……正直パヴァーヌ編二章はキャラの解釈、特にウルフウッドとリオの解釈が合っているか特に難しくて不安に思うことが多く……
そもそもこの手の二次創作なんて解釈違いなんぞざらにあるし、それを言ったら今までの話だってそうだろうがと言ってしまえばそうなのですが……せめて自分なりに納得できるものにしようとして難産気味です。
そんな状況ですが、ここまで読んでくださっている方にはせめて面白いと思ってもらえるように続けていくつもりですのでよろしくお願いします。
01_鬼札の枚数
薄暗いセミナー執務室にて二人の人物が相対していた。
「あら……超天才清楚系病弱美少女の来訪を電気も付けずに迎えるなんて……来客をもてなす気がこれっぽちも無いという点、とてもあなたらしいとは思いますけど……暗い部屋でモニターをつけていると目が悪くなりますよ、リオ」
「万全を期しているだけよ。この会談を外部に知られてはならないもの。そのためであれば、この程度問題ではないわ。この訪問はデータベースには残らない。つまり、記録上私たちは会ってなどいない事になっている。すべては……これから話す内容の機密を守るため」
「リオったら、真面目なんですから……『貴方は私の姉なの?』くらいの軽口を返せないと、ユーモアからは程遠いですよ」
ヒマリがリオをからかうが、リオはそのユーモアを解さずいつもの軽い言い争いが繰り広げられる。この場にストッパーはいないためヒマリがその延長で余計な事まで言い放つ。
「――そもそも、人目を気にするのであれば他の場所にすればよかったのでは? 」
「他の場所? 」
「ええ、例えば、誰かさんがこっそり作っている……
「……本題に移りましょう」
「あらあら、話を逸らすつもりですか? ふふ……ええ、構いませんが」
ヒマリの言葉がリオにとって都合が悪かったのか、リオは雑談を打ち切り無理やり話題を変える。
「……まず、お互いの認識のすり合わせを」
そうしてリオはアリスについての一連の騒動を振り返る。
「あれから随分と経つけれど……解釈の結論は出たかしら? 」
アリス自身の観察は現状危険性無しと判断し一旦終了はしていたが、当然調査を中止したわけではない。廃墟やミレニアムに伝わっている文献など、他にも調べるものは色々あった。二人は時折アリスの様子を見つつ、アリスの正体について色々探っていたのだ。そして、今日が互いに出した結論を確認する日だった。
「もちろんです、リオ。アリスの正体……それは――無名の司祭が崇拝する『オーパーツ』であり――」
被せるようにリオが続きを口にする。
「――遥か昔の記録に存在する、『名もなき神々の王女』」
「……」
「……そう、同じ解釈になったようね。つまり……『あの存在』の本質は……」
「ええ。アリス、あの子は――」
「世界を終焉に導く『兵器』」
「『可愛い後輩』ですね♪ 」
二人の意見が食い違う。
「……あなたは一体、何を言っているの? 」
「リオこそ一体何を言っているのですか? 」
互いが「何言ってんだこいつ」とでも言わんばかりの視線を向け、空気が険悪になっていく。先に口火を切ったのはリオだった。
「……そう。じゃあ、私たちの同盟もここで終わりという事ね」
「そうですね。同盟ではなく休戦でしたが……」
ヒマリの悪態でさらに空気が険悪になる。そしてリオが手にあるタブレットを黙って操作すると、一輪車の足を持ちマシンガンを両脇に抱えるように設置されている兵器たちがヒマリを取り囲む。
「ああ、これが噂の……最近あなたが作っているおもちゃですね」
「同盟を解除した以上、貴方をこのまま帰すわけにはいかないわ」
リオはヒマリの実力は認めていた。それこそアリスの調査を共に行うぐらいには。故に、道を違えた時には大きな障害になるとも思っていた。だからこそここから逃すわけにはいかない。
「まぁ……そうでしょうね。あなたならそうすると思っていました」
互いに実力だけは認め、やりあってきた腐れ縁の仲である。ヒマリもリオの思考は読み切っていた。ヒマリは車椅子からホログラム状のキーボードを展開し、想定していた対応策を実行する。
ヒマリがそのキーボードを操作すると、執務室のあらゆる電源が落ちる。
「……ッ!? 私のオフィスが……ハッキングされた……!? 」
「あらあら、ビッグシスターの部屋は無敵だとでも? 」
「AMAS、ヒマリを捕えなさい……! 」
リオはヒマリを取り囲んでいた兵器、AMASに命令を出す。しかしそれらは起動しない。この場の想定においてはヒマリの方が一枚上手だったのだ。先ほどの執務室のシステムをダウンさせたのは布石、それで生じた一瞬のスキを突いてドローンの制御権までもヒマリはハッキングで掌握していた。
(ドローンの制御権を復旧させないと)
ヒマリの対応に焦るリオ。その隙を逃すヒマリではなかった。執務室の照明システムを操作し、閃光弾代わりとでもいうように最大光量で明かりを点ける。先ほどまで部屋が薄暗かったこともありリオへの効果は抜群だった。
「うっ……! ……ヒマリは……」
リオの目が光に慣れた頃には、その場にヒマリの姿は無かった。
「……そう、抜け出したのね。さすがはヴェリタスの部長……できることなら味方にしておきたかったけれど……本当に残念よ」
リオは通信機を取り出し、その先にいる人物へ命令を下す。
「トキ、ヒマリを捕えなさい」
リオはその一言を告げ、通信を切る。そして一息ついた。リオは確信していたのだ。自分の腹心、C&Cコールサイン04のトキであればこの程度造作もないことを。
「……はぁ、非合理的なこの方法は、選びたくなかったのに」
すぐさまトキからリオへ、ヒマリを捕まえたことの連絡がいった。
◇ ◇ ◇
リオは隠れ家の一室で椅子に深々と腰掛け、思案に耽っていた。
これからアリスをエリドゥへと連れていき解体する、それは決定事項だ。ただそれを実行するには盤面にある
一枚目、飛鳥馬トキ。私の腹心で、
二枚目、美甘ネル。C&Cのトップ。ミレニアムにおける勝利の象徴。
そして三枚目……ニコラス・D・ウルフウッド。シャーレの特記戦力。彼の戦闘能力は未だに底が計れていない。考えたくないが事実として、ネル以上の戦力を有している可能性がある。
アリスを連れていこうとすれば、先生は十中八九ウルフウッドという札を切って邪魔をするだろう。今までの観測結果を分析すればそれは明白だ。
対してこちらの
彼女のミレニアムを思う気持ち……それは普段なら彼女の良い点であるが……今回に限り、それ故に彼女が私を裏切る可能性があった。
最悪の展開はネルが私を裏切りシャーレ側に付き、
彼の確認できる戦闘記録は集めて分析したが……数値のムラが激しく、その全貌が掴みきれない。
ただ、この傾向に私は心当たりがあった。彼はネルに似ているのだ。その時の気分で変動する戦闘力、合理的でないその有り様が彼女に似ていた。そしてそれは私にとっては都合の悪い情報だ。彼もネルと同じく計算を越えてくる存在である可能性が高いからだ。
コーヒーをすすり、頭の中の情報を整理する。
ネルが裏切り二対一の状況になった場合、トキが勝つという答えを出すには不確定要素が多すぎる。やはり何としてもこの状況は避けるべきだ。
では、どうするか?
いっそ、先にネルという札を切ってしまうのも良いかもしれない。なにか理由を作ってウルフウッドにぶつけてしまうのだ。仮にウルフウッドがネルに勝ったとしても、ネルを相手に無傷はあり得ない。ネルが勝つ場合も同様だ。それであればネルが私を裏切った場合も対処は容易だろう。二人さえどうにかなれば、トキとアバンギャルド君、そしてエリドゥの防衛機構を突破できるものはいない。
ネルを動かす理由をどうするかという問題はあるが、安定が見込めるプランだ。ベストではないがベターではある。
ベストなのはウルフウッドがこちらの札になることだ。百鬼夜行の事件から彼はヘイローを破壊、もしくはそれに準ずる能力を持っていることが示唆されている。もし本当にそうであれば諦めていたアリスのハードウェア面からの破壊も可能だろう。わざわざエリドゥの装置を使ってアリスのソフトウェアを破壊するという手間を踏む必要もない。……とはいえ、これこそ机上の空論だ。彼はあくまでシャーレの……
――いや、果たして本当にそうだろうか?
彼は立場上シャーレ部員であり先生の下だが、実際は対等にあるように見えていた。また彼の性格は先生よりもリアリスト寄りだ。……何より、彼は一度命を天秤にかけ、選択したことがある人間である。もしかしたら彼なら理解を示してくれるかもしれない。……説得の余地があるように見える。
そこまで思い至り、プランは固まった。
こちらの真意は隠しつつ彼だけを呼び出し、アリスの真実を伝える。そして彼がこちら側についてくれればそれでよし。可能であればアリスを破壊してもらう。これがプランA。
彼の説得に失敗したら……ネルを彼にぶつける。これがプランB。
丁度彼を呼び出すのにうってつけの依頼もある。真実を知ってもらうにも丁度良いものだ。早速シャーレに依頼の連絡をする。
静かな部屋に電話のコール音のみが木霊する。数コールの後、先生が出る。
<” はい、シャーレの戸狩です ”>
「調月リオよ。お久しぶりね、先生」
<” うん、久しぶり。どうしたの? ”>
「……実はウルフウッドの力を借りたい案件があるの」
<” ウルフウッドを? わかった、ちょっと待って ”>
先生がウルフウッドを呼ぶ声がする。保留をかけないあたりすぐ近くに彼がいるのだろう。聞こえてくる声質も変わり、ハンズフリーの状態にしたことも察する。
<替わったで。なんや、いつも連絡してくるのはヒマリなのに珍しいな? >
「……アリスの件で一緒に行動していただけで私とヒマリはセットでは無いわ。今回はセミナーとして貴方に頼みたいことがあるの」
<センセやなくてワイにか? >
「ええ、それも緊急ではないけれど急ぎの案件よ。廃墟から正体不明の戦力がミレニアムに迫っているの。C&Cと協力してそれの迎撃をして欲しい。詳しい情報はこちらに来てから伝えるわ」
<確かにワイ向きの依頼やな>
「それと、今回の件はできればあなただけに来て欲しい。私がC&Cとまとめて指揮する関係上、指揮系統が複数になることで生じる混乱を避けたいの」
<ワイはかまへんけどセンセはええんか? >
<” ん? 大丈夫だよ、頑張ってねウルフウッド ”>
先生があっさりと承諾する。私の記憶違いでなければ彼は先生の護衛としてシャーレに所属しているはずだが……いいのだろうか? 好都合ではあるものの、それを理由に依頼を渋られた際のパターンを想定していただけに拍子抜けではある。……いや、これ以上疑問に思うのは非合理だ。話を先に進めよう。
「……私の依頼を受けてくれるということでいいわね? 合流場所は後でウルフウッドへ直接連絡するわ。とりあえずミレニアムにまで来てもらえるかしら?」
<” わかったよ ”>
<なんでお前が答えんねん。……チッ、まあええわ。今からそっち向かったる>
「……感謝するわ」
そう一言言って通話を切る。
―—賽を投げた。もう、後戻りはできない。
という訳で始まりました、パヴァーヌ編第二章。
リオがウルフウッドへの対応を悩んでいたシーンがありますが、あれは私の悩みでもありました。
もともとブルアカ原作の戦力だけでどうにかなっているのに、ウルフウッドなんていう最強格がいるせいでいつも敵側にどう振舞わせようか悩むんですよね……
アビドスの時はサオリ・ザ・ダブルファングという追加戦力を出すことでアビドス陣営の誘拐に成功していますが、今回そんな追加戦力出せないし……
はたしてリオの説得はうまくいくでしょうか。
ちなみにリオがアリスをエリドゥに連れて行ったのはエリドゥの装置を使ってアリスの内面=ソフトウェアを破壊しようとしたからだと私は思っています。
アリスを殺害しようとする場合、アリスはヘイローを持っているのに人間ではないので、物理攻撃はもちろん、窒息死や服毒、餓死といった手段が取れないので物理的な殺害が現実的ではなく、そのためアリスをエリドゥの装置につないで中身を破壊しようとしていたのでは?というのが私の考察。
なのでヘイロー貫通できるウルフウッドが味方になればそんな手間いらないので味方に欲しいなぁ、理解もしてくれそうだしなぁ、というのが現状のリオの心境です。