ひねくれ元・防御術士はなにもしたくないのに   作:oomaguro

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第二十一話 クレバーかつスマートと言いなさい

「ふーっ、すっごい熱気だったねぇ。私も、ちょっと疲れちゃったかも」

 

説明を聞き終えてどこかへ散っていく冒険者たちを見送りながら、キリエが苦笑する。

わたしも深く息をついて、

 

「だな。それでキリエ、『参加証』っていうのが」

 

「うん、これだね」

 

キリエが首から下げている首飾りをじゃらりと持ち上げた。

首飾りには深い赤色の宝石がひとつあしらわれており、少ないが確かに魔力を放っている。

 

「だな。参加者の位置の追跡と、それから最低限の自動防御機能がついてる。量産型だろうけど」

 

「そんなのわかるの?」

 

「うん?そうだな。この手のマジックアイテムは魔力の大体の流れとか色を見れば、根っこの式をある程度逆算できるんだよ」

 

魔王領探索じゃ必須のスキルだぞ。キラザ達はできなかったけど。

 

「うんうん、その魔力のナガレとか、イロとか見えちゃうのは仙人の類だけって話する?」

 

「しない。ともかくこの首飾りが奪われたら負け、かつふたりで制限時間内に10個以上集める、か。確か参加者の数が」

 

「全部で100組くらいって言ってたね。うーん、結構戦わないとだめ?」

 

「いや、参加証は集めてるヤツからまとめて奪えばいいと思う。まずは景品の封じられた……なんだっけ、『宝玉』を集めたいな。たくさん持ってれば、景品狙いのヤツが向こうから来るだろ」

 

景品狙いというのはつまり、参加証までは求めない志低めの参加者ということだ。そのレベルもそれなりだろう。

あと、むやみに参加証を集めに言って『キラザのパーティ』組と鉢合わせたくないよね。

 

「あ、そっか。ミーちゃん頭いいねぇ。じゃ、景品をどんどん探しちゃおっか!」

 

キリエがうんうんと頷く。こいつの実力からして、その辺の参加者には負けることは無いだろうし、これでいい。

そして、だからこそ、ここは真面目にくぎを刺さねばならない。

 

「うん、だけどあと一つ」

 

「?なに?」

 

「『キラザのパーティ』のメンバーに出会ったら、絶対に逃げるからな」

 

「『キラザの』……って、あぁ、この前ギルドで揉めた人たちだよね」

 

キリエが露骨に眉を顰めて、それからぷーっと頬を膨らませて食い下がってきた。

 

「えー?なんでだめなの?せっかくだしリベンジしようよ!」

 

「駄目だ、アイツらはヤバい。個人が戦って勝てるレベルじゃない。死ぬぞ、普通に」

 

「でも、参加証には防御術式がついているんだよね?いくらなんても死ぬだなんて」

 

「この程度の防御術式なんて、アイツらには意味ないんだよ。奴ら王選魔術師の上級汎用防壁までなら普通に抜いてくるぞ」

 

これは実際にこの目で見たことがあるから本当の話だ。数が少ないから知られていないだけで、無茶苦茶なのだ、A級とかいう奴らは。

 

Aになった奴らは順次殿堂入りして消えてなくなってほしい。できればプレミアムな感じで。

 

「えぇ……?王選上級って……王宮を物理的に守護しているっていう、あの?」

 

半信半疑のキリエに、わたしはじろりと視線をあわせて、

 

「キリエ、目的を忘れるな。宝探し大会に参加する目的は『小宇宙』を手に入れることだろ?『キラザのパーティ』をぎゃふんと言わせるためじゃない」

 

「それはそうだけど。どうしたの、ミーちゃん?なんだか目が据わってるよ。かわいいね」

 

「いいか。あいつらは他人の命なんて何とも思ってない。具体的にはそうだな、魔王領A級領域のド真ん中でぽい捨てされた奴だっているんだ。見つけたら他の何を無視しても逃げる、いいな?後タンク役の奴は推定ロリコンだから気をつけろ」

 

「う、うん……わかった」

 

わたしの勢いに押されて、キリエがこくこくと頷く。わかってくれたようで何より。

 

「ミーちゃんが言うなら。でも、なんかやたらと言葉に重みを感じるね?」

 

「実体験だからな」

 

「あ、あはは、またまたぁ……」

 

「それに、そもそもの魔力差がありすぎる。本気で踏みつぶしに来られたら今の実力差じゃまずい」

 

「……ミーちゃん」

 

わたしが滔々と奴らの危険性を説いて、ふと振り向くと、キリエのジト目が思ったより近距離でこっちを見ていた。

 

「うわぁ、びっくりした。なんだよ」

 

「ミーちゃん、『キラザのパーティ』に詳しいね?」

 

「あぁ、うん?だから、言っただろ。昔一緒に行動してたことがあるんだよ。小間使いだけどな。でも、顔と名前と性格くらいは知ってる」

 

うん、嘘は言っていない。

 

「ふーん……」

 

キリエはしばらくわたしの表情を観察していたが、やがてすっと離れ、

 

「うん、了解だよ。大丈夫、目的はちゃんと覚えてる!それじゃ……ミーちゃん!」

 

見あげると、キリエが右手をグーにしてこっちに差し出してきている。一拍遅れて意図を理解し、こつん、と拳を合わせた。

 

「うん、よしっ。とりあえず『お宝が封じ込められた玉』から集めようね!えいえい、うおーっ!」

 

キリエが馬鹿みたいな掛け声とともに、非常にバカっぽい動作で両手を天に突き上げる。

みられてるみられてる。

周りから怪訝な目を向けられてるよ。

気付けキリエ。

 

「……あれ?ミーちゃん?おーっだよおーっ!ほらお手手バンザイして!あれ?聞こえてないのかな?立ったまま寝ちゃった?」

 

「え?あれ、すみません。お知り合い……でしたっけ」

 

「ちょっとぉ!?」

 

『それでは、各人。今から組ごとに、エリア内にランダムに転送します。お荷物を持って、組ごとに両手を繋いで待機してください。転移終了とともにイベント開始です』

 

唐突に、さっきの秘書さんの声が耳元に割り込んできた。『念話』の一種だな。汎用術式とはいえ、多才だ。

 

『それでは……グッドラック。【転移】』

 

声とともに、ふわり、と身体が宙に浮く。

 

「……あ、待った、これもしかして」

 

嫌な予感も束の間。

 

「う、うわぁぁぁぁああああ!!!???」

 

両手を繋いだわたしとキリエは、ロケットみたいに上空に打ち出され、【転移】先に向かって物凄い速度で飛翔を始める!

 

「ちょ……うわぁぁあ!!」

 

「うーん……速いっちゃ速いけど……ノアセンパイほどじゃないかも」

 

「無敵かお前は!なんかおかしいぞ、この術式っ!」

 

「へ?」

 

【転移】は初めてじゃない。ゆえに、記憶と比べて魔力の流れに違和感。

 

数十秒ほど飛行していたかと思うと、今度は降下が始まり、超高速で地面が近づいてくる。

そこで、違和感の正体がわかった。着陸するのに全然減速してない、気がする。いや、絶対してないというか、加速し続けてるぞこれ!

 

「っ……!【即応防壁】っ!!」

 

キリエの頭を抱き込んで、地面に向かって青色術式を展開する。

 

なんだろう、前にもこんなことあったよな。

 

案の定転送術式は一切の減速を見せず、ががががが!!!と地面を削りながら数十メートルは滑り、ようやく停止した。

 

防壁がスキー板みたいな役割を果たしたな。なんとか無事だったけど、相当スリルあった。一歩間違えればすりおろしりんごだった。

 

「はぁっ、はぁ……!あ、危ない……!」

 

「?」

 

肩で息をするわたしと、何が起きたのかよくわかっていないキリエ。

まぁいいか。今は宝探しだ。わたしは気を取り直してあたりを見回す。

 

見渡せば、なだらかな丘陵と背の低い草原が一面に広がっていた。振り返ると、遠くにナザングルを囲む城塞が見える。街の外だな。

他の参加者のすがたは見えない。とりあえず襲われる心配はなさそうだ。

 

……しかし、宝玉がありそうな手がかりもないな。運がいいやら悪いやら。

 

「随分飛ばされたな。……まぁいいや。とりあえず宝探しするか。こんだけなんにもなれば一周回って探しやすい」

 

「うぅん、でもこの草原に適当に転がされるだけでも、相当分かりにくいよ。広いし……」

 

キリエがどこからか地図を取り出し、難しい顔をする。おや、こいつマジか。

 

「?どうしたの、ミーちゃん?」

 

「キリエ、景品について、ギルマスはなんて言ってた?」

 

「へ?景品じゃなくて、それが入った『宝玉』を探せって……あ」

 

キリエも気が付いたらしい。

 

「だろ?景品が数百個もあるのにの『宝玉』大きさが全部同じなんだから、多分魔力で空間を弄って封じ込めてる。それなら、いくらでも探しようはある」




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