「ホンマに大丈夫なんやろな?」
「くどい! キヴォトスの住人は銃弾程度で死にはしないと説明したじゃないですか! 実演も交えて!」
アビドスの校庭にホシノとウルフウッドが佇んでいた。ノノミが帰ったあと、ホシノがウルフウッドの実力を確かめるため喧嘩を吹っ掛けたことが事の発端である。
ちなみに実演とはホシノが自身に向けて発砲しても無事だったことだ。なおウルフウッドも同じことをさせれて「痛い」程度で済んでいる。それで済むキヴォトスの住人と、それと同じ体になっていた自身の体にウルフウッドは心底ビックリしていた。
とはいえ、それでもパニッシャーを子供に向けるのは躊躇いが拭えない。
「行きますよ!」
ホシノはその躊躇いを容赦なく狙い、ウルフウッドとの距離を詰める。
(舐めた真似を! それが命取りだ!!)
ホシノはウルフウッドの取り調べをした際にパニッシャーがどんな兵器かも調べていた。その十字架には機関砲とロケットランチャーが内蔵されている。どちらも恐ろしい威力を秘めているが、それゆえの重量、サイズは接近戦に致命的なまでに向いていない。自分の間合いなら封殺できる。
ホシノは跳躍しウルフウッドとの距離を一瞬で詰める。
(私の勝ちだ)
そう確信した時だった。ホシノの体に巨大なハンマーで殴られたような衝撃が走り、体が宙を舞う。ウルフウッドがパニッシャーでホシノを殴り付けていた。
「アカン! おい、ホシノ! 大丈夫か!?」
自身の攻撃で数メートル吹き飛ばされたホシノに声をかける。ホシノは受け身をとって着地し、校庭に設置している土嚢作りの塹壕に身を隠した。
「うるさい! この程度で心配なんて不要です!」
「……なんや元気やな。安心したで」
ホシノのつんけんした返答にウルフウッドは胸を撫でおろす。
(ホンマに大丈夫そうやな。思うてたより力入ってしもうた時は焦ったが、あいつ丈夫やなぁ)
パニッシャーがいつもより軽い。その事実にウルフウッドは再び驚いていた。本当はホシノを払いのける程度の力加減のつもりが、思っていた以上に勢いがついてしまい元の世界のサイボーグなら破壊してしまいそうな打撃を放ってしまっていたからだ。
どうやら丈夫さだけでなく身体能力もこのヘイローとやらのお陰で向上しているらしい。
(今のワイならもう一丁ぐらいパニッシャー扱えそうやなぁ……)
リヴィオのもう一人の人格、強敵だったラズロ・ザ・トライパニッシャー・オブ・デスを思い出す。自身の身体能力のズレを調整するには丁度良い指標だった。
「よっしゃ、ホシノ、ちょい厳しめにいくで」
ウルフウッドはパニッシャーの銃身を解放し、塹壕に身を潜めているホシノに狙いを定めた。
◇ ◇ ◇
(むちゃくちゃ過ぎるあの男! 塹壕ごと吹き飛ばしてくるなんて!)
土煙を利用して身を隠しても、勘が良いのかなんなのか直ぐに私がいる場所ごと銃撃で抉ってくる。休む暇が無いところか一瞬でも気を抜いたらやられてしまう。
それでもなんとか反撃を加えてみたが、あの十字架を盾にして防がれてしまった。しかもハンドガンで牽制してくるオマケ付だ。隙がない。
(攻防のスイッチが上手すぎる。さっきの近接戦といい、あの十字架で一体どれほどの研鑽を積んだら――)
ボッ!!!!!!
「クソッ!」
その場から逃げるとほぼ同時に元居た場所が吹き飛ぶ。このままじゃジリ貧だ。やはり何とかして近接戦に再び持ち込むしかない。でもどうやって?
そんな折、ユメ先輩が視界の端に映る。多分私たちを心配して校庭に降りてきたんだろう。どうして良いか分からずオロオロしているみたいだけど……
(……あれだ!! )
ユメ先輩が持っているあれがあれば! そう思ってユメ先輩に駆け寄る。ニコラスの銃撃もユメ先輩に配慮してか鳴りを潜めた。
「おい、人質は卑怯やぞホシノ!!」
代わりに勘違いした罵声を浴びせられたが。
「え、ホシノちゃん!? 私人質なの?」
「違うに決まってるでしょ! それを貸して欲しいんです!」
ユメ先輩が持っている盾を指差す。ニコラスに接近するには被弾は覚悟しなければならない。だからこれが必要だ。盾を借り、左手に装備する。右手には愛用のショットガンを構える。準備は完了だ。
「行きますよ、ニコラス!」
盾を構えスラッグ弾を発射しながらニコラスに突撃する。ニコラスもあの十字架を盾にしながらハンドガンで反撃してくるが、それは先輩に借りた盾で防ぐ。自身の弾とニコラスの弾の数を数えながら最短距離で接近していく。
そして、ショットガンの弾切れと同時にニコラスの懐にまで潜り込んだ。
「はああああ!!」
左手に渾身の力を込め、迫ってくる十字架を弾いて防ぐ。
「やるやん」
「減らず口を!!」
ニコラスのハンドガンは弾切れのはず。十字架の打撃も防いだ。すでにショットガンを捨てていた右手でハンドガンに手を伸ばす。今度こそ、私の――
みぞおちに鈍い衝撃が走り、私は再び宙を舞っていた。ニコラスの姿勢からして私は蹴られていたらしい。そして十字架の短身部にある砲身がいつの間にか宙を舞う私を覗き込んでいた。
「ッ!!」
私は次の瞬間襲ってくるであろう衝撃に身構える。しかしその瞬間はやってくることなく私は地面に落下した。
「……なんでロケット弾を撃たなかったんですか」
「アホか。たかだか喧嘩に使うわけないやろ」
ハンドガンのグリップエンドで軽く小突かれる。
「ほれ、ワイの勝ちや。合格でええか?」
「……分かりましたよ! 貴方の実力だけは認めてあげます!」
悔しいが、実際完敗だった。今になって気づいたが、小突きに来た時以外彼は開始時点から動いていない。手加減された上で私は彼に負けたのだ。今までタイマンなら負けたことが無い私であったが、とんだ井の中の蛙だったことを知る。
「そないカッカすんなて。わいも感心してんねんで。おんどれ、そないなナリでようやるやんけ。ワイが戦ってきた中でも上から数えた方が早いぐらいや」
「……それは、その、どうも……」
「ねえ、二人とも。不良漫画みたいなやり取りしてるところ悪いんだけど……」
ユメ先輩が会話に割り込んでくる。顔に青筋を浮かべ、その手には2つのスコップが握られていた。
「周りを良く見て。ねぇ、どう思う?」
「「あ」」
一言でいえば惨状だった。積み上げた土嚢は崩壊し、地面も所々抉れている。校庭はベコベコになっていた。
「こっ、これはニコラスがめちゃくちゃに吹き飛ばすからッ……」
「なっ、元はといえばお前が喧嘩吹っかけてきたのが原因やんけ!」
「二人とも同罪だよ!! ちゃんと元に戻すこと!」
「「……はい」」
珍しく怒るユメ先輩には逆らえず、ニコラスと二人でえっちらおっちら校庭を整備する羽目になった。修復は深夜までかかってしまい最悪だ。少なくともニコラスとは校庭で二度と戦闘しないようにしようと心に決めた。
――あとニコラス!煙草吸うのはやめてください!!
戦闘描写難しいです……うまく書けぬ。
ちなみに原作の状態でもウルフウッドはヘイロー無しでもキヴォトス上位陣に食い込める力があるのにヘイロー有りなのでバチクソに強いです。
2025/2/4誤字修正