ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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05_救出作戦

「セリカちゃん、遅いですね〜……」

 

 ノノミが呟く。アビドスの生徒と先生は対策委員会の部室に集まっていた。セリカとアヤネにウルフウッドが捕まった時の真相を話すためだ。しかし肝心のセリカがまだ姿を見せていなかった。

 

「紫関に電話してみたけど、大分前にセリカは帰ってるって……」

 

 シロコの追加情報に場の空気が更に重くなる。

 

「こっちに来てないだけちゃうか? 」

 

「それは無いかと。何だかんだ言ってもセリカちゃんは来てくれる子ですし」

 

「私、セリカちゃんの家に行ってきます! 」

 

 ノノミの言葉に不安を感じたアヤネが部室を飛び出そうとするが、先生がそれを制止する。

 

“ セリカに何かあったのなら遅くなってしまうし、私が調べるよ ”

 

「先生……ですがどうやって? 」

 

“ 連邦生徒会の管理するセントラルネットワークにアクセスして、セリカのスマホの位置を特定する “

 

「うへ、そんなこともできるの先生? でもそれ、バレたら始末書ものじゃない? 」

 

“ バレても始末書で済むよ。それよりもセリカの方が大事だ “

 

 先生は迷うこと無くシッテムの箱を起動させアロナに指示を出す。

 

“ ……セリカの反応を見つけた。場所は……アビドス郊外の砂漠近くだ! まだ移動を続けてる!  “

 

 先生は皆にセリカの信号が表示されているタブレット画面を見せる。

 

「これ、昨日潰したヘルメット団のアジトの方角ちゃうか? 」

 

「ん、間違いない。もしかしてセリカはヘルメット団に拐われた……? 」

 

「直接戦闘じゃ敵わないから人質取ることにしたって所かな」

 

 ホシノの口調にいつものような緩い空気は無く、その手は拳が握られていた。それはホシノだけでなく皆も同じだった。全員が怒りで振るえていた。

 

「急いでセリカちゃんを助けに行きましょう! 」

 

「ワイのバイクが一番早い。シロコ、お前はサイドカーに乗って援護や。センセ、通信で道案内頼むで」

 

“ わかった “

 

「確か倉庫にバギーがあったはずです。ニコラス先輩、私たちもそれで直ぐに合流します! 」

 

「よし、それじゃあセリカ救出に行くで。ヘルメット団に教えたらな、自分等がなにしでかしたかっちうことをな! 」

 

 カタカタヘルメット団の前哨基地を襲撃したとき以上の気迫を出しながら、各々は部室から駆け出して行った。

 

◇ ◇ ◇

 

 振動で体が揺すられ目が覚める。

 

「……トラックの中?」

 

私は手足を縛られてトラックのコンテナの床に転がされていた。振動の感触からトラックが砂漠を走っていることがわかる。

 

(もしかして私、誘拐された?)

 

段々と目覚める前の記憶が思い出されていく。そうだ、柴関からの帰り道でヘルメット団の奴らに襲われて……

 

(私、どうなっちゃうんだろう……)

 

このままどこかも分からない砂漠に埋められて死んじゃうのかな?  アビドスに行くって約束破って、みんな怒ってるかも。このままいなくなったら裏切り者だって思われちゃうかな。そんなの嫌だ。誤解されたまま死にたくなんかない……

 

(助けて……)

 

 そう思った時だった。突如として爆発音がして、トラックが急ブレーキで停止する。そして激しい銃撃音と戦車の砲撃音が鳴り始めた。

 

「なに? 何が起きてるの!? 」

 

 激しい戦闘音はすぐに静かなものになり、そしてコンテナの扉が開かれる。扉から差し込む月光を背にして現れたのはシロコ先輩だった。

 

「泣きっ面のセリカ発見」

 

 シロコ先輩は近づくと予備のインカムを私に着けてくれた。みんなの声が聞こえる。

 

<セリカちゃん!! >

 

<可愛いセリカちゃん、そんなに寂しかったんだね~>

 

「う、うるさいッ」

 

<まあそう言ってやるなや、ホシノ。目に砂が入ってもうただけやろ>

 

「そ、そう、それで……って、ニコラスさん!? なんで……?」

 

<なんでも何も、後輩助けるのは先輩として普通やろ。まあお前は認めてへんやろうけどな>

 

 そうだ。私はこの人を先輩と認めない……と、そんな態度を取っていた。それにも関わらずこの人は助けに来てくれたんだ。

 シロコ先輩に支えられながらコンテナの外に出ると十字を背負った大きい背中が目に入った。

 

「すまへんなセリカ。やり返したいやろうけど、こないな有様でな」

 

 ニコラスさんはこちらを振り向かずにそう告げる。周りを見渡すと鉄屑になり果てた戦車や死屍累々のヘルメット団が転がってた。すごい。通信はあったけどホシノ先輩たちの姿は無い。つまりはシロコ先輩とたった二人でこれほどの戦力を制圧したんだ。しかもこの短時間で。先輩たちの途方もない強さを前にして自分の力不足を痛感してしまう。それと同時に、こんなにもすごい人たちが先輩なのだと少し誇らしくも思ってしまった。

 

「ホシノ、そっちの首尾はどや? 」

 

<ごめん、私達が乗り込んだ時にはもぬけの殻だったよ。逃げ足だけは速いんだから>

 

「あ、そういえばホシノ先輩たちは? 」

 

 先ほどから通信で会話のみが聞こえてくるけど姿が見えない先輩たち。バイクでニコラスさんたちが先に来てただけかと思ってたけど、少し違うみたい。シロコ先輩が教えてくれた。

 

「私達以外のメンバーはセリカを誘拐した主犯格を捕まえに別行動してたんだよ。輸送ルートを割り出してね。でも逃げられちゃったけど……」

 

「まあそない悲観せんでもええやろ。黒幕の手がかりは残っとる」

 

 ニコラスさんが戦車を指さす。

 

「改造戦車を複数台、そんな簡単に入手できるもんやあらへん。この前の型番削られた武器と一緒に入手ルートを調べればなんか掴めるやろ」

 

<そだね~、じゃあこっちは合流しに戻るよ>

 

「頼むで、バイクやと三人はキツイからな」

 

 ホシノ先輩たちが何かに乗り込む音をインカムが拾う。そういえばこの前アヤネちゃんがバギーを学校の倉庫で見つけたと言ってたけど他のみんなはそれで来たのかな? だとすれば確かに助かる。ニコラスさんのバイクを見るとサイドカーがついているけど、あの巨大な十字架があることを考えるとやはり定員は二名が限度みたいだし。こんな夜遅くを砂漠から学校まで歩いて帰るのは流石にしんどい。ホシノ先輩たちと合流するまで少し待機だ。

 シロコ先輩に促されて丁度いい高さの残骸に腰掛けるとニコラスさんが近づいてきた。

 

「アメちゃん食べるか? うまいで」

 

 そう言って棒付きのアメをいくつか差し出してくる。シロコ先輩はもらい慣れてるのかノータイムで「ありがと、ニコ兄」と言ってコーラ味を引き抜き口にした。要らないとも言いにくいし、私も適当にストロベリー味の飴選んでニコラスさんの手から引き抜く。

 

「その……ありがと、ニコラス先輩……」

 

「……ニコ兄、今の聞いた? セリカがデレた」

 

「デ……そ、そんなんじゃないんだから!! 」

 

 からかってくるシロコ先輩と私の喧噪を眺めながらニコラス先輩も飴を咥えていた。

 

◇ ◇ ◇

 

 ホシノ達と合流し学校へと帰る最中。

 

「……ふぁああぁ……」

 

 欠伸が噛み殺しきれへん。しゃあないか。昨日もセンセに色々詰められて夜遅かったし、何より今の時間は深夜帯や。バギーの運転はアヤネに代わってセンセがしとるし、サイドカーに乗っとるシロコも船を漕ぎ始めとる。皆眠そうやった。

 別に子供達はそのまま寝かせてやってもええがワイらまで寝落ちして事故るとかは洒落にならへん。砂に頭から突っ込むのはトンガリの運転でもうこりごりや。

 

「すまへんけど眠気覚ましにラジオつけさせてもらうで」

 

 そう言ってラジオをつけようとするとインカム越しにノノミから別の提案がされる。

 

<それよりももっといい眠気覚ましがあります☆ ニコ先輩、あの事件の話をしてくれませんか? >

 

「はあ? 今するんか? 」

 

 突拍子もない提案にさすがに驚く。今話すことでもないやろと思うが、ノノミは頑なやった。

 

<はい〜、そもそも今日学校に集まってたのはその話を聞くためだったんですよ>

 

「そないゆってもセリカとアヤネは……」

 

<私は聞きたいわ! ニコラス先輩! >

 

<私もセリカちゃんと同じです。聞かせて貰えませんか? >

 

 二人がハッキリとした口調で答える。お前らさっきまでの眠そうにしとったやろ。

 

「ん、私も聞きたい」

 

<もちろん私もですー>

 

 さっきまで眠そうにしてたシロコに、なぜかノノミまで答える。

 

「お前らはホシノから聞いとったはずやろ? 」

 

<私だと説明が難しいところあったからね〜。私からもお願いするよ>

 

<“ 私も聞きたいなー ”>

 

 味方が誰もおらん。話さないかん空気が出来上がっとった。

 

「はぁ、わかったわ、話せばええんやろ。ただホシノ達は知っとるやろうけど、ホンマおもんない話やで」

 

 渋々嫌な記憶を引っ張り出す。さっきセリカ達と一緒に飴咥えとったのは正解やったかもしれん。

 

「苦い話や……」

 

 ワイはキヴォトスで初めて子供を殺した、あの事件の顛末を口にした。

 




メインストーリーなぞっていくので余分な戦闘はカットする方針で進めます。
決して書くのが苦手だからって理由じゃないんだからねッ

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