女は納得していなかった
あれだけしかけたっぷりの予告をしておきながらあっさりと捕まった
何か別の計画があるのかもしれない。一筋縄ではいかない案件と予測していたからだ
「司法取引でもするつもりなのかもしれないわね」
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