ひねくれ元・防御術士はなにもしたくないのに   作:oomaguro

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第十九話 残虐バトルロワイヤルって言った?

「……というわけなんだ。わたし達、『ナザングル大宝探し大会』に出たいんだけど、どうしたらいいかな」

 

「宝探し大会ですね!今年はすごいですよ!クエスト受注用紙をお渡ししますので、必要事項をご記載ください!」

 

数日後、ギルドのカウンター。

 

ニコニコ笑顔のチハルさんから用紙を受け取り、そのままカウンターでかりかりと鉛筆……っぽい謎ペンを走らせていると、カウンターから身を乗り出してチハルさんが話しかけてくる。

 

「それにしても、残虐バト……『宝探し大会』にエントリーするんですね。何か欲しいアイテムでもあったんですか?」

 

「えへへ、そうなんです!ずばり狙いは景品No.001の『小宇宙の記憶』!」

 

キリエ目をキラッキラさせながら、懐からチラシを取り出しその一か所をびしぃ!と指し示す。なにそのドヤ顔。

 

あと今この受付嬢『残虐バト』って言いかけたか?残虐バト何?

 

わたしの視線を華麗にスルーして、チハルさんがへぇーと驚きながら、

 

「『小宇宙』……どまんなか目玉商品じゃないですか。だ、大丈夫ですか?」

 

「へ?大丈夫って、何がです?」

 

キリエのきょとん顔に、緑の受付嬢はなんだか難しそうに眉根を寄せて、

 

「今年の目玉商品は去年までとは格が違いますから。都市内だけじゃなく、近隣からも結構な参加者が集まってきているらしいんですよ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「そうなんです。ナザングルきっての武闘派、名うての冒険者集団、その辺のチンピラ軍団まで……。外からだと西方騎士団とか、王都のBランクギルド『ワイルドハンター』からのエントリーもありますよ。あとそれから」

 

チハルさんはこっそりと顔を私たちのほうに寄せてから、小声でこんなことを言った。

 

「『キラザのパーティ』の人たちも、さっきエントリーしていったんですよ……」

 

「うぇ、なんで……」

 

こんどはわたしが顔を顰める番だった。チハルさんは一つ頷いてから、

 

「えぇ。先ほど魔獣使いのシュリさんがエントリーシートを取りに来ました。キラザさんはわたしの『出禁』で二週間魔力が放出できないはずですから、多分残りのメンバーから2人選んでくるんじゃないでしょうか」

 

「あれぇ?今さらっと怖い能力(こと)言いました?」

 

「はい?何がです?」

 

愛嬌のある顔面をこてりと傾けるチハルさん。

条件がきつそうとはいえ、当たれば相手が魔力が全く練れなくなる能力としたら、めちゃくちゃ怖い能力だ。

 

この世界で魔力が練れないということは、単に魔術が使えないというだけの話ではない。

無意識下に発動している身体強化や精神安定化なんかの、微弱な魔力流で構成されるあらゆるバフが維持できなくなるのだ。

 

魔力切れだと同じ状態になるのだけど、これがまた地味にキツい。街に出るのに服を着てはいけない位の縛りである。

 

そして、固有術式の内容には、個人の精神のありようが極めて強く反映される。

 

つまり、ここから導き出される結論は一つ。

 

チハルさん、性癖えぐいな。人は見かけによらないというか、まぁ、意外だ。

 

「……ミーシャさん?どうしたんですか?憧憬とドン引きのないまぜになったような顔で私を見つめて」

 

「そんな顔してません。これは『今日晩御飯何食べようかなぁ』の顔です」

 

「それ考えながらまっすぐに私のほうを見るのもどうなんです……?」

 

チハルさんはこほん、と咳払いをして、

 

「でも、本当、気を付けて行ってきてくださいね。キリエさんとミーシャさんが怪我をしたら、悲しいですから。うぅっ……」

 

今度は泣き真似をしてみせる。ブチギレ営業スマイルじゃない時はなんというか、かなりお茶目よりの人である。

 

いや、じゃなくて。

 

「やっぱり怪我はする感じの大会なんだ……」

 

緑の受付嬢ははけろりと表情を戻して、

 

「それはもう。冒険者同士のなんでもありのお宝争奪戦ですからね。ギルド主催とはいえ、毎年死に……ちょっとしたけが人は出ますよ?」

 

「今なんか忖度したよね?自社製品のマイナス情報を言えない感じのパワーが働いたよね?」

 

「だ、大丈夫ですよう。会場内は完全生中継、けが人が出たら全国に犯人まるわかりですから。灰も残らないくらい焼き尽くされたりとか、大質量でぺちゃんこにされたりとかしなければ……ねぇ?」

 

「何がねぇ?だ。ようは殺し合いじゃんかよ」

 

第一冒険者の活動はすべて『自己責任』だ。

合意の上でバトルになって、片方が怪我をしたからって何かの御咎めがあるわけでもない。

 

「てへへ……ばれちゃいました」

 

チハルさんがぺろりと舌を出す。

 

……キラザが暴れた例の件以降、チハルさんはわたしたち二人にちょくちょく話しかけては、ちょっとした情報をくれるようになった。

井戸端会議レベルの内容がほとんどだけど、今回みたいにたまにガチの攻略情報もくれるから侮れない。

お陰で、やるべきことが分かった。

 

「えっへへ、だいじょぶだよミーちゃん!ギルド公認?のイベント?なんだから、そんな危ないこともないですよねチハルさん!」

 

「ねーっ?」

 

「だから何がねぇ?だ。仲良しかよ」

 

「というわけでミーちゃん!頑張っていこうね!『小宇宙』以外の景品も高いのがあるみたいだし、目指せ一攫千金!!」

 

「キリエこそ出場の目的忘れてない……?」

 

ついに一攫千金とか言ったよこの人。母親の情報探しはどうしたんだよ。

 

「もー!そっちも勿論忘れてないよ!もっとやる気出して!私は本気なんだからね!」

 

「はぁーい。がんばりまぁーす」

 

「うわっ絶対乗り気じゃない時の返事だ!」

 

どこまでも軽薄な調子のキリエに大いにやる気を削がれるわたし。

 

まぁいいや。

元仲間たちに会わないようにのらりくらり、だ。

キリエにがくんがくんと肩を揺すられながら、わたしは決意を固めるのだった。

 




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