ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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03_私たちはあの日、少女に出会った

 機械の台で裸で眠っている少女を発見した一同。モモイが少女に近づき観察する。

 

「……返事が無い。ただの死体のようだ」

 

「不謹慎なネタを言わないで! 」

 

 ミドリもモモイを注意をしながら、ネタにされた眠っている少女へと近づく。

 

「……ねえ、見て。この子、怪我とかじゃなくて……『電源が入ってない』みたいな感じがしない? 」

 

「そう? 確かに言われてみれば、何だかマネキンっぽいね。どれどれ……」

 

 何の遠慮もせず眠っている少女を突っつくモモイ。人肌と遜色ない質感に驚きつつ、近付いたことで台に文字が刻まれていることに気づく。

 

「……AL-IS……? どう読むのか分からないけど、この子の名前? ……アリス……でいいのかな? 」

 

 モモイの隣にまで来たミドリも同じ文字を見つめる。

 

「ちょっと待って、これよく見ると全部ローマ字なわけじゃなくて……AL-1S、じゃない? 」

 

「え、そう? 」

 

「一体この子は……それにこの場所、一体何なんだろう? 」

 

「この子に聞いた方が早いんじゃない? 」

 

「起きて話してくれるんなら良いんだけど……とりあえずこのままじゃ可哀そうだし、服でも着せてあげよっか 」

 

 寝ている少女のあまりの精巧さに人形と思えないせいか、裸でいることを不憫に思ったミドリが自身のバックから着替えを取り出そうとする。が、そこで男二人の目線があることに気づく。

 

「あ、あの、先生、ウルフウッドさん……」

 

“  あ、ごめんごめん。私たちは後ろを向いてるから終わったら教えてくれるかな? ”

 

「すみません」

 

 下着もあるからか少女らしく恥ずかしがるミドリ。先生はその意思をくみ取ってウルフウッドに後ろを向かせながら、自身も回れ右をする。ウルフウッドが先生にヒソヒソと話しかけた。

 

(どないすんねんセンセ。あれ、多分厄ネタやぞ)

 

 かつて見たパペットマスターが操る人形、それ以上に緻密に造られたモノを見てウルフウッドは何か不穏なモノを感じていた。

 

(“ あれがG.bibleって訳でも無さそうだしね。後でユウカ達に知らせて改めて調査を…… ”)

 

 後でセミナーと協力してあの少女の再調査をすることを先生は提案しようとするが、服を着させられたその少女から急にPCの起動音の様なものが発せられ、先生とウルフウッドは後ろを振り向く。

 少女は台から起き上がり、言葉を発していた。

 

「——状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します——」

 

 ミドリが驚きの声を上げる。

 

「め、目を覚ました……?」

 

「状況把握、難航。会話を試みます……説明をお願いできますか? 」

 

「え、えっ? せ、説明? なんのこと?」

 

「せ、説明が欲しいのはこっちの方! あなたは何者? ここは一体なんなの!? 」

 

 突然の状況に混乱する二人。後ろにいた大人たちも困惑していた。

 

(……おいセンセ、動き出したぞあれ)

 

(“ あ、でもミドリに『敵対意思は発動しません』って言ってる。とりあえず攻撃とかをしてくることはなさそうだよ ”)

 

 先生達が様子を見ているとミドリが先生にどうすればいいか尋ねてきた。先生は起動した少女へ対話を試みる。

 

” こんにちわ。えと……さっき言っていた『接触許可対象』って、どういう意味か教えてくれる? ”

 

「……回答不可、本機の深層意識における第一反応が発生したものと推定されます」

 

” んんん……? ”

 

 要領の得ない回答に頭を悩ます先生。その横でモモイが別の考えで頭を悩ませていた。

 

「うーん……工場の地下、ほぼ全裸の女の子、おまけに記憶喪失……ふふっ、良いこと思いついちゃった。この子を連れて帰ろう! 」

 

「「はぁ!?」」

 

 突拍子もないモモイの発言に驚きの声を上げるミドリとウルフウッド。ミドリは思わずモモイの襟を掴む。

 

「お姉ちゃん何言っているの!!? 本気!? 」

 

「うっ、首しまってっるって! ゲホッ、ゲホッ! し、仕方ないじゃん。こんな怖いロボットがうじゃうじゃいるところに置いていくわけにもいかないでしょ! 」

 

「そうかもだけど……」

 

 そんな姉妹のやり取りの横でウルフウッドが再び先生に小さな声で話しかける。

 

(あんなこと言っとるけどええんか? )

 

(” うーん、でもモモイの言っていることも確かに一理あるし……とりあえずあの子を連れて行こう。今のところは無害そうだしね ”)

 

(無害……か)

 

 どうにも人形に嫌なイメージがあるせいかウルフウッドは鋭い目つきで少女を見つめる。少女にヘイローがあることを確認し、それであれば自身の忌まわしい能力も通用するか? との考えに至った。

 

(……わかったわ。ただ、もしアレが何かしてきたらワイが対処するからな)

 

(” ……そうならないことを祈るよ ”)

 

 先生は軽くウルフウッドの肩を叩いてからモモイたちの元へ向かう。

 

” 確かにモモイの言う通りこの子をここに置き去りにはできないし、この子を連れていったん帰ろう ”

 

「さっすが先生、話が分かるね!」

 

「大丈夫なのかなぁ……」

 

「移動を理解。目的地への誘導を願います」

 

 喜ぶモモイと不安げなミドリ。そして無垢な瞳で目的地を訪ねる少女に、それを警戒するウルフウッド。三者三様の様相のまま、一行はゲーム開発部の部室への帰路に就いた。

 

◇ ◇ ◇

 

「さて、名前は必要だよね。この子のことは『アリス』って呼ぼうか! 」

 

 部室に到着してからいの一番にモモイが提案したのは、連れて来た少女の呼称だった。ミドリが「本当ならAL-1Sちゃんじゃないの? 」と疑問を呈するが、モモイがアリスでよいか少女に尋ねると、少女は初めて笑顔を浮かべ答える。

 

「……肯定。本機、アリス」

 

「ほら! アリスも気に入ったって! 」

 

「うーん……本人が気に入っているなら良いけど……」

 

 そのような一連の流れにより連れて来た少女はアリスとなった。ミドリがアリスを見ながら疑問を零す。

 

「この子のこと、連絡するなら連邦生徒会かな? それともヴァルキューレ? 」

 

「いや、とりあえずセミナーでええやろ。一部始終見られと……」

 

「セミナーは絶対ダメ!! 連邦生徒会とかヴァルキューレに連絡するのも後だよ! それは私たちのやるべきことが終わった後でね」

 

 ウルフウッドが意見を言い終える前にモモイが遮る。先生とウルフウッドがモモイの発言に疑問符を浮かべている中、ミドリがモモイをじっと見つめる。

 

「やるべきことって……まさかお姉ちゃん……? 」

 

 ミドリは理解していた。この姉の滅茶苦茶さを。

 

「ミドリは感づいたみたいだね。そう、そもそも私達が危険を冒してまでG.bibleを探してた理由はなんだったっけ? 」

 

 急に講釈を垂れ始めるモモイ。話を先に進めるためにミドリがそれに乗る。

 

「それは……良いゲームを作って、部活を廃部にさせないためでしょ? 」

 

「そう、今一番大事な問題はそれ。良いゲームも作りたいけど、まずは部活の維持が最優先。それで、そのためには二つの条件のうち、どっちかをクリアする必要がある。ミレニアムプライスで受賞を狙うのは、あくまでその内の一つに過ぎない」

 

 もう一つの条件を知らないウルフウッドが横にいる先生に尋ねる。

 

「なんや? もう一つの条件って? 」

 

” ゲーム開発部は既定の部員数を満たしてないんだ。だから結果を出すか、部員を増やすかって……あっ…… ”

 

 モモイの言わんとすることの予想がついてしまった先生。ミドリは既に予想がついていた。

 

「……お、お姉ちゃん、やっぱり……この子をミレニアムの生徒に偽装して、うちの部に入れようとしてるんじゃ……!? 」

 

「その通り! という訳でアリス! 私たちの仲間になって! 」

 

 爆弾発言を投下したモモイはそのまま後ろにいたアリスへ振り返る。しかしアリスはモモイの提案よりもゲーム機を齧ることに興味を向けていた。

 

「ああっ! 私の『ゲームガールズアドバンスSP』食べちゃダメっ! 8コア16スレッドカスタムCPUに8K解像度を誇る、キヴォトス唯一の16bitゲーム機なんだよ!? 」

 

「ああもう……ちょっと、お姉ちゃん!!」

 

 ミドリも加わりバタバタ騒ぎ出す少女達。ウルフウッドは呆れて物も言えず、しかし自分がツッコむしかないかと意を決する。

 

「あんなぁ、おまえら……」

 

” ちょっと待って、ウルフウッド ”

 

 しかし先生はそれを制止し、怪訝な目を向けてくるウルフウッドに自らの携帯の画面を見せた。その画面には、いつの間にか先生宛に送付されていたメッセージが表示されている。

 

<初めまして、先生。私はヴェリタスの元部長にして超天才清楚系病弱美少女ハッカーの明星ヒマリと言います。あなた達の目の前にあるアリスと呼ばれるモノについてお話がありますので、とりあえずゲーム開発部に彼女は預けたまま合流いただけませんか? アリスの監視はこちらでも行っていますので問題ありません。部室棟から出ていただければ可愛いメイドさんがお迎えに上がりますのでよろしくお願います>

 

「……部室に盗聴器も仕掛けられとったか」

 

” さっきも何か言いかけてたけど、何か心当たりあるの? ”

 

「ワイがミレニアムに来てからずっと監視しとる奴らがおってな。廃墟での行動も見られとる。多分ミレニアムにおる言われとるエージェントや。ここまでのこと、全部把握されとるで」

 

” それでこのメッセージが……。これは行くしかない、かな? ”

 

 先生がヒマリからの要望に応えることを決めると、ウルフウッドがモモイに声をかける。

 

「すまへんけど、ワイらタバコ吸いに行くから席外すで。そいつから目を離さんでくれるか? 」

 

「えっ!? わかったけど……まさかそう言ってセミナーにチクりに行かないよね!?」

 

「せえへんせえへんて。校舎の外行かな吸えへんからちょっと時間かかるで」

 

「本当にチクったりしないでよ!!」

 

「だからせえへんて」

 

 ウルフウッドはそう言って先生の肩に手を回しながら二人一緒にゲーム開発部の部室から退室していく。それを見ながらミドリは意外そうな表情を浮かべていた。

 

「……先生もタバコ吸うんだ……」

 

「それよりもミドリ、アリスを部員にするためにどうするか考えないと! 学生証はヴェリタスに頼むとして……あとは武器と、話し方かなぁ……」

 

 ミドリ、モモイは大人二人の不審さを気にも止めず、いかにしてアリスをゲーム開発部員とするかに興味を移した。

 

◇ ◇ ◇

 

“ ……ちょっと離れ方強引じゃなかった? ”

 

「あいつらアホやから大丈夫やろ」

 

 先生とウルフウッドはそんな会話をしながら部室棟の外まで出ると、ウルフウッドは建物の物陰に向かって声をかける。

 

「もうええで、案内頼めるか? 」

 

「……チッ、場所まで分かんのかよ」

 

 すると物陰から小柄で目付きが悪く、そしてメイド服の上にスカジャンという奇抜な格好をした人物が姿を表した。そのメイド?は二人に近づいていく。

 

「葬儀屋のアダ名は伊達じゃないってわけか」

 

「ホンマにそのアダ名どうにかならへんのか? ワイは牧師や」

 

「オメーみたいな牧師がいるかよ」

 

「お前に言われたないわ。どこの世界にスカジャン着たメイドがおんねん。なあ、()()()()

 

「!?」

 

“ あれ、知り合い? ”

 

「いや、こいつとは初対面や。ただミレニアムの情報仕入れれば嫌でも耳に入ってくるで。ミレニアムの掃除屋の一人、何でもかんでもぶっ壊す破壊者、美甘ネル。……エージェントのクセにこの知名度はどうかと思うで。なんで情報屋から最初に聞かされるのがお前のことやねん? 」

 

「う、うっせーなぁ!! 」

 

“ ま、まあまあ。君がヒマリの所まで案内してくれるのかな? ”

 

 先生はウルフウッドとネルの間に立ち、喧嘩になりそうな流れを防ぐように尋ねる。ネルは不機嫌そうにしながらも答えた。

 

「チッ、ああそうだよ。付いてきな」

 

 ネルに案内されるまま彼女の後ろを付いていく二人。旧校舎と呼ばれる建物の入口まで来るとネルは立ち止まった。

 

「あたしの案内はここまでだ。中に入るとドローンがいるらしいから、後はそいつに付いていけ」

 

“ わかったよ、案内ありがとう ”

 

 ネルに会釈しながら中へと向かう先生。ウルフウッドも付いていこうとするが、その前にとポケットからアメを()()取り出してネルに差し出す。

 

「監視と案内ご苦労さん。アメちゃんやるわ、あっちのスナイパーにも渡しといてくれ」

 

「なっ!? 」

 

 ネルが呆気にとられている間にウルフウッドもそそくさと中へと入っていく。ネルは通信機のスイッチを入れスナイパーに繋いだ。

 

「カリン、バレてたぞ」

 

「えっ、嘘!? ミスは無かったはず……」

 

「気にすんな。アイツは多分、この手のことには異常に勘が鋭い手合いだ。アカネに言って情報更新しといてくれ」

 

 ネルはそう伝えて通信を切ると、貰ったアメを一つ頬張る。

 

「……アイツが相手だったら楽しめそうなんだけどなぁ」

 

 口惜しそうに言いながらネルはアメを噛み砕いた。




アリス回収

ウルフウッドがいたら絶対本編の流れにならないので、他の小説とかも参考にさせてもらいつつ流れを変えました。というかパヴァーヌ一章の原作先生、マジで存在感無さ過ぎてストーリー読み直してビックリします。
なんでアリス平然と連れてきて、しかもゲーム開発部部員にするとかいうトンデモ提案スルーしてんの?ちょっと流されるまま過ぎない?と……

多分二次創作で原作ストーリー追うタイプの筆者先生方はここで苦労するんじゃないかな?
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