午後04:15 東区中央部 中央パトロール東分署庁舎 6階刑事課オフィス
ラジェットはようやく港湾パトロール安全保障局のフレリーズ・ハロックが到着したのを見て遅かったなと声をかけた
「そう言うな、ラジェット。こっちにもいろいろと準備があるんだ」
「強引なことはするなよ。フレリーズ」
港湾パトロール安全保障局に属している人間の中には強引な聴取をする者がいる
そういうことを止めるのがラジェットの役割である
「フレリーズ。一緒に取り調べをするか」
「そうだな。お互い情報収集をスムーズに行えるからな」
2人は同意を確認するとそろって取調室に入っていった
ボイズレーク・ナットスはようやく到着したのかとこぼした
「待たせたな。お前の運命をかかっている人物を連れてきた。この男がお前の取引をより成立させることができる人物だからな」
知っていることをすべて喋れば執行猶予付きの判決になるように司法取引はよりスムーズに進むとラジェットは伝えた
「わかった。何を知りたい?」
「聖王教会過激派の勢力はどれくらいいる?」
フレリーズの質問に完全な人数は知らないがと前置きを置きながら回答した
「俺が知っている範囲で500人ほどだ。みんな利権を取り戻そうと躍起になっている」
「そんなに利権を失ったのか?」
ラジェットの問いに多くの聖王教会関係者が利権を失ってどん底まで落ちてしまったと
利権を失って金も失った連中は取り戻そうと必死になっているとのことだ
「本当に金が好きだな」
フレリーズの言葉にラジェットは人間は金が好きな生き物だからなと話した
聖王教会が利権を失って金も失った連中は必死になって取り戻そうとしている
そのためには犯罪行為をしてでも取り戻そうとしている
「困った連中だな」
ラジェットの言葉通りだ。かつての利権に取りつかれていることは間違いない
今は何としても失ったものを取り戻そうと必死になっている
ベルカ自治区時代には聖王教会は数多くの利権を持っていた
聖王教会が政権を握っていた頃は秘かに麻薬の密造施設が存在した
密造をしていた連中は聖王教会に裏金を渡すことで見逃してもらっていた
受け取った裏金は聖王教会にとっては秘かに様々な施設運営に利用されていた
今はベルカ州警察が徹底的に取り締まって州内にはほとんどの麻薬密造施設はつぶれた
----------------------------
西区中央部 中央パトロール西分署庁舎 2階ロッカールーム
フィリーとなのははシャワーを浴びて服を着替えていた
「なのは。ごみの臭いは落ちた?」
「はい。意外とすぐにクリーニングできるんですね。服は」
急がせたのだから当然でしょとフィリーは答えた
確かにクリーニングを急がせたのは当然である。なのはは服の予備がないのだから
作業服でよければいいのだが、現場捜査でそういうわけにはいかない
だからこそクリーニングを急がせた
「それじゃ着替えたら検死に行くわよ」
「また死体ですか?」
「そうよ。何か不満でもいあるの?これが日常よ。慣れなさい」
フィリーとなのはは服を着替えるとすぐにラボ棟1階検死ラボに向かった
検死担当はドラスク・ワームズ検死官であった
「ドラスク。どうして現場に来なかったの?」
本来なら現場に来てくれるはずだったが、結局来ることができなかった
だからこそフィリーの簡易検死が唯一の現場での検死作業になる
「別件で忙しくてな。すまない。だが簡易検死は当たっていたぞ」
「あれは現場でしたからよ。多少の誤差は出るでしょ」
確かに本職の検死官がやるのとでは多少の誤差が出るかもしれない
今は新しい知識もある。それだけに最新の検死技術を持っている検死官が検死をすることが求められる
「それはそうだが。検死官資格を持っているんだ。肝臓の温度を測定して計算したんだろ」
「まぁね」
「死因は腹部に空いた大穴が原因だな。50口径の弾だろ」
「ええ。今は銃器刃物ラボで分析させているところよ」
『ピーピーピー』
西分署銃器刃物ラボのウィリアム・トレーシア分析官から電話が入ってきた
「ウィリアム。今から行こうと思っていたんだけど、何か結果が出たのかしら」
『はい。この銃弾の線条痕を照合しましたが過去に使われた形跡はありませんでした』
データベースに登録されていないということは新人ということである
未登録の銃となると調べるのはかなり苦労することは間違いない
「新米ということかしら」
『そうらしいです』
引き続き調べてみますとのことだ
「わかったわ。ありがとう」
フィリーはそう言うと通話を終えた
ウィリアムは何かいい結果が出たのかと聞いてきた
「まったく逆よ。最悪のニュースと言った感じね」
----------------------------
中央区南部ノースレパブリック地区 レパブリック小中学校 保健室
男女ともに生徒たちは全員尿検査を受けるために集まっていた
だが尿検査をするまでもなく麻薬使用をしているであろう人物はすぐに察しがついた
理由は簡単だ。顔色が明らかに悪い子供。ばれると思っているのだろう
シエナは顔色が悪い小中学生に話しかけて事情聴取をしたところ素直に認めた
「どうして麻薬なんてものに手を出したの?」
「眠気覚ましに効果的だって言われて悪いことだとわかっていても学力を維持するためにどうしても必要で」
眠気覚ましに麻薬を使うことは良くある話だ
運送業界では徹夜で車を運転する時に眠気をどうにかするために麻薬に手を出すことは珍しいことではない
それを学力にも波及しているとは。影響は大きくなっている
「だから麻薬に手を出したの?麻薬で学力は良くならないわ。むしろ逆効果であることを考えなかったの?」
「勉強ができてテストの点数が上がったので。常習的に使うようになってしまって」
典型的な使い方である。あとダイエットにもなると言って麻薬を使用しているケースもある
麻薬を売るときはいろいろと広告を作って密売してくるのだから
その後、尿サンプル提出の前に麻薬使用を認めた生徒は15名。
まだまだいることは十分に予測できる。これは大きなトラブルになることは間違いない
学校側の対応もかなり苦労するだろう
----------------------------
中央パトロール本部庁舎 8階捜査部レイアウトルーム
エルガとバレッツは記者発表の状況は携帯情報端末で見ていた
『先ほど我々は時空管理局が過去に押収した銃火器の横流しをしている事実をつかみました』
『この件については時空管理局犯罪捜査局などと連携して捜査を行うことを決定しました』
記者の1人が横流しはどれくらいあったのかという質問をしてきた
しかし報道官は現在も捜査を行っているので詳細な情報がわかり次第あらためて記者発表を行いますと回答した
「さすがは中央本部の報道官だな。記者な使い方がうまい」
「こっちはマスコミとは友好的な関係を結んでいるからな。時には特ダネを提供をすれば満足するしいろいろと好都合だ」
マスコミと友好的な環境を作っているからこそ報道管制を敷くことができる
また情報を素早くばらまくこともできる。捜査においては大きく重要なことである
誘拐事件の場合で犯人の容姿がわかっている場合は素早くマスコミに流して報道してもらう
市民からの通報によって早期解決につながることもある。時には伏せておいてもらうために報道管制を敷く
『時空管理局が押収したものを横流ししていることはまだほかにもあるのですか?』
『それに関しては時空管理局犯罪捜査局の捜査結果を見なければわかりません』
「さすがは見事な報道官だな」
バレッツの言葉にエルガはこっちの報道官は優秀だからなと回答した
中央パトロールの報道官は様々な記者発表を経験してきた
それだけに記者発表のやり方は心得ている。どんな状況になっても対応できるように鍛えられている
「それで次はどうする?」
「バレッツ。過去3件の事件記録を全て確認しよう。何か一致する点があるかもしれない」
もしかこの事件で今回のものと共通するものがあれば事件捜査に大きく役に立つ
共通点を調べるには過去の事件記録を確認すればいい。
エルガとバレッツは携帯情報端末を使って確認作業を開始しはじめた
----------------------------
北区東部イーストシャーロット地区5番街1丁目12番地503号室
アルシオーネは指輪のイニシャルを基に空き巣に入った家を確認することに成功した
早速現場鑑識をすることにした。その前に家の持ち主に確認を取り鑑識の許可をもらった
カギは空き巣犯が破壊していたので簡単に室内に入ることができた
「それにしてもどうやってお金を持っている家を襲っているのか知りたいわね。ただの偶然にしては幸運すぎるし」
室内には荒らされた痕跡はない。ダイヤル式金庫をこじ開けることなくきれいに番号をそろえて開けていた
金庫破りに関してはかなり得意分野になるようだ
金庫の購入者をリストアップしていたのかもしれない
「カバンから1000万ミッドも入っていたし、指輪などの貴金属。金持ちのリストを持っているのかもしれないわね」
その後も金庫を中心に指紋などの採取を行っていった
携帯情報端末を使って指紋情報を照合した結果、金庫を開けた人間はメブラード・ギャレット
35歳。窃盗罪で3年前に逮捕されて刑務所に収監されている。懲役2年の判決を受けて、半年前に出所したばかり
出所してすぐに再犯をするとは呆れた奴だ
「問題は金持ちのリストをどこで手に入れたのか。追及することは多いわね」
アルシオーネは引き続き現場鑑識作業を続けていった
----------------------------