午後04:00 北区東部イーストシャーロット地区4番街3丁目と4丁目の間の通り
アルシオーネはこのあたりで連続的に発生している空き巣事件の捜査協力に来ていた
1週間で20件以上の空き巣事件が発生している。あまりにも多すぎることから捜査部に協力が回ってきた
さらに自宅の一部を破壊するという行為まで発展してきた
空き巣から少しグレードアップし始めている危険な犯人がいることは間違いない
犯罪者というのは最初は小さな犯罪から始まる。
いずれはただの万引きが強盗事件にステップアップすることになる
悲しい話だがそれが現実なのだ
「それにしてもどうしてこの近辺を集中的に襲っているのかしら?」
そこが最大の謎だ。ここは別に富裕層が住んでいる地区というわけではない
確かにマンションなどが多いので空き巣に入るには部屋はたくさんあるしうってつけの場所ではあるが
「犯人はいつも高級品を盗んでいるところも引っかかる。まるで襲った家に高価なものがあることがわかっているかのように」
そう。これまでの20件の空き巣事件の被害総額をすべて足すと数十億ミッドにもなる
盗まれたのは金などの貴金属や家の中に金庫を置いている家が中心である
偶然にしてはできすぎである。高級品があることがわかっているようにしか見えない
「さっさと表れてくれると助かるんだけど」
張り込みは粘りとの勝負だ。じっと待つのも仕事のうちなのだから
--------------------------
東区中央部 中央パトロール東分署庁舎 6階刑事課オフィス
ラジェットたちは誘拐犯の到着を待っていた
今も移送中だがその間にはやて達に情報収集を任せていた
今回の事件にどんな裏事情があるのか表面的な部分を中心的に調べさせていた
さすがに機密部分に関しては扱わせるわけにはいかないのでそのあたりについては後々ラジェット自身が確認する
今は表面的に何故誘拐をしたのかその動機調査である
すでに犯人の名前はわかっている。名前はボイズレーク・ナットス。
レンタカーの借主から身元が分かったのだ
「聖王教会過激派の1人か」
聖王教会過激派は旧ベルカ自治区で利権を失った連中が組織した派閥である
ベルカ州政府に対して聖王教会へ政治権限の返還を主張している
「連邦議会議員に恨みを持っているのも納得だな」
連邦上下院議会で可決されて施行されたベルカ州政府発足法に抗議したかったのだろう
ベルカ州政府発足に伴い聖王教会は旧ベルカ自治区、現在のベルカ州内のすべての政治的権限を失った
そのため聖王教会の規模も時空管理局と同じで大幅縮小になってしまった
だからこそ利権を失ったものが過激派になってしまったのだ
「恨みを持つ者はかなり多いだろうな」
法案が成立してからこの手の事案が多く発生することが予測されていた
実際に連邦議員後援会や連邦議員事務所などでトラブルが発生している
FBIも捜査にかなり苦労している。あまりにも件数が多いからだ
「それにしても権力を失うと自暴自棄になるのはどこも同じか」
ボイズレーク・ナットスはベルカ自治区時代は聖王教会の政治部門に所属していた
そして甘い汁を吸っていたことはわかっている
それが途絶えたから誘拐などというバカな行為するとは呆れる話だ
「ラジェットさん。集めることができるだけの情報を集めました」
「私もです」
はやてとリィンは報告書をラジェットに提出してきた
2人はかなり念入りな報告書作成をしていた。情報はかなり詰まっている
「かなり情報収集の方法はわかってきたようだな」
「「はい」」
「良いだろう。今度からもっと深く探る練習をさせてやる」
ラジェットはその報告書を確認しながら携帯情報端末で報道番組を聞いていた
『先ほど連邦財務省はベルカ州政府に対して最大5000兆ミッドまでの貸付枠を用意すると表明しました』
『この貸付枠の主な使用名目はライフラインの整備などに充てるためのものになると発表』
『この発表を受けてベルカ州証券取引所の平均株価は大きく値上がりました』
その報道を聞いてラジェットはベルカ州内は今はかなりの好景気に沸いているなと感じていた
道路網の整備などで多額な資金が必要になるからこそ、低金利で連邦財務省から融資を受けたかった
今はバブル経済を抑えるためにミッドチルダ連邦政策金利が12%と高金利に設定されていることから、
低金利で融資を受ける方法は連邦政府から資金を調達するしかなかったのだ
「今に制御不能にならなければいいがな」
ラジェットはそんなことを呟きながらはやてとリィンを集めた資料を読んでいった
--------------------------
西区中央部 ウエストクラナガン廃棄物処理施設
トービー・オリッサスの遺体をトラックからおろすとフィリーは検死官がまだ到着指定なので簡易検死を行うことにした
まずは肝臓の温度を測定した結果、死亡推定時刻は午後1時から2時の間前後
死因はおそらく腹部に空いた銃創。弾は50口径
「あとは麻薬を使用していた可能性があるくらいね」
「どうしてそんなことがわかるんですか?」
「なのは。腕に複数の注射痕。献血に定期的に行ってでもいない限り、こんなに激しいあとは残らないわ」
フィリーはなのはに腕を見せた。そこには確かに複数の注射痕が存在した
麻薬常用者の可能性を疑うのは当然である
「弾があれば事件解決に貢献できるんだけどそれもないでしょう。自宅を捜索するしかないわね」
フィリーはそう言うと携帯電話を取り出すと中央本部に連絡。
トービー・オリッサスの自宅捜索を行うように指示した
しかし別の話題が入ってきた。トービー・オリッサスの自宅で火災が発生しているとのことだ
証拠をすべて抹消するつもりのようだ。何もかも灰にすれば立証できないと考えているのだろう
確かにそうかもしれない。現実というものはそう言うものである
証拠がなければ裁判にかけることはできない。フィリーは中央本部と通話をしながら情報収集を行っていた
『火事の原因は不明ですが近隣住民が爆発音を確認しています』
「完全な証拠隠滅が狙いね。とにかく現場から何か出たら報告して。よろしく」
『わかりました。火災捜査官にもそのように伝えます』
「どうしたんですか?」
なのはがどこかショックを受けた表情をしたフィリーの顔を見ながら質問した
「トービー・オリッサスの家が火災との報告を受けたわ。証拠隠滅に入っているわね」
「そんな!」
「本気でバックには組織がいるわね。背後関係を洗うのはかなり面倒なことになりそうだわ」
--------------------------
中央区西部 高度1200m UH-60 ブラックフォーク
シエナは今も学校に向かっていた
すでにセントラル分署の麻薬捜査課の刑事たちが学校寮のそれぞれの部屋の家宅捜索を行っている
「これからが本当に忙しくなってくるわね」
『ピーピーピー』
「シエナよ」
『セントラル分署麻薬捜査課のアイリース・ニケット刑事です。学校寮の家宅捜索をしているのですがかなり酷いです』
「かなり麻薬が蔓延しているということかしら?」
『はい。その通りです。現在確認しただけでも20名以上も麻薬に手を出していました』
「最悪のニュースね。マスコミは麻薬汚染の実態を好き勝手に報道してくることは間違いないから」
対応は慎重に行うようによろしくねとシエナはアイリースに依頼した
マスコミが騒げばことが面倒になる。できることならある程度事件の終焉を迎えてから報道してほしいが
この手の事件はマスコミは大好きである。好き勝手に報道するのは時間の問題だ
「マスコミが騒ぎ出したらもう止めることはできないわね。セントラル分署でも記者発表の用意をするようにこちらから伝えておくわ」
『わかりました。それまでに正確な情報収集作業を進めておきます』
「よろしくね」
シエナはそこで通話を終えた。今度はセントラル分署の分署事務課に連絡
マスコミ発表の用意をするように通達を出した。
できるだけ早く正確な情報を発表すれば最小限の騒ぎで抑えることができる
今はマスコミに好き勝手に騒がられるのは好ましくない。関係者が証拠隠滅をするかもしれないからだ
学校としても心証を悪くしたくないはずだ。そのためには早期の情報公開が求められることはわかっているはず
「それにしても20人以上も麻薬を使用しているなんてひどい話」
麻薬が蔓延していることがよくわかる典型的な例である
特に閉鎖的な空間ではよくある話ではあるが
今のシエナにできることはとにかく学校に急いで向かうことである
--------------------------
南区北部 クラナガンハイウェイ6号線(南線) 北行き
エルガとヴィータは中央本部に戻ろうとしていた
今回の事件は潜入捜査をしていたFBI連邦捜査官に時空管理局の暗部であるHRまで絡んでいる
事件はかなり複雑なものになることは間違いない
それに捜査の利害関係の調整もしなければならない
今回ばかりはかなり難易度の高い事件捜査になることは間違いない
できることならもう少しスマートな事件であればよかったのだが
そうは簡単に進んでくれるような案件出ないことは関係者からの話を聞いてよく理解している
面倒ではあるが1つずつ解決していくしかないのだから
「ヴィータ。この事件捜査で時空管理局の暗いところを見ることになるから覚悟することだな」
「わかっている」
「お前の友人も事件捜査で事情聴取をすることになるかもしれないことも理解しておけ」
「そこまでするのか?」
「当然だろ。事件捜査は徹底的に行う。たとえ身内であっても厳しく追及する」
エルガは関係者の知っていることはすべて明らかにしろよと命令をした
ヴィータが知っていることがあるなら何も隠すことなく報告することを求めた
「何も隠すなってすべてか?」
「そうだ。事件に関係することからその個人の情報に関することまで徹底的に話せよ」
「了解」
2人は急いで中央本部に戻っていった
--------------------------