ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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絆ストーリー:ホシノ_ホシノウミ

<ニコラス、今度の定例会議は絶対来ること。生徒会長命令だからね>

 

<わかっとるって。ちうかセンセにまで手を回しといて何言ってんねん>

 

<とにかくちゃんと来ること。以上>

 

——ホシノの元へ向かう

 

◇ ◇ ◇

 

「うへー、という訳でアクアリウムにとうちゃーく」

 

 先生+アビドス生徒一向は最近オープンしたアクアリウムの前にいた。というのも元カイザーPMC理事の訴訟やら借金の利息変更の処理やらなんやらがとりあえず一段落つき、対策委員会の皆で休息を兼ねて遊びに行こうという話になったからだ。

 ウルフウッドがアクアリウムを眺めながら言う。

 

「……まあこの前の騒動の慰安ちうのはええで。でもなんでここなん? これお前の趣味やろ」

 

「そうだよ、会長権限でここにしたんだ〜」

 

「横暴過ぎひん? お前らもなんか言うたれや」

 

 ウルフウッドはホシノ以外の生徒に尋ねたが、彼女達はパンフレットを見てどこに行くかの議論に夢中だ。シロコが顔を上げて答える。

 

「大丈夫だよニコ兄、満場一致だったから」

 

「ワイの票は? 」

 

「不在だったから私が代理投票しておいた」

 

 Vサインを向けるシロコ。「Vちゃうわ」とウルフウッドは愚痴る。そのやり取りを見てホシノが尋ねた。

 

「ニコラスは嫌だった? 」

 

「嫌っちうか……よう知らん生き物みて楽しむっちう感覚がわからんだけや」

 

「よう知らんって……海見たこと無いのは知ってたけど、もしかして魚もまともに見たこと無いの? 」

 

「しゃあないやんか、ワイの故郷は海どころか川もあらへん砂の星やぞ。砂を泳いどったのは魚じゃなくてデカイ虫や」

 

「それはそれで気になるんだけど。……でも、そっかあ……」

 

 ウルフウッドの横にいたホシノは一歩前に進みウルフウッドへ振り返る。

 

「大丈夫だよニコラス、きっと楽しめるからさ。分からないことはお姉さんが色々教えてあげるよ〜」

 

 そして「うへへー」と笑いながらウルフウッドの手を取りアクアリウムの入口へと歩みだした。

 

「ここの売りは海の中に入ったような水中トンネルなんだって! 楽しみだね〜」

 

「わかったわかったって、少し落ち着けや」

 

◇ ◇ ◇

 

「これが生きてるサーモンか、はぁ〜……」

 

 最初の態度から一変してニコラスは食い入るように水槽を眺めていた。よかった、楽しめてるみたい。私もつい解説したくなってしまう。

 

「因みに鮭とサーモンの違いは生食できるかどうかなんだよ。できるのがサーモン、できないのが鮭」

 

「なんでそないな違いできんねん? 」

 

「それはねぇ……」

 

 こういう会話をしているとニコラスが違う世界の住人だったのだと実感する。彼の故郷には本当に海が存在していなかったことがよく分かる。

 同時に別の疑問も浮かんでくるけど。

 

「ねえニコラス。なんでニコラスの故郷には魚がいないのにサーモンサンドとか知ってたの? 昆布出汁とかも知ってたよね? 」

 

「あーそれはやなぁ……ちと長い話になるで? 」

 

「いいって聞かせてよ。さっきから私が話してばっかだし」

 

「それはお前が勝手に解説するからやろ……まぁええわ」

 

 ニコラスは丁度近場にあった水槽を眺められるソファーに腰かけた。私も彼の隣に腰かける。ニコラスはなんとなしに水槽を眺めながら話し始めた。

 

「ワイの故郷はノーマンズランドっちう砂の星なんやけどな、元々そこには人間は住んでなかったんや。地球から新天地を求めて旅してた移民船団がノーマンズランドに墜落してもうてな。それで人間が住むようになった」

 

「え、話が急にSFになったんだけど? ていうかニコラスって宇宙船のクルーだったの? 」

 

「いや、ワイらはその生き残りの子孫になる。んで、その墜落で技術の殆どが失われてもうて、ワイらは宇宙船に積まれとったロストテクノロジーを食い潰しながら生き永らえてきたんや」

 

「へ、へぇ……」

 

 私が聞いたのってサーモンサンドの事だよね? 壮大な映画の序章にでも使えそうな話からどうやったらサーモンサンドの話になるのかな?

 

「それでやなぁ、そのロストテクノロジーの最たるもんに『プラント』ちうもんがあってな」

 

「プラント……? 工場かなにかなの? 」

 

「機能としては、まあそうやな。そのプラントちうのはプログラミング次第でなんでも生み出せる魔法の生体機器や」

 

「何でもって?」

 

「それこそ何でもや。水、電気、材料に食品なんでもな」

 

「食品……ああ!」

 

 そこまで聞いてやっと合点がいった。

 

「それでニコラスは食品としての海産物は知ってるけど、それの生きてる姿は知らないんだ?」

 

「そういうことや。もしかしたら生きてる魚も作れたのかも知れんが生かせへんし無駄やからな。加工された姿でしか作られへん」

 

「うへー、そのプラントだっけ? 生きてる魚も作れちゃったらやばいね、命も創れちゃうわけでしょ? 神様みたい」

 

「せやな。……ああ、そか、せやからか……」

 

「?」

 

 ニコラスは天井を見上げて、独り言のように呟いた。

 

「せやからワイらはバチがあたってしもたんやろな」

 

 その目は天井ではなくどこか遠くを眺めているように見えた。私はかける言葉が見つからず、ただ隣で静かに座っていた。

 

◇ ◇ ◇

 

「そういえばあいつらはどこにおんねん? 」

 

 ニコラスが思い出したかのように辺りを見回す。

 

「みんなだったらニコラスがサーモンに夢中になってる間にイルカショー観に行っちゃったよ。お土産エリアで合流しようってさ」

 

「薄情な奴らやなぁ〜。ホシノはそのイルカショーちうのはええんか? 」

 

「ん〜今回はいいかな。それよりも今ならショーで水中トンネルが空いてるはずだからそっち行こうよ! 」

 

 ニコラスの手を取り奥へと進んでいく。

 ……改めて思うけどニコラスの手って大きいなあ。それに硬い。研鑽を積み重ねてきた人の手だ。この手に私たちは守られてきたんだ……少し、鼓動が早まってしまう。

 そんなふうにドギマギしていると、あっという間に水中トンネルにたどり着く。

 

「……凄い」

 

「確かにこれは圧巻やなぁ」

 

 一面に広がる青。差し込む光が水泡や魚に反射してキラキラしている。まるでお星さまみたいだ。その美しさに圧倒されながら私たちはトンネルの中を進む。

 

「あ、あれ見て! 可愛いお魚さんだよ〜。あれはサメかな? カッコいいね! 」

 

「相変わらず魚好きやなホシノは。まあでもこんなん見せられたらわからんでもないわ」

 

 そうやって全面に広がる青を楽しんでいると私達に影が差し込む。なんだろうと思って見上げると、そこには白鯨の姿があった。

 

「凄い! ニコラス、クジラさんだよ〜! ……ニコラス? 」

 

 反応がないことが気になって彼の顔を見上げる。ニコラスは呆気にとられたような、どこか懐かしそうな……そして少し悲しそうな表情で目の前の景色に魅入っていた。その目にはうっすらと涙が溜まっているように見える。

 

「……どうしたのニコラス、大丈夫? 」

 

「……ん、ああ、別に、なんでもあらへん」

 

 今気付いたかのように彼は涙を拭う。

 

「ただ眩しかっただけや」

 

 そう言うと彼はサングラスをかけ、再びその景色を眺めていた。私もそれを見る。

 白鯨が生み出した泡が一面に広がり、まるで空に撒かれた紙吹雪のようにキラキラと輝いていた。

 

「……綺麗だね」

 

「せやな」

 

 白鯨がトンネルから離れて行くまで、私たちはそのキラキラを眺めていた。

 

◇ ◇ ◇

 

 水中トンネルを堪能してきた私達はお土産コーナーでみんなと合流した。私がお土産を吟味していると、シロコちゃんとノノミちゃんが後ろからヌッと現れ私を挟みこんでくる。

 

「ホシノ先輩、ニコ兄とのデートどうだった? 」

 

「……私達を置いていったのはシロコちゃんの案? 」

 

「私の案ですねー、シロコちゃんが誘導してくれました☆ 」

 

「ん、私たちのコンビネーションはバッチリ」

 

 グッとサムズアップする二人。いやそんなところでコンビネーション発揮しなくてもよくない? ……まあ、嬉しかったけど……

 

「……おや、その表情? ホシノ先輩、なにかニコ先輩と進展ありましたか? 」

 

「なにもないって」

 

 シロコちゃんがジト眼で私の顔を覗きこんでくる。

 

「ん、その表情は嘘をついてる表情だよ、ホシノ先輩」

 

 シロコちゃん、本当に私のことよく見てるなぁ。でも教えないよ。新しく知ったニコラスの一面はもう少しの間私だけのものにしたいから。

 

「もう! これ以上からかうならお姉さん怒るよ! 」

 

 わざとらしく怒る素振りを見せると、二人も「わー」「きゃー」とわざとらしく逃げる素振りを見せる。いつもの予定調和というやつだ。

 

「もう! 先輩達はしゃぎすぎよ! 恥ずかしいじゃない! 」

 

「ん! イルカショーで一番はしゃいでたセリカに言われたくない」

 

「見てくださいホシノ先輩、セリカちゃん目をキラキラさせてカワイイでしょ〜」

 

「本当だ! 楽しんでくれててお姉さん嬉しいよ〜」

 

「ちょっと!? なんで撮ってるのよ!! 」

 

「もう! みなさん静かにしてください!! 恥ずかしいですよぉ……」

 

「「「はーい」」」

 

 いつもみたくわちゃわちゃして、いつもみたいにアヤネちゃんに叱られる。うん、これも予定調和だ。だからこの後のサプライズは予想してなかった。

 

「何やってんねんお前ら」

 

「あ、ニコ兄。……ん? ニコ兄も何か買ったの? 」

 

 ニコラスがお土産がはいった紙袋を持ってこちらに近づいてきた。そして袋から何かを取り出しシロコちゃんに渡す。

 

「ちょうどええのがあったからやるわ」

 

 シロコちゃんが確認するようにそれをつまみ上げると、それは青色のクジラのキーホルダーだった。ニコラスは続いてノノミちゃんに緑、セリカちゃんに赤、アヤネちゃんに黄の色違いを渡していく。……あ、これもしかしてあの覆面の色? だとしたら私は……

 ニコラスが私の前にも来てクジラのキーホルダーを取り出す。その色は予想に反して白だった。

 

「すまへんなホシノ、なんやピンクは人気あるのか売り切れとってな、これで我慢してくれ。まあええやろ? 」

 

 ニコラスはなんでもなさそうに言う。でも私は嬉しかった。

 

「いいよ〜別に。ていうかどういう風のふき回し? 」

 

「ええもん見せてもろたからな、その礼みたいなもんや。連れてこられんと、こないなところ縁なかったやろうし」

 

 そう言うとニコラスはお土産を入れていた紙袋を丸めてゴミ箱へと捨てた。そして、その手には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

“ ウルフウッド、私のは? ”

 

「……は? なんでお前に買わなあかんねん。欲しがったら自分で買えや」

 

“ えー、ケチ ”

 

「うっさいわボケ」

 

 ……多分ニコラスに言葉以上の意図はない。本当にピンクがなくて白色を二つ買ったんだろう。

 

 服の上から以前貰った木彫りの鳥を撫でる。

 

「……うへへ」

 

 それでも、ニコラスとの繋がりがまたひとつ増えたようで笑みが押さえられない。

 

「……ニコ兄とお揃い」

 

「よかったですねホシノ先輩☆」

 

 さっきと同じようにシロコちゃんとノノミちゃんがヌッと現れる。本当に目ざといんだから二人とも……。結局、帰り道は終始二人に弄られ続ける羽目になってしまったけど……それでも本当にここに来て良かったと思った。




セイトカワイイヤッター成分を追加するために入れました。
クロスオーバー小説の宿命とはいえせっかく魅力的な生徒が多いブルアカの小説なんだから生徒のカワイイ部分も入れないとね、というお話。
ホシノは原作から改変大きいけど、乙女なのは変わりないんだ!

ちなみにプラントが生命を作れるかどうかですが、個人的には作れるんじゃないかなと。
ナイヴズがリンゴの木を作ってましたし、なにより自立種がその最たるものだと思うので。
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