ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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3/30ちょい誤字修正。何度見返しても誤字ってしまうのなんでや……
5/31スタンピードがスタンピートになってたのを修正しました……なんでここ間違えちゃうかな…


11_ミレニアムプライス

 ゲームが完成する少し前、ウルフウッドはミレニアム校舎の外に出ていた。そして懐からタバコを取り出し咥えて火を着ける。

 

「……またワイの監視か? 言っとくがここは禁煙エリアちゃうぞ」

 

 物陰に向かってそう告げると、その影からネルが身を出しウルフウッドに近づいて行く。

 

「そんなんじゃねえよ。ちょっとあんたに聞きたい事があってな」

 

 ネルはタバコの煙も気にせずウルフウッドの隣に来て壁に寄りかかる。

 

「アメちゃんなら今は品切れやで」

 

「いらねーよ。ガキ扱いすんな! 」

 

 ネルに遠慮せず紫煙を吐くウルフウッド。

 

「で、聞きたいことってなんやねん? 」

 

「あのアリスってチビ、何者だ? 」

 

「なんでそないなことワイに聞くねん? 聞く相手ちゃうやろ」

 

「あんたが一番フラットに答えてくれそうだったからな。で、どうなんだよ? 」

 

「……アリスはミレニアムの生徒で、あの馬鹿どもの一員や。それ以上でも以下でもあらへん」

 

――少なくとも今は、その言葉は飲み込む。

 

「廃墟からあいつ連れてきたろ。あれは? 」

 

「転校してきたばっかでようわからんと廃墟に行ってもうたみたいでな。それで連れ戻しに行っただけや」

 

 リオ達と決めたカバーストーリーを話すウルフウッド。それを聞いてネルはぶつぶつと言葉を溢す。

 

「やっぱそんなとこだよなぁ……じゃあなんでリオのやつ……」

 

「ワイからも聞いてええか? なんでお前がアリスのこと嗅ぎ回っとんねん? 」

 

「……リオからの依頼でな、適当な理由つけてあのチビ襲えって言われてんだよ。必要なデータ取るためにってな」

 

 あいつアリスの観察は一旦打ち切る言うてたやんけ。……ああ、そういやあの作戦の結果に不満そうにもしとったな。あそこでこいつをアリスにぶつけるつもりやったみたいやし、その続きするつもりか。

 リオの考えに当たりを付けるウルフウッド。

 

「それこそ理由はリオに聞……いや、あの言葉足らずは話さへんか……」

 

 だからこそネルへの説明をリオにさせようと考えたが、それがなかったからこそネルが自分の所に来たのだろうと発言の途中で思い至る。

 

「わかるか!? そーなんだよ、あいつ! 自分だけ納得してりゃこっちのことはお構い無しでよぉ! こっちのことも少しは考えろっての! 」

 

 ……こいつも振り回される側やったか、と妙な親近感を感じるウルフウッド。今のネルの言葉には思うところが多々あった。

 

「わかる、わかるで! お前の無茶の尻拭いせなあかんこっちの気持ちも考えてくれって何度思うたことか……」

 

「あんたも苦労してんだな。お互い面倒な相方持ったもんだぜ……」

 

「ホンマやで。ま、頑張っていこうや」

 

「おう! …………じゃねーよ! なんであのチビがリオに目つけられてるか聞きたいんだよこっちは! 」

 

「チッ、はぐらかされんかったか。……とは言ってもワイかて知らんわ。大方、あんな大砲振り回してセミナー襲ったやつやからとかちゃうか? 」

 

「それくらいミレニアムなら些事だろ、全く……まあいいや。悪かったな、一服の邪魔して」

 

 壁から背を離しその場から離れようとするネル。しかし何か思いついたかのように立ち止まり、ウルフウッドへ振り返る。

 

「……なあ、もしあたしが今あのチビ襲うって言ったら、あんたどうする? 」

 

 アリス達は現在絶賛ゲーム開発中の修羅場である。そんなところに襲撃を受けたらゲーム開発がどうなるかなど火を見るより明らかだ。

 

「……シャーレの仕事はあいつらの手伝いや。火の粉が降り掛かってくるなら、払いのけるのも仕事の内やで」

 

 ウルフウッドはネルに圧を飛ばす。恐怖か武者震いか、または両方か、ネルは自分の体がビリビリと震えるのを感じた。

 

「いいねぇ、あんた。本物だ。あのチビなんかよりあんたの方がよっぽど脅威だぜ。……リオのやつ、威力偵察ならあんたをターゲットにしてくれりゃ良かったのに」

 

 ネルは再び振り返りウルフウッドに背中を向ける。

 

「さっきのは冗談だよ。流石にあたしだって壊しちゃまずいもんぐらい分かる。じゃあな」

 

 ネルはそう言い残し、今度こそ去っていった。

 

「……そもそも壊すなっちうねん」

 

 ウルフウッドの愚痴は紫煙と共に宙に散る。

 

◇ ◇ ◇

 

 開発したゲームのアップロードも済み、ミレニアムプライス当日を迎える。その間にネルに喧嘩を売られアリスがメイド恐怖症になるというちょっとしたハプニングがあったものの、ゲームのレビューはなかなかに上々で受賞の期待が高まっていた。

 

 ちなみにネル襲撃の際ウルフウッドは手を出さなかった。何故ならシャーレの仕事はゲーム開発部の廃部阻止であり、ミレニアムプライスへゲームの出品するまでの護衛ならその範疇だが、出品してからの生徒同士の喧嘩なら知ったこっちゃないからである。

 床に攻撃を放ち敵もろとも自爆するというどこぞの誰かがサムライにした方法と同じ方法で襲撃を切り抜けたアリスからは、「師匠キャラはピンチに駆けつけてくれるのが定番ではないのですか!? 」と愚痴られたが「知るかボケ」で押し通していた。

 

 そんなハプニングもあったがともかく、ミレニアムプライスの放送が開始する。先生達もゲーム開発部と一緒に部室のモニターで結果を見守っていた。緊張からかモモイが少し上ずった声で話す。

 

「もし受賞したらクラッカー鳴らそっか!……でも、もしそうじゃなかったら……」

 

「……すぐに、荷造りしないとね。でもそうしたらユズちゃんとアリスちゃんは……」

 

「「……」」

 

” 大丈夫だよ。きっとなんとかなるから ”

 

「先生……そう、ですよね」

 

 ミレニアムプライスを注視する一同。司会はコトリが務めており、今年のミレニアムプライスは各部活動に成果が必要になったためか、今までのミレニアムプライスの中でも最多の応募数となっていることが告げられる。ゲーム部としてはあまり歓迎できない情報だ。

 

「だ、大丈夫かな……? 」

 

「れ、レビューは上々だから……可能性は十分あると思う」

 

 ユズが不安を紛らわすためかゲーム配信サイトで「テイルズ・サガ・クロニクル2 渡来銃(トライガン)」の情報ページを開く。

 

「……現時点でダウンロード一万超え。有名なクソゲー動画配信者のプレイ動画でバズってくれたのが大きかったんだと思う」

 

「あ、それの切り抜き動画観たよ。ヴォルフが死んだシーンでガチ泣きしてたやつ! ざまあみろって感じだよね! 」

 

 少し元気が出たのか高笑いするモモイ。アリスがレビューを読み上げる。

 

<ポルポル:あ…ありのまま 今、起こった事を話すぜ! おれはクソゲーをプレイしていたと思ったらいつのまにか感動して泣いていた……な…何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…>

 

<名も無きクソゲーハンター:これ本当にあの『テイルズ・サガ・クロニクル』作った人たちの作品? ナンバリング詐欺でしょ? そう思うぐらい凄くよかった! 前作との温度差で風邪引きそう>

 

<ホルス:知り合いの紹介でプレイしてみたけど、普段ゲームをしない身からしても凄くいいストーリーで面白かった。ただヴォルフ退場する必要あった? そこだけが許せない>

 

<↑:気持ちはわかるけどそういうコメントはネタバレ注意とかつけて下さい>

 

<完璧な会計:レトロ風ゲームと思ってなめてかかってはいけないわ! 短いながらもとても重厚なストーリーに、難易度は高めだけどやりごたえのある戦闘システムがマッチしていて没入感が高い。主人公のブイの苦悩を体感できる仕様になっている。王道RPGが好きな人にはオススメのゲームよ。主人公のブイがカッコいいのもグッド! >

 

「……すごいです。これだけの人が面白いってコメントしてくれてます! 」

 

 ミドリも画面を覗き込む。

 

「話が重い、戦闘が難しい、誤字が多い……とかで低評価もあるけど、好評価の方が上回ってる……」

 

「誤字は急いでたんだから仕方ないじゃん! 」

 

「あ、後で難易度変更機能と合わせて修正パッチ作ってみようか? 」

 

 そんな評価を見つつ、ミレニアムプライスに視線を戻すゲーム開発部。すでに受賞作の発表が始まりかけていた。

 

<それでは七位から、受賞作品を発表します! 七位はエンジニア部、ウタハさんの『光学迷彩下着セット』です! これは身に付けてもその下の素肌が見えてしまうため、着ているのかそうでないのか分からないというエキセントリックな作品ですが……>

 

「なんちうもん作ってんねんあいつら。こんなもんのせいでパニッシャーの整備後回しになってもうたんか……」

 

” ま、まあ光学迷彩自体には実用性があるからそれが評価されたんじゃないかな? 多分…… ”

 

「ふぅー……まっ、私たちのゲームは七位にはふさわしくないよね」

 

 通販番組を見ているかのようなテンションで放送を見ている大人二人。その横でモモイは強がりを見せる。

 

<そして六位! この製品は……>

 

「……」

 

<五位は……! >

 

「私たちの名前……呼ばれないね」

 

 未だ名前が挙がらないことに流石に不安を零すミドリ。モモイも両手を合わせて祈りだす。

 

<次です、四位……!>

 

<さあ、ここからはベストスリーです! 三位は……! >

 

 しかしその祈りが届かないのか、今だにゲーム開発部の名前は挙がらない。

 

「も、もう心臓がもたない! 」

 

「お願い……お願い……」

 

<僅差で二位を受賞したのは……! >

 

「……お願いします、私たちの名前を……! 」

 

 アリスも祈るが二位を受賞したのはゲーム開発部ではなかった。そして……

 

<最後に! 今回のミレニアムプライスで最高の栄誉を受賞した作品です! その一位は……新素材研究部の特殊合……>

 

 ズガガガガガッ!

 

 モモイがモニターを銃撃する。

 

「お姉ちゃん! なんでディスプレイ撃っちゃうの!? 」

 

「どうせ全部持っていかれちゃうんだしもう関係ない! うえぇぇん! 今度こそ本当に終わりだぁぁぁぁ!! 」

 

 受賞作品の中にゲーム開発部の名前は挙がらなかった。それはすなわち、成果を残せずゲーム開発部の廃部が決定した瞬間でもあった。

 

「なんで……どうして!? 評判良かったじゃん!! 『渡来銃(トライガン)』は間違いなく傑作なのに!! 」

 

「落ち着いてお姉ちゃん。 ゲームが否定されたわけじゃない。ただ、ミレニアムプライスの評価基準にあわなかったんだよ……」

 

「それが納得できないの!! それにここを追い出されたらユズとアリスが……」

 

「……モモイ」

 

 喚き散らすモモイをなだめるように落ち着いた声でユズが話しかける。

 

「心配しないで。私は寮に戻る」

 

「えっ? 」

 

「もうわたしのことを、クソゲー開発者って呼ぶ人はいないと思う。ううん、もし仮にいたとしても、大丈夫。ちゃんと成長を示せた『テイルズ・サガ・クロニクル2 渡来銃(トライガン)』って作品がある。その作品を一緒に作った三人と、手伝ってくれる友達と、先生やウルフウッドさんもいるから……」

 

 ユズは先生とウルフウッドへ向き直す。

 

「ありがとうございました、先生、ウルフウッドさん。先生達がこの部室に来てくれた時から……私たちは大きく変わることができました。ただ、アリスちゃんは……」

 

 不安げにアリスを見るユズ。しかし先生がその不安を払拭するように用意していた保険を提示する。

 

“ それなんだけど、アリスはシャーレに来るっていうのはどうかな? シャーレ復学支援部に一時的に所属してもらってシャーレで生活しながらみんなの元に戻れるように準備を進めていくんだ ”

 

「空き部屋もまだあるしな、部室の代わりに使ってもええ。面倒やったで、連邦生徒会に申請通すの」

 

 先生たちの準備に驚きの声をあげるミドリ。

 

「先生、まさかこうなること見越して……」

 

“ 君たちのことを信用してなかった訳じゃないんだけどね、保険はあった方がいいから。こういう時の生徒の受け皿として復学支援部を作った訳だし ”

 

 アリスも先生達に向き直す。

 

「アリスのために、ありがとうございます。……ただ、もうみんなとは……一緒に、いられないんですね」

 

 先生達への感謝も本当だが、ゲーム開発部に居られない悲しさも本当であり、アリスの目に涙が溜まる。

 

「うっ、ごめんね……ごめんね、アリスちゃん! 私、毎日シャーレに行くから! 本当に、絶対に毎日行く! 借りた部屋でまた一緒にゲームを作ろう! 」

 

 ミドリがアリスを抱きしめる。それを見てアリスとの別れを実感してしまったのかモモイがついに泣き出す。

 

「ううう……! やっ、やっぱり嫌! 先生! ウルフウッドさん! アリスを連れて行っちゃやだぁ!! わ、私の部屋に連れていく! ベッドも一緒に使おう! ごはんも二人で分けて食べるから!! 」

 

 モモイが駄々をこね始めた、その時だった。ゲーム開発部の扉を勢いよく開け、ユウカが乗り込んでくる。

 

「モモイ! ミドリ! アリスちゃん! ユズ! 」

 

 明らかに機嫌の良い声のユウカ。しかしお通夜ムードのゲーム開発部にはそれを察する余裕はなく、強制退去を勧告しに来た悪魔のように見えていた。

 

「ひいっ! もうユウカが! 」

 

「ちょ、ちょっと待って! そんなすぐになんて……!? 」

 

「悪魔め! 生徒会に人の心は無いわけ!? 」

 

「え、何その反応!? おめでとうって伝えに来たのに!? 」

 

 「「「「おめでとう……?」」」」

 

 口をそろえて疑問を浮かべるゲーム開発部一同。先生がユウカに発言の意図を確かめる。

 

” おめでとうって、どういうことかな? ゲーム開発部は七位以内に入れていなかったはずだけど? ”

 

「先生まで……結果見てなかったんですか? ……ああっ! モニター壊れてるじゃないの!? 」

 

「それお姉ちゃんが吹っ飛ばしちゃって……」

 

「なにやってるのよ全く……。まだミレニアムプライスは放送中よ、ほら、見て」

 

 ユウカが自身のスマホをゲーム開発部に見えるように差し出す。一位の発表が済んだにも関わらず、確かにまだミレニアムプライスは放送中だった。

 

「私もスマホで見てて、途中から走ってきたの」

 

 ユウカに促され画面をのぞき込むゲーム開発部。そこには審査員がある説明をしているところだった。

 

<……賞を設けた理由ですが、ミレニアムプライスはこれまで、生徒たちの才能と能力で作られた作品に対し、『実用性』を軸に据えて受賞を行ってきました。これはより良い未来を求め、実現してくという趣旨に基づいています。しかし今回の作品の中には、新しい角度から『実用性』を感じさせてくれたものがありました。それがこの賞を受賞したゲームです。このゲームは古めかしいものでも大切な本質は変わらないという、より良い未来を目指すための可能性を提示してれたのです。よって私たちはこの度、異例の選択をすることにしました。……改めて紹介しましょう。今回の『特別賞』、その受賞作品は……ゲーム開発部の『テイルズ・サガ・クロニクル2 渡来銃(トライガン)』です>

 

「ええ、嘘っ!? 」

 

「何が起きてるの……? 」

 

 驚きで情報が処理しきれていないモモイとミドリ。審査員が解説を続ける。

 

<レトロ風でありながらも斬新な世界設定。主人公のスタンスを体感させてくれるゲームシステムが重厚なストーリーへの没入感を高めてくれ、気付けばかつて初めてゲームをプレイしていた時のように新しい世界での冒険に夢中になっていました。様々な想いの渦巻く旅路の中、いくつもの葛藤の末、仲間と共に魔王の元へと向かう……そういったRPGの根本的な楽しさが、しっかりと込められていた作品だと思います。また扱われていたテーマも……話のネタバレになってしまうので詳細は控えますが……モノを作るうえで、より良い未来を創造していくうえで、大切な、本質的な心構えだと感じました。そういった点を評価して、この作品に今回、ミレニアムプライス『特別賞』が受賞されました>

 

 ミレニアムプライスでの発表にあっけに取られているゲーム開発部。彼女たちにユウカが声をかける。

 

「改めて、本当におめでとう! ……そ、その、実は私もプレイしてみたの。正直驚かされたわ。本当に……面白かった。期待していた以上の名作だったわ! 」

 

 タイミングを見計らったかのようにミドリの携帯へマキから連絡が入る。

 

<ミド! 私たちのゲーム、今ネット上で大騒ぎだよ! ヴェリタス調べだと有名アイドルの名前より『テイルズ・サガ・クロニクル2渡来銃(トライガン)』の検索数の方が多くなっている! 私たちは手伝いだけどさ、それでもうれしいもんだね! レビュー読むの楽しいよ! >

 

「ほ、ほんとに……!? 」

 

 それを聞いたアリスがゲーム配信サイトの評価ページを再び見る。

 

「……確認しました。先ほど確認したときはダウンロード一万五千四百十回、合計二千七百三十一個のコメントがついていましたが……今の発表後から約二十六秒間でダウンロード数が二万を越えました。さらに増えています。しかも評価は依然肯定的・期待のコメントが上回っています!」

 

「すごい……」

 

「あ……、えっと……っていうことは、廃部にはならないんだよね? 」

 

 モモイがユウカに確かめる。

 

「ええ、そうよ。あ、あくまでも『臨時の猶予』だから。正式な受賞ではないし、生徒会としてはまた来学期まで……ゲーム開発部の部室の没収及び廃部を、『保留』することにしたの」

 

 生徒会の決定を伝え、モジモジし始めるユウカ。

 

「それと…その、ごめんなさい。以前ここに来た時に、ここにあるゲーム機のことをガラクタって言って。……あのゲームをプレイして思い出したの。小さい頃に遊んでいた、色んなゲームのことを。あの時の冒険は、大切な宝物だった。……『大切なのは知ること……』だったわよね。ここにあるあなた達の宝物を、私の大切だったものを、けなしてしまったから。思い出させてくれて、ありがとう……。それじゃあ、部室の延長申請とか部費の受取処理とかは必要だから、落ち着いたら生徒会に来てね。じゃあ、また後で! 」

 

 伝えたいことを伝えられたからか、スッキリした顔でユウカは部室から去っていく。

 

「や……、やったぁぁぁぁぁっ! 」

 

「良かった……! 」

 

「やった……嬉しい! 」

 

 アリスを中心に抱き合うゲーム開発部。アリスは夢のような状況を処理しきれていなかった。

 

「え、えっと……? 」

 

「アリスちゃん! 私達、特別賞を受賞したんだよ! だからこの場所も、私たちの部室のまま! 」

 

「えっと、つ、つまり……アリスはこれからも……みんなと一緒にいて、良いのですか? 」

 

「うんっ! そうだよアリス! 」

 

「こ、これからも、よろしくね……! 」

 

「私も……私も、嬉しいです! これからもよろしくお願いします……!! 」

 

 再びお互い抱き合うゲーム開発部。その光景を眺めながら、ウルフウッドは深いため息をつく。

 

「けーっきょく色々準備したのは無駄になったわけやな」

 

” いいじゃない、依頼は無事達成できたみたいだし。君の旅の話のおかげだね ”

 

「なんであれの受けがいいのかようわからんけどな。まあ話した甲斐はあったちうわけか。……こいつらに付き合わされて徹夜続きやし、もう帰って寝たいわ」

 

” 確かに……あ、でも帰ったらその前に一杯どう? つまみは君の旅の裏話で ”

 

「……まあええか。お前の奢りやぞ」

 

 シャーレの依頼も無事完了を告げた。

 

◇ ◇ ◇

 

――ゲームが起動する。

 

 

「あれが人間台風、ブイ・ザ・スタンピード!? 」

 

 

「僧侶が人を殺すのか!? 」

「こんな時代だ、選ぶ必要がある。善意のごり押しはきかない時がくるぞ、ブイ」

「それでも僕は、殺して全ての可能性を奪うことを許さない! 」

 

 

「寄り道する暇はないんだぞ、ブイ! 」

「ヴォルフ、目の前で人の命が失われようとしてる。僕にとってはそれが何よりも大事だ」

 

 

「俺には俺のやるべき事がある。お別れだ、ブイ」

 

 

「あいつは何も見限れない駄々っ子だが……しでかすならあいつだ。恐ろしいぞ、何一つ見限らない男は」

 

 

「お前なんでここに来た!? 」

「友達助けに来ちゃ悪いかよ!? 」

 

 

「 ハッ、俺たちの旅はいつもこうだったな、ブイ」

「何笑ってるんだよヴォルフ! 」

 

 

「……笑っておけ、ブイ。お前は笑顔の方がいい……」

 

 

「これを食って万全にしておけ。僕たちはヴォルフから託されたものを守らなきゃいけないんだ」

「……はい」

 

 

「人間の悪意が台無しにするのよ、だから張り付けちゃうわけ」

「あんたは俺に負ける、俺と、あの人に負けるんだ」

 

 

「客人、今は俺たちを、あの人を、信じてくれませんか?」

 

 

「飛ぶぞっ! ナイン! 」

 

――勇者は魔王と共に翼を広げ彼方へと飛び去っていく。

 

「なぜ助けた!? ブイ!! 」

 

「だって僕たちは……たった二人の兄弟じゃないか」

 

「……俺は変わらん。過去から今にかけての俺が、変わることを許さない。それでもお前は助けるというのか!? 」

 

「そうだよ。そしてナインが変われるまで何度でもナインを止めるよ」

 

「人間たちは感謝などしないぞ! むしろ俺と同類として恐れ、お前をくびり殺しにくる」

 

「そしたら僕は逃げよう。そしてほとぼりが覚めたら、また静かに寄り添うよ」

 

「なんで……なにがお前にそこまで言わせる!? 」

 

「ナイン……確かに僕は人間にひどい目に会わされてきた。でもこの傷を癒してくれたのも、慰めてくれたのも……かけがえのない友になってくれたのも、人間だったんだ」

 

 

「大切なのは知ることだ。伝えること、伝わること、相手が隣で息をして存在していると、知ることだ。僕は知ってる、酷いことをする人もいた、優しい人たちもいた、手を貸してくれる仲間がいた、明日を分かち合いたいと思える友達がいたから……」

 

「……だから僕はラブアンドピースを唄い続けるんだ」

 

 

――これは遥か時の彼方、まだ見ぬ遠き場所で、唄い続けられる、同じ人類のうた

 

スタッフロール

 

企画・ゲームシステム:花岡ユズ

シナリオ:才羽モモイ

グラフィック:才羽ミドリ

プログラム:天童アリス

 

スペシャルサンクス

マキちゃん

コタマ先輩

ハレ先輩

連邦捜査部S.C.H.A.L.E

プレイしてくれた方々

 

そして、勇者ヴァッシュへ

 

――ありがとう

 

 

 

愛と平和のRPG編 完

 




これにてパヴァーヌ編一章完。
元々パヴァーヌ編一章はウルフウッドが活躍しそうにないため飛ばしてしまおうかと最初期のプロット段階では思っていたのですが、この話を通してウルフウッドがヴァッシュとの旅をどう思っていたのか、原作の時よりも少しマイルドになった様子を書くのにちょうどいいかと思って書くことにした話でした。
アリスもヴァッシュと似通った点もあったので、アリスにヴァッシュという先達がいることも知って欲しかったのもあります。

ちなみの今回の話で一位に受賞された特殊合金は、ウルフウッドがミレニアムに持ち込んだ一年半前ぐらいには完成していたものの、データ取りとかタイミングを逃していたため、今回のミレニアムプライスで持ち込まれています。
また『渡来銃』のヴォルフが退場してからの話は、ウルフウッドがかつて夢見た光景とヴァッシュならこうするという話を混ぜてモモイに伝えてシナリオ書き下ろしているという設定。多分この時のモモイは内〇先生の電波を受信していました。
トライガンは何年たっても色褪せない名作だもの、そら絶賛されるわ。
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