グループストーリー:アビドス_ぼくしのメモリアル
<次の定例で『テイルズ・サガ・クロニクル2
<なんでお前がそのゲーム知ってんねん>
<必ず来ること>
<いや、こっちの都合も考えてくれ>
<必ず来ること>
<必ず来ること>
<必ず来ること>
<わかった! わかったから連投するのやめーや! >
◇ ◇ ◇
「それじゃあ全員揃ったし『TSC2渡来銃』をみんなでプレイしようか! 」
アビドスに到着するやいなやウルフウッドは部室の席に座らされ、皆に取り囲まれていた。目の前には『TSC2渡来銃』がインストールされたPCがあり、接続されたプロジェクターからホワイトボードへゲーム画面が出力されている。
表層的にはパーティーゲームでも始めるような様子だが、彼女たちの目は笑っていなかった。異様な空気に耐えられずウルフウッドが口を開く。
「ゲームする空気ちゃうやろこれ。ちうかなんでお前らこのゲーム知っとんねん? 」
その疑問に答えたのはホシノだ。
「先生が教えてくれたんだよ。『ニコラスの過去を原作にしたゲームを作ったんだ』ってね」
(あのアホ、余計なことしよってからに……)
それを聞いて先生に内心で毒づくウルフウッド。
ちなみに先生としては珍しく学生らしい活動をしたウルフウッドの成果をアビドスの皆に伝えたかったという善意からの行動である。
「で、まず確認なんだけどさ、ニコラスはこのゲームの内容確認したの? 」
「なんでそないなこと聞くねん? 」
「……あのさぁニコラス、質問に質問で返すのやめてくれる? 今質問してるのはおねーさんで、ニコラスは正直に答えてくれればいいから」
(……これ質問ちうか尋問ちゃうか? )
ヴァルキューレの取り調べよりも強い圧を放つホシノに観念し、正直に答えるウルフウッド。
「……内容の確認はしてへん」
「なんで? ニコラスの話が元なんでしょ? 」
「確かにネタは提供してやったが、そっから先はゲーム作る奴らの領分や。ワイが口出すことちゃうやろ」
「……もしかしてゲームもやってない? 」
「してへんな」
まさかの回答に呆れてため息をつくホシノ。他のメンバーも同じように呆れていた。
「自分の話なんだから内容確かめるくらいしなよ……」
「あくまでそれはワイの話を元にしただけでワイ自身の話ちゃうぞ」
「あのねぇ、それが……いや、実際に見てもらった方が早いか。……アヤネちゃん、セーブ画面開いてくれるかな」
アヤネがホシノに言われた通りセーブデータの管理画面を開くと、そこにはびっちりとセーブデータが埋まっていた。
「色々気になるイベントシーンごとにセーブしといたんだ。根掘り葉掘り聞かせてもらうから」
「うそやろ……」
質問はいつの間にか尋問に変わっていたことを確信するウルフウッド。最初の尋問が始まる。
「まずこれね」
ホシノが最初のセーブデータをロードすると、そこには主人公のブイ、ウルフウッドがモチーフになったヴォルフ、そして謎の剣豪サムライRなるキャラクターが揃っているシーンが映し出される。丁度ブイとサムライRのタイマンイベントが終わった後のイベントシーンらしい。
サムライRの刀を銃で落とし、背中を見せてしまうブイ。サムライRはその隙をついて刀を拾いブイに不意打ちを仕掛けようとするが、次の瞬間――
バンッ!!
「……みんなで一緒にゲームしてたんだけどさ、このシーン見たとき全員固まっちゃったよ。ヴォルフが仲間になって盛り上がってきた直後にこれだもん。……なんであの事件のこと話しちゃったわけ? 」
「あー……」
ホシノ達の目が笑っていなかった理由を把握するウルフウッド。百鬼夜行での雷泥殺害事件はアビドスにとっては黒歴史であり、おいそれと他人に話していい内容でないし、ましてやゲームのシナリオにするなんてもっての他だからだ。
ただこれは完全にホシノ達の誤解であった。ウルフウッドは弁明を始める。
「まず言っとくがワイはあの事件のことは話してない。これはホンマや。ただ、その……昔、旅しとった時に似たシチュエーションがあってな、それを元にモモイ……ゲームのシナリオライターが話を盛ったら事実とニアピンしてもうた、いわば事故や」
「どこが盛られたの? 」
ホシノが追及する。
「……撃って殺害したとこや。ワイは止めたとしか言ってへん」
これも本当の事だった。ウルフウッドがモモイ達に旅の話をした時は血生臭い内容をぼかして伝えていた。ただモモイがゲームのシナリオとして内容を過激にした結果、なんと事実と一致してしまうという奇跡的な事故が生じていたのだ。
一応はウルフウッドの言い分をホシノは信じることにしたが、同時に更なる疑問が浮かぶ。
「それが本当だとして、このサムライRって雷泥って奴に違いはないよね? 前話してくれた時は知り合いって言ってたけどもしかして……」
「……察しの通りや。ヴァッシュっちう、そのブイの元になった奴を助けるためにな……ワイが雷泥を撃った。あいつ幽霊にしたのワイやねん……」
「……」
気不味そうに答えるウルフウッド。その回答にホシノは言葉が詰まる。
いきなりこんな重い話がでるなんて思いもしなかった。ゲーム開発部とかいう得体も知れない奴らに自分達が知らないニコラスの過去が話されたのが我慢ならず、根掘り葉掘り聞き出してやろうと開催したのがこの集まりだったのに。最初のこれはちょっとした意地悪ぐらいのつもりで、あとはワイガヤガヤとゲームしながらニコラスをいじり倒す、そんな予定だったのに……。
もしかしたら自分達は今、パンドラの箱に手を掛けているのかもしれない。そう思い悩むホシノ。しかし、悩んでいる間にアヤネがその箱を開けてしまう。
「あ、あの……ニコラス先輩。先輩は昔からヘイローを貫通できる力があったんですか? 」
ホシノ以外が思っていた疑問だった。なんとなく皆はウルフウッドがキヴォトスの外から来たのだろうなとは察していたものの、先生と違い彼はヘイローがあるのでキヴォトスと似た所からの出身だと思っていたのだ。
これはキヴォトスの住人に共通して言えることだが、基本銃で死ぬことの無い彼らにとって銃での殺し合いはフィクションなのだ。なのでモモイもウルフウッドがぼかした内容を素直に信じたし、フィクションだからこそ表現を過激にした。その前提条件があるからこそ、このゲームの内容はあくまで娯楽作品として受け入れられているのである。
――しかしその前提条件がアヤネの質問で崩れる。
「そもそもワイの故郷にヘイローなんてあらへん。ワイの
それを聞いて嫌な予感がよぎる対策委員会メンバー。当然彼女達はゲームをクリア済みで、このシーン以降も続く重いイベントを知っている。ただそれらは誇張された内容だと思っており、それ故にシナリオを楽しめていたのだが……まさか誇張された表現の方が事実に近い可能性は考えてもいなかった。
……下手をすれば事実の方が酷いかもしれない。
――続きを聞いていいのか?
固まった空気の中、意を決したようにシロコが動く。
「……ニコ兄、まだこのゲームしてなかったんだよね? 一緒にやろう、最初から……最初から話して欲しい。私たちが知らないニコ兄のこと」
ニューゲームにカーソルを合わせるシロコ。ウルフウッドは顔をしかめる。
「……お前らやから言いたくないこともあんねん」
ウルフウッドにとって自分の血濡れた人生を誰よりも知られたくないのは彼女達だった。彼女達こそ彼にとって、第二の「小さな堀の内側の楽園」なのだから。
しかしシロコは頑なだ。
「そう言ってくれるのは嬉しい。でもマスター・チャペルに狙われた私たちには聞く権利があると思う。なんでニコ兄がそんな人に狙われなきゃいけないのかとか……ちゃんと知りたい。家族なんだから」
「……」
痛いところを突かれる。実際ズルズルと先延ばしにしてしまっていたが、マスター・チャペルのことについてはちゃんと話さなければとは思っていた。その時が今なのだとウルフウッドは腹を括る。
切っ掛けがまさかこんなゲームになるとは思いもしなかったが。
「……わかった。ええわ、何でも聞け。包み隠さず答えたる」
シロコが『TSC2渡来銃』のニューゲームをクリックする。
(……なんか近似感あるなぁ、この流れ)
ウルフウッドはゲーム開発部の時のように対策委員会メンバーに取り囲まれていた。
そして物語が始まる。
◇ ◇ ◇
ゲーム冒頭のチュートリアルの間に、まずウルフウッドはノーマンズランドがどのような場所かを説明していた。キヴォトスよりも殺伐としている癖にヘイローは無く、人の命が紙みたいに軽い世界。星そのものがアビドスのような砂漠の惑星で、「プラント」という装置により辛うじて人類が生き長らえている厳しい環境だったことを伝える。
「そんな世界や。ガキが捨てられるなんてのもありふれとって、ワイもそんなありふれたガキの一人やった」
どぶ泥の底のような環境だった。生きるために盗みもした。殺されかけることなどしょっちゅうだった。誰も信じられなかった。
――そんな中、あの場所だけが自分を受け入れてくれた。
「ワイを引き取ってくれた孤児院は、ワイにとっての楽園や。せやからどないなことしてでも守りたいと、そう思うとった……」
そこまで話したところでゲーム中でヴォルフが初登場するシーンに差し掛かる。バイクが故障し砂漠で遭難していたヴォルフをブイが助けるシーンだ。
「……懐かしいなぁ、もう五年位前になるんか。トンガリと初めて会ったんは」
その話にホシノが反応する。
「ちょっと待って。五年前って……ニコラスは十五歳だよね? そんな年でこんな旅したの!? 」
「いや、トンガリと旅したんはこれから二年後や。この後あいつ行方くらましてな、お陰で二年も探し回る羽目になったんやで」
「それでも十七じゃん……」
自分と同い年の時にこんな大変な旅をしていたのかと驚愕するホシノ。みんなも同様に驚いていた。アビドスの借金すら生ぬるく見える彼が置かれていた環境に胸が締め付けられる。
この話の続きを聞くにはそれなりの覚悟がいることを皆は予感していた。
ゲームが先に進む。
「俺はヴォルフ。流れの僧侶をしている。孤児院の経営もしていてな、まあ出稼ぎみたいなものだ」
「出稼ぎって……僧侶でか? 」
「こんな時代だ。葬儀とか、それなりに仕事がある。あとはまぁ、副業を少々な」
「ねえニコ兄。ネタバレになっちゃうんだけど、このヴォルフはお金の為に実は敵の組織に雇われていてブイをラスボスの元まで連れていく役割を与えられてるんだ。……ニコ兄もそんな立場だったの? 」
「概ね同じや。理由は金だけちゃうけどな」
そしてヴァッシュ・ザ・スタンピードを中心とした話が始まる。
人間台風と言われた男。先ほど説明した「プラント」の自立型が彼の正体で、町ひとつ消し飛ばせる程の力を持っていたこと。それ故に兄のナイブズとぶつけ合わせようとしたこと。
「正直、旅の途中で何度もあいつに銃を向けたわ。善人ごっこに付き合いきれなくて苛立ったり、持っとる力が怖くて消してまおうと思ったり、まあ色々あってな」
彼が筋金入りの平和主義者で何度も喧嘩したこと、自分が引き金を引けば脅威の半分が消えると思ったことも話す。
そして、ヴァッシュの一途さを信じ、ナイブズから人類を……明日の切符を勝ち取るために、この男に自分の命もベッドしてナイブズの元から助け出したことも話した。
「ホンマやったらそのままトンガリを手伝ってやりたかったんやけどな……ナイブズが乗った方舟の進路に孤児院があった。せやからトンガリと別れて孤児院に行ったんや。そしたらマスター・チャペルと弟分のリヴィオが教会占拠しとってな。頭おかしいやろ? このままやと人類干からびて終わるんやで? そないな状況なのにあのジジイ、ワイへの復讐優先やねん。それで死闘する羽目になってな、最悪やったで」
「うわ、本当に最悪……」
「その……正気の沙汰とは思えませんね……」
後輩二人が本当に理解できないといった反応を見せる。
「ニコラス、何したらそんなに恨まれるの?」
「……裏切って殺した。まあ生きとったわけやけど……」
「ええ……どういうこと……?」
「その辺りも話したるか……」
そして「ミカエルの眼」についての話が始まる。
ミカエルの眼……殺し屋の寄り合いのようなプラント崇拝者の組織。そこは自分を受け入れてくれた孤児院の裏に存在し、素質のある子供を選別して引き取っていた。素質とはもちろん、人殺しの才能だ。
「連れていかれた時は、辺境の集落を廻って教会とかの建立を手伝う仕事や聞いとった……」
世話してくれたおばちゃんや子供たちもそうだと思っていた。しかし当然それは嘘で、素質を見いだされた自分は「ミカエルの眼」へと連れていかれた。そして孤児院を人質にして自分に人殺しの技術を叩き込み、人体を改造し、パニッシャーを与えた人物、それがマスター・チャペルだと語る。
「あそこの良い点を上げるとすれば給料が良かったくらいか? それ以外はホンマ最低なところや」
孤児院への仕送りのため、何度も手を血に染めた。自分は外道へと堕ちた。堕ちているのだから、自分がやらねばと決意した。
「ワイみたいなやつがもう出ないようにしたかった。だからマスター・チャペルを撃って、そんでチャペルに成り済まして……組織の信仰対象のナイブズにも弓引いた」
全ては子供達の……自分の家族の未来のために。
「……後の流れはさっき話した通りや。そんで孤児院で殺りあって、リヴィオ取り戻してワイが勝った。ただワイも重症負ってもうてな、こら死んだと思うたらアビドスで遭難しとった。ここについては聞かんでくれ。ワイかて未だに何があったのか理解してへんねん。……まぁ、大体こんなとこか、キヴォトスに来る前のワイの人生は」
気付けば話の途中から彼女達を見ることができず、視線を下へと落としていた。正直言って少し怖かった、子供たちに拒絶されるのが。どう取り繕ったところで自分は人殺しの
――あれは胸が冷える。
他人からどう見られようが知ったことではないが、アビドスの子供達には……自分の大切な家族同然の存在にだけは、怖がられたくなかった。
(……といっても無理やろな。この陽だまりにいるには、ワイは汚れ過ぎとる。化けの皮は剥がれた、出てけ言われても仕方ない……)
ウルフウッドは未だに視線を下げたまま、静かに彼女達から下される沙汰を待つ。
しかしその沙汰は待っても下されず、それどころか鼻を啜る音が聞こえてきた。ウルフウッドは気になって視線を上げると、彼女達は一様に目に涙を溜め、泣き叫ぶのを我慢しているかの様に体を震わせている。
「ちょ、ちょいちょいちょいちょいっ、どうしたんやお前ら!? 」
動揺した彼の呼び掛けで最初に我慢の限界に達したのはセリカだった。
「だ、だって、ニコラス先輩、なんにも……悪くないじゃない……ッ! 」
釣られてノノミも決壊する。
「なんで……なんでニコ先輩がそんな目に合わないといけないんですか……!? 」
それを皮切りに皆が泣き出す。ホシノですら声は上げなかったものの、体を震わせ嗚咽していた。
彼女達は知っていた。ウルフウッドの本質を、その優しさを、大切なものを守ろうとする時の意固地さを……。
だって、自分達はそれに救われてきたのだから。
周囲の誰もがアビドスを見捨てていた中、ずっと自分達に付き合っていてくれた。自分達で稼げるように戦い方を教えてくれたりもした。自分達が拐われた時、信じられないほど激昂していたと先生から聞いた。今でもシャーレの給料の半分以上をアビドスに入れてくれている。
そんな人だから、あの時ホシノを助けるために重い引き金を引いてくれたのだ。
本当は、誰かを傷つける度に心が悲鳴をあげるような人だと、それでも大切なモノの為に鬼になれてしまえる人だと、知っている。
――どれ程、この人は自分の心を殺して来たのだろうか? 仕方なく撃ってしまったあの事件ひとつでも重く捉えているこの人が、今までの旅路でどれ程傷ついてきたのか? それを思うと涙が止められなかった。
「……あんなぁ、どんなに取り繕おうがワイは人殺しの
「違うっ!! 」
ウルフウッドの言葉をホシノが強く否定する。
「……本当に化物なら、そんな辛そうな顔しないよ。ニコラスは違う。……本当は理想高いくせにリアリスト気取って、私たちに弱いとこ隠そうとする生意気な私の同級生……アビドス高校三年対策委員会会長、ニコラス・D・ウルフウッド……それがニコラスだよ。化物だなんて誰にも、ニコラス自身にも言わせないから」
涙を拭い、力強い眼でウルフウッドを見据えるホシノ。生徒会長の言葉に他の生徒も同意する。これが対策委員会の、彼女たちの総意だった。
自分たちのお兄ちゃんを否定できるわけないのだから。
ニコラスはサングラスで目を隠しながら天井に顔を向ける。
「……話疲れたわ。ちょっと一服してくる」
そして席を外し、屋上へと行ってしまった。
「うへぇ、泣き顔見せてくれないのは相変わらずだなぁ」
「……前に私、ニコラス先輩のこと『人殺し』だなんて……本当に酷いこと言っちゃった……」
「ん、大丈夫だよセリカ。あの時は仕方ないし、ニコ兄もちゃんとわかってるから」
「ニコラス先輩が戻ったらどうしますか? 皆でまた食事にでも行きます? 」
「う〜ん、それも良いですが……私に良い考えがあります☆ 」
◇ ◇ ◇
ウルフウッドが一服し心を落ち着かせてから部室に戻ると、テーブルにはお菓子が広げられノノミがPCの前に座っていた。
「お帰りなさい、ニコ先輩。早速ゲームの続きをしましょう! 」
「ちょい待てや、話すこと話したやろ。今さらそれする必要あるんか? 」
「ありますよ! さっき見せたセーブデータの通り、まだまだ聞きたいこといーっぱいあるんですから! 」
ノノミの横でシロコが同意する。
「ん、ヴァッシュとか弟分のリヴィオって人の話ももっと聞きたい」
「そうそう、それにヒロインの大きい方との関係とかも聞きたかったし。『包み隠さず話す』ってさっき言ったよね? 」
先ほどとは違うタイプの圧を放つホシノ。まおうからはにげられない。
観念し、席に着くウルフウッド。彼の話で進行が止まっていたブイとヴォルフの冒険が再開する。
色々なことを話した。重い話だけじゃなく、ゲーム開発部達にも話したダチとバカしたことや、行動力の塊みたいなお姉ちゃんらとの話、リヴィオとの思い出、とにかく色々。
――まるで孤児院の子供達に語ってやれなかった分まで話すかのように、彼の冒険譚は夜遅くまで続いた。
◇ ◇ ◇
アビドス校舎の倉庫が開かれる。
「うへぇ、やっぱり揃えて正解だったねぇ」
ホシノが倉庫の証明を点けると、装甲ヘリや様々な武器が並ぶ物々しい中身が照らされた。
「借金の利子も減って余裕ができたのが幸いでしたね」
「みんなでいっぱい賞金首とか捕まえましたからね~」
そんな雑談をしながら彼女たち対策員会のメンバーは各々のロッカーの前に立ち、その扉を開ける。中に入っていたのは防弾プレートの仕込まれたチョッキや手足用のアーマー、そして例の覆面と同じ色とナンバーが刻まれたフルフェイス防弾ヘルメットといった装備だ。特殊部隊顔負けのそれらを彼女たちは身に着けていく。
全てはかつて自分たちを襲撃した奴らが持っていた「ヘイロー貫通弾」に対する備えだった。「ヘイロー貫通弾」はその名の通りヘイローの加護を貫通し、ヘイローが無い人と同じように銃弾で肉体に損傷を与えることができる驚異的な物だ。しかし物理的な特性としては通常の弾丸と変わらないため防弾装備で防ぐことが可能である。それゆえの備えだ。
ちなみにウルフウッドが彼女たちにマスター・チャペルのことを話さなければと思っていたのは、いかにイカれた相手か知ってもらった上で「警戒して、遭遇したら一目散に逃げろ」ということを伝えたかったからなのだが。なのでこの状況を見たら「違う、そうじゃない」と声を上げていたであろうが、生憎彼はこの場にいない。
ウルフウッドの誤算は二つ。彼女たちは孤児院の子供たちほど弱くも良い子でもなかったこと。そして、彼が思っている以上に彼女たちもウルフウッドのことを大切に思っていること。
ウルフウッドの話を聞いて彼女たちは確信していたのだ。「マスター・チャペルは
「じゃ、訓練を始めよっか」
ホシノが号令する。いつか来るかもしれない戦いに備え、臨戦装備での訓練が始まった。自分たちがニコラスの弱点になるつもりはサラサラないのだから。
タイトルから察せられる通り本当はもうちょっとコメディよりの話にするつもりでしたが、気づけばなんかしっとりした話に……。
『渡来銃』がアビドスの生徒たちにウルフウッドの過去を知ってもらうにはちょうどいいアイテムでしたので執筆したグループストーリーでした。
ウルフウッドの過去を知り、マスター・チャペルに内心ブチギレているアビドス生徒たち。
その過去があったからウルフウッドに出会えたのだとはいえ、兄同然の家族を改造して人殺しを強要させ、挙句逆恨みで殺しにくるような相手なので致し方な無し。
多分プレイアブルになるとしたら、
ストライカー
ホシノ(臨戦+)、シロコ(臨戦)、セリカ(臨戦)
サポート
ノノミ(臨戦)、アヤネ(臨戦)※ノノミがヘリの銃座、アヤネがヘリから物資投下
って感じになるかと。ストライカーの空き枠は当然ウルフウッドです。
どんどんアビドスが手に負えなくなっていく……