午後03:15 西区東部 クラナガンハイウェイ12号線(外環状線) 時計回り路線
捜査長官とラジェットとはやてとリィンたちが乗ったリムジンは順調にウエストクラナガン宮殿に向かっていた
ラジェットは万が一に備えて携帯情報端末で情報収集作業を行っていた
覆面護衛車両として2台が警戒のために配置されている
常に最悪の事態に備えての対応である。ちなみにこのリムジンは防弾仕様である
対戦車ミサイルも防ぐことができる特別仕様の車だ
捜査長官が公務で外出する時はいつもこの車を使うのが規則となっている
「かなり警備が厳重な車やな」
「これでも警戒は必要最小限にしているんだぞ。捜査長官護衛のためならパトカーの護衛を本来はつけたいが」
今回は民間の慈善パーティーということもあるため警備は必要最小限にすることにしたのだ
派手な警備は周囲に緊張感を与えることになるためである
「捜査部捜査官は警護任務もするんですね」
「リィン。本来は査察部要人警護課の仕事だが、今回はお前たちのお披露目会も兼ねているようなものだからな」
覚悟しておくことだなとラジェットは脅すかのように言った
確かにその通りである。お披露目会というのは全く外れているわけではない
政財界の大物が集まる場所で捜査部がしっかりと保護化しているということを、
アピールするためにはやてとリィンが代表に選ばれたのだ
苦労が絶えない任務であっても遂行することが求められる
それも完全に任務として割り切って参加するだけである
「はやて。念のためこれを持っておけ」
ラジェットは万が一に備えてテーザー銃を渡した
本物の銃を渡すわけにはいかない。保有資格がないのだから
だがテーザー銃なら資格がなくても保有することができる
防犯用で一般人も購入することができるためである
「これですか?」
「もしもに備えてな。だが使えるのは1度だけだ。予備はないからな」
「わかりました」
これははやてが自分の身を守るために必要なものである
現場では自分の身を守れるのは自分しか存在しない
生き残るためには時には究極な選択をしなければならないこともあるのだから
「捜査長官。今回のパーティーの目当ては何ですか?」
「政治家が集まるパーティーだよ。参加しないわけにはいかないよ」
はやてがどうして政治家が集まるパーティーに参加する必要があるんですかと聞いてきた
「捜査長官としてクラナガン捜査局を上手く運営するために、最善を尽くすために動いているだけだよ」
本当ならシエルにも来てもらいたかったんだけどねとユウ・ミズノ捜査長官は語った
捜査部の責任者としてなら当然である。機動六課組を受け入れているのは捜査部なのだから当然である
その代行としてラジェットが参加している。ラジェットは捜査部のナンバー2である
実質的にはだが。正式には2係や3係の主任捜査官である
----------------------------
南区南部 クラナガンハイウェイ6号線(南線) 北行き
フィリーとなのはたちは西区中央部ノースミーミル地区にあるティアイエル保護孤児院に向かっていた
「今の学校の手続きはどうするんですか」
「犯罪被害者救済担当官が行うことになっているから心配しないで」
事務部の犯罪被害者救済担当課は様々な犯罪被害者のアフターケアを担当している
数多くの犯罪被害者の救済を担当してきたのでアフターケアに関してはプロである
特に幼い子供に関しては慎重な対応をすることで有名である
心に大きな傷を背負ってしまうことがよくあるからだ
それを避けるために心理カウンセリングなどを実施している
「何から何まですみません」
エレスコ・フォーゲル君は本当に申し訳なさそうに言うがこれは当然の任務なのだ
「気にしないで。こういったことも私たちの任務だから」
私たちの仕事は罪なき人々を守ることだからとフィリーは語った
確かにその通りであるクラナガン捜査局員は罪なき人々を守るためにそれぞれ任務に就いている
どんな小さな事案であっても見逃すことなく捜査を進めることが求められている
「ちょっとラジオを聞いても良いかしら?」
フィリーはエレスコ・フォーゲル君に確認すると彼は大丈夫ですよと回答した
『クラナガン自然保護区を水源とするサウスクラナガン川に新たに水力発電所の建設計画が持ち上がっています』
サウスクラナガン川はクラナガン川の河口から150Km地点で合流する河川だ
自然保護区の水は温泉のように温かい水である。新たな水力発電所建設として市内にある最後に残された河川である
水力発電所の名前として最有力候補となっているのはサウスクラナガン水力発電所である
しかし自然保護団体が水力発電所は環境に与える影響が大きいとして反対している
電力分散化と新しい電源を確保するためには必要であるとしてクラナガン市政府は現在採算性などの調査を行っている
『クラナガン市政府は電源分散化で魔力精製炉発電所が停止したとしても必要最低限のライフラインを維持するための電力確保のためには必要であると声明を出しています』
『クラナガン市上下院議会でも賛成派が大きく占めているものの、環境保護には十分留意するべきとの意見は根強くあります』
「本当に政治は大変ね。まぁ私達にはあんまり関係ないことだけど。なのはたちとは違って」
『中央本部から各員へ。西区中央部ミーミル地区と近隣地区の警戒態勢を最高レベルに引き上げる』
「ああ、そういえば今日はパーティだったわね。今頃捜査部の誰かが押し付けられて行かされているわね」
「パーティーですか?」
「なのはは知らないわよね。数か月に1度は開催されるのよ。慈善パーティーがね。収益はすべて寄付金になるわ」
「寄付金はどうするんですか?」
「ティアイエル保護孤児院で生活している子供たちの生活費や貧しい人たちへの生活支援金として使われるわ」
実際のところ、今のクラナガン市内で生活が苦しい人間はかなり限定されている
大量リストラされた退役時空管理局員は再就職に困難を極めている
彼らは毎日ぎりぎりの生活をしているのだ。生活費も切り詰めるだけ切り詰めての
「とにかく今はティアイエル保護孤児院に急いで向かいましょう」
----------------------------
中央パトロール本部ラボ棟 2階マルチメディアラボ
シエナはラグナから借りた寝袋を使って空いたスペースで仮眠をとっていた
その間も顔認証システムで照合作業はシステムが自動で行っていた
ラグナは別の作業を行っていた。彼も1つの作業だけでなくほかにも多くの事件の証拠分析を抱えている
それだけに急いで作業をしなければならないのだ
『ピッ』
その音は顔認証システムでヒットしたことを示す音だった。
ついにレバヅリド・サッカードが合致したのだ
「シエナ。起きろ。一致したぞ」
「どこ?」
「クラナガンハイウェイ8号線( 西線 )西行き。西区西部だ。車両ナンバーは [ クラナガンサウスUPQ-7305] 」
「ヘリで追いかけるしかないわね」
もうすこしでクラナガン市外に出られるところだ
今から車で追いかけるにはすでに手遅れである
シエナは携帯電話を取り出すと西分署に連絡。すぐにヘリを現地に派遣するように求めた
今は最優先で追いかけることが必要であることからパトカーでの追走も要請した
「こっちもヘリで追いかけるわ。手配はかけるから。危険なカーチェイスになる前に押さえこんで」
『わかりました。早急に対応します』
電話を終えると今度は中央パトロール管制センターに連絡してヘリの手配をかけた
----------------------------
南区北部区域ノースイーストハーディー地区1番街2丁目と3丁目の間の通り
エルガとヴィータが張り込んでいる
エルガはある人物を見つけた。それを見て驚きの表情を浮かべた
「冗談だろ?」
「どうしたんだ?」
「とある大物麻薬密売人がいたんだがな。今も刑務所に収監されているはず。なのに外にいる」
エルガは車載情報端末でその麻薬密売人の情報を確認した
その結果、司法取引で仮釈放を得ていた。時空管理局の不正情報を提供した
見返りに早期に仮釈放の利益を得ていた
「また密売でもするつもりかもしれないな」
「司法取引は簡単にできるのか?」
「犯罪者もさっさと刑務所から出ていきたいと思っている。出られるならどんな情報でも引き渡して取引をする」
もちろん司法取引に似合うだけのビッグな情報でなければならないが
今は時空管理局の不正に関する情報なら大きく取り上げてくれる
取引をする材料としては価値あるものだ
「しばらく監視をするか」
エルガはそう言うと少し離れた場所からその売人の監視を開始した
----------------------------