ひねくれ元・防御術士はなにもしたくないのに   作:oomaguro

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第九話 亡国決死行!あるいは蜘蛛の糸

 

「じゃ、行くぞ!キリエ、吶喊だ!!!」

 

「はーいっ!!キリエ行きます!」

 

いいお返事を返して、だん!と地面を蹴るキリエ。

 

「うっわぁ!?軽いっ!?」

 

が、奇声を上げたかと思うと、敵の霊体に向かって謎の捨て身のタックルをかました。

 

「キリエ!?なにをしてるのっ!」

 

ノアが慌ててマスケット銃を構え、援護射撃をする。

 

が、ノアの弾丸が着弾すると、ずどぉぉぉおおん!!!と耳をつんざくような轟音が鳴り響き、白色の爆発と衝撃波が拡散した。すごい、最初に見た魔導弾の200倍くらいありそう。

 

「ぎにゃぁぁあ!?ノアセンパイ!?」

 

ノアの砲撃に、敵軍を巻き込んで倒れ込んでいたキリエが爆風で吹き飛ぶ。

 

ごろごろとわたしの足元に転がってくるキリエ。おかえり。

 

キリエの何とも言えない目線を受けて、ノアが眼を逸らしてしまった。気まずいよね。わかる。

 

「あ、あの……大丈夫か?その、……あんまふざけないで?」

 

「「ふざけてない(です)!!!!」」

 

「なんですか、体が消えちゃったかと思いました!!!あとノアセンパイ酷い!!!」

 

「わたしも……大砲でも撃ったのかと思った。あそこまでとは聞いてない」

 

「だから、今はわたしが魔力を肩代わりしてるって言ってるだろ。魔力を消費してる感覚がないから、最初はそうなるんだよなぁ」

 

本当は使いたい放題はあんまりよくないんだけどな。デメリットあるし。

あのキラザでさえ、これはよくないとして緊急時以外は封印を指示してきたくらいだ。

 

とはいえ死ぬよりマシだろ。

 

「そ……それ大丈夫なの?」

 

「大丈夫だよ。二人ならいける。信じてる」

 

「ミーシャちゃん……」

 

「敵の大将に近づくほど、死霊も強くなるはずだ。それまでに感覚を掴んでほしいよ」

 

「「……うんっ!!」」

 

降って湧いた希望。ふたりの眼に士気が戻る。いい傾向だ。

 

「さっきの七割……いや、半分くらいで……っ!!」

 

ひゅん、と双剣を構えなおしたキリエの姿がかき消える。

 

進行方向にいた霊体が一拍遅れてざん!!!と鋭利な切断面を見せて乱切りになり、光の粒子になって消えた。

 

「うんっ、いける!!体が軽い!!どんどん来なさいっ!れすといんぴーすにしてやります!!」

 

RIPにしてやるっていうRIPの使い方初めて聞いた。

 

それにしても早い。

固有術式らしい瞬間移動と、天性の身体強化術式の技術が両方強化されてメチャクチャかみ合ってる。斬撃の瞬間だけぴったり停止してるの体幹が強すぎるだろ。

 

「あ、キリエ、先行かないでっ」

 

ノリノリで先行するキリエに、ノアがマスケット銃を構えて追随する。

 

こっちもえらい威力だ。一発一発が砲撃でも浴びているかのように大爆発を起こし、地面ごと霊体が掘り起こされて吹き飛んでいく。

 

二人とも明らかにA級クラス平均くらいのの火力だ。

うんうん、やはり魔力共有は同性相手のほうが相性がいいらしい。

 

「……それにしても、」

 

それにしても。これだけの死霊をダンジョン外でも絶え間なく使役し続け、かつあのレベルの魔導弾を放つ、今回の黒幕。

 

誰なんだろうな。

 

「まぁいいや、行ってみればわかる」

 

久々の固有術式の感触を確かめながら、わたしは二人の背中を追い始めた。

 

わたしの残魔力、だいたい52~55%の間だった。

 

--------------

 

遥か前方。

死に体だった二匹の雑兵が、突然息を吹き返した。

 

差し向けた死霊がすさまじい勢いで削られていくのがわかる。

 

『見つけた』かもしれない。

 

聖女。

あれが。

あれこそが。

 

『それ』は。

 

『亡霊街』の長は。

 

薄く輝く蜘蛛の糸を求めて、自ら前進を始める。

 

-------

 

「てやあぁぁーー!!」

 

嘘みたいな掛け声とともに、キリエが死霊の軍勢の間を縫うように跳びまわる。

 

そのたびに双剣の餌食になった死霊がばたばたと崩れ、光の粒になって昇天した。

 

ノアはというと、くだんの白い翼で上空に飛び上がり、上から対地爆撃を行っている。

 

(凄いな、二人ともどう見てもAランク上位陣くらいの火力は出てる。なんだろう、相性よかったか?)

 

固有術式でふたりの魔力消費を肩代わりしているんだけど、こっちの魔力が極端に吸われてる感じもしないんだよな。

 

あとは、敵の大将が今の二人より弱いことを祈るばかりだ。

 

そう、『Aランク上澄みの攻撃が通らないような、あまりにも場違いすぎるヤツでさえなければいい』。

 

……。まさかね!

 

そう、まさか。

 

わたしはあたりを見回す。

少ない。

死霊だけじゃない。

生物の波長じたいが、極端に少ない。

 

「ふたりとも、おかしい。静かすぎる。死霊が少ないんだ」

 

「?いいことじゃない、ミーシャちゃん?」

 

「違う。これは……」

 

誘いこまれている。

 

長年、身の丈に合わないダンジョンで培った本能が。

『まずいもの』が近づいているという、死の直感が。

 

わたしの背筋に冷たいものを流しこむ。

 

「あ!なんかいましたよ!!あいつが親玉ですね!!!覚悟っ!!!!!」

 

「……っ!!!待て、待って、キリエ!!」

 

そう。

『あれ』はまずい。

 

5年前。

キラザのパーティが唯一完全敗北し、撤退を余儀なくされた、『亡霊街』最終層の主。

 

SSランク指定。『亡霊街』の創始者、『錫杖持った古の神官(ロッド・テイカー)』が、そこにいた。

 

 

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