ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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絆ストーリー:ウルフウッド01_わかってんねんそんなこと

<センセ、三十分経ったで>

 

<……反応無し、約束通り突入するからな>

 

——センセの元に向かう

 

◇ ◇ ◇

 

 DU内にあるボロくなった廃ビルの一室。その中で先生は椅子に縛り付けられていた。その周囲にはヘルメットを被った不良が数名たむろしている。

 

「先生〜無用心過ぎだぜ。個人面談したいって連絡でノコノコ一人で来ちゃってさぁ〜」

 

「もしかしてアレな個人面談でも期待してたかぁ?ぎゃははははっ」

 

 下卑た声で不良は先生に話しかけるが、先生は凛然とした態度を崩さず彼女達に語りかける。

 

コツコツ

“ 確認するけど、困ってることは無いのかな? ”

 

「おいおい、自分の状況分かってんのかアンタ? 」

 

コツコツ

“ 分かってるよ。君たちの面談に来たんだ ”

 

 先生と話していた不良達は互いに顔を見合せる。うち一人が頭に指を当て「こいつパーだぞ」のジェスチャーをした。

 

「まあいいや。アンタに相談することなんかねーよ、先生。金の問題もアンタの身代金で解決するからな! 」

 

 再び下卑た声で笑い出す不良たち。先生は物悲しそうな表情を浮かべて返答する。

 

コツコツ

“ ごめん、その解決方法は叶えさせてあげられないんだ ”

 

 不良の一人が先生に銃を突き付ける。

 

「立場わかってんのかてめぇ! つーかさっきからコツコツコツコツコツコツコツコツうるせーんだよっ!! 」

 

 先生は先ほどから床に靴底を当てて音を鳴らしていた。彼に場所が分かるように。

 

“ ごめんごめん、もうしないよ。()()()()()()()()()。あとそこは危ないよ? ”

 

「はぁ? なに言って……」

 

ドガッ!!!

 

 不意に先生の前方の床から銃弾が飛び出し不良の顎を撃ち抜いた。

 

トガガガガガガガッ!!!!

 

 その一発を皮切りに連射される弾丸は先生を中心とした円形に床を撃ち抜いていく。綺麗な円が床に完成するのと同時に先生は椅子ごと下のフロアに落下した。

 

 その穴から先生と、もう一人の男の声が聞こえてくる。

 

“ 痛いじゃないかウルフウッド!! もうちょっと優しく…… ”

 

「うっさいわボケ!! だから言ったやないか! 罠に決まっとるって! 」

 

“ そうかもだけどさ、言ったじゃないか ”

 

「ええわ、話は後や! 」

 

 ウルフウッドは先生の落ちた穴に手をかけ、上のフロアへと這い上がる。

 

——床から姿を表すのは巨大な十字架、だというのに不良達にはまるで悪魔が召還されているように見えていた。生け贄は、自分たちだ。

 

「仕置きの時間やで、悪ガキども」

 

「「「ぎゃあああああっ!! 」」」

 

 不良たちの絶叫が廃ビルに響き渡った。

 

◇ ◇ ◇

 

「お疲れさん、いつもおおきにな」

 

「いえ、職務ですので」

 

 不良達をヴァルキューレに引渡し彼女達が離れたのを確認すると、ウルフウッドはおもむろにタバコを取り出し吸い始める。

 

「で、なんべん繰り返すねんこんなこと。おんどれが誘拐されたのはこれで三度目やぞ。しかも同じような手口で。いい加減学べや」

 

 ヴァルキューレの車が行った先を眺めたまま先生は答える。

 

“ ……まずは生徒を信じることから始めたいんだよ、私は ”

 

「その結果がこれやぞ」

 

“ 分かってるよ。でも困ってる生徒がいた可能性はゼロじゃなかったからさ…… ”

 

「それでなんべんワイに尻拭いさせる気なんやおんどれは? 」

 

“ 分かってるよ、うん……うん…… ”

 

 先生は生返事で答える。その目はまだ不良達が連れていかれた方角を見ていた。

 

「はぁ……」

 

 ホンマ、いい加減にせえや。こいつが嫌ってほど分かってるのは分かってんねん。分かってて、それでも可能性があれば見捨てられへん。お前が見限れない人間やっちうのは短い付き合いやけどよう分かっとる。似た奴知っとるからな。

 でもな、お前はどこぞのトンガリちゃうねんぞ。弱っちくてすぐ死んでまうねんぞ? なんで無茶を平然としてまうねん?

 せやから何べんもワイが言わなあかんやないか。

 

 ウルフウッドは先生の尻を蹴飛ばす。

 

“ 痛ッ!? ”

 

「分かってへんやんけクソボケ! お前まさかワイのこと自分の予備かなにかと勘違いしてへんやろな? ワイにお前の代わりはできへんしするきも無いからな! 大人やったら自分の尻拭いぐらい自分でせえやこのガキ! 」

 

 先生は呆気にとられた表情を浮かべた後、笑顔を浮かべて言う。

 

“ ごめんごめん、分かったよ ”

 

「……」

 

 分かってんで、どうせ止められへんのやろ。でもやな、これからも毎度言わされるワイの身にもなれやこんボケが!!! ホンマ腹立つわ……

 

 ウルフウッドは大きく紫煙を吐き出し、空を見上げて問いかける。

 

(おお、神よ、なんでワイはこの手のアホと縁があるのですか? )

 

 神は答えない。

 

“ おーいウルフウッド、シャーレに帰ろうよー ”

 

 いつの間にかシャーレに向かって歩きだしていた先生の声だけがその場に聞こえていた。




回答:トンガリイズムについていけちゃう君が悪いよ

トライガン・マルチプルバレッツで書かれている番外編冒頭のパロディー回。
先生とウルフウッドの空気感が書けたらなと。


あと今回は短めの話なのでもう一つの絆エピソードも同時投稿してます。
(こっちは5:45、もう一つは6:00投稿です)
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