Lupln the third × Lycoris Recoil 〜泥棒と彼岸花と謎の壺〜 作:VOSE
…とある病院にて…
「…うっ…」
1人の女の子が目を覚ました。
「…千束、目を覚ましたか」
目を覚ましたのは錦木千束。
昨日起きた『石蒜壺』の事件で、ルパンと次元の2人のコンビネーションにより、銃弾を受けた子である。
その千束のベッドのそばにいたのは、黒人の男…『喫茶リコリコ』の店主のミカである。
「…店長?」
「大丈夫か?千束」
「うん、よぉく眠れた」
「大丈夫そうだな」
「えへへ…」
千束はふと、当たった右肩を見た。
包帯が巻かれている。
千束は試しに右肩を動かそうとした。
「待て、千束。動かすな」
ミカはすぐに千束を止める。
「え?」
「医者から止められてる。無理に動かすと治らなくなるからな」
「ということは…」
「しばらくリコリスの活動はお休みになる」
「そっか…」
ミカからリコリスの活動休止の話を受けた千束は、すこし神妙な顔つきになりながらも…
「いやぁ、そうなったらしばらく本当に暇になるね!そしたらたきなと思いっきり遊ばなきゃ!」
すぐに調子を戻して笑顔になった。
しかし…
「あぁ、それなんだが…」
ミカがさらに重い顔つきになった。
「え?先生どうしたの?」
「千束…大事な話があるんだ」
「え?え?たきなのこと?もしかして、本部に戻ることになったとか?」
千束の期待を込めた顔になるにつれ、ミカの顔はさらに重苦しくなった。
「…その逆だ…たきなは…DAを脱退した」
ミカの言葉に、千束は固まる。
「…え?」
千束がようやく出せた声は、小さい絶望の声だった。
「その上、たきなは現在DAの抹殺対象に挙げられてる」
「…どう…して…?」
「俺もわからない…もちろん俺も止めたが…ルパン三世との戦いで何か思うことがあったのか…何も言い出せなかった…」
「そんな…嘘でしょ…でも、それだけで…抹殺対象には…」
「抹殺対象になった1番の理由は…次元大介と共闘したことだ」
「え…どういうこと…」
千束の頭の中は真っ白で、ぐちゃぐちゃに崩れていくようだった。
「どうしてたきなが次元と共に行動しているのか、検討がつかない…とりあえず、俺がなんとかするから、千束はここで…」
ミカは千束に安静にするように話そうとした時だった。
千束はバッと布団から出て病室から走り出した。
「千束!」
ミカはすぐに千束を追いかけた。
(…たきなが…DAを…?しかも昨日私たちが負けた相手の元へ?)
千束は裸足のまま廊下を駆け巡った。
(どうして…たきな…どうして!)
そして千束がとある廊下の角を曲がった時だった。
「止まれ」
千束の目の前に、廊下の中央で仁王立ちする楠木がいた。
「…楠木さん…」
「お前は休め。これは命令だ」
「…休められるわけないでしょ…なんで…たきなを…」
「私が決断した。その結果、奴は我々の敵と行動し、妨害まで行った。これはDAに対する攻撃とみなしても問題ないだろう」
「それでも!たきなは私の大切なパートナーなんです!」
楠木の淡々とした言葉に、千束は珍しく声を荒げる。
「楠木さん…そこ…どいてもらえませんか…私は…たきなの元に行きたいんです」
千束は楠木に、震えた声で懇願した。
「どうしてだ」
「私のパートナーだからです」
「我々の敵になるぞ」
「だからなんなんですか。たきなだけが抹殺されるくらいなら、私も受けます」
「お前の場合はたきなとは違う。お前までがDAと敵対するなら、それこそリリベル以上の軍を大勢投入してまでお前を殺さなきゃいけなくなるぞ」
「だから、それがなんだっていうんですか…」
「それに、ミカやミズキを巻き込むことになるぞ」
「…」
「お前の軽率な行動で、2人も同類とみなされてもおかしくなるなるんだぞ」
「それは…」
「…もし、たきなを思うのなら諦めろ。奴は抹殺の対象だ。せめてお前の前で葬式くらいはあげてやるさ」
わなわなと震える千束に対し、楠木は冷静に諭す。
しかし…
「…それでも私は、たきなを助けたいんです!先生にはちゃんと謝ります!ミズキにも!」
千束は意思を変えることはなかった。
「…千束、私の言ってることがわからないのか?」
「先生やミズキは私が救います!私が守ります!たとえこの国から狙われることになっても!」
千束の真剣な眼差しに、楠木ははぁとため息をつく。
「…たきなは今福岡へ向かってる。我々も追いかけているが、少し遅くなりそうだ。今から飛べば、我々が着く前にたきなと合流できるかもしれん」
楠木はわざと千束に聞こえるように話した。
「…わかりました。ありがとうございます!」
千束はそのまま楠木の横を通り過ぎていった。
「…はぁ…相変わらず、お前のところのおてんば娘は活気がいいな。ミカ」
楠木は廊下の角に向かって言った。
その角から現れたのは、先程病室にいたミカであった。
「あぁ。自慢の娘だ」
「たきなもか?」
「たきなもだ。やはり2人は気が合うということだな」
「そうだな…まぁ、これでも問題はあるまい。ただ、これでお前にも苦労をかけることになりそうだがな」
「別に構わん。こうなることは予想していたさ」
ミカは少し目を瞑ったあと、すぐに楠木の方を見た。
楠木は少し笑った。
「これよりミカ、貴様を拘束させてもらう。良いな?」
「あぁ」
楠木はミカの拘束を口上で伝え、踵を返して歩き出した。
ミカもまた、その楠木の後を追うように歩き出したのだった…