午後02:35 中央区南部ノースレパブリック地区 レパブリック小中学校
シエナは学校に到着すると校長室に通された
校長室には50代と思われる男性の校長が待っていた
「学校で麻薬が流通していることについて把握はされていますか?」
シエナはストレートに話を聞いた。遠回しにすることはやめて直球勝負に出たのだ
「それは・・・・・」
「校長として学校を守りたい気持ちはわかりますが、犯罪は犯罪です」
「・・・・我々も独自に調査をしました。確かに麻薬の流通があることは把握しております」
隠ぺいするつもりだったようだ。誰だって不祥事を明らかにするのは好まない
だが校長が証言した以上もう後には引けない。
「この件は捜査は我々が行います。まずは調査報告書を見せていただいても?」
校長に確認すると彼はすぐにシエナに提出してくれた
「できることなら学校内で処理したかったのですが」
「学校の名誉を守る気持ちはわかりますが。麻薬は犯罪です。今後はしっかりと通報をお願いします」
報告書に目を通すと麻薬密売が行われていることは間違いない
調査はかなり念入りに行われている様子だった。2名の男子生徒が麻薬密売をしていると記載されていた
2人とも年齢は15歳。中学3年生である
「この報告書に書かれている2名の男子生徒を呼び出していただけますか?それと会議室をお借りしたいのですが」
「わかりました」
校長はすぐに手配をかけた。警備スタッフの人間を呼んで連れてくるように指示を出した
会議室に連れてくる間にシエナはその会議室に移動した
「あとはこちらで捜査を行います。マスコミ対応の用意をするほうが良いかと思いますよ」
「わかりました。情報提供を感謝します」
対外向きの発表の用意をさせてあげるくらいの余裕はある
会議室で待っていると警備スタッフによって2名の男子生徒が連れてこられてきた
「中央本部捜査部のシエナ・アルフォード捜査官です。2人に質問したいことがあるのでそこに座ってください」
男子生徒2人の顔色はかなり暗いものだ。すでに状況を察しているのかもしれない
捜査部捜査官が来ている段階で状況は理解できて当然かもしれないが
「2人は麻薬密売に手を貸していると噂がありますが事実ですか」
シエナはここでもストレートに質問した。すると生徒2人は素直に認めた
「・・・確かに売っていた」「・・・俺も」
「誰から買っていたの?」
ネタの仕入れ元まで上げるつもりで聞いたがそこはだんまりだ
喋ったら卸元が危険な行動をすると察したのだろう
「喋らないと麻薬密売で起訴されて、最悪の場合は未成年者刑務所に収監されるわ」
でも今なら情報提供をすれば司法取引ができるとおいしいアメを用意した
刑務所に行くか、それとも取引するか。二者択一。
「・・・・証言したら本当に取引できるんですか?」
「麻薬の卸元は摘発の重要対象者よ。どちらにしてもあなた達にはチャンスは1度しかない。協力するか、しないか」
証言すれば検事には捜査には協力的であったと話をするわと。
捜査に協力的であったとなれば検事も多少は手加減をしてくれる
それに捜査協力で大物を釣り上げることができればさらに状況は良くなる
「・・・・レバヅリド・サッカードさんは知っていますか?」
その名前はよく聞き覚えがある。麻薬の卸元ではかなりの大手である
年齢は38歳。去年だけでも10億ミッド近い麻薬の密売に関与したとして麻薬取締局が指名手配をしている
それでも捕まらないのは彼が時空管理局員の幹部と太いパイプを持っていたからだ
捜査情報は筒抜けであり、今は逃げ回っている。
どこに潜伏しているかわからず、懸賞金がかけられている
「どこでいつも会っているの?」
「寮の近くでメタンフェタミンを受け取っています。代金を払って」
「ちなみに聞くけど。どれくらいさばいていたの?」
「・・・・・・1か月で50万ミッド分のメタンフェタミンを売っていました」
具体的には5か月間にわたって。つまり250万ミッドの収入があった
そのうち商品の入荷料金を引くと手元に残ったのは数十万ミッドになる
それで休日に街に繰り出して遊ぶ金欲しさに麻薬密売をしたとのことだ
「とりあえず2人を中央本部に連行します。そこでしっかりと証言をしてください。麻薬捜査課には私から話をします」
「「わかりました」」
「今回はまだ手錠はしないでおきますが、嘘をついたら手錠をされて刑務所に収監されることを覚悟するように」
「「はい」」
2人を連れて学校を出るとパトカーが2台待機していた
容疑者を一緒に乗せるのはルール違反なので1台につき1人を乗せて中央本部に連行させた
シエナはまだ寮の鑑識などを行う仕事が残っている。今なら寮には生徒はいないので楽に鑑識ができる
「2人の寮の部屋の家宅捜索に協力してもらえますね?」
「もちろんです。案内します」
2人は同じ寮の部屋を使っていた。学校寮の部屋に向かうと今は授業中なので学校寮には生徒はいない
男子生徒2名の寮の部屋に到着すると早速鑑識を開始した
いろいろと室内を探したところ、部屋のクローゼット内にメタンフェタミンの販売用に小分けされた小袋があった
さらに帳簿も発見することができた。そこには誰にいつどれくらいの量を販売したかが記載されていた
これだけあれば麻薬使用で多くの生徒を摘発することができる重要な物的証拠になる
「麻薬使用で芋づる式に立件できそうね。そのためにも証言してもらうしかないわね。友人を売るのは嫌だと思うけど」
その名前のリストの中にはレポース・ホイッス少佐の息子の名前が含まれていた
やはり麻薬を使っていた。酷い話だ。全寮制でも麻薬の罠から逃れることはできなかった
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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部2係オフィススペース
ダイナは取り調べの報告書を取りまとめていた
証言は間違いなく本人が素直に自供した。これで偽証と疑われることはない
本人は早く刑務所に戻りたがっている。そこに少し引っ掛かりを感じたが物的証拠もそろっている
証言も得られた。裁判でも十分勝ち目のある勝負ができる。検事も納得してくれるはずだ
そのための報告書作りをダイナは行っていた
「良かったわね。冤罪が立証されて」
ミカ主任が話しかけてきた
確かに彼女の言う通りだ。またしても真実を掘り返すことができた
これで時空管理局の捜査がいかに雑であったかが立証されたも同然である
「本当に雑な捜査ばかりね。金に目がくらんでおざなりにしたんでしょ」
「同意見です。隠蔽工作にしてはかなり手が込んでいる事もまた事実」
「それが隠蔽工作の証というものよ。事件捜査を妨害する時は徹底的に証拠を消すことを考える」
実際のところ今回の回収できた証拠は運が良かったからかもしれない
もし街灯観測システムの映像がなければ立証は極めて難しかったかもしれないのだから
「とにかく報告書は入念に作成することね。ミスは許されないわよ」
「もちろんわかっています。ミカ主任捜査官」
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南区中央部 中央パトロール南分署庁舎 6階麻薬捜査課取調室
フィリーとなのはが到着したころにはすでに麻薬捜査課の刑事がフェルリク・フォーゲルの取り調べを行っていた
マジックミラー越しに2人は取り調べの様子を見ていた
「お前が殺したのか?妻を?」
妻の死亡を突きつけてもなんとも思っていない様子だった
そのことにフィリーは内心では今からでも突入して首を締めあげてやりたい気持ちだったがぐっとこらえた
「あいつは俺の邪魔を下から頭を殴っただけだ。いつも俺の楽しい時間を邪魔する」
刑事の取り調べにフェルリク・フォーゲルは自分は何も悪いことはしていないと言いたいのだろう
麻薬を作っておいてそれは通らないのだが。あれだけのマリファナの密造となると重罪行為だ
かなり長い期間の刑務所収監は間違いない。今度ばかりは逃げることはできない
「マリファナの密造についてはどう言い訳をするつもりだ?」
「別に良いだろ。俺が個人的に使っていた分だ」
そんな言い訳が通るはずがない。個人で使うには量があまりにも多すぎる
必ず密売にも関与している。それにこの男がやっていたのはメタンフェタミンだ
マリファナではない。その時点で話が大きく食い違っている。そのことも理解していないのだろう
麻薬常用者にはよくある話である。麻薬の影響下で記憶が錯乱状態にあるということである
証言としてはあまり証拠能力はないが、麻薬使用に密造。おまけに殺人まで行っているとなると三振法が適用される
仮釈放なしの終身刑か死刑判決が待っている
「個人的に使っているだけで地下室にあれだけ大量のマリファナがあるわけないだろ。どれくらいさばいていた?」
「知るか?俺は自分用に育てていただけだ!」
「そんな言い訳が通るわけがないだろう。あれだけ大量のマリファナだ。誰がどう見たところで密造して密売していただけだろ」
「だったら証拠を見せてみろよ。俺が密売していたという証拠をな」
確かに密売していた証拠は今のところ確認されていない
証拠がなければ密売していたかどうかはわからないがここで役に立つのが銀行の記録だ
預金の残高の変動である程度分かることもある。
「銀行の記録を取り寄せた。クラナガンセントラルバンクに定期的に100万ミッドの入金があるな」
「だから何だ?」
「この出所は?」
追及したところ一瞬待ったが、カジノで勝っただけだと証言した
そんなことはあり得ない。1か月ごとに定期的に100万ミッドも勝てるはずがない
麻薬密売の収入であることはほぼ間違いない。口座の残高は今日の時点で800万ミッドになっていた
「毎月カジノで100万ミッドも勝てるのか。ずいぶんと景気が良いんだな」
「俺は得意だからな」
「バカを言うな。カジノで毎月100万ミッドも勝てる幸運な奴がいるか」
カジノに問い合わせたらすぐに分かることだぞと攻めるが相手は乗ってこない
実際のところ、カジノである程度勝ち続けると要注意リストに登録される
その情報はすべてのカジノ運営会社で共有される。いかさまをしているのではないかと確認するためである
だからこそ毎月100万ミッドも買っているような人間は常に警戒されている
確認すれば一発で分かるのだ
「カジノに問い合わせたらすぐに分かることだ。待っていろ」
そう言うと麻薬捜査課の刑事は1度取調室から退室した
「ヒスガード。手詰まりと言った感じかしら?」
取り調べを担当していたのはヒスガード・ナツリス刑事である
彼は麻薬捜査のベテランでもある。今までに数多くの麻薬密造工場は大物密売人を逮捕してきた
「正直言って、面倒な相手です。殺人で立件できますから麻薬に関しては使用だけでも行けますが」
「殺人の件はまだ確定じゃないわ。まだ検死が行われていないから、正確にはまだ殺人事件と決まったわけじゃない」
検死官が殺人であると判定するまではだめよとフィリーはヒスガードに伝えた
確かにその通りだ。殺人罪を適用するには検死で殺しであることが確認されなければならない
まだ検死が行われていないとなるとなおさらである
「とにかく今は麻薬の線で捜査をしましょう」
「了解です。フィリー・アクシオム捜査官」
デスクを借りるわねとフィリーが言うと空いている麻薬捜査課のデスクの使用許可がすぐに下りた
ここでカジノの記録を調べることにした
「膨大な量だから調べるのは大変だけど名前を検索にかけたらすぐに分かるはず」
カジノ運営会社が運用しているデータベースの検索エンジンに『フェルリク・フォーゲル』の名前を入力した
検索をかけるとむしろ逆であることが分かった。過去5年にさかのぼると累計で5000万ミッドも負けていた。
それでも支払いはしっかりとしている。カジノでお金を借りた記録は残されていなかった。
「カジノでぼろ負けしているじゃない。自供内容と一致しないわね」
「そのあたりを攻めてみる」
ヒスガードはそう言うと取調室に戻った
再度取り調べを再開した
「お前は過去5年で5000万ミッドもカジノで負けているな。勝っているとはとても思えない。どうやって負けた金を用意した?」
「それは・・・・・・・・・・・・」
「良いか。言い訳が通用すると思うな。こちらは真実を探るプロだ。どんな嘘をつこうと真実を追求する」
ヒスガードは徹底的に攻めていった。今のところは順調である
相手の壁を少しずつ壊しつつある。もう一押しといったところまで来たはず
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中央パトロール南分署庁舎 3階分署地域情報センター
サイノスとティアナはそこで情報収集活動をしていた
ティアナは本来はここに立ち入りすることはあまり好ましくない
「本当にここに入って大丈夫なんですか?」
「何か問題があれば僕が責任を取るから心配をしないで」
上司であるサイノスが許可すれば問題ない
もしもの場合はサイノスが責任を取れば良いだけの話である
「何か良い話でもないかな?」
サイノスはティアナのトレーニングになる事案を探していた
小さな事件でもあれば何かティアナに良い経験になる捜査ができる
あまり大掛かりの捜査となると後々大きな問題になることも想定されるため、
簡単に捜査にタッチさせるわけにはいかない。まずは少しずつ経験を積むことが重要なのだから
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