ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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グループストーリー:ゲーム開発部_Tri Heart

 部室にテーブルとホワイトボードを持ち込み真剣な面持ちをしているゲーム開発部。それもそのはず、彼女達は今、次のゲームの企画会議を始めようとしていた。

 

 というのも『TSC2渡来銃』で特別賞を受賞し部活を存続出来てはいるものの、ユウカ曰くあくまで来期までの保留であり、成果を上げなければ再び廃部の危機に陥るからである。なので『TSC2渡来銃』で弾みのついている今、実績を積むために次のゲームを考えようとこの会議が開かれていた。

 

「えっと、何か作りたいゲームの希望ある人いる? 」

 

 ユズが問いかけると、いの一番にアリスが挙手する。

 

「はい、この前の経験を生かすにはやはりRPGが良いと思います! TSC3を作りましょう! 」

 

「「「うっ……」」」

 

 アリスの意見に空気が凍る。

 

「あ、あの……アリスはなにかまずいことを言ってしまいましたか? 皆さん様子がおかしいです」

 

 RPGという言葉を聞いてからミドリは眼が泳ぎ、モモイに至っては机に突っ伏していた。ユズが申し訳なさそうに答える。

 

「あの、アリスちゃん。言いにくいんだけど、その……RPGはちょっと……」

 

「な、なぜですか!? 」

 

「悲しいけど、あれを越えるRPGは……今の私たちには作れない、から……」

 

 ユズはその理由を語る。

 そもそもあのゲーム、仲間のバフがえげつなかったのだ。そこらのRPG顔負けのウルフウッドの冒険譚という原作、マキがデザインしてくれたカッコいいタイトルロゴやUI、ゲームに臨場感を持たせてくれたコタマの音源素材、そしてミレニアム屈指の天才であるハレが調整してくれたゲームシステム。それらをゲームとして纏め形にしたのは確かに自分たちだが、素材が一級品だったのは確かだ。それに……

 

「あんなシナリオ書ける気がしないよぉぉぉ!! なんで私あれ書けたのぉ!? 」

 

 突っ伏していたモモイが噴火したかのように叫ぶ。

 

「確かにウルフウッドさんの話があったのもあるけどさ!! なんであんな上手く脚色できたのかわかんないよ! 最終決戦付近の話なんてほぼオリジナルだよ!? そりゃ色々相談したりしたけど! 最後のフレーズなんか何? 『これは遥か時の彼方、まだ見ぬ遠き場所で、唄い続けられる、同じ人類のうた』って……なんで思いつけたの私? あの時の私なんかおかしかった!なんか憑いてた!! 神よっ、もう一回私に憑いてください! うおおおおっ!! 」

 

「……壊れたお姉ちゃんは置いておくとして、私もあの時は妙に筆のノリが良かったのは確か。何て言うか何時もの百二十パーセントの力は出てたよ……」

 

 締め切り一週間という極限状態であったせいか、モモイとミドリはスポーツでいう所のゾーンに入っていた。ユズも遠慮したり思い悩む余裕が無かったせいで逆にゲーム製作に思考のリソースを集中できており、普段以上の力を発揮していたのだ。

 総括すると「TSC2渡来銃」は一級の増援と極限状態にあったゲーム開発部がシナジーを起こして出来た奇跡のゲームであり、彼女達にとって再現不能のオーパーツと化していた。

 

 

 説明を終え、ユズが顔を青ざめる。

 

「今RPGを出したら絶対に『渡来銃』と比べられる……『2以外はやらなくていいよ』なんて言われちゃう……」

 

 この手の言葉を言われるのはゲームメーカーの宿命であり自分たちも散々言ってきたことだ。ただ今の自分たちにその言葉に耐えられるだけの強さはまだ無い。多分ポッキリいってしまう。ユズはその光景を想像し、体をプルプルと震えさせていた。

 

「す、すみませんでした、ユズ! RPGは見送りましょう! 」

 

 これはまずいと流石のアリスも感じ取り意見を撤回する。アリスは逃げるコマンドを選べる勇者だった。

 

 アリスの撤回で会議が振り出しに戻るゲーム開発部。次に手を上げたのは意外にもミドリだ。

 

「恋愛ゲーム、なんてどうかな? 」

 

「「「恋愛ゲーム? 」」」

 

 残り三人は選択肢にも入れていなかったジャンルだった。モモイが尋ねる。

 

「なんでそれにしようと思ったの? 」

 

「それなんだけど……『TSC2渡来銃』ってシナリオが良いとか言われてるけど、それと同じぐらいキャラの人気も高いんだよ。特にブイとヴォルフは凄いよ、ファンアート描いてくれてる人がいるくらい」

 

「え、ウソ!? 」

 

「ほんとだってば、これ見てよ」

 

 ミドリがみんなにイラスト投稿サイトを見せる。

 

「ホントだ、しかも結構な数がある! 」

 

「でしょ。それにイラストだけじゃないの。中には夢小説書いてる人もいるぐらい」

 

「夢小説とは何ですか? 」

 

 アリスが聞いたことの無い単語に反応する。

 

「えっとね、大まかに言えば自分を主人公にして好きなキャラクター達との交流を書いた小説のことかな。大体恋人関係になったりするのが多いの」

 

「恋人関係……ですか? 」

 

「なるほどね! 」

 

 モモイがパチンと指を鳴らす。

 

「わかったよミドリ、つまりブイやヴォルフみたいなキャラクターとの恋愛ゲームを作れば人気が出るって訳ね! 」

 

「そういうこと」

 

 そこまで聞くと確かに意外と悪くないかもと思いつつ、ユズが懸念を挙げる。

 

「で、でも恋愛ってまだよく分からないし……私たちに作れるかな? 」

 

「大丈夫だよ! 」

 

 何故だかモモイが自信満々に答える。

 

「こういう時こそ取材だよ! 丁度心当たりあるしね! 」

 

◇ ◇ ◇

 

「パンパカパーン! というわけでシャーレに取材に来ました! 」

 

 ゲームの為にシャーレに来たゲーム開発部。ちなみにアポは取ってない。それもあってか本日のシャーレ当番であるユウカが彼女らを睨み付けていた。

 

「何が『というわけ』よ!? 何しに来たのよあなた達? 言っておくけど先生達は遊ぶ暇なんか無いんだからね! 」

 

“ まあまあユウカ。そう邪険に扱わないであげて ”

 

「もうっ! 先生も甘やかさないでください! そんな態度だからこの子達も付け上がるんですよ! 」

 

「そない夫婦喧嘩みたいなやり取りはせんでええから、とりあえずなんで来たんか聞いたれや」

 

「ウルフウッドさん!? そ、そんな……夫婦だなんて……」

 

 ウルフウッドの言葉に顔を赤らめるユウカ。

 

(お、これは来て正解かな……? )

 

 そんなユウカの反応にモモイは期待を寄せる。モモイが言っていた心当たりとはユウカの事だったからだ。彼女達はわざわざユウカがシャーレ当番の時を狙って敢えて来ていた。

 

 まだ恋愛経験は無いがそれでも彼女達は思春期の乙女である。それ故ユウカが先生に想いを寄せていることには気付いていた。というか先生がいる時は声のトーンが高かったり、先生とモモトークしてる時は顔がにやけていたり、先ほどの態度だったりとユウカは分かりやすい。乙女でなくとも気付くし、気付いてないクソボケは先生だけである。

 モモイ達はそんなユウカを観察し、ゲームのネタにするつもりだった。とはいえそれを正直に言うとユウカにひっぱたかれるので、来た理由はちょっぴりぼかすが。

 

「さっきアリスも言ってたけど私たちは取材に来たんだよ。シャーレの仕事を参考にしたゲームを作ろうと思ってね」

 

 一応嘘は言っていない。恋愛ゲームの舞台としてシャーレを参考にしようとも考えているのも事実だからだ。

 

「なーんか怪しいわねぇ〜」

 

「そ、そんなことないよー」

 

 ユウカに怪訝な視線を向けられ眼が泳ぐモモイ。アリスが援護を行う。

 

「仕事の邪魔はしません。ですからユウカ、私たちがここに居ることを許してくれませんか? 」

 

 上目遣いでユウカに迫るアリス。

 

「う……わかった、わかったわよ! 邪魔しないで静かにしてること、それが条件だからね! 」

 

「「「はーい」」」

 

 遂に折れるユウカ。何だかんだいって彼女もゲーム開発部に甘かった。

 

 ちなみにその様子を見ていたウルフウッドは、そもそもユウカに決定権は無いだろと思ったが面倒臭くなるのが目に見えていたので黙ることにした。狼はその場のヒエラルキーに敏感なのだ。

 

◇ ◇ ◇

 

「……うーん、地味だなぁ。何か事件でも起これば良いのに」

 

「お姉ちゃん、そんなこと言っちゃ駄目だよ」

 

 早くも取材に飽きかけるモモイ。先生達はずっと書類仕事を続けていたため絵面がひどく地味だった。特にユウカが当番の日は貯まっていた書類の処理に追われることが多く、余計に地味になりがちだ。

 一応成果が無かった訳ではない。先生が隣に来てドギマギするユウカ、調子にのって「先生は私がいないと駄目ですね」なんて言っちゃうユウカ、そんなゲームに利用できそうなネタは入手できていた。しかしそれだけだ。

 

 このままでは山無しオチ無し意味無しのストーリーになってしまう。何か刺激は無いものか……。

 

「おあいにくさま、モモイ。早々事件なんて起きるもんですか。取材終わったなら帰ってもいい……」

 

“ ごめんユウカ、それにゲーム開発部のみんな。ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ。……事件かもしれない ”

 

 ユウカをじっと見つめるモモイ。

 

「ユウカ、事件がなんだっけ? 」

 

「こ、こんな時もあるわよ! 」

 

 やはりキヴォトス、ハプニングには事欠かない場所だった。

 

◇ ◇ ◇

 

「……まさかあんな一報から巨悪に立ち向かう話になるなんて思いもしなかった……」

 

 部室に戻ってからモモイがまるで映画を観た後の様に事件の感想を語りだす。

 

 始まりは「最近塾に通いだしてから友達の様子がおかしくて、その塾を調べて欲しい」といった一報からだった。連絡を受けその塾を調べにいくと、なんとその正体は催眠BDで生徒を洗脳し、私兵に仕立てようとする悪の組織の拠点の一つだったのだ。

 

「あの時の先生とウルフウッドは少し怖かったです」

 

「そうかな? 私はその……凛々しくてかっこよかったと思うよ」

 

 対照的な反応を見せるアリスとミドリ。あの時とは塾の正体が発覚した時のことだ。

 

 子供達を洗脳し兵士にする、その悪行は先生とウルフウッドの逆鱗に触れていた。

 先生にとって子供の可能性は何よりも大切なものである。そして大人はその可能性を守り、広げてあげるべきだと思っている。故に、自らの私利私欲でその可能性を摘み取るような汚い大人の所業を看過することは断じてできない。

 ウルフウッドも同じだ。子供を兵士に仕立て上げ、その未来を血濡れにする所業。それが許せなくてマスター・チャペルを撃ったのだから。

 その怒りから二人は子供達には普段見せない表情を犯人に向けていた。その圧力は睨み付けられた犯人達が後退りするほどだった。

 そして、アリスは以前ウルフウッドの「確認」によりパニッシャーを向けられた恐怖が甦ってしまったため怖さが先立ってしまったが、ミドリや他の生徒は普段見せない大人達の「本気」の表情にドキリとしてしまっていた。特に先生は普段の頼り無さそうな印象からのギャップが凄く、ユウカなんかは普通に見惚れていたほどだ。

 

 ユズも同意する。

 

「あの後も先生達頼もしかったよね……次々に指示を出して犯人を追い詰めていくの……」

 

 容赦を無くした先生達はまず調査に入った塾を叩き潰し、他の拠点の情報を先生のタブレット(シッテムの箱)でぶっこ抜き、なんとその組織は複数の学園に食い込んでいたため各学園の自治勢力に連絡、シャーレの責任の元に各種手続きを省略して、各学園のシャーレ部員に協力を仰ぎ速攻で組織を潰しにかかった。敵の本拠地はブラックマーケットにあったのでそこはウルフウッドが担当。電撃的な拠点同時襲撃に犯人達の逃げ場は無かった。

 

“ ユウカ、ミレニアムにもこの組織の拠点が有るみたいだ。C&Cの子達に協力を要請できる? ”

 

「そ、それが、その……彼女達は今別の任務に当たってもらっていて不在なんです……コユキのせいよ、全く……

 

“ ……そっか。じゃあミレニアムは君たちを頼らせてもらってもいいかな? 私が直接指揮を取るから ”

 

「先生が……はいっ、任せて下さい! 」

 

 

「まさか私たちまで事件解決に巻き込まれるなんてね。ユウカが代表面して返事しちゃったばっかりに」

 

「ですがあのクエストは良い経験値になりました! アリスの『チームワークスキル』のレベルが上がった気がします! 」

 

「は、廃墟の時もそうだったけど、先生がいてくれると本当に戦いやすいよね……」

 

 事件が起きることを希望していたが、まさか自分たちも解決する側に立たされるとは思っていなかったゲーム開発部。ただお陰で先生のカッコいい姿を間近で見ることができたので結果としては嬉しい誤算だった。

 

「最後も熱かったよね〜!! 」

 

 モモイが興奮しながら語る。

 

 運悪く相手組織の用心棒部隊がミレニアムの拠点に居たため絶対絶命のピンチに陥ってしまった先生達。モモイ達は慌てふためきユウカも計算外の事態に焦る中、先生だけは余裕を崩さず子供達の前に立つ。

 

「どうした先生ィィィィイ、状況理解できてねーのか? 」

 

“ 理解してるよ。してるから前に立つんだ。さっきの位置じゃ生徒たちを守れないからね ”

 

「HO-HO-HO-HO、吹くじゃねえか! じゃあ望み通り先生からひき肉にしてやるよ!! 」

 

 悪党達が先生に過剰とも言える量の銃弾を浴びせる。その硝煙と土煙に先生の体は瞬く間に埋もれてしまった。

 

「先生!! 」

 

 その光景にユウカは悲痛な叫びを上げ、それを悪党達は下卑た笑みで笑い飛ばす。しかしその笑い声は段々と小さくなっていった。なぜなら煙が晴れ姿を表したのは先生のミンチでは無く、巨大な十字架だったからだ。

 

「「「ウルフウッドさん!? 」」」

 

「おんどれ、ワイがおらんかったら何べん死んどるかわかっとんのか? 」

 

“ でも君は来てくれるだろ? ”

 

「ぬかせドアホ」

 

 

「お互い憎まれ口を叩きながらも協力して悪党を倒しちゃうの、なんていうのかな? 男のやり取りってやつ? 」

 

 モモイに同意するアリス。

 

「先生とウルフウッドは『タイガー&ラビット』みたいでした! ああいうのを凸凹コンビというのですね」

 

「わかるぅ〜、最初は噛み合わなかったんだけど任務を通して絆が深まっていって………あ、これだ!! なんか閃いてきた! シナリオ書けそう!! 」

 

 モモイはアイディアを受信したのかゲームの設定を書きなぐり始める。そして完成したあらすじを皆に見せた。

 

「こんなのはどう!? 」

 

『Try Heart』

 数多の陰謀渦巻く学園都市キヴォトス。一歩間違えれば不可逆の混沌に飲み込まれてしまうこの都市で、人知れず均衡を守るために活動する組織がいた。その名は「秘密結社ラボラトリ」。

 あなたはラボラトリの新人エージェントで、頼れる大人な指揮官、面倒見の良いアニキ先輩と共にキヴォトスを揺るがす事件を担当することになる。

 何度も訪れるピンチ!サスペンス!それを攻略対象と乗り越え、育まれるラブロマンス……

 あなたはどちらとキスをする? ハラハラドキドキな恋愛シミュレーションゲーム!!

 

 

「……なんか普通に面白そう。やるじゃんお姉ちゃん」

 

「へっへ〜、筆がのればこんなものだよ! 」

 

「確かにこの設定なら取材の成果も活かせるし……私たちにも作れる、かも」

 

「では決定ですね! パンパカパーン!次に作るゲームは『恋愛シミュレーション』になりました! 」

 

 こうしてゲーム開発部初の恋愛シミュレーションゲーム「Try Heart」は製作されることとなった。

 

◇ ◇ ◇

 

「なんでぇぇぇ!? どうしてぇ!? 」

 

 PCの前で崩れ落ちるモモイ。満を持して「Try Heart」を配信してから数日後、自信満々にレビューサイトを覗き込むとそこは低評価の嵐となっていたのだ。

 

「そんな……キャラ絵やイベントCGだって渾身の出来映えだったのに……」

 

 グラフィック担当のミドリもショックで目に涙を浮かべていた。

 

「……二人とも、その、落ち込まないで。『Try Heart』は確かに面白かったよ。こ、怖いけど……レビューを見よう。何が悪かったか、確認しなきゃ……」

 

 ユズがレビューサイトのコメント欄を開き、アリスがそれを読み上げていく。

 

<いちゃラブスキー:製作者恋愛ゲームやったことあんのか? なんか微妙に望んでたものと違うんだよな〜。なんつーの? 推しキャラと二人きりでイチャイチャしたいのになんかノイズが多いんだよな、このゲーム>

 

<BLTサンド愛好家:指揮官も先輩もマジで好み! そこはマジで最高! クライマックスのシーンも胸熱だった! ただ主人公がマジでいらん。ちょいちょい二人の間に入ってきてマジ最悪。なんだよあの取って付けたかのようなラブシーンは!! お前は壁でいいんだよ!! >

 

 

<忍者ネットリ:同士のオススメでプレイしてみたが、あいやなるほど、中々の脳破壊が散見され拙者好みにござった。ただちょっと刺激不足。もっと自尊心を踏みにじって欲しかったでござるなぁ……ふぅ……これ一般向け装ってるけど一般向けじゃないよ。ちゃんと注釈入れないと地雷だよこれ>

 

 

<完ぺきな会計:指揮官ルートクリア済み。指揮官は凄くカッコいいしストーリーも面白いのだけど……恋愛ゲームとしては厳しい評価をつけざるを得ないわ。(以下ネタバレあり)任務を通して指揮官と絆を深めていく過程は確かに面白いのだけど、要所要所で助けに来る先輩と指揮官のやり取りを見ると『やっぱり一番信頼してるのは先輩なんだ……』って因数分解できない悲しみがある。それがちらつくせいで指揮官との恋愛シーンもどこか取って付けたかのような印象を感じてしまうわ。恋愛ゲームとして致命的ね>

 

 

<ホルス:先輩ルートクリアしたんだけど、なんか『これじゃない』感が強い(以下ネタバレあり)先輩は確かに面倒見がいいし甘いこと言ってくれるんだけど、子供扱いされている感じが抜けない。私が立ちたいのは彼の隣なのに、そこには指揮官がいるし。クライマックスは特に最悪。二人に守られてるじゃん私! 指揮官も指揮官でいい人なのが悔しさの振り下ろし先を無くして凄くモヤモヤが貯まる。恋愛ゲームって初めてやったんだけど、こんなものなの? >

 

 

「んぁー! どれもこれも低評価なのに内容がバラバラで何が駄目なのかわかりません!! 」

 

「ま、まってアリスちゃん、凄く評価されてるコメントがあるよ。それを見てみよう……」

 

 ユズがそのコメントをクリックし、アリスが再び読み上げる。

 

<メルリー:まず良い点。指揮官も先輩も違うタイプのカッコよさがあり非常に魅力的なキャラとなっている。スチルも完成度が高く、正直嫉妬するほど。ストーリーも読み物として見ると普通に面白い。

 悪い点は、なんというか色々と中途半端。製作者がどんな層を対象にしたいのか考えてなかったんじゃないかな? と思ってしまう。攻略対象とイチャラブさせたいならもう一人のキャラが前に出すぎで、そのせいでストーリーも『あれ、私いなくても二人で事件解決出来たよね? 』といった内容になってしまっている。これじゃあプレイヤーは疎外感を感じてしまい、それで恋愛パートが他のコメントにもあったように『取って付けた』ような印象を与えてしまうんじゃないかな?

 イチャラブにするならキャラのルートに入った時点でもう片方のキャラは退場させた方が良かったと思うよ。

 BLにするなら主人公は要らないし、NTRにするなら主人公と結ばれる結末は要らないし、やっぱり中途半端と言わざるを得ない。

 キャラやストーリーは良いのでそれが逆にガッカリ感を強めてしまっている。

 製作者はもっと乙女心を学んで、どうぞ>

 

 

「私はバリバリの乙女だよ〜!! 」

 

「お姉ちゃん、乙女はバリバリなんて言わないよ」

 

 読み上げられた長文コメントに憤慨するモモイ。ミドリはスチルを誉められていたのもあってモモイほど取り乱してはいなかったが、それでも喜びきれない複雑な表情をしている。

 そんな二人に、黙々とコメントを読み続けていたユズが語りかける。

 

「……ねえ二人とも。多分私達、先生達に頼りすぎちゃってたんじゃないかな? 」

 

「ユズちゃん? 」

 

「どう言うこと? 今回は取材しただけだよ? 」

 

「なんていうか、その取材とか……先生達をネタに使えば面白いものできるって、そう……思っちゃってるんじゃないかな? これじゃあG.Bibleが先生達に置き換わっただけ、なんじゃ……」

 

 言われてみれば、とモモイは思い返す。

 

『TSC2渡来銃』しかり『Try Heart』しかり、色々脚色したりしたものの確かに原案に引っ張られ過ぎてしまっていたように思う。勿論取材などして色々経験することも重要だが、なんというかシャーレ絡みの話は元が強すぎるのだ。それ故今の自分達はネタに振り回されてしまっており、それが今回の結果を招いてしまったのだと思い至る。

 

「……確かにユズの言うとおりかも。うん……しばらく先生達をネタにするのは控えよっか! もっと成長して私たちの芯みたいなものができたら……リベンジはその時にしよう! 」

 

「うん! 」

 

「そうだね……」

 

「はい!! 」

 

 彼女達はシャーレという一級ネタの倉庫に安易に頼らない道を選んだ。先生がこの光景を見ていたらきっとニヤケ顔を押さえられなかっただろう。この選択は彼女達が成長している証だからだ。ゲーム開発部は確かに前へと進んでいた。

 

 

 

「……ところでBLやNTRとはなんでしょうか? 」

 

 

「「「アリス(ちゃん)は知らなくていいよ」」」

 

 

 息もバッチリ合っていた。

 




シャーレはネタの倉庫だけど頼りすぎちゃ駄目だよね、というお話。
生徒を洗脳して利用する塾のネタはブルアカ公式コミカライズの便利屋68業務日誌より。
……なんかあのコミックス、しれっと巨悪が出てきたりホームレスしてる生徒の描写があったりとキヴォトスの過酷な状況が映し出されるんですよね……やっぱり復学支援部みたいなの必要だと思います。

ゲームのネタ考えてて思ったんですが、キヴォトスってわりと血界戦線のヘルサレムズ・ロットに近いんじゃないかなーって思いました。一応外の世界っていうのはあって、でもキヴォトスの中は人以外のものがうじゃうじゃいて、なんというか常識改変もされてる臭いし……
あとシャーレの立ち位置が結構ガチ目にライブラしてるんですよね。
クラウスが先生している世界戦も面白いかもしれません。
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