Lupln the third × Lycoris Recoil 〜泥棒と彼岸花と謎の壺〜 作:VOSE
…数日後…DA本部…
「…千束を始めとしたファーストをもってしても防衛に失敗…それどころか千束を長期にわたる戦線離脱にさせるとはな…」
司令官の楠木は報告書を淡々と読み上げていた。
「…唯一の救いは、これだけの騒動があったのにも関わらず、我々の存在は一般の人に認知されることはなかったこと…石蒜壺に関しては調査のために
淡々と読み上げていく楠木の言葉は、怒りにも悲壮にもならない、何とも言えない雰囲気を漂わせていた。
「…これは
楠木はふと目線を机の向こうに向けた。
そこにはずっと頭を下げているフキ、そしてたきながいた。
「今回このような失態を犯してしまい、申し訳ありません…」
「申し訳ありません…」
2人は楠木に深々と謝罪の弁を述べた。
「…気にするな…今回の作戦の失敗は私にある…明らかにルパン達を舐めていた」
楠木は静かに2人の謝罪を受け入れ、全ての責任を負うことを述べた。
「しかし、今回我々があの時ガスに気づいていれば!」
「それは仕方ない…我々も何とかしたかったが、防犯カメラと通信以外の機能が妨害されてた…こちらにも責がある」
「…でも…」
「憎いか、ルパン三世が」
楠木がルパン三世の名を言うと、2人はピクリと身体を動かした。
「…はい」
「たきなもか?」
「…私は…」
たきなはようやく顔を上げた。
そのたきなの目の奥には、メラメラと燃えるものがあった。
「私は、次元大介ともう一度戦いたいです」
「ほう?」
「あの男はすごかったです…何でも見透かされているような感じがして…だからこそ、私はもう一度戦って、勝ちたいです」
「…なるほどな…」
「そこでお願いがあるのですが」
「ん?なんだ?」
「…私はしばらく、リコリスを抜けたいと思います」
「んな!?」
「…」
突然のたきなの発言に、フキは驚き、楠木はじっとたきなを見つめた。
「…私は、ルパン三世のことを知りませんでした。もちろん、次元大介のことも。ただ今回、実際にその2人を目の当たりにして…すごいとしか言いようがありませんでした…私はもっと、磨かなきゃいけないと思ったんです…動けない千束の分まで…そのために…」
「…おい待て…たきな、お前何を考えてるんだ…」
たきなの話の途中でフキが声を上げた。
何かを感じたらしい。
「…私は、しばらくリコリスを抜け、次元大介に師事しようと考えてます」
「たきな!お前…敵に寝返るつもりか!」
フキはもちろん声を荒げた。
今回の事件で完全に敵とみなした相手の元へ行く…それはリコリスの敵のはもちろんのこと、日本中を敵に回すと同等の意味を指す。
たきなの発言は、到底看過されるものではないのである。
「寝返るつもりはありませんし、リコリスのことを話すつもりはありません。ただ…あの人についていけば、何か掴めるような気がするんです」
「だからといって、ここを抜けてルパン達についていくことはないだろ!」
「それでも私は…このままではダメだと思ったんです」
「だーかーら!!!」
と、たきなとフキで水掛け論になったところで…
「そこまでだ」
楠木が2人を止めた。
「…たきな。本当に抜けるんだな?」
「はい」
「…わかった。たった今から井ノ上たきなはリコリスから脱退処分とする」
「司令官!」
「フキは今は言葉を慎め」
「…はい…」
フキはヒートアップしてしまい、声を荒げてしまったが楠木に一蹴された。
「…本来なら、この場で処分することになるが、今だけ許そう。ここから先は…わかるな?」
「わかっています。それでは、失礼します」
たきなは踵を返してその場を後にした。
「…司令官…」
「今は放っておけ…千束をやられておかしくなったんだろう…」
「それにしても、向こうに寝返るなんて…」
「それが、あいつなりのやり方なのかもしれないな…」
楠木はふぅと息を吐いて外の景色を見た。
「…延空木の事件後、千束とたきなの絆はより硬いものになった。だからこそ、今回の件はたきなとしてはやるせないものだろう…」
「だからって…」
「それにたきなの離脱は
「想定内…ですか…」
「あぁ。お前には後で話しておくからあいつのことは放っておけ。それより千束の様子はどうだ?」
「撃たれたショックで気絶していますが、撃たれたのは右肩なので命に別状はないかと」
「そうか」
「しかし、銃を撃てないとなると、これ以上ルパンを仕留めるのは厳しいかと…」
「そこは心配いらない。ルパンのアジトと思しきところには目星を付けている」
「目星を…ですか?」
「あぁ。あとはある人の力を借りることになるがな」
楠木はそう言うと、とあるファイルを手に取ってフキに渡した。
そのファイルの中にあったのは、『銭形警部』のプロフィールであった…
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…都内某所…
アジトに着き、一息ついていたルパン達は一夜あけて、泥棒の成功の打ち上げを行った。
「ふぃぃ…やっぱビールはうめぇや」
「こりゃたまらんな」
2人で仲良く缶ビールを片手に、すき焼きを囲って食べていた。
「しかし、それが本当に『不老不死の薬』のありかがわかるのか?」
「さぁな…でも、不二子ちゃんのためなら何だってするからね!」
「全く…毎度のことながら不二子のことになりゃ…」
と、2人で談笑していたが、ルパンが徐に指を立てて静かにするようにジェスチャーを送った。
「…どうした?ルパン」
「…妙だな…日が昇ってるのにやけに静かだ」
不気味な静かさを感じたルパンは、静かに外の様子を覗いた。
「…リコリスか?」
次元は知ったこっちゃないと言わんばかりに、卵を割ってかき混ぜる。
「あぁ…しかも包囲してやがる…」
「こりゃ絶体絶命だな」
「全くだぜ…ちと煽りすぎたかな」
「煽りすぎくらいがちょうどいいってもんよ」
ルパンも自分の席へ戻り、すき焼きを頬張った。
「しかし、包囲してるのになぜ突撃して来ないんだ」
「おそらく、何かきっかけを掴もうとしてるんだろ…監視社会とはいえ、ここまで戻るのにAIすら騙せるジャミングをたくさん使ってるんだ」
「お前が開発したやつだろ?」
「だから、これで少しでも時間稼ぎになってくれりゃ…」
と、ルパンが話した次の瞬間…
「おい、ルパン!ここにいることはわかってるんだぞ!」
聞き慣れた声が玄関から聞こえてきた。
「おいおい、こんな時にとっつぁ…」
と、呆れたルパンだったが、突如何かを察した。
「…マジかよ…」
ルパンは冷や汗をかきながら呟くのだった…