ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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03_ウルフウッドの事情

「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした」

 

 対策委員会の部室に戻るとアヤネが元気よく出迎えてくれた。机に人数分のスポーツドリンクを置いてくれたので私は自分の分を手に取り一気にそれを飲み干す。

 

“ は~、生き返る ”

 

「ほんま軟弱やなセンセ。あんなん遠足にもならへんで」

 

“ ハハハ…… ”

 

 ウルフウッドが私をからかってくる。実際襲撃をしていたアビドスメンバーはみな暴れ足りないとでも言わんばかりにまだ元気が余っているように見える。正直三十キロの移動のほうが大変だったくらいだ。

 

「ん、先生のおかげですごいやりやすかった。指揮があると全然違うんだね」

 

「はい~。これが大人の力なんですね~」

 

“ そ、そう言ってくれるとうれしいよ ”

 

 シロコからお褒めの言葉をいただきノノミが横で同意してくれていたので「正直私要らなかったよね? 」という言葉を飲み込む。確かに私の指揮で皆の射線が重ならないようにしたり、敵の位置を教えて先手を取ったりなどしていたが、そもそも彼女たち一人一人がとても強く、ホシノに至ってはワンマンアーミーのごとき暴れかたをしていた。

 ちなみにウルフウッドは「ワイは別行動の方が効率的やろ」とって言って単身別方面からヘルメット団を襲撃していた。一人にも関わらず合流ポイントで一服していた余裕があり、彼もまた規格外なのだということを知る。それはそれとして生徒の前で煙草を吸わないように注意はしたが。

 ともかく、私が居なくても正直楽勝だったことが容易に想像できる力をこの子たちは持っていた。

 

(ウルフウッドがこの子たちは強いと言っていたけど、まさかここまでとは……)

 

 まだキヴォトスに来てまだ日が浅いが先ほど繰り広げられたカタカタヘルメット団への蹂躙劇を見ると、戦闘力に関してはこの子たちはキヴォトスで上澄みの子たちなのだと嫌でも理解してしまう。

 そしてそんな子たちでも追い詰められてしまっていたこの状況に、この問題の根の深さも感じてしまった。

 

「うへ~、とりあえずこれでしばらくは黒幕探しに注力できるね」

 

“ 今のままだと借金返済もままならないしね。早く解決しないと…… ”

 

 私の発言に先ほどまで和気あいあいとしてた空気がスンと静まり返る。あれ、私何か不味いことを言ってしまったのだろうか? 不安がる私にホシノが尋ねてきた。

 

「あ~、先生。もしかしてアビドスが借金あること知ってる? 」

 

“ うん。ウルフウッドからそのあたりの事情も聞いてるよ ”

 

 ホシノはそれを聞くと「なんで話したのさ」とでも言うような視線をウルフウッドに向けたが、彼は彼で「別に隠すようなことでもあらへんやろ」と一言返すだけだった。

 

「はぁ……ニコラスが言ってた通り、この学校には莫大な借金があってね。確かに襲撃を止ませないと借金返済が滞るのも本当。でも、これは先生には関係の無い話だよ」

 

 ホシノから感じられるやんわりとした拒絶。借金の問題には首を突っ込むな、ということなのだろうか。借金の問題について周囲の大人はまともに取り合ってくれなかったとウルフウッドから聞いていたが、その大人への不信感が露わになっているのだろう。

 だからこそここで引き下がりたくはなかった。

 

“ ……そんなことないよ。私はみんなの先生だからね。どうだろうみんな。私にこの借金についても協力させてくれないかな? ”

 

 目を見開く一同。それが肯定なのか否定なのかはわからないが、少なくとも私の言葉に驚きを隠せないようだった。それほどまでに今まで彼女たちの味方がいなかったことがわかり、少し胸が詰まる。

 一番最初に反応を示したのは以外にもウルフウッドだった。

 

「センセ、それ本気で言っとるんか? お前は大人やねんぞ。吐いた唾は飲み込めへんで」

 

 彼なりの警告なんだろう。お前は本当に責任を取れるのか? そう突きつけてくるウルフウッド。確かに八億円以上の借金を返済するというのは生半可なことではない。それでも大人として発言した以上は降りることは許さないぞ、という意思を感じる。軽はずみなことは言うなということなのだろう。

 

 でもウルフウッド。確かに私は借金を返済する逆転の一手があるわけでもないし肩代わりしてあげる財力もない。これより先に解決しなくてはいけない学校襲撃の黒幕を突き止める妙案すら思い浮かんでもいない、無力な大人だ。だからこそ、生徒たちと向き合って共に歩もうとする覚悟だけは曲げちゃ駄目だと思ってる。

 

“ わかってるよ、でも来る途中も言っただろ。子供たちに妥協を強要すべきじゃないって。周りが原因で大切なものを捨てなければならないかもしれない、そんな状況にある子たちを私は先生として見捨てることはできないよ ”

 

 私の回答に数秒黙るウルフウッド。その表情はサングラスに隠されて伺うことはできないが、彼は「はぁ」とため息をつきながら何かを観念したように肩の力を抜く。

 

「まあ、センセが協力してくれた方が都合がいいのは確かやしな。せやったら対策委員会の顧問になってもらおか。せいぜいシャーレの権力利用させてもらうで」

 

“ お手柔らかにね ”

 

「何勝手に話進めてんのよ!! 」

 

 今ので話がまとまりかけたかな? といった空気に待ったがかかる。怒気をはらんだ声を上げたのはセリカだった。

 

「なんでニコラスさんが決めるわけ!? 偉そうに! 」

 

「セリカちゃん、先輩なんだよ!? 」

 

 アヤネがセリカをなだめるように言うがセリカは止まらない。

 

「先輩!? この人が!? 私は人殺しを先輩だなんて認めない!! 」

 

 セリカが放った言葉に場が凍る。ホシノが明らかに動揺した様子で尋ねた。

 

「せ、セリカちゃん、どこでそれを……」

 

「先輩たちが教えてくれないから調べたのよ!! そしたらこの人は人殺しだって……」

 

「ま、待って、誤解だよぉ~。言ったでしょ、ニコラスは無罪だって。控訴だって今進めてて……」

 

 どうやらホシノたちはセリカに、多分アヤネにもだろうけど、ウルフウッドが捕まった事件の内容を話していないようだ。その内容を知っている身としては言いづらい気持ちもわかるけど、恐らくそれが余計にセリカの不信を買ってしまっていただろう。

 

「ええって、ホシノ。人殺しはホントのことや」

 

「ちょっとニコラス!? 」

 

 そう言うとウルフウッドはセリカの前に立った。

 

「な、なによ……」

 

「すまへんな、セリカ。確かにこない人殺しが出しゃばってきたらオモロないわな。堪忍やで」

 

「そんな謝られても……」

 

 ウルフウッドが頭を下げ、みなの視線がセリカに集まる。

 

「~~ッ、何よ! 私が悪役みたいじゃない!! 」

 

ダッ

 

「ちょっとセリカちゃん!? 私見てきます! 」

 

 その視線が自分を攻め立てているように感じてしまったのか、セリカは部室から飛び出ていってしまった。ノノミが心配して後を追う。ウルフウッドは顔に手を当てうなだれていた。

 

「……アカン、今のは完全にワイの落ち度や……ちと頭冷やしてくる」

 

「ちょっとニコラスまで!? どこいくの!? 」

 

「煙草や煙草。いつものとこや」

 

 そう言うとウルフウッドも部室から出て行ってしまった。残されたのは私とホシノ、シロコ、アヤネの四人だけだった。正直少し気まずい。そんな中シロコが私に尋ねてくる。

 

「……先生はセリカの言葉聞いてもあまり動揺してなかったけど、ニコ兄の事件のこと知ってたの? 」

 

“ 知ってたよ。私もセリカと同様に調べてね。ヴァルキューレの調書を読ませてもらったんだ ”

 

「そうなんだ……アヤネもその様子だとセリカと一緒に調べてた? 」

 

 シロコは気まずそうにアヤネに視線を移す。アヤネもおずおずとしながらそれに答えた。

 

「えと、はい……すいません。セリカちゃんと一緒に調べてました」

 

「謝らなくていいよ。ちゃんと話してなかったのはこっちだし」

 

“ アヤネ、シロコたちからはなんて聞いてたの? ”

 

「ニコラス先輩が不在なのは無実の罪で投獄されてるからとしか……」

 

“ それを不審に思って調べたんだ? ”

 

「いえ、そういうわけでは無かったんです。ただちょっとキッカケがあって……」

 

” キッカケ? ”

 

「バイトの面接でセリカちゃんが言われたらしいんです。『人殺しがいる学校の生徒なんて怖くて雇えない』って。……最初は何のことか分からなくて、それで調べていくうちに……」

 

「ニコ兄の事件のことを知ったんだね」

 

「……はい。最初は嘘だと思いました。でも報道がされていなかったことが逆に信憑性を感じてしまって……それに人殺しが理由であれば先輩たちが話したがらない理由も分かりますし……」

 

“ ねえアヤネ。アヤネたちはどこまでこの事件を知っているの? ”

 

 これは確認しておくべきことだと思った。アヤネの話からして恐らく正確な情報を掴んでるような印象を受けなかったからだ。

 

「実はその、何が本当なのか把握できていないんです。ネットで調べたんですが、相手が凶悪犯だったと記載があるものもあれば相手を拷問の末にやってしまったとか色々な情報が錯綜していて……ただニコラス先輩が人を殺したということだけは共通していました」

 

「ちがうんだよアヤネちゃん。あれは正当防衛だった。ニコラスは本当に無罪なんだよ」

 

「……先輩たちがニコラス先輩のことを慕っているのはわかります。きっと悪い人ではないのだとも思います。でも、私たちはニコラス先輩のことを知りません。調べて出てきたイメージと乖離が激しくて分からないんです。ホシノ先輩、本当は何があったんですか? ニコラス先輩は信用できる人なんですか? 」

 

 アヤネの言いたいことも分かる。キヴォトスの住人は簡単には死なない。人を殺したとなれば相当のことをしたことになる。だから正当防衛といわれても信じきれないのだろう。噂の内容が色々と錯綜しているのもそれが原因の一つなのだと思う。

 

「それは……」

 

“ ホシノ、それはウルフウッドから二人に話してもらった方がいいんじゃないかな? 二人に彼を信用してもらいたいならそうすべきだと思う ”

 

「……うん、確かに先生の言う通りだ。アヤネちゃん、ノノミちゃんがセリカちゃん連れ戻してきてくれたらさ、ニコラスに事件のこと話してもらうよ。それでいいかな? 」

 

「……はい、わかりました」

 

「ありがと……それでね、先生、」

 

 ホシノは伏し目がちのまま、私に頼みづらそうにお願いをしてくる。

 

「その、先生からニコラスに事件のこと話すように説得お願いできないかなぁ? 」

 

“ 私から? 別に構わないけどホシノたちから話した方が話聞いてくれるんじゃない? ”

 

「ううん、多分今は先生の方が良いよ。……あんなに狼狽えてたニコラス、初めて見たかも。セリカちゃんにああ言われたの、結構こたえたみたい」

 

 まあそうだろう。面と向かって子供から「人殺し」と非難されるのは辛いものがある。

 

「ニコラスはさ、私たちには自分の弱いところを見せてくれないところがあるから……同性で大人の先生の方が今は話しやすいと思うんだ」

 

“ ホシノはウルフウッドのことよく知ってるんだね ”

 

「うへ、これでも二年近くの付き合いになるからね。という訳で先生、お願いしてもいいかなぁ? 」

 

“ うん、わかったよ ”

 

 ウルフウッドの言っていたいつもの場所が屋上だと聞いてそこに向かうことにした。

 

◇ ◇ ◇

 

 屋上に上がるとウルフウッドが手すりに寄りかかりながら煙草を吸っていた。私が来たことに気付いているだろうが、彼はずっと空を眺めたままだ。

 彼の隣まで歩み寄る。

 

“ 一本貰ってもいいかい? ”

 

「残り少ないしな、一本だけやで」

 

 ウルフウッドがくれた煙草を咥えると、彼はジッポーを取り出して火をくれた。一緒に空に向かって紫煙を吐く。

 

「……情けない姿見せてもうたな」

 

“ あれは仕方ないよ ”

 

「それでもアホ丸出しや。浮かれとったのかもしれん。ワイがここにおるんはおこがましいの、忘れとったわ……」

 

“ そんなことないと思うよ。君に会えた時、ホシノもシロコもノノミも本当に嬉しそうだった ”

 

「お前、ホンマにワイのこと調べとったんか? 人殺しは事実やぞ」

 

“ ホシノは正当防衛だって言ってたけど? ”

 

「……確かにあの時は状況が状況やった。ワイはあの時の選択が間違ってたとは思わん。せやけどな、ワイの手が汚れとるのも変わらへん」

 

 恐らくウルフウッドは、たとえ判決がどうであったとしても自分自身を赦していない。それもあってセリカに拒絶されて自分がここに居ていい存在ではないと感じているのだろう。でも、それは違うと思う。

 

“ だとしてもさ、君がここにいるのがおこがましいなんて決めつけるのは早いんじゃないかな?  ”

 

「さっき否定されたやないか」

 

“ それはよく知らないからだよ。アヤネが言ってた。セリカも自分も詳しいことは知らないって。私もヴァルキューレの調書を読んだだけだし、詳しい事情は知らないんだ。だから教えて欲しい ”

 

「ヴァルキューレの調書読んだんやったら全部わかっとるやろ」

 

“ 今朝もそうだったけどさ、なんでそんなに話すの嫌がるんだ? ”

 

 ウルフウッドがタバコを噛みしめる。

 

「当たり前やろ! 誰が好き好んでガキ殺した話をしたい思うねん! 」

 

“ それは…… ”

 

 十二人殺し。調書に記載されていたその犯行の凶悪さに隠れてしまい失念していたが、彼が殺害した犯人は生徒、子供であった。彼が大切にしている子供たちと同年代の子供だ。だからこそ余計に罪悪感が彼に重くのしかかっているのだろう。

 

“ だけどウルフウッド。やっぱり話して欲しい。なんで君がその選択をしたのか、君の口から。じゃなきゃセリカもアヤネも分からないし納得できないよ。それにホシノたちだって事情を詳しく知らない後輩たちに君を否定されたくはないんじゃないかな? ”

 

「……」

 

“ 私たちがアビドスに力を貸すためにもこれは必要なことだよ。君も大人なんだからさ、駄々こねないで。じゃなきゃ先に進めないよ ”

 

「誰が駄々こねてるっちうんねん! ……チッ、わかったわ、話せばええんやろ、話せば! それでもあいつらが気に食わへん言うんやったらそん時はそん時や」

 

“ 話せば二人ともわかってくれると思うよ ”

 

「……ワイ、おんどれのその『わかっとる』っちう態度、嫌いやわ」

 

“ 私ははっきり言ってくれる人が好きだよ ”

 

「そういうとこやぞ。ハラ立つなぁ~」

 

 ウルフウッドは煙草を携帯灰皿にぐりぐり押さえつけると私の前にその灰皿を差し出した。行くぞ、ということなのだろう。私も灰皿に煙草を入れ、彼と共に校舎の中へと戻った。

 

◇ ◇ ◇

 

「すみません、セリカちゃん拗ねて帰っちゃいました……ちょっと意固地になっていて……」

 

 ノノミの報告に思わず肩を落としてしまう。ウルフウッドも複雑そうな表情を浮かべていた。

 

「ま、まあ今日は色々あったし、話は明日にしよっか」

 

 ホシノが苦笑いを浮かべながら提案するがシロコから待ったがかかる。

 

「でもホシノ先輩、明日は多分セリカ来ないよ。柴関でバイトの日だったはず」

 

「あれ、そうだったっけ? 」

 

「うん、予定表にも書いてあるから間違いない」

 

 シロコが部室のホワイトボードを指さす。ノノミが交代で学校に常駐していたと言っていたが、その当番表のようだ。確かにセリカの明日の予定にバイトと記載がされている。でもバイト先までは記載されて無いみたいだけど……

 

「柴関のシフトだけは把握してる。私がセリカを紹介したから」

 

 心なしかドヤ顔で言うシロコ。なんでそんな自慢げなのだろう。

 

“ シロコ、その柴関ってどんなところなの? ”

 

「ラーメン屋だよ。とっても美味しい。おすすめは看板メニューの柴関ラーメン。ニコ兄と初めて会った時にごちそうしてくれた思い出の味なんだ」

 

「ああ、そういえばそないなこともあったな」

 

「ちょっとまってシロコちゃん。お姉さん、今の話初耳なんだけど!? 」

 

 なぜだかシロコの話を根掘り葉掘り聞こうとするホシノ。それを無視してノノミが提案する。

 

「それでしたら明日みんなで柴関行きませんか? ニコ先輩も久々にあそこのラーメン食べたいと思いますし、食事のついでにセリカちゃんにバイト終わったらアビドスに来てもらうようにお願いしてみましょう。その頃にはセリカちゃんも気分が落ち着いてると思いますし」

 

「大将のラーメン食いたいんは事実やけど、アヤネはそれでええんか? 」

 

「はい、話はセリカちゃんと一緒に聞きたいので」

 

「そか。んじゃ今日はいったん解散か? 」

 

「そうだね~。あ、今日の当番はお姉さんだからみんなはゆっくりお休み~」

 

 ホシノの言う当番が何のことか疑問だったが先ほどのホワイトボードを見て理解する。校舎の警備のために毎日誰かが残っているようで、今日の当番がホシノらしい。そんなホシノへウルフウッドが近づく。

 

「ホシノ、校舎はワイが見といてやるから今日はお前も帰ったらええ」

 

「え、大丈夫だよ。ニコラスこそバイクの移動とかで疲れてるんじゃない? 」

 

「問題あらへん。それにな、そもそもワイの家、放置しっぱなしやろ? 掃除せな住めたもんやあらへんやろうし」

 

「ん、それなら大丈夫。ホシノ先輩が定期的にニコ兄の家掃除してるから」

 

「うへっ! シロコちゃんなんで知ってるの!? えと、ほら、ニコラスがいつ戻ってもいいようにね……」

 

 少しばかりほほを赤く染め狼狽えているホシノ。その様子は微笑ましいが、なぜかウルフウッドはホシノに怪訝な表情を向けている。

 

「なあホシノ、まさかとは思うがワイの酒には触れてへんよな? 」

 

 ……ウルフウッド、それはちょっと無いんじゃないかな? ホシノの顔は先ほどとは別の赤さを帯びて肩も震えだしている。あとお酒も駄目だよ、ツーアウトだよ。

 

「捨てたよバカ!! ていうか普通感謝が先じゃないの!? ホント信じられないんだけど!! 」

 

「信じられへんのはお前や! ここやと酒が貴重なのわかっとるやろ! なんで捨ててもうたんや!! 」

 

「そもそも学生は飲酒禁止だよ! この不良生徒ッ!! 」

 

 突如始まったウルフウッドとホシノの口論にアヤネは慌てふためきシロコとノノミは「ん、懐かしい」「やっぱりこうでないと☆」と言いながら微笑ましく眺めている。彼がアビドスにいたころはこれが日常だったのだろうか?

 

“ えと……とりあえず今日は私達も校舎に残るよ。ホシノ、ウルフウッドの余罪を色々聞かせてもらえないかな? ”

 

「ちょい待ち、なんでワイが悪いことしとる前提やねん」

 

“ ウルフウッド、君はもう喫煙、ノーヘル、それに飲酒でスリーアウトなんだよ ”

 

「いや二十歳なんやから喫煙と飲酒は問題あらへんやろ? 」

 

「未成年の時からしてたでしょ! ニコラスは! 先生~聞いてよぉ~」

 

 今日は校舎に泊めてもらうことにし、ウルフウッドの余罪を追及しながら夜が更けていった。彼のことを話すホシノは口では文句を言いながらもとても楽しそうで、やはり彼はアビドスに必要な人間なのだと改めて感じた。




ウルフウッドにとってセリカとアヤネは孤児院に新しく入院してきた子供のポジションなので、他人にどういわれようがどうでもいいけど彼女たちに否定されると結構ヘコむんじゃないかな、というのが今回の話。
ちなみにホシノはウルフウッドがいてくれたので大人への不信感は薄め。
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