ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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05_アビドス攻防戦

 アビドス砂漠の砂塵をかき分けカイザーPMC基地に猛スピードで迫る影があった。バイクに跨がったウルフウッドだ。基地のスピーカーから届く警告も無視しパニッシャーを構えると、城門に向けてロケットランチャーを放った。大きな爆発と共に開けられた穴からウルフウッドはバイクごと基地内に侵入する。

 

「狼煙は上げたで、届いとるやろな?」

 

彼はぼそりと呟いた。

 

◇ ◇ ◇

 

 基地の外から爆音が微かに聞こえる。中の空気も慌ただしいものになっていた。

 

「……ニコラスが来た。私たちも動くよ」

 

 居房の中ホシノが皆に告げ、各々が黒服により解錠されていた手錠を外す。足を怪我しているホシノをノノミがおんぶした。

 

「連れてこられた時のルートは覚えてる。それをなぞって外に出よう」

 

 皆は相槌を打つと行動を開始した。

 

 数分後、もぬけの殻になった居房の前に誘拐の実行犯達が佇んでいた。その中の一人、布マスクを着けた襲撃者の戒野ミサキが通信機片手に、ダブルファングを持つリーダーの錠前サオリに話しかける。

 

「……駄目だリーダー、監視カメラの映像が欺瞞されてたみたい。映像上はまだあいつらが居る。一体誰がこんなことを……」

 

「裏切り者がいるのか?……しかしそれを探している余裕はない。仕方ない、人質はこのまま泳がせてニコラス・D・ウルフウッドに接触させる。可能であればその瞬間を狙おう」

 

「了解。でも狙えるものなの?」

 

「やつらが外に出ていれば流石にこちらも気付く。小鳥遊ホシノの負傷も考えれば無茶は出来ないはずだ……まだ奴らは施設内だろう。ニコラス・D・ウルフウッドに接触しやすい施設出口付近で潜伏している可能性が高い。ヒヨリにDポイントで待機するよう伝えてくれ、あそこなら基地の外に誰が出ても察知しやすい」

 

「分かった」

 

 ミサキは通信機の向こう側に居る残りの仲間、槌永ヒヨリに指示されたことを伝える。

 

(姫の為にも討ち取らせてもらうぞ、ニコラス・D・ウルフウッド……)

 

 サオリは空になった居房をただ睨み付けていた。

 

◇ ◇ ◇

 

「早く応援を……うわぁぁ!! 」

 

「クソッ、化物め! 」

 

 カイザーPMCの阿鼻叫喚が響く中をウルフウッドは駆け回る。なみいる歩兵をパニッシャーで薙ぎ払い、強化重装兵をバイクで轢き潰し、戦車装甲車問わずロケットランチャーで吹き飛ばす。

 

 そんな無茶苦茶をしながら彼は思考を巡らせる。

 

(ホシノ達が居るとしたらこういう時は大抵奥や)

 

 そう考えウルフウッドは基地の最奥にある施設を目指す。兵を派手に蹴散らしながら突き進み、同時に違和感を感じていた。

 

(おかしい……まだ例の襲撃者が現れへん……どう言うことや? )

 

 これだけ暴れても例の襲撃者がウルフウッドの迎撃に現れる様子がない。

 

(あいつらに銃突きつけて待ち構えとる……? 無いな、それやったらそのままワイの前に来るわ。恐らく黒服の手配であいつらは脱出しとる。まさかそれでカイザー見限って逃げたか? いや……)

 

 ある考えにウルフウッドは至る。自分が最も苦痛に歪む光景、そのタイミング、あの男ならそれを狙う。

 

(させるわけないやろが……)

 

 バイクのアクセルを絞り、基地の更に奥へとウルフウッドは突き進む。

 

 ウルフウッドの進んだ先にタワー状の施設がそびえ立っていた。施設のハッチからカイザーPMCの最新兵器であるパワーローダー、ゴリアテが発進する。

 

「なんや? 図体は立派やんけ」

 

 余裕を崩さないウルフウッドへゴリアテは両手のガトリングガンを発射する。しかしウルフウッドはバイクを走らせそれを回避し、ガトリングはただ砂漠の砂を巻き上げるだけだった。対してウルフウッドも回避しながらハンドガンで反撃するがゴリアテの装甲は厚く、致命打には至らない。

 先に業を煮やして攻撃手段を変えたのはゴリアテだった。頭部に装備されている大型キャノンにエネルギーが充填されていく。辺り一面ごとウルフウッドを焼き尽くす算段だった。

 

「ワイにそれは悪手やぞ」

 

 ウルフウッドは発射寸前のキャノンのバレルへハンドガンを何発も発射する。その内の数発がバレル孔内に着弾し、内部機構を破壊されたキャノンは暴発。溜め込んでいたエネルギーはゴリアテを木っ端微塵に吹き飛ばす。

 

「これで終りか。ナインライブズやったらもっと粘っとったで」

 

 ゴリアテが爆散した箇所を眺めながら軽口を叩くウルフウッド。そこへよく知る声が聞こえてくる。

 

「ニコラスー!! 」

 

 ウルフウッドが振り向くとノノミにおぶられたホシノが叫び手を振っていた。アビドスの皆は施設のハッチから外に出て、ウルフウッドへと駆け寄って来る。

 

「思ったより元気そうやな」

 

 ウルフウッドもバイクから降りて皆を迎えるように駆け寄っていく。

 

——そしてそのままノノミとホシノを突き飛ばした。

 

 

チュンッ

 

 

 ホシノの眼前を一発の銃弾が走る。

 

「そこか」

 

 ウルフウッドは間髪入れずその銃弾の発射元へロケットランチャーを撃ちこんだ。

 

◇ ◇ ◇

 

「ヒヨリ!! ……クソッ、応答が無い。やられたか……」

 

 サオリは狼狽えていた。

 

 タイミングは完璧だった。敵を倒し味方の無事を確認できたことによる安堵、その隙を突けた筈だった。しかしニコラス・D・ウルフウッドは対応し、反撃までしてきた。この事態を予測していなければ出来ない芸当だ。

 

(私たちのことがバレている……? 例の裏切り者からか? )

 

「何なのあいつッ……どうするリーダー? 」

 

 ミサキも動揺しサオリに指示を仰ぐ。

 

(貴様のような急造品で奴は倒せん。作戦が失敗したらさっさと逃げ帰ってこい)

 

 サオリはマスター・チャペルの言葉を思い出していた。端から期待されていない、冷たい声色を思い出す。

 

(万が一にでも貴様が奴を倒せたら、ベアトリーチェにアツコのことを口添えしてやろう)

 

 自分たちを欠片も信用してないからこそ紡がれた約束を思い出す。サオリの中の闘志が燻った。

 

「……私が強襲を仕掛ける。ニコラス・D・ウルフウッドが隙を見せたらお前が撃て、ミサキ」

 

「分かった」

 

 ミサキに指示を出すと、サオリはダブルファングを構え足に力を籠める。

 

——身体物理限界を越えた跳躍力

——前後左右同時発射可能なダブルファング

——マスター・チャペルに仕込まれた殺人戦闘術

 

 鏖殺は一瞬にして完了する……はずだった。

 瞬間移動のような速度で無防備なアビドス生徒の横まで跳躍し、ダブルファングの銃口を向ける。そして引き金を引こうとする刹那、ウルフウッドの両手がダブルファングを押さえていた。

 

「だからさせへんて」

 

 隙を見せてしまったのはサオリだった。サオリの鳩尾にウルフウッドの渾身の蹴りが突き刺さる。

 

「ぐうッ! 」

 

 地面を転がるサオリ。ウルフウッドはその隙にアビドスの生徒たちへ叫ぶ。

 

「お前ら! パニッシャー盾にしてジープまで走れ!! 」

 

 ウルフウッドの指示を受け、慌てて地面に置かれていたパニッシャーを皆で拾い上げるアビドス生徒達。そしてそのまま施設の外に置かれていたPMCのジープへと向かっていく。

 

「しまった!!」

 

 ミサキが慌てて物陰から身を出しヘイロー貫通弾入りのハンドガンでアビドス生徒を銃撃するが、盾にされていたパニッシャーにそれは阻まれる。ヘイロー貫通弾といえど対物性能は通常弾と変わらない。パニッシャーを貫通できる威力は当然無かった。

 仕方なくジープへ向かうアビドス生徒に近づこうとするミサキ。しかし、すでにウルフウッドは先ほどいた場所から姿を消していた。

 

「ワイから目逸らすのはアカンで」

 

 突如として眼前に現れたウルフウッドにミサキのハンドガンは押さえられ、逆にウルフウッドのハンドガンがミサキに突きつけられていた。

 

ドガンッ、ドガンッ、ドガンッ、ドガンッ

 

 ほぼゼロ距離で一マガジン分の銃弾を浴びせられたミサキは意識を手放す。

 

 蹴り飛ばされていたサオリは起き上がり、目にした光景に戦慄する。起き上がるまでの数秒程度の間にミサキは倒れ、アビドスの生徒は射程外。自分を蹴り飛ばした男はこちらを見据えながらハンドガンのマガジンを交換している。

 アビドスの生徒がジープでこの場から走り去っていくのを眺めながら、サオリはダブルファングの狙いをウルフウッドに変更し、構える。

 

「やめとけ、お前らじゃワイには勝てへん」

 

「……まだ蹴りをもらっただけだ」

 

「それがお前とワイの差や」

 

 その忠告を無視しサオリはウルフウッドの後ろまで跳躍、振り向きもせずにダブルファングの後方の銃身で攻撃するが、ウルフウッドは当然のように半身ズラすだけでそれをかわす。

 サオリは間髪入れず首を刈り取るような勢いで回し蹴りを繰り出すが、ウルフウッドは上半身を地面と平行になるほど反らして再び攻撃をかわす。同時にハンドガンの銃口はサオリを捉えていた。

 

ドガンッ、ドガンッ、ドガンッ、ドガンッ

 

 先ずは四発、サオリは再び地に伏す。

 

ドガンッ、ドガンッ、ドガンッ、ドガンッ

 

 更に四発、止めを刺すように追い撃ちをかける。

 

「がはっ!!……ぐぅ……」

 

 息も絶え絶えになるサオリ。

 

「まだ意識あるんか、根性あるな」

 

 ハンドガンのマガジンを交換しながらウルフウッドはサオリに話しかける。

 

「残念やな。お前の動き、ワイよう知ってんねん。ミカエルの眼に同じ攻撃は通用せん。マスター・チャペルは言ってなかったんか?」

 

 装填が完了したハンドガンが再びサオリに向けられる。

 

——身体物理限界を越えた跳躍力

——戦術の一切をねじ伏せる戦闘能力

 

 間違いない、この男は私の先にいる完成形だ。……勝てる気が、しない。

 戦鬼が私を見下ろす。

 

「……投降しろ。今ならまだ引き返せるで」

 

 この男が放ったのは銃弾ではなく意外な一言だった。

 

「お前ら、まだ人殺したこと無いやろ? せやから引き金引くのがコンマ遅い……ああ、誉めてんのやで、これ。あの外道に師事されといて手汚れてないんはええことや。……マスターチャペルからはワイが守ったる。せやからあの外道がどこにおるか教えて欲しいねん」

 

 分からない。

 

「……なぜそんな言葉を吐ける。私はお前らを殺そうとしたんだぞ?」

 

 分からない。

 

「なぜ……なぜそんな私を、守ると、言えるんだ……」

 

 目の前の男は笑って答える。

 

「まあワイはお前の先輩みたいなもんやからな。お前もあの外道に嫌々技を仕込まれた口やろ? ワイは嫌がらせにな、あいつの犠牲者は全部取り返したろ思ってんねん」

 

 そう言ってニコラス・D・ウルフウッドはハンドガンを下げ、無手側の手を差し出してきた。

 

 ……この手を取ってもいいのだろうか?

 分からない。守ると言われたことがない。

 この男なら……姫を、皆を、あの場所から引き上げてくれるのか?

 分からない。希望を持つことを許されたことがない。

 ……私は、どうしたらいい?

 

「サオリ!! 」

 

 聞き覚えのある声が聞こえると同時に閃光弾が投げ込まれ視界が白色に染まる。声がした方向から銃撃音が近づいてくる。

 

「こっちだ!! 」

 

 視力が回復しない中、声の主に手を取られそのままそちらへ走っていく。

 

「……アズサか? すまない、助かった。ミサキはどうした? 」

 

「ミサキは私が抱えてる。ヒヨリも救出済みだ」

 

 ウルフウッドから十分に離れたからかアズサは立ち止まる。音からしてミサキを下ろし息を整えているようだ。

 

「はぁ、はぁ……ニコラス・D・ウルフウッド、恐ろしい男だ。閃光弾で目を潰していたはずなのに私の攻撃が躱された。マスター・チャペルの言っていたことに誇張は無い……」

 

「……そう、だな」

 

「どうしたサオリ? あいつにやられたところが痛むのか?」

 

「いや、大丈夫だ……それよりアズサ、どうしてここへ? 」

 

 アズサは私たちの本命の作戦の為にトリニティに潜伏していたはずだ。ここに来るという話も聞いていない。

 

「ニコラス・D・ウルフウッドがトリニティに応援を要請しているのを見て心配になって来たんだ。トリニティだけじゃない、ゲヘナの応援も到着している。もはやカイザーPMCに勝ち目はないだろう。ここから脱出しよう」

 

 アズサは息を整えミサキを再び担ぐ。私も視力は回復していた。

 

「……そうだな、ここを出るぞ」

 

 結局あの時どうすれば良かったのか? そのわだかまりは残ったままだった。

 

◇ ◇ ◇

 

(逃げられたか……しかし、結局あのジジイは出てこんかったな)

 

 ウルフウッドがサオリに話したことは本心だったが、同時にマスター・チャペルを釣るため餌でもあった。

 

(あの男ならワイが死ぬところを間近で見とるか、自ら止めを刺しに来る。さっきの話も、あいつなら虫唾が走るような内容だったはず)

 

 それなのにマスター・チャペルは現れなかった。そのことにウルフウッドには疑問を持つ。閃光弾を投げてきた人物がそうか? という考えも浮かんだが、すぐさまそれは否定した。

 

(一瞬見えたガスマスクのガキが雷泥と同じくマスター・チャペルやったとしたら……やっぱ無いな。あいつならサオリちうのごとワイを撃つ。あれはホンマにアイツらの仲間やな。……あっぶな、()()()()()()()()()()())

 

 ウルフウッドはマスター・チャペルを何時でも撃てるようにサオリに話しかけながらも殺気を燻らせていた。ハンドガンに殺気を籠めヘイロー貫通能力を持った状態にしていたため、マスター・チャペルとは思えなかったアズサに対して躊躇いを持ってしまい初動が遅れてしまっていたのだ。

 

 (しかし、だとすればマスター・チャペルは最初からここには居なかったちうことか? なんでや? ……なにか動けへん理由があったんか? せやったらなんでダブルファングを差し向けた……? )

 

 ウルフウッドは思案し、ある仮定へと思い至る。

 

(……予告状ちうことか? 自分もキヴォトスにおるぞと、ワイを殺すぞと、そういうことか……その為だけに、またガキを()()()()んか…!? )

 

 ウルフウッドのこめかみに青筋が浮かぶ。

 

「……三度目の正直や。今度こそお前に引導渡したるで……マスター・チャペル」

 

 ウルフウッドは再び殺人を犯すことを心に決めた。

 

◇ ◇ ◇

 

 アビドスの生徒達が乗り込んだジープが基地の中を爆走していた。すぐ後ろにはカイザーPMCの追っ手がワラワラと続いている。

 撃ち放たれたパンツァーファウストをかわすためアヤネが大きくハンドルを切る。ジープは大きく車体を揺らし、中の生徒は揉みくちゃになっていた。

 

「あ、アヤネちゃん! もうちょっと安全運転できないのぉ!? 」

 

「無理言わないでセリカちゃん!! こっちも精一杯なんだからっ! 」

 

 車内をシェイクするように蛇行しながら逃走を続けるジープ。しかしそれを妨げるように鋼鉄の巨体が進路上に降り立つ。

 

「きゃあっ!! 」

 

 衝突を避ける為にアヤネは思い切りハンドルを切るが、曲がりきれずにジープが横転してしまう。

 

「いたたたた……今度はなんなのよ、もう! 」

 

「……うへぇ、なあに、あれ……? 」

 

 アビドスの面々が横転したジープから這い出ると、目の前には黒いゴリアテが佇んでいた。ゴリアテのスピーカーから怒気を含んだ声が放たれる。

 

「見つけたぞッ!! アビドスの糞ガキどもっ!!! 」

 

「ん、その声はカイザー理事」

 

 シロコがつい先日聞いたばかりの声から黒いゴリアテのパイロットを察する。

 

「そうだ!! 揃いも揃って無能ばかりのせいでっ!! こんな羽目にっ!! 」

 

 カイザー理事は怨嗟をわめき散らしながらゴリアテのガトリングガンを乱射し始めた。

 

「クソックソックソックソッ!! 黒服も! マダムも! 全くもって使えない!! 私がこの計画にどれ程費やしたと思っている!! 時間も、金も、一体どれだけぇぇぇっ!!! 」

 

「私たちには関係ない話でしょぉっ!! 」

 

「うるせぇぇ!!! 」

 

ドガガガガッ!!

 

 半ば錯乱めいた無茶苦茶な攻撃であったが、その威力はまともな装備の無いアビドスの生徒を追い詰めるのに十分だった。アビドスの生徒は無我夢中で逃げ延びながら近場の倉庫へ避難する。

 

「武器か何か無いかな」

 

「!? ちょっとまって下さい! 」

 

 倉庫の中を物色しようとするシロコを、ドアの隙間から外を見ていたノノミが制する。

 

 カイザー理事の黒いゴリアテが頭部の大型キャノンのチャージを開始していた。カイザーの兵士達もその後ろに集結し、倉庫に向けて武器を構えている。

 

「はぁ、はぁ……もういい、もう終わりだ……跡形も無く吹き飛べ……」

 

「不味い!! 皆、逃げ……」

 

 ホシノが指示を言いきる前に、爆音が響き渡る。数多の榴弾がカイザーPMCに降り注いでいた。

 

「なっなんだっ!? まさか奴らがもうここまでっ!? 」

 

 狼狽え、自身を守るために生き残っていた兵士を集結させようとするカイザー理事。しかし横合いから放たれるライフルと機関銃の弾丸にそれらも刈り取られていく。

 

「な、あっ……」

 

「ふん、他愛ないな。これなら反省文のほうがよっぽど強敵だ」

 

「数だけはいるのが面倒。早く終わらせたいわ」

 

 砂塵の中からイオリとヒナが姿を表す。そして二人の間から白いコートをたなびかせ、一人の大人が姿を表した。倉庫から眺めていたアビドスの生徒が声を揃える。

 

「「「「「先生!! 」」」」」

 

 カイザー理事が先生にガトリングガンの銃口を向け恨めがましく叫ぶ。

 

「貴様ぁぁ!! 」

 

“ 皆は返してもらうよ ”

 

 先生はカイザー理事に向けて言い放つ。同時にその頭上を一つの物体が飛翔した。

 

「アルちゃん♪」

 

「分かってるわ」

 

 ムツキの爆弾がミチミチに詰められたバックがゴリアテの眼前まで迫ると同時に、アルから放たれた弾丸がそれを撃ち抜く。

 

ドッガーンッ!!!

 

 凄まじい爆炎がゴリアテを包み、ゴリアテは半壊しながら膝を着く。そこへハルカが差し迫りコックピットハッチに向けてショットガンを乱射した。

 

「死んでください死んでください死んでください!」

 

 ひしゃげたコックピットハッチをハルカが力任せに引きちぎると、カヨコが手際よくカイザー理事を引きずり出して理事の関節を決める。

 砂に顔を埋めるカイザー理事。それを見下ろす先生。その様子はこの戦いの勝敗を表していた。

 

“ 不法行為によって子供たちを傷つける行為を私は許さない。確かにそう言ったよね? ”

 

 先生は笑っていた。笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙をむく行為が原点である。子供を傷つけ、あまつさえ自身の身勝手な理由で殺害までしようとした行為に、先生は牙を向けていた。

 

「こっ……これで勝ったと思うなよ!! まだこちらの戦力は……」

 

「もう残ってへんで。店閉まいちうやつや」

 

 先生に気圧されながらも放った負け惜しみも横から現れたもう一人の大人が踏みにじる。

 

「ワイ言ったよな? こないな戦力でワイらをどないかできると思うとるんかって。お前はもう終いや」

 

 ウルフウッドの後ろにはPMCの兵士たちが死屍累々に転がっていた。それを見てカイザー理事は悟る。もう打つ手は無いと。その事実に打ちのめされたカイザー理事はついに抵抗するのを諦めた。

 そして拘束していたカヨコと交代するようにキリノがカイザー理事の手を取り、手錠をかける。

 

「カイザー理事!! 貴方を生徒誘拐、ならびに殺人未遂の容疑で逮捕します!! ……ふ、フブキ、私たちが最後を持っていってしまって良いのでしょうか……? 私たちほとんどなにもしていないのですが……」

 

「いいのいいの。ヴァルキューレが逮捕したっていう事実が大切なんだから。これにて一件落着ってことで」

 

 フブキの気の抜けた一言通り、これにてアビドス攻防戦は幕を下ろした。




サオリ・ザ・ダブルファングは本当はめちゃくちゃ強いんです。リヴィオぐらい強いつもりなんですが、ニコ兄がヘイロー強化+ダブルファングとの戦闘経験ありなせいで苦戦する描写が思い浮かばなくてこんなことに……
ニコ兄強すぎてなかなかピンチにできない……
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