「いつも思うがワイの仕事は護衛ちゃうんか? これワイの仕事ちゃうやろ……」
そんな愚痴をこぼしながらウルフウッドはシャーレの書類を片付けていた。そんな彼に郵便の受け取りから戻ってきた先生が近寄る。その手には手紙が握られていた。
“ ウルフウッド、アヤネからの便りが届いたよ ”
「ん、そか……にしてもこのご時世に手紙したためるのも真面目っちうかなんちうか……」
そう言いながらウルフウッドは仕事の手を止めコーヒーを二人分入れ始めた。その一つを先生に渡すと、先生は一口啜ってから手紙を広げる。
お疲れ様です、先生、ニコラス先輩。色々お伝えしたいことはありますが、まずは借金の件ありがとうございました。先生達のおかげでカイザーローンには連邦生徒会の捜査が入り、違法な利率がまともな値にまで下がる結果に繋がりました。それだけでなくお二人がカイザーローンに交渉して違法な利率の過払い分を借金返済に充てていただいたと伺っています。おかげでなんと借金が三億円程度にまで減らすことができ、いくら感謝してもしたりません。借金返済が現実的なところまできて皆さん本当に喜んでいます。
“ 交渉して……ねえ? ”
先生は少し困ったような表情を浮かべながらウルフウッドを見つめる。
「……なんやねん」
“ いや、パニッシャーちらつかせての交渉ってどうなのかなぁって思ってさあ。新しいカイザーローンの担当の人、完全に怯えてたよ? ”
先生は当時の状況を思い出す。二人でカイザーローンと借金についての話をしていた時、ウルフウッドはパニッシャーをわざとらしく横に置き、それで床をゴツゴツ鳴らしながら「今度はどんだけ被害出てまうんやろうな、おたくら」「誠意っちうもんの見せ方あるやろ? 」などと述べ交渉を切り出していた。完全にヤクザかマフィアのそれである。どっちが借金取りか勘違いしてしまいそうな光景だったのだ。
「なにゆうてんねん、こっちは殺されかけとるんやぞ。せやから誠意見せてもらっただけやないか。借金失くしてくれてもええぐらいやで。土地かてこれから取り返していかなイカンのやし当然の要求やんけ 」
確かにウルフウッドの言う通りなのだが、なのだが……もうちょっとこう、手心を……と、新しいカイザーローン担当者をおもんばかると先生は同情を禁じ得なかった。とはいえウルフウッドの主張も理解でき、そもそもやっぱりカイザーが悪いので先生はそれ以上言わずにアヤネの手紙の読み上げに戻る。
逮捕されたカイザーコーポレーションの理事ですが、現在は余罪追及のため厳しい取り調べを受けているとのことでした。ただ、逮捕される前にカイザーコーポレーションは彼を解雇処理していたらしく、自分たちの無関係を主張しているようで……大人の世界の怖さを垣間見たような気がします。
“ これについては先手を取られちゃったね。こちらの捜査が入る前に責任を理事に押し付けてアビドスの件を
「ヴァルキューレに行った時のことも考えると、多分防衛室がクロやろな」
ウルフウッドはヴァルキューレに支援を求めに行った時の様子を先生に伝える。
“ これについてもどうにかしないとね。とはいえ…… ”
「なにか別のキッカケないときびしいなぁ」
「「はあ」」
二人は同時にため息をつきながら再び手紙の読み上げに戻る。
そういえば屋台の形で再開した柴関ラーメンですが、最初のお客に便利屋の方々がいらっしゃったそうです。セリカちゃんが再開のお手伝いをしていたみたいですが、「先生のツケで」と言っていっぱい食べていったとか。大将も先生から話は伺っていると言っていたみたいですが大丈夫ですか?
「おお、大将無事復帰できたんやな」
“ 最初はこれを機に引退を考えたみたいだったけどね。アルたちとの約束のこと話したら『まだ来てくれる人がいる限り、やめるわけにはいかねえな』って張り切ってくれたんだ。今度また食べに行こう ”
「せやな」
アビドスの生徒会長はホシノ先輩に戻ってもらいました。ホシノ先輩はこれを機にノノミ先輩に生徒会長を続けてもらおうとしていたみたいですが、あんな決まり方では納得できないとノノミ先輩が断固として拒否しまして……。
“ そういえば君も対策委員会会長をシロコに譲ろうとして断られてたよね? ”
「そやねん。ワイは誰かさんのお守で借金返済する時間もあらへんちうのに、ホシノのやつが断固として拒否しよってな。しかも定例会議のたびにワイに連絡してくるんやで。どないせいっちうねん」
“ あははは……ま、まあ私も対策委員会の顧問だし、また今度二人でアビドスに行こうか ”
残りの借金返済に向けて、まだまだ色々ありますが頑張っています。こんな私達ですが、これからもよろしくお願いしますね。
手紙を読み終え一息つく二人。ウルフウッドがため息をつきながら喋る。
「……残りの借金、防衛室とカイザーの癒着、ゲマトリアとかいう訳の分からん組織、極めつけにあのクソジジイがキヴォトスにおる……問題は山積みやな」
“ 確かにそうだけどさ、ウルフウッド。一歩一歩、歩んでいくしかないよ。私たちはまだ最初の一歩を踏み出したばかりだ ”
「ま、確かにその通りか……」
ウルフウッドは思い出す。絶え間ない問題集のようだったあの旅路。少し進むたび躓いて、毎回答え選びに苦悩して、それでも目的地までたどり着いたあの旅路。それに比べればまだマシかと自分に言い聞かす。
ただそれでも、納得できないことはあった。
「ただな、センセ……猫探しは流石にワイらの仕事ちゃうやろ? 」
——シャーレの仕事はまだ始まったばかりだ。
これで終わりそうな雰囲気ですが、ちゃんとまだまだ続きます。
ちゃんとかけるよな?未来の自分?