ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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絆ストーリー:ウルフウッド02_バーチャヴァルキューレ

<センセ、居住区のゲームセンターに新しく入った筐体の設置終わったで>

 

<” ありがとう。確か復学支援部の子たちにアンケート取って入れたんだっけ? ”>

 

<せやで。ワイらやとどんなの入荷すればええか分からへんしな>

 

<” たしかにね。ちなみにウルフッドから見て何か面白そうなものあった? >

 

<それやったら丁度ええモンあんで。休憩がてらこっち来てみ>

 

 ウルフウッドの元へ向かう。

 

◇ ◇ ◇

 

“ バーチャヴァルキューレ? ”

 

「せや、こう銃型のコントローラーで画面の敵を撃つゲームなんやと」

 

 ガンコンを手に取り画面にそれを向けるウルフウッド。

 

「要は的当てやな。シンプルで分かりやすいわ」

 

“ なる程……『プレイヤーはヴァルキューレの一員になって迫り来る犯罪者を倒していこう』か、確かに面白そうだね ”

 

「実際のヴァルキューレはこんなバカスカ撃たへんけどな」

 

 画面に流れているサンプルプレイを見て笑うウルフウッド。そしてもうひとつのガンコンを引き抜き先生に渡す。

 

「二人までプレイできるみたいやし、一回分ワイが奢ったる。どや? 」

 

“ いや、でも私は…… ”

 

「銃持ってたやろ? どないな腕前か見せてみ」

 

“ 見せられる程の物じゃないんだけど ”

 

「ノリ悪いなぁ、所詮ゲームやで」

 

“ ……まあいっか、わかったよ ”

 

 何故だか微妙に渋りながらもガンコンを受け取る先生。ウルフウッドがコインを二枚入れ、バーチャヴァルキューレが始まる。

 

 バーチャヴァルキューレはガンコンで遊ぶガンシューティングゲームだ。プレイヤーはヴァルキューレの一員となり、一人称視点の画面に写し出される敵を撃つというシンプルな内容になっている。しかし、敵は出現してから一定時間が経つとプレイヤーを銃撃してダメージを負わせてきたり、また手榴弾やミサイルを放ってきた時はそれらを銃撃して撃ち落とす必要があったり、はては人質を盾にしてきたり……と、ただ銃の狙いが良ければいいだけでなく反射神経や敵を倒す順番を考える判断力などが問われる奥深さも兼ね備えているゲームだ。

 

 とはいえ、歴戦の戦鬼がプレイヤーになることは流石に想定していない(というかしていたら普通にクソゲーである)ためウルフウッドからしたら大した難易度でもなく、彼は片手をポケットに突っ込んだまま余裕綽々といった様子で出現した敵を撃ち抜いていく。

 

(まあ、まだ序盤みたいやしこんなもんか。空き缶撃つよりかはマシぐらいやな。にしても……)

 

 横目で先生を観察する。そして驚愕していた。自分の方が倍以上敵を撃っている筈なのに、先生のスコアがウルフウッドに迫っていたのだ。

 

 カラクリはこうだ。このゲームは敵を撃った時に撃った部位によってスコアボーナスが付くシステムになっている。ヘッドショットなら2倍、そして警察らしく手を撃って敵の武器を落としたら2.5倍といった具合だ。またスナイパーや人質を取っている敵といった狙いにくい相手ほどスコアも高く設定されている。

 そして先生は直ぐに対処が必要な敵をウルフウッドに任せ、高スコアの敵を、しかもその全てをボーナスショットで倒していた。それがウルフウッドに迫るスコアを出していた理由である。

 

 これは容易なことではない。ウルフウッドは直ぐ攻撃を仕掛けてくるタイプの敵を優先して脅威的な反射速度でそれを撃ち抜いている。その最中でスコアの高い敵を瞬時に見抜き精密射撃を行うという難度。ウルフウッドの記憶の中でこんな芸当ができる相手は、すぐに思いつく限りでは一人だけだった。

 

(……おもろいやんけ! )

 

 先生がこんな牙を隠し持っていたなんて思いもしなかった。反射神経、早撃ちの速度はこちらが上だが、精密さは同等どころか自分を上回っているかもしれない。

 

 先生を突き放すため敵を倒すスピードを上げるウルフウッド。必死にスコアで食らい付いていく先生。互いがゲームの難易度を跳ね上げ、バーチャヴァルキューレはもはや別ゲーと化していた。

 

 そのプレイを見ていた復学支援部の部員は後に語る。

 

「なんかTAS動画見てる感じだった」

 

 そう言わしめる程のプレイングもあり、二人はノーコンティニュー・ノーダメージであっという間にラスボスまでたどり着く。

 

 ラスボスは巨大な十字架にこれでもかと武器を詰め込み、テロを起こすことを教義とするカルト教団のトップ「テロ・ザ・教皇」という強敵だ。

 

「……これ作ったやつ後で絞めたる」

 

“ ははは……これは流石に…… ”

 

 多方面に怒られそうな敵キャラに流石に苦笑いする先生。しかしそんなふざけたキャラにも関わらず作り込みはガチだった。特に二人プレイの際はアルゴリズムが変化し攻撃速度が上昇、一人ではとうてい処理しきれない弾幕を張ってくるのがこのボスだ。本来なら二人がかりでラスボスの攻撃を迎撃しつつ、少ない隙をついて敵を攻撃するのが攻略セオリーである。

 

 しかし、この二人にそんなものは関係なかった。

 

「しゃあないからこいつのスコアは恵んだる」

 

 先生にそう伝え、一人で全ての攻撃を迎撃するウルフウッド。

 

“ じゃあお言葉に甘えて ”

 

 先生も先生で本来攻撃を当てることを想定していないボスの高速移動中にも関わらず銃弾をヒットさせていく。

 攻防一体の二人の猛攻にみるみる体力が減っていくラスボス。そしてあっという間にゲームをクリアしてしまう。二人がノーミスでクリアしたゲームスコアは脅威的な数値を叩き出し、デカデカと全国ランキング一位の表示が映されていた。

 

「す、すげぇ……」

 

 周囲から拍手が巻き起こる。二人が周りを見ると、復学支援部の生徒たちがいつの間にか自分たちを取り巻いていた。どうやら自分たちのゲームプレイはまじまじと見られていたらしい。

 

「やっぱウルフウッドさんパネェっす! 」

 

「先生も付いていけるのスゴいです! めっちゃ上手いじゃないっすか!? コツ教えて下さいよ! 」

 

“ え、えっと、それはまた今度ね ”

 

 遊びに本気になってしまっていたのを見られた気恥ずかしさから、スコア記録に名前を入力するのも忘れて二人はそそくさとその場から去っていった。

 

 ちなみに突如として現れた無名のコンビの超絶スコアにキヴォトス中の猛者が挑み、そして散っていく現象が発生し、バーチャヴァルキューレはちょっとしたブームになったのは余談である。

 

◇ ◇ ◇

 

 シャーレオフィスに戻る廊下の途中、ウルフウッドは先生に尋ねた。

 

「あれほどの腕前あるんやったらここでも十分通用するやろ。なんで使わへんねん? 」

 

 その問いに先生は困った顔を浮かべ、恥ずかしそうに答える。

 

“ ……生徒の指揮してる身で言えた義理じゃないんだけどさ……何かこう、駄目なんだ私は。ゲームならまだしも、人に銃を向けるのはいまだに怖いよ ”

 

「ふーん、そか……」

 

 先生にはヘイローが無い。先生が元居た場所は、銃で撃てば人は死ぬ世界だ。

 

(“ ……使う予定はないけどね。念のためというか……どっちかっていうと戒めかな…… ”)

 

 以前先生が何気なく言っていた言葉を思い出す。こいつにもきっと触れてほしくない過去があるのだろうと察し、ウルフウッドはそれ以上の追及はしなかった。




ウルフウッドの絆ストーリーだけど、どちらかというと先生の匂わせ的な話。
とはいえ先生の「人に銃を向けることに抵抗がある」という感覚を分かってあげられるのはウルフウッドだけだと思うので、彼の絆ストーリーにしました。

先生のこの辺りの話に触れるのはもっと後の話の予定です。
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