午前10:10 西区東部クルック地区1番街1丁目 次元世界連合本部庁舎 事務総長執務室
ユウ・ミズノ捜査長官はラビット・ボード事務総長と機動六課組の受け入れについて最終協議を行っていた
「今回のことはかなりご迷惑をおかけしますが。今の時空管理局内の改革の最中に妨害工作されると」
「もちろんその懸念は理解しています。だからこそこちらで受け入れについて了承したのですから」
問題があるとしたらクラナガン捜査局に属するすべての局員である
彼らは簡単に暖かく歓迎はしないことはわかっている
表向きは繕っているが、実際は腹の中で不満を抱えている
「こちらはかなり手荒い歓迎になりますがよろしいですね?」
「そちらでの対応に関して我々は深く感知しません。いっそのこと厳しく教育された方がよいと考えていますので」
「相変わらずの冷たい判断ですね。政治をよくわかっているから、邪魔者はさっさと引き取ってくれと?」
ユウ・ミズノ捜査長官の言葉にその通りですと回答した
問題をさっさと処理したいと考えるのは当たり前のことである
まして機動六課組は時空管理局の旧幹部とのつながりも大きい
それら様々なことを考慮するとこちらに預けるというか押し付けた方が楽できると考えるのは当然なのだ
「我々も次元世界連合の時空管理局改革に期待はしています。しっかりと調教をよろしくお願いします」
「もちろんです。それとこれは我々からの感謝のしるしです。お役に立つと思いますので」
ラビット・ボードが手渡してきたのは1冊のファイルだ。
ファイルには金融機関の口座情報があった。すべて凍結されている
それらは時空管理局が不正行為を得たことで犯罪組織から受け取った資金の流れと口座の残高、
かなりの件数の記録がかなり詳細に記載されていた
「これはすごい記録ですね」
「今も捜査が続いているので今後も増えると思います。その時にはまた新たな報告書を提供します」
これが見返りということだ。次元世界連合としてもクラナガン捜査局とタッグを組んでおきたい
クラナガン市と近隣州だけでも案件は膨大な案件の数になる
単独で捜査するには無理があるからこその連携が必要だ
「お互い連携して対応することに関しては異論はありません。機密事項以外のこちらも情報を提供します」
お互い連携プレーで頑張りましょうというと最終協議の詰めに入った
「1年間はクラナガン捜査局で預かることは問題はありませんか?」
「すでに関係各部署には通達済み。速やかに話を進めるための土壌づくりはできています」
「さすがは捜査長官ですね。では今後ともよろしくお願いします」
2人は握手を交わすとユウ・ミズノ捜査長官は執務室を退室した
そのまま1階の正面玄関に向かうのではなく裏口から出ることにした
正面には多くのマスコミの記者が待っていることがわかっていたからだ
こちらの情報が洩れるようなことは避けるべきと考えているためでもある
裏口にはすべて車が止められていた今回は助手席に乗り込むと車は中央本部庁舎に向かった
運転席にはエテルナ・ジンガーがいた。帰りは彼女が運転手を務めるようだ
「会合はいかがでしたか」
「興味が出る話を聞いたとだけ言っておくよ。聖王教会側に問題はないかな?」
「シエル・ミズノ首席捜査官が2人をベルカ州にスパイ工作のために派遣を」
エテルナの報告に相変わらず無茶なことを考えているねと苦笑いをしていた
実際その通りなのだから仕方がない。このままでは状況はかなり良くないからだ
ベルカ州内ではかなり不穏な空気と気配がある。かなり警戒しなければいけないことはわかっている
こちらもいつ何が起きるか予測が難しいのだから常に最新の情報を入手することが求められる
「シエルは我々よりも最新の情報を欲しがっているのだろうね」
エテルナは止めますかと質問したが今は気にすることはないと捜査長官は回答した
クラナガン捜査局としても聖王教会内部の最新情報は把握したい
このチャンスをこちらも利用すれば大きな一手になるかもしれない
それは間違いない。だが警戒は必要である。万が一に備えての保険はかけておくべきだ
「どんな保険を掛けますか?」
「ベルカ基地に特殊部隊を送り込むよ。シエルも下準備はしているはずだから問題はないと思うけど」
「わかりました。CIAやNSAにも通達を出しますか?」
「彼らには事後報告する。あちらにはいろいろと恩を配ってきた。今はそれを回収する絶好の機会だよ」
彼の発言にエテルナはわかりましたと返答した
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中央区中央セントラルクラナガンバスセンター
ここはセントラルクラナガン駅に併設される形で設置されているバスセンター。
1階と2階の2層構造であり、市内のバスだけでなく長距離バスも停車する
公共交通機関の重要な拠点である。ここを利用する市民は1日に何万にも存在している
それだけにトラブルが多く発生していることが多いことでも有名である
例えば痴漢や盗撮などの性犯罪の発生率はかなり高い
捜査部3係のカリー・ドーラン捜査官が警戒していた
バスセンター内を巡回していると不審な行動をしている人物を発見した
スーツ姿の男性であることは間違いない。先ほどから何度か女性を追いかけてはすぐにやめている
見るからに怪しい行動といってもいいぐらいに
「どうみても盗撮か痴漢行為がしたいみたいね。できることなら被害者が出ないことを祈りたいけど」
相手が犯行しなければ事件化にすることは難しいところだ
つまり事件が発生して初めて逮捕することができる。性犯罪の難しさはそこにある
ちなみに未遂でも逮捕はできるが、罪としてはかなり甘いことで有名だ
ただし盗撮や痴漢行為をしたものは連邦法で常に住所の届け出を地元の法執行機関に伝える義務がある
性犯罪者を野放しにすることを避けるためである
そのため性犯罪を1度でも起こした場合は住所などの情報を法執行機関に伝える義務がある
この連邦法はミッドチルダ連邦だけでなく次元世界連合全加盟国で制定されている法律だ
「とりあえず職質をしてみましょう」
犯行を未然に防ぐのもパトロールの一環だ
未遂でも立件することはできる。刑罰はかなり緩いが
それでも抑止力としては十分な効果があることは間違いない
カリーはすぐに接触した
「パトロールの一環で巡回をしているのですが少しお時間はありますか?」
まずは様子見をすることにした。男は声をかけた時に少しびくっと反応した
何かやましいことを隠しているのかもしれない。疑うには十分な材料である
次の瞬間、男は一気に走り出した。逃走したということはやましいことがあることは間違いない
これで公務執行妨害でとりあえず身柄確保をすることができる。短時間ではあるが
法執行機関の職員の質問に答えないのは黙秘権があるので認められているが、
何もやましいことがなければ素直に協力してくれる。ほとんどの場合で
逃げるということはやましいことがあるということを示していることは間違いない
絶対に逃がすわけにはいかない。何が何でも身柄確保をする
「SA31から中央本部。セントラルクラナガンバスセンターで職質したところ逃走した男性を追跡中」
応援を要請すると無線機で走りながら伝えた
「逃げても無駄よ!」
こういった鉄道やバスなどの公共交通機関が数多く乗り入れているところにはパトロール事務所がある
無線で応援要請をしているからすぐに確保することができるのだ
そして今回も例外なく少しの逃走劇で終わってしまった
パトロール捜査官に身柄確保されたのだ
「女を尾行するなんて良い趣味とは言えないわよ」
カリーはそういうとパトロール事務所に連行するように指示をしようとした
事務所内にある取調室で事情聴取だ。しかし、その前に身体検査を行うことにした
「危険物がないか確認させてもらう。逃げているんだから公務執行妨害に該当するから法律上は問題ないわ」
男の表情はかなり固くなっていた。よほどまずい事情があるようだ
それは腕を確認してすぐにわかった。数多くの注射痕があった
「麻薬を決めているのかどうか尿検査をすれば一発でわかるわよ。少しは反省の態度を示すべき状況だけど」
あなたはどうかしらとカリーは聞くが相手はだんまりだ
黙秘権の行使は正当な権利だから仕方がない。ズボンのポケットを調べたところあるものが見つかった
白い粉が入った『パケ』があった。それも3つも持っていた。麻薬常習者の疑いが最も高まった。
あとは試薬で麻薬かどうか確認すれば性犯罪よりも長い刑務所生活になるだろう
簡易の麻薬検査キッドで調べたところ、メタンフェタミンであることが確認された
「麻薬所持の現行犯で逮捕よ」
男は暴れようとしていたが応援に駆けつけてくれていた3人のパトロール捜査官に押さえられた
そして手錠をかけられた。
「事務所で事情聴取をしましょう。尿検査もしたいから」
今は麻薬の所持だけだが、麻薬を使っているとなるとさらに罪が重くなる
クラナガン市法では三振法という法律がある。
この法律は軽い罪であっても3度も過去3年以内に連続して行った場合、
仮釈放なしの終身刑か死刑になるという制度。
これにより刑罰が軽い罪でも重い罪になりうるということを示していた。
今は麻薬所持だけだ。だが使用か密売も該当すると、あと1つの罪で三振法で仮釈放なしの終身刑か死刑判決になる。
公務執行妨害は罪になる時もあるが慎重な対応が求められる
「事務所で尿検査をするのですか?」
「簡易検査薬は捜査キッドにあるから問題ないわ。今は罪状をはっきりさせることが優先させることよ」
了解しましたとパトロール捜査官は回答すると男を事務所に連行していった
拘束されていても男はかなり暴れている。手錠をかけられていても暴れまくっている
このままではかなり危険な可能性がある。麻薬が切れかけているのかもしれない
麻薬常習者の場合は麻薬が切れ始めると異常行動に出ることが想定できる
その場合、大暴れをして大乱闘になることもあり得る
そうなる前に尿か血中から麻薬成分が検出されたら麻薬使用でも逮捕できる
事務所に到着してからも男はかなり暴れまくっている。
とりあえず留置室に入れることにした。
麻薬のせいかもしれないが、今は簡単に麻薬使用を証明するための尿や血液サンプルの採取は難しい
「とにかく冷静になるまで待つしかないわね」
留置室に入れられてもかなりひどく暴れている。狭い部屋なのに大暴れをしているのだ
「これだからジャンキーは嫌いよ」
ジャンキー、簡単に言ってしまえば麻薬常習者だ
頻繁に麻薬を使っているため、生活が荒れていて健康状態もかなり悪い
おまけに薬が切れると暴れだす。手が付けられないので対応に苦労する案件の1種。
「とりあえずはメタンフェタミンの純度を調べてみましょう」
一般的に流通しているメタンフェタミンの純度は末端では40%で買えたらラッキーのほうだ
実際はさらに低いことが多い。裏社会で流通するのはそれほど純度が高いものは手に入らない
それに純度が高いものを手に入っても使った場合は過剰摂取になることもよくある話である
そのために警戒しなければいけない
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東区東部 ミーミルクラナガン貨物ターミナル パトロール事務所
ジャスティは交代要員として派遣されてきたアルシオーネと引き継ぎ作業をしていた
怪しい貨物列車情報を共有することなどの円滑な引き継ぎ作業だ
「あなたも苦労人ね。機動六課組の基地に向かえなんて命令を受けて」
「それを言うならどうしてアルシオーネはそれから外された?」
「上の考えることは全く予測することができないからわからないけど。何かあるんでしょ。きっと」
彼女は頑張って任務遂行をしてくることねと言うとジャスティと交代。
この貨物ターミナルに怪しい貨物がないか情報端末を使って調べ始めた
「昼に密輸はしないとは思うけど。時々お間抜けさんがいることはあるから警戒はしないと」
昼で誰かに見られることを覚悟して不法侵入する者は存在する
リスクを考えないで何でもする連中はいるのだ。
貨物列車に子供がやるようないたずらをしたり、本格的な破壊工作をしたりする危険人物も存在する
だからこそ警戒は常に必要なのだ。その他にホームレスが貨物列車を使って移動生活を送ることは日常的だ
貨物列車への無賃乗車は連邦法違反に該当する。それに麻薬や銃火器の密輸に利用されることもある
だからこそ貨物列車の検査は徹底的に行われるのだ。少しのミスが大惨事を招くことになる
『30番線にフローレンス州から貨物列車が到着する。積み荷はコンテナと石炭と鉄鉱石などの鉱物です』
アルシオーネはすぐに積載されているコンテナの内容物を確認した
その貨物列車が100両編成。50両は50個の貨物コンテナが積載されている。積み荷は主に機械部品などである
残りの50両の貨車には石炭や鉄鉱石などの鉱物資源が積み込まれている
石炭と鉄鉱石はクラナガン市内にある製鉄所で鉄づくりのために利用される
「30番線のコンテナはすべてこの貨物ターミナルでトラックに積み替えね。念のため確認作業をさせないと」
50個のコンテナに麻薬や武器があれば大騒動になる
そのためにも確認作業は必要になる。貨物ターミナルにいる人員を総動員して調べるしかない
「今のところはベルカ州だけしか問題はないみたいだし。まぁ機動六課組のことを考えると捜査部もトラブルだけど」
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南区北部ハーディー地区6番街2丁目1番地 ハーディーバンク本店前
銀行内には10人ほどの人質がいて犯人は2人もいる
どちらもアサルトライフルを持っているのでこちらから不用意な接触はできない
もし危険な方向に向かうとかなり危険であるからだ。それを避けるためにもリスク管理は重要である
すでにSWATが来ている。周囲はパトロール捜査官と刑事で固められている
「フィリー。こっちは今も手を出せない状況だ」
南分署に配置されているSWATの隊長は簡単に手が出せないと話した
こちらに向かって何か接触してくることがあればいいのだが、今のところは何もない
最悪の事態を想定しなければいけないところが問題である
10人の人質を安全に開放するには簡単にはいかない
少しずつ交渉して人質の人数を減らしていくしか道がない
「私が銀行の裏口がないか確認するわ」
「慎重にしろよ。犯人も頭がいいかもしれないからな」
その辺はわかっているわよと答えるとフィリーは通用口の方に向かった
誰にも気づかれないように近づこうとしたが問題が発生した。裏口に爆弾が設置されていた
C-4爆薬がある。おまけにドアを少しでも開けるだけ吹き飛ぶタイプ。センサーまでついている
かなり用意周到の犯行である。銀行の窓ガラスは防弾仕様だ
対物ライフルなら何とかなるかもしれないがリスクがありすぎる
となると慎重に交渉を行いながら人質解放をしなければいけない
彼女は再び戻ってきた。SWATの隊長と今後の方針について話し合いを始めた
「交渉人を手配しましょう」
簡単に折れるとは思えないが時間稼ぎにはできるかもしれない。
今はそれだけで十分である。今は何よりも時間が必要なのだから
少しでも時間稼ぎをしてこちら側から侵入できる場所を探さなければいけない
銀行の本店ビルの屋上をドローンで確認した。そこにも銃火器で武装した男性がいた
犯人の可能性が極めて高い。かなり用意周到である。地上だけでなく屋上も封鎖している
「相手はかなり犯罪に慣れているわね。用意周到みたいだし」
「どうする?」
「こちらの情報が漏れる可能性はどれくらいあるの?」
「規制エリアのど真ん中だ。マスコミは入ってこない。近隣住民にも避難命令を出した。すでに完了している」
「ならじっくりとやっていきましょう。時間をかけてね」
立てこもり事案の解決には時間が必要なのだ。
膨大な時間が必要になってくるので少しでも時間稼ぎをするためには、
犯人側に優位を取らせることが求められる
犯人側がもしも錯乱状態になれば人質の命にかかわる重要問題になる
それはかなりよろしくない。程よい緊張感を保つ方がかなり安全であることは間違いない
「本当にどうなるかわからないことは間違いないけど・・・」
「犯人の身元が分かればいいんだが。こちらで検索をかけているがヒットなしだ」
「現役や退役した時空管理局員や聖王教会関係者のデータベースでも照合したの?」
「もちろんだ。最初にそっちを照合にかけたがヒットなし。だから苦労している」
今は犯歴者のデータベースで照合しているが、数があまりにも多いので時間がかかる
ただしこれだけ用意周到に反抗していることから考えると新人ということはないだろう
過去に同様のケースに強盗事件を起こしている可能性は十分に考えられる
犯行手口にその情報を組み込むことでさらに絞り込むことができるかもしれない
フィリーがその作業を行い照合作業を続けた。
「できればさっさとヒットしてくれると助かるんだがな」
「それについては私も同意見よ。でも数が多いから絞り込むのはかなり苦労することは間違いないわ」
『ピッ』
ようやく犯人の1人がヒットした。名前はナレツ・オライアル。34歳。
犯歴は強盗で3回も逮捕されたが証拠不十分で刑務所に入っていない
「関係者がだれかいるかわかるともっと助かるけど何かあるかしら」
なぜ3回も逮捕されていながら証拠不十分で釈放された理由についても調べた
フィリーはコネがあるということは理解していた
逮捕されていたころは時空管理局が絶対的権力を持っていたころだ
上層部に知り合いがいたからこそ無理やり不起訴処分にした可能性は十分にある
「どうやって攻略するか作戦が必要になってきたな」
SWATの隊長の言葉は正論である。何か良いアイデアでも思いつかない限りは危険すぎる
簡単に強行突入というわけにはいかない。一番の問題は犯人側の武装がどの程度であるかだ
軽装備ならまだしも。C-4爆薬まで使っているのだから軽装備ということはあり得ない
おそらく準備万端の状況で立てこもっているはずだ。
最終的には自爆するかもしれない。そこが最大の問題である
人間という生き物は自暴自棄になれば何でも行う人間なのだ
「問題は防弾ガラスってところね。対物ライフルでも貫通は難しいし」
人質の安全を考えると無茶なことはできない。
長い時間にわたっての交渉術が求められることは間違いない
「内部と接触はできているの?」
「内部の電話機に電話をしたが一切応答がない。交渉は難しい」
フィリーはさらに厄介な状況になったことをすぐに察した
交渉に応じるつもりがないということは徹底的にやりきるつもりでいることは間違いない
相手が何か要求を伝えてきてくれたら交渉の余地は残されている
しかしそれがないということは何か別のたくらみがあるかもしれない
良い想像はしたくないが。ハーディーバンクは低所得者向けの融資を行っていた。
時空管理局を相手にするような大きな企業への融資はしていなかったことから不良債権はあまりない
財務基盤を見ると優良銀行の1つでもある。ハーディー地区やその周辺地区の住民や企業が主な顧客である
時空管理局債や聖王教会債など、危険な債権を抱えていないことから今では経営状態はかなり優良
クラナガン証券取引所にも上場しているが株価はかなり高い。それだけ投資家からは安心感を得ている
「内部の監視カメラ映像はどうなの?」
「一応使えるが、こちらの動きはあまり知られたくないからな。ほとんど触っていない」
顔認証システムにかけるための顔写真を撮るためには使ったが、その後は放置状態であるとのことだ
こちらが内部の情報を得ていることを避けるための措置である
もし気が付かれたら犯人は映像をカットするだろう
それはそれでまずい展開になるだけである
被害を最小限にするには冷静な判断能力が求められることは間違いない
「この案件は本当に時間が必要になりそうね」
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西区中央 ウエストクラナガンカジノ地区4番街 バナースカジノホテル
エディは犯人に気づかれないようにホテル内を移動していた。
人質はかなりの人数になっている。問題は銃撃戦を起こした犯人だ
身元が分かれば何か大きな手掛かりになるかもしれない。
携帯情報端末を使って顔認証システムで照合するとすぐにヒットした
退役時空管理局員であった。名前はオレス・バーニン。退役前の最後階級は2等陸佐
ほかにも複数の銃火器で武装した人物がいたが、全員が退役時空管理局員であった
国内の金融機関やカジノなどではAMF装置が取り付けられている。魔法を利用しての強盗などを防ぐ目的である。
スカリエッティが開発したこの装置は今は次元世界連合全加盟国の金融機関などに設置されている
となると銃などを使うしかない。そこが問題点である
「SA38から西分署。現在ホテル内に潜入中。人質の人数はかなり多い。危険な行動はするな」
『了解した』
こちらの無線を傍受することは難しい。
基本的にクラナガン捜査局で使用されている無線はすべて暗号化されている
仮に傍受できたとしても解読することは難しい。時間がかなり必要になる
だからこそ今も無線回線を使っているのだ
「それにしても退役時空管理局員はトラブルを起こしすぎだ。対応するこちらの身になってほしい」
エディは慎重に犯人側に気づかれないようにホテル内の移動を続けた
すでに人質以外の民間人は全員退去していた。
あとは犯人をうまく誘導することができれば問題は解決するはず
口で言うのは簡単なことではあるが現実はそれほど楽な仕事ではない
人の思考というのは極めて難しいものである。時には想像もつかない行動を行うこともあるのだ
警戒することは当然である
「それにしても連中の目的は何かあるのか。おかしな行動をしないと良いが」
エディは警戒しながら移動を行って、犯人逮捕につながる良い材料がないか探していた
このままでは状況が悪化するだけであることは明らかだ。事態が悪化することは避けるべし
「SA38からSWATへ。何か状況に変化はあるか?」
『今のところは何もない。AMF装置は展開されているから魔法行使はできないことはわかっているはず』
そう簡単にバカなことはしないとは思うが警戒はしているとのことだ
このホテルの監視センターの場所は表向きの場所と本来の場所の2か所がある
表向きの場所はただの監視をするだけ。
本来の場所にある警備室には銃火器で完全武装している警備担当官がいる
警備担当官というのはパトロール部のパトロール捜査官が数名配置されている
拳銃などを所持して緊急時の対応に動いている
あえて2か所に分かれているのはリスク分散の観点からである
「人質がどうなってもいいのか!いい加減に出てこい!」
分厚い金属製の厳重な扉のため、内部の状況を知ることはできない
ちなみにこの部屋のことを知っているものはこの施設関係者の中でかなり限られた人数だけである
つまり内部に協力者がいなければ知るはずがない
エディはこれ以上被害者を出すことを避けるために、ドアの前にいる男の1人に一気に近づいて制圧した
エディは金属製のドアをノックした。
「こちら捜査部のエディ・サンチェス。もう安全だ」
『開けますので注意してください』
ドアが少し開けられるとエディはすぐに気絶させた男と一緒に警備室に入る。
室内にはH&KG36を持っている3人のパトロール捜査官がいた
そこには数多くの監視カメラと銃火器が存在している。
「こいつの指紋を照合してみるか」
完全に気絶している男の指紋を携帯型情報端末で指紋をスキャンして照合した
結果は見事に大当たりだ。退役時空管理局員のフリズ・ボールス。23歳。
退役する前は時空管理局地上本部首都防衛隊に所属していた
大量リストラで退職した1人でもある。この男にはかなりの借金があった
特にギャンブルが好きで、総額1億ミッド近い借金を抱えていた
時空管理局を大量リストラされたときはわずかな退職金しか受け取ることができなかった
退役後の生活に向けての資金運用を時空管理局債を軸とした運用方針としていた
おかげですべてを失うことになってしまった。強盗に走ることも納得できる
「すべてを失って最後の大きな賭けに出たということかもしれないな」
エディの言葉にほかの3人のパトロール捜査官も同意した
金に困ったから金が集まる金融機関やカジノを襲うことは珍しいことではない
今までにも何度もあったが、退役時空管理局員が原因とする事例はかなり多くなっている
大量リストラされた時空管理局員は毎日の生活に行き詰っているため同様の事件は起きている
しかしクラナガン市内の金融機関の支店にはパトロール捜査官が警備チームとして派遣されているので、
未然で防ぐことができている。ある程度の発生率抑制には効果が出ている
「状況は良くないな」
人質はかなりの人数になっている。
何とかして制圧する良いアイデアがあれば実行したいが難しい
少しずつでもいいので行動を起こすことが求められる
「通信妨害は危険なことになるかもしれないな」
外部との連絡が取れなくなることが何かのきっかけになってしまうと、
危険な状況に一気に進むかもしれない
今はこの状況を維持しつつ、対応方法を検討するしかない
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東区東部 時空管理局機動六課基地 沖合10km付近
そこには9500t級巡洋艦[ 艦船形式:タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦 ]が1隻警戒航行していた
機動六課基地を海側からの攻撃から守るために派遣されている艦船である。
もしもに備えての配置である。反時空管理局組織から何か攻撃が予見されているための対応でだ
「俺たちが機動六課組の守備とは。落ちるところまで落ちたな。時空管理局も」
CICにいる艦長の言葉はだれもが思っていることだ。
責任の度合いが高い任務を押し付けてくる。嫌な仕事であることは間違いない
もともと港湾パトロールと時空管理局との関係は最悪だったのだから
ミサイルや銃火器の運用をしていたのだ。互いがけんか腰で対応することも日常的だった
今は大きく変わったことは間違いない。
地上に配置されている時空管理局の部隊は大規模災害に備えた舞台で規模も大幅縮小した
クラナガン市内の場合は時空管理局の基地は存在していない。
機動六課組の基地は異動完了時に閉鎖されることになっている
閉鎖された後は基地施設は破壊されて新しい都市開発が行われることが方針で決定している
これは次元世界連合全加盟国で同じような動きでもある
「かなり厳しいしつけを受けることになるだろうな。自業自得だが」
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東区東部 上空800m ヘリ
ジャスティは機動六課基地に向かっていた。ヘリの中で関連資料の再確認をしていた
今後の機動六課組の人事異動に関する通達書でもある
機動六課組の中でスバル・ナカジマだけはクラナガン消防局への異動になっている
彼女のような人材は消防局に向いていると判断されたためである
残りの最前線の部隊員のほとんどは捜査部に異動になる
「それにしても上層部から信頼が厚い部隊の取り扱いを俺たち捜査部に移管するとはどうかしている」
上層部というのは時空管理局の幹部と親しい関係にあったことを示す言葉だ
彼らとの関係が厚くなければ機動六課は多少の越権行為が容認されていた
今はそんなことは許されないが
『ワンワールドバンクローン社は不良債権の大部分が時空管理局関係者への融資となっています』
「不良債権の金額が多すぎる。金融機関の破綻処理にはかなり苦労するだろう」
『ワンワールドグループ企業関係のすべての不良債権を合わせると何千京ミッドにもなります』
「ワンワールドグループ企業の破産の影響でこっちの仕事が増えるのは迷惑な話だ」
『市内の金融機関に対する警戒態勢を最高レベルに引き上げる。不審な行動があればすぐに職質を』
「中央本部も大変だな。まぁ俺もそうだが。機動六課組の受け入れに対する最終調整をするのだからな」
ジャスティは機動六課組で教導官役をする捜査官のリストの最終チェックをしていた
ラジェット・ハングリーには八神はやてとリインフォースII(ツヴァイ)
フィリー・アクシオムには高町なのは
エルガ・ジャーニーには八神ヴィータ
カレン・アリストにはフェイト・T・ハラオウン
サイノス・プロナードにはティアナ・ランスター
カリー・ドーランには八神シグナム
中央本部検死ラボ検死官補佐には八神シャマルと八神ザフィーラ
以上の割り当てになっている。ちなみに教導官役を任された捜査部捜査官は不満しか感じていない
「教導官役に任された以上は仕事はするだろうが、危険いっぱいな現場に素人を連れて行くのは苦労する」
そんなことを考えながらいたがヘリは機動六課基地に無事に到着できた
機体から降りるとはやて・八神が出迎えてくれた
「ようこそ」
はやては敬礼をしていた。ジャスティも敬礼をする。とりあえずは挨拶は大事だ
2人は敬礼をやめると今度は握手をして自己紹介もすると機動六課隊長執務室向かった
執務室に向かう間はジャスティがちょっとした愚痴のような話をしていた
「俺としてはこんな任務は任されたのは不本意だが仕事である以上はしっかりと行う」
ついてすぐに本音をしゃべった。隠し事をしても意味はない
「私たちはそんなに嫌われているのでしょうか?」
はやての質問にジャスティは好意的には見られていないことは間違いないと回答した
「お前たちはかなり身内から恨まれている。周囲に気を付けることだな」
いつ殺されてもおかしくない状況だ。
実際に時空管理局を壊したのは機動六課組である
真実という名のパンドラの箱を開けたのだ。その結果、黒い闇が大量に出てきた
そして時空管理局の規模と権力は大幅縮小。恨まない方がどうかしている
何もかも失った者も多すぎる
「私たちは幸運な方であるということですか?」
「まぁそういうことだ。もし助け舟としてこちらに異動しなければ殺されていたはずだ」
「そこまで・・」
「人の恨みは怖いものだ。特に金を失って毎日の生活に血反吐を吐くような所まで落とされた者はさらにな」
それは的中している。人の恨みは恐ろしいものである
自らに非があることを理解していないが、勝手に逆恨みをするような連中は多い
特にJS事件ではかなりひどい案件になっている。
機動六課組には時空管理局関係者からはかなり白い目で見られる
見られるのではなく、見られているのである
2人はそんなことを話しながらはやての執務室に到着した
「これがこちらで預かる主要メンバーの教導官役の資料だ」
ジャスティははやてにそれぞれの教導官役を務める捜査官の簡単なプロフィールが記載された資料を渡した
特に機密事項が記載されているわけではないので問題はない。
それに万が一に備えて顔写真は印刷されていない。
捜査官にとっては顔ばれしていたら面倒になるためである
身内ならともかく、民間人に知られるのは極力避けるほうが良い
「しばらくは車の中で待機の任務が多い。こっちは銃で勝負しているからな。扱い方を知らないなら渡せない」
そこに執務室のドアがノックされてきた。
はやてはなのはとフェイトが来ていますがと確認をジャスティに取った
彼は別に問題ないと回答するとドアロックを解除した
2人は入室すると敬礼してきた。
「中央パトロール本部捜査部3係所属のジャスティ・フォレスター。初めましてだな」
「「初めまして」」
「フェイトちゃんとなのはちゃん。異動の話について一緒に参加してもらってもいいかな?」
「俺としては各隊の隊長と話をしておいた方が面倒が減るっていうなら問題ない」
では失礼しますというと2人は会議に参加した
「エリオたちはどうなりますか?」
フェイトがさっそく質問してきた
基本的には戦闘部隊に幼い子供を配置されることは国際条約で禁止されている
ただし動物保護活動などの戦闘行為の生じることがない部隊への異動は容認されている
いきなり完全に0にするにはあまりにも危険すぎるという判断からである
それも長くは続かないことは間違いない
いつかは子供は大人に守られる平和な生活に戻すことになっている
子供が成人すれば将来を選ぶのは個人の自由である。それに子供のころから戦闘に出すのは危険すぎる。
だからこそ、しっかりとした教育を受けることができる平和な時間を作るは必要になってくる。
「それとこれだけは覚悟しておけ。お前らが魔導師でも俺たちはAMF装置が組み込まれた銃弾を扱っている」
魔導師として成績が良くても、俺たちの現場では常に死神が横で命を狩るべきか悩んでいると
ジャスティはまるで脅迫するかのように言うがこれも事実である
「だからこそ気を付けるようによく伝えておくことだ。上の幹部連中はお前たちのことを恨んでいる」
天国から地獄に落とされてしまったからなとジャスティの言葉にはやてたちの表情は良くない
だがこれもまた事実なのだから仕方がない
「大量リストラされた退役時空管理局員だけでなく、現役管理局員からもかなり冷たい目で見られている」
お前たちは正義を果たしたつもりでも仲間からはひどい目で見られている。
ジャスティは気にすることなく発言した
何度も言うが機動六課組に恨みの感情を持っている人間は極めて多い
どれくらいになるかは想像もつかないほどに多くの関係者から
「異動は現時刻で行う。基地の閉鎖は時空管理局本部と次元世界連合から承認を得ている」
はやてたちは今日これから基地の閉鎖という話を聞き驚いていた
もっと猶予期間があると思っていたのだろうが、そんなものは存在しない
大至急行うことが求められている。基地の外では今も抗議活動をしている人々がいる
彼らは基地を閉鎖してここから出て行けと主張している
簡単に言ってしまえば反時空管理局派の人間が集まっている
そんな状況でのんびりとしているような暇はない
「ここはいつ強襲されるかわからない場所だ。早急に隊員を動かす。はやて・八神。部下に速やかに通達を出せ」
俺は移送用のヘリを用意するとジャスティは割り振りを決めると無線で要請を出した
はやても基地内の館内放送システムを使って隊員を集めて除隊に関する通告を行う作業を始めた
ここからはスピードがものをいう状況である
『港湾本部から中央本部捜査部SA32へ。港湾本部基地からCH-46を2機派遣している。到着は10分後』
CH-46。最大で30人の人間を輸送できるヘリである。
通常は港湾パトロール海兵隊が使うことが多い。地上戦闘の場面で運用されることが多いからだ
「こちらも速やかに移動できるように手配に入る。到着1分前に再度連絡を」
『そちらに到着1分前になれば即座に連絡を入れる。それまでにすべての作業を行え』
了解と無線で返答するとジャスティははやてたちに5分以内にヘリポートにメンバーを集めるように指示した
1機は中央本部行き。もう1機は時空管理局本部庁舎に向かう。
中央本部に異動することになるメンバーはジャスティと一緒にだが、
その他の隊員は時空管理局本部庁舎に向かって配属先が決まるまでは時空管理局本部が用意した宿舎で待機である
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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム
『時空管理局債の市場価値は紙くず同然になり、同時に失踪した人間が多くいることが関係者の話か分かりました』
『一部関係者の話によるとマフィアやギャングなどの犯罪組織から資金を借入して金融市場と取引していたとの話も』
つまり犯罪組織にとっては回収できない資金など許されることではない
どんな手段を使ってでも貸した金を回収するために動く。たとえそれが借主の命を代償にしてもだ
それくらいのリスクはわかっていたはずだが、
時空管理局は壊れることのない組織だと過信していたら大きな逆風にさらされた
ただ、それだけの話だろう
「SA11から各員へ。市内の金融機関の支店の店内警戒を厳重に行え。すでに一部の金融機関で問題が起きている」
無線通信で指示を出した。実際に市内では銀行などの金融機関で立てこもりが起きている
これ以上問題を増やすわけにはいかないのだから、素早い対応が必要になる
こちらも人手がそれほど多いわけではないのでうまく運用しなければ穴ができてしまう
犯罪者にとっては空白地帯になる穴は絶好のチャンスと思うだろう。それはこちらもわかっている。
だからこそ空白地帯を作らないように最小限の人員でうまく包囲網を作らなければいけない
「とにかく警戒するしかないな」
そこに捜査部オペレーションルーム管制官のカリフ・ボーラが通信が入っていると伝えてきた
発信者はベルカ基地に配置されている港湾パトロール海兵隊 第7海兵遠征軍司令官からだった
「エイリー。久しぶりだな。トラブルか?」
エイリー・ホーフス中将。
ベルカ基地に配置されている港湾パトロール海兵隊部隊司令官である
『ちょっと手伝ってほしいことがあるのよ。お願いできるかしら』
「何をリクエストするかによっては俺でも対応できないこともあるぞ」
機密事項にアクセスするにはそれなりの手続きが必要になってくる
無理に強硬路線を突破するとトラブルが発生してしまう。
それは他の組織との協力関係にも影響してくるので好ましくない
『簡単なことよ。聖王教会内の財務状況について分析されているはずだから、その報告書を手に入れてほしいの』
「それはこちらに依頼しないでもできると思うが」
『こちらが直接介入していると悟られるわけにはいかないからよ。何とかならない?』
確かに彼女の言い分もしっかりとしている
ここでもし港湾パトロール海兵隊の幹部が直接資料請求をすれば何か動きがあるのではと考えられてしまう
それを避けるにはほかのルートから探ったほうが安全である
「できるだけ努力はしてみるが期待するなよ」
犯罪組織の情報ならそれほど難しいわけではないが、聖王教会は違う
一応、今も国際機関である。情報へアクセスするにはかなりの無茶なハードルがある
ミスは許されないことははっきりしている
「ギブリ。港湾パトロール安全保障局に情報開示請求をしてくれ」
「良いのか?かなり無茶な展開になるぞ」
「それくらいは覚悟している。多少の強引はこちらで引き受ける」
管制官のギブリはラジェットとの話を終えると港湾パトロール安全保障局に連絡して情報開示請求をした
あちらの壁は固かったが、請求している人物がラジェットであることを知ると意外なほどにすぐに開示された
「これはかなり危険な財務状況だな」
聖王教会の残されている唯一の財産は教会が保有している不動産だけである
以前は傘下に存在していた企業の株式などはすべて売却していた
今のままでは教会の財務状況は収入よりも支出のほうが多い
何としても新しい収入源を見つける必要がある
聖王教会債を発行するにしても金融市場で購入を検討する投資家はいないだろう
となれば残る手段は不動産などの財産を売るしか道は残されていない
徹底的に売りまくることで確保するしかない
それと支出に関する削減である。節約をすることで支出を少しでも引き下げること
残された方法はこの2つしかない
「ひどい有様だな。予想はしていたがここまでとは」
「ラジェット。このままだと聖王教会はいつ破産するかわからないな」
「ギブリ。聖王教会関係でさらに売却できる資産があるかどうかについて確認してくれ」
ギブリはすぐに財務情報を確認した。結果は不動産物件の売却しか道がなかった
それも安値で買いたたかれることは間違いないだろう
聖王教会が資金確保のための売却であることを知っている不動産に詳しいものは知っている
そうなれば通常の不動産相場よりも安値で取引される
「どんな道を選んでも聖王教会は追いつめられるしか道はないな」
不動産を安値で買いたたかれたら結局のところは財務状況は悪い状態だ
今年度は乗り切れても来年度はそうは簡単に事が進むわけがない
来年度の財務状況は最もつらい状況下になることは間違いない
支出を徹底的に切り詰めるしかない。収入が増えるとは到底考えられないことは確かである
聖王教会の収入は主に寄付金や以前は傘下になっていた企業からの収益だった
今年度は寄付金は大幅に値下がり。それどころか傘下の企業の株式をすべて売却した
つまり寄付金だけで財務状況をやりくりする事しかできない
かなり厳しい運用をしなければならない。
「時空管理局と同じで聖王教会も最悪の状態だな」
ラジェットの言葉はその通りである。このままでは絶対に破綻する。
誰かが立て直しのために新しい指導者を招き入れて改革するしか道はない
聖王教会の組織立て直しにはかなりの痛みを伴った改革が求められる
それに耐えることができるものがどれくらいいるかはあまり想像したくないところである
「この情報もエイリー・ホーフスに流しておいてくれ。彼女以外にはアクセスできないようにを条件に」
機密情報の取り扱い方に関しては彼女はよく理解している
別に伝える必要はないのだが念のためにである
こちらが伝えていないから情報が漏れたと言われるとトラブルが発生する
「本当に嫌な話だな。時空管理局も聖王教会も闇が深すぎる」
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東区東部サウスクラナガン港 魚市場 パトロール事務所
シエナは高速で海を航行しているクルーザーの情報を集めていた
持ち主はレンタル会社の船舶だ。会社の記録を調べるとかなり黒い情報が出てきた
この会社は退役時空管理局員が経営していたが、経営に行き詰って会社を売却
買い取ったのはマフィアと関係のある人物であった。名前はカーバイン・ブラキスト。35歳。
本人に前歴はないが、親がマフィアの幹部をしている
小型クルーザーは今も港湾パトロールからの無線の呼びかけに一切応答するつもりがないようだ
サウスクラナガン港管制センターが呼びかけを続けているが未だに反応がない
そのためF/A-18Eが港湾本部基地からスクランブル発進して追跡している
警告しても反応がない場合は攻撃が行われるかもしれない
できることならそうならないほうが良いのだが
「戦闘にならなければいいけど難しいわね」
レーダー上では戦闘機だけでなくヘリでも追跡が行われている
いつ攻撃されてもおかしくない状況にあるにもかかわらず、逃走を続けている
よほど捕まると危険なものを持っているのかもしれない
例えば麻薬や銃火器など。犯罪組織にとっは重要な資金源になるもの
それを小型クルーザーに何かを積み込んでいる可能性は高い
「港湾パトロール艦隊から艦船が派遣されて拿捕されたらいいけど」
今も逃げている。サウスクラナガン港に入るつもりだったクルーザーは針路を変えた
さらに南下している。このままではクラナガン市の海域から逃げられる
ラクロス州の海域に入ることは間違いない。
港湾パトロールの管轄であるので追跡することに違法性はない
違法物資を持ち込ませるわけにはいかないので今は拿捕することを優先事項にしなければいけない
麻薬や銃火器が密輸されたら後始末に苦労する。犯罪組織が力をつけてしまうからだ
そうなる前に止めなければならない
犯罪組織が力をつけてしまうと犯罪発生率が高まるだけなのだから
最近は銀行などの金融機関を狙った強盗事件が多発している
主犯は主に退役時空管理局員やその関係者だけでなく、時空管理局と関係を持ち甘い汁を吸っていた者も多い
そういった連中は財産をすべて奪われてしまった。
時空管理局との不正な関係を捜査されて、逮捕されることから逃げるために逃亡生活をしている
国内から他次元世界国に逃げ出すのは簡単ではないがミッドチルダ連邦国内だけでも広い
指名手配をして懸賞金をかけてまで追跡が今も行われている。その対象人数はかなりの数になる。
ミッドチルダ連邦国内だけでなく、次元世界連合全加盟国の法執行機関でも同じ動きをしている
今は真実を明らかにするために必死になって動いているのだ
『中央本部から各員へ。時空管理局機動六課組の移動がまもなく開始される。警戒されたし』
「ようやく始まるわけね。早く解決してもらわないと私たちとしても面倒になるから」
シエナは教導官役は任されていないが、特殊な経歴を持っている
クラナガン捜査局に入局する前は時空管理局本局に所属していた
しかし犯罪者の逃亡を許してしまったことから責任を追及されて時空管理局を除隊
その後はクラナガン捜査局に入局した。入局当初は白い目で見られたが今は大切な仲間と認められている
ちなみに機動六課のフェイトとは面識がある
「私には関係がないけど会うと嫌な人がいるのは幸運ではないわね」
シエナはフェイトとの再会を好ましいとは思っていない。
もちろん、関係があったことを自分から宣伝するつもりもないし公言するつもりがない
知ったところで関係のない話だと認識している
「今更こちらに泣きつかれてくるなんて無謀なことを考えてくれるわね」
自分たちで片づけることができなくなったから責任を押し付けてくる
確かに面倒な話であることは間違いない。自分たちで対応できないからと言って責任を押し付ける
『ドッジエネルギー社はサウスクラナガン第2石油精製所の一時的な運用停止を検討していることを発表』
サウスクラナガンコンビナートにはドッジエネルギー社が運用している石油精製所が2つもある
しかし、クラナガン市内本土側にはドッジエネルギー社は油田を確保していない
沖合400kmにあるブリストル島にはブリストル油田があるが、そこにも石油精製所が設置されている
そのためブリストル油田で産出された原油をサウスクラナガン石油精製所に運ぶことは基本的には行っていない
もし運ぶとなった場合はタンカーを使わないといけないという問題がある
フローレンス州西部のウエストフローレンス油田からパイプラインでサウスクラナガン石油精製所に送られている
その原油精製のためにサウスクラナガン石油精製所が設置されているが、
今年度からウエストフローレンス油田の近くに石油精製所が完成する。
そのため現在2施設あるうちの1つのサウスクラナガン石油精製所の閉鎖が以前から議論されていた。
いきなり完全に閉鎖ということははないが、少しずつ機能が移されることは間違いない
今の技術開発があれば惑星汚染物質の除去はほぼ99%は除去される
大気汚染や水質汚染などの心配がないように惑星汚染物質除去装置が運用されている
「SA24から港湾本部。他に問題は発生していないか?」
『こちら港湾本部。現在のところは他に問題は確認されていない。念のためE-767が上空に展開中』
E-767。早期警戒管制機が展開しているということは上空から海上を監視している
何か問題が確認されたらすぐにわかる。そのための早期警戒管制機であるのだから
『人工衛星からも監視をしています。船舶はもちろんですが、航空機の監視も続行中。何かあればすぐにわかります』
「異常が確認されたらすぐに連絡を。よろしくね」
『了解』
これでとりあえず保険はかけておいた。ただし港湾内は管轄権でもめることが多いところだ
特にクラナガン市の港湾は連邦行政機関の管轄にも該当している
それぞれがしっかりと機能していれば何も問題は発生しない
しかし少しでもトラブルが発生すると管轄権争いになることは間違いない
「今はこのサウスクラナガン港に不審物を持ち込ませないことを最優先にしないといけないわね」
この小説では事件は殺人だけではなく盗撮や痴漢などの軽犯罪の取り締まりも小説の中に書いていきます。