ひねくれ元・防御術士はなにもしたくないのに   作:oomaguro

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第十七話 冷静になると大変なことしたよね

つまみだされた不審な二人組は、意外にもそのまま退散していった。

周りの酔っぱらいから聞いた話では、チハルさんに『出禁』にされた存在は指定の期間、ギルドに入ることもできなくなるとか。

 

よくできた、というか、固有術式にしたって単独の魔術としては強力すぎる効果だ。

多分よっぽど燃費が悪いか、複雑な発動条件があるんだろう。

 

「んんっ、もぐもぐ、ごくん。多分、固有術式の範囲を『この建物内』みたいに限定することでいろんな効果を上乗せしてるのかな?それからたぶん、ごきゅ、『敵が魔術を使わないと発動できない』とか、『こっちから敵意を出してはいけない』とか……んぐ、なんなら『スマイルを崩していないこと』みたいなのも発動条件にしてたり?もぐっ、うん、美味しいなぁ」

 

「ミ……ミーシャちゃんはなんでそんなに落ち着いているの……」

 

キリエはあれからひとしきりチハルさんを慰めた後、しばらくギルドの面々の拍手喝さいを浴びていた。

が、そんなハイテンションも落ち着いたのだろう、正気に戻ったキリエは今はわたしの隣で悶絶している。

 

「ビビりようがないよ。なにせ、わたしはキラザに会ったこともないんだから。ほら、キリエも自分の分食べな?」

 

「う、うん……」

 

キリエが顔面蒼白だ。さもありなん。

 

「ねぇミーシャちゃん。あのキラザさんの槍の攻撃、ミーシャちゃんが守ってくれなかったら、私、その、し、死んでた……よね?」

 

「……あー」

 

気もそぞろと言った感じでテーブルに視線を落とすキリエ。まぁ、そう思うよな。

 

「まぁ、気にするなよ。あの固有術式はA級のなかでもかなりの上澄みだから。怖かった?」

 

言葉に、F級は奥歯をかみしめて、

 

「うん……。ぜんっぜん見えなかった、動けなかった……怖くて……悔しいよ」

 

わたしはさらに質問する。

 

「そんなに真っ青になるんなら、なんで出て行ったんだよ。あいつらがAランク冒険者だって知ってただろ?」

 

結果論だけど、黙っててもチハルさんが何とかしただろうし、そうでなくてもギルドにたてついた奴などほっとけばいいのだ。

チハルさんが対処できなかったとしても、その上司のもっと洒落にならない奴が出てくるだけなのだから。ギルドマスターとか。

少なくとも、部外者のキリエが突撃する意味は正直、薄いように思えた。

 

言葉にキリエは曖昧な表情を浮かべて顔を上げる。

くりくりとした瞳は弱り切っていて、それでもわたしをまっすぐに見ていた。

 

「えっと……?だって、チハルさん、困ってそうだったし……あいつらもすっごいコウアツテキで、ヤなやつだったし!?……とにかく、あんなの酷いよ!ほっとけないよ!」

 

「…………………」

 

「うんっ!だよね!!立ち直った!わたし、まちがってない!!」

 

なにやらセルフリカバリーをキメて、ぐっ!と力強く両の拳をに握るキリエ。

 

……えぇ。

それでいいのか。いいのかそんなんで。

 

「そっかぁ……。でもあれだ。ちょっと間違えれば大怪我だったんだから、そこは反省しろよな。槍が飛んできて流石に後悔したろ?」

 

「え?そんなことないよ。なんで?」

 

真顔で返された。即答だった。

 

「なんでって、自分で言ってただろ。死にかけたんだぞ、お前」

 

「あ!それは怖かった!怖かったけど、でも、あそこで黙ってたら……」

 

キリエが何かを逡巡して、少しだけ目を伏せる。

 

「黙ってたら?」

 

「……なんか、嫌じゃん!それだけ!」

 

「……っふ!あっはは!キリエ、やっぱ変わってるよな!」

 

「えぇ!?そんなっ!褒めてくれるんじゃないの!?」

 

キリエがだん!とテーブルに両手をついて立ち上がる。

表情がくるくる変わる奴だ。あぁもうなんて顔だ。

 

「褒めてるよ、ばーか」

 

「そ、そんな……罵倒するおかおさえ可愛い……かわいいけど……でもなんでぇー……?」

 

本気で頭を抱え始める姿がおかしくて、わたしはひとしきり笑う。

 

笑ってから、悶絶するキリエと、こんどはちゃんと目を合わせて、

 

「……それで、【掌の上の小宇宙】だっけ。なんで欲しいんだ?」

 

「……へ?」

 

 




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