ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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毎回誤字報告してくださる方、本当にありがとうございます。
毎回誤字すんじゃねーよって話なのでホント情けない話なんですが、いつも感謝しています。


03_急変

 ウルフウッドがリオからの依頼でミレニアムに行くことになったので、ついでに私もミレニアムまで送ってもらうことにした。というのも、元々ゲーム開発部から暇ができたらまた来て欲しいと連絡があったことと、なにより私自身もアリスの様子が少し気になっていたからだ。

 ミレニアムの駐車場でウルフウッドと別れ、単身でゲーム開発部へと顔を出す。すると彼女達は喧々諤々していた。

 

 どうも次にどんなゲームを開発するかで揉めているらしい。この前作ったゲームは残念ながら評判が悪かった(プレイできていないので詳しくは知らないが)みたいだけど、めげずに次の開発に意欲を燃やしているようだ。この子達の成長が見られて嬉しく思う。ただ白熱しすぎてモモイとミドリがどっちの意見にするかでゲーム勝負を始めてしまい、若干置いてきぼりを食らっているが。

 

「二人ともゲームで対戦を始めてしまいました。こうなると長いです。アリスは何をしたらいいでしょう? 」

 

 アリスもこの状況に若干悩んでいるようだったが、その解決策を出したのはユズだった。

 

「そうしたらアリスちゃんは新しいアイデアがないかゲームのネタを探しに行ってもらえるかな? 先生と一緒だったら何か特別なインスピレーションを得られるかもしれないからね」

 

” ゲーム開発部長の貫禄を感じる…… ”

 

「え? あ、そ、そ、そんなことは、ないと思いますが……! 」

 

 ユズは謙遜するが、ちゃんと部長として振舞っている姿に私はユズの成長を感じていた。最初に会った時が嘘みたいだ。TSC2を作った経験がちゃんとこの子たちの糧になっていることを嬉しく思う。

 

「なるほど、面白いゲームを作るためのクエストですね! はい、わかりました、ユズ! パンパカパーン! アリスはクエストを受注しました! さあ先生! アリスと一緒に冒険に出ましょう! 」

 

 ユズからクエストを受注したアリスが私を引っ張り部室を後にする。ミレニアムのキャンパスを巡りながらゲームのネタを探すという冒険の書が開かれた。

 

 アリスと一緒にミレニアムを巡ると色々なことがあった。色々な人に声をかけたりかけられたりして、時にはお使いクエストを請け負って報酬にお菓子を貰ったりと、とにかく色々。アリスの素直で朗らかな性格と可愛らしい容姿も相まって、どうやら彼女はミレニアムの人気者になっているようだ。本当に、随分とミレニアムに馴染んでいると思う。ミレニアムを巡っている間、終始アリスは笑顔だった。

 

 冒険はキャンパスだけに留まらない。外にも貪欲にゲームのネタを求めに行く。その途中でゲームセンターに寄るとアリスが教えてくれた。

 

「ネル先輩にエンカウントするとよくここに連れてこられます」

 

“ ネルが? ちょっと意外だね ”

 

「ネル先輩がアリスに格闘ゲームで挑戦してくるんです。しかも負けると連コインしてくるので厄介です」

 

“ そ、そうなんだ……ちなみに戦績は? ”

 

「50戦50勝でアリスの連勝中です。ゲームならネル先輩もただのチビメイド様なので怖くありません」

 

“ 確かにすごいけど……ネルの前ではそんなこと言わないようにね ”

 

「そうなのですか? わかりました」

 

 アリスは本当にわかっているのか曖昧な返事をすると、またしばらく格闘ゲームの台を見つめていた。

 

“ スクールファイター……だっけ? ”

 

「……これは6ですが、2をウルフウッドと対戦したことがあります。アリスが待ちカイル戦法を編み出してからは連勝できましたが、それでも戦歴は11戦5勝6敗でアリスの負け越しです。……また、ウルフウッドともゲームがしたいです」

 

“ ……そっか、負け越しは悔しいもんね。今日は別の用事でウルフウッドはいないけど、今度は彼と一緒に遊びに行くよ ”

 

「そうですか! では先生、リベンジマッチの為の特訓に少し付き合っていただけませんか? 」

 

“ 私が? 別にいいけど……あまり格ゲーは得意じゃないから練習になるかな? ”

 

 それでもとアリスに頼まれスクールファイターで対戦する。コマンドやコンボが分からない私ではやはりアリスの相手にならず、早々にアリスからコンボのやり方を習う始末だ。これでは誰の特訓か分かったものではなかったが、アリスが乗り気で教えてくれていたので水を差すのも嫌だったし、なにより私も久々にゲームで遊べて純粋に楽しかった。

 

“ 今度作るゲームは格闘ゲームでもいいかもね? ”

 

「あ、そうでした……アリスのメインクエストがまだ達成できていません! ……ですが、先生の言うとおり格闘ゲームはまだ作ったことがないので良いかもしれません! 」

 

“ じゃあどんなシステムにしたら面白くなるかだね ”

 

「はい! 先生は初心者の様でしたが、このゲームをやってみて何か思うことがありましたか? ユズがレビューを確認するのは大切と言っていました」

 

“ そうだなぁ…… ”

 

 互いに意見を出したりしながらゲーム開発部の部室への帰路に着く。部室に到着したころにはある程度ゲームの案がまとまり、アリスがそれをみんなに提案していた。まあ結局のところ企画会議という名の火に油を注ぐ結果となってしまい、その日のうちにどんなゲームを作るかは決まらなかったが……。

 ただ私個人としては生徒達の成長がうかがえて良い日だったと思う。

 

 

――だからウルフウッドからの報告は、まさしく寝耳に水だった。

 

 

“ 今の話は本当なの……? ”

 

「『無名の司祭』やら『名もなき神の王女』やら、言っとることの半分も理解できへんかったけどな。ただリオが嘘ついとる感じは無かったで。実際、アリスが見つかった廃墟からヘンテコなもんが沸いてきてミレニアムに集まろうとしとるのは確かやしな」

 

“ アリスが世界を滅ぼす兵器…… ”

 

「流石にそれは盛り過ぎやと思うけどな。ただ厄ネタなのは確かや。で、どないするつもりや?」

 

 ウルフウッドがいつもの様に聞いてくる。

 大人として、先生として、お前はどんな選択をするのかと。

 なあなあにして選ばないのは許さないぞと。いつものように突きつけてくる。

 

――本当に君は手厳しいなぁ。まぁ、そんな君だから信頼しているんだけど。

 

“ ……前に言った通りだよ。アリスが本当に兵器だとしても、あの子自身はきっとそれを望まない。アリスの未来を見限るのは無しだ。無論、他の子供達の未来も ”

 

「……毎度思うが、よう恥ずかしげもなくそないな事言えるな」

 

“ 恥じるところは無いからね ”

 

「ほー、恥じるところは無いか? そないな言葉は自分でケツ拭けるようになってからぬかして欲しいんやけどなー」

 

“ 君の仕事の範疇でしょー、給料出てるんだから働きなさいよ ”

 

「言うやんけ」

 

“ そりゃ言うさ ”

 

 くしゃりと笑う。正直笑えない状況だけど、笑うことができる。ウルフウッドという頼れる友達がいてくれることで、諦めないでいられる。

 

 “……まずはリオと情報を共有しよう。誰かさんがちゃんと話を聞いてくれてなかったし ”

 

「あれはリオが悪いわ。あいつ説明下手くそすぎやっちうねん。あれや、解説役にヒマリも呼びつけたれ」

 

“ 確かにヒマリも一緒に調べたから詳しいはずだしね、彼女にも連絡しておくよ ”

 

 まずはリオに連絡してアポイントを取る。私から連絡が来ることを予想していたのか、リオは明日会える時間を空けてくれていた。

 ただその際にヒマリも呼びたい旨を伝えると、彼女には別の対応をして貰っているため来ることができないとリオから伝えられる。

 一応ヒマリにもリオと会ってアリスのことについて話す事をモモトークで送るが、いつもならすぐつく既読も付かないあたり、本当に忙しそうだ。

 

“ ……ヒマリは無理だったけど、リオと会う約束はしたよ。とりあえず目下の目標はウルフウッドの言っていた機械の工場を見つけることかな。後はミレニアムの防衛体制をどうするかも話そう ”

 

「……このことアリスには伝えるか? 」

 

“ それは…… ”

 

 ウルフウッドから聞かれる。確かに悩むところだ。アリスは当事者だし知っておくべきことなのかもしれない。しかし自分が兵器だなんて知ったって困惑するだけな気がする。

 

“ ……やめておこう。今伝えたところで不安にさせてしまうだけだろうし ”

 

「……せやな。変に前こられても危なっかしいだけやし、それが妥当か」

 

“ うん。伝えるとしてもリオと相談して体制を整えたりしてから……大丈夫だよって言ってあげれるようにしてからのほうが良いと思う ”

 

 今思うと、この判断は誤りだったのかもしれない。もしちゃんとアリスに事情を話せていたら、あの事態は回避できていたのかもと思うと後悔が収まらない。

 

◇ ◇ ◇

 

 次の日、リオと会ってアリスについての説明を聞く。確かに色々な用語が多くて理解が難しく、ウルフウッドを責められない内容だった。私も他の人に説明できるかと問われたら自信がない。

 

 ただ現状の脅威は『不可解な軍隊(Divi:Sion)』という妙な機械であるのは確かなようで、その敵の本拠地の捜索と防衛ラインの構築、シャーレはそれの応援ということで話が纏まった。

 

 そしてリオと別れ、ヴェリタスの部室に向かっている最中だった。

 

 マキから「不思議な機械を見つけたから来て欲しい」と連絡があり、それを確かめに行くところだった。思えばこれも兆候だったのだ。少し勘を働かせていれば、事前に画像でも送ってもらっていれば、あるいは……。

 

 突如として爆発音が聞こえる。煙が上がっているのは……目的のヴェリタスの部室がある辺りだった。猛烈に嫌な予感が走り、ウルフウッドと共にそこへと駆け出す。そして目に入った光景に驚きを隠せなかった。

 

“ あの機械は、確か……『不可解な軍隊(Divi:Sion)』……? ……それにアリス!? ”

 

 明らかにいつもと様子の違うアリスが……まるで『不可解な軍隊(Divi:Sion)』に指示しているかのような振舞いで、そこにいた。

 

“ ……ッ!! ウルフウッド!! ”

 

「言わんでもわかるわ! 」

 

 ウルフウッドが瞬時に『不可解な軍隊(Divi:Sion)』を破壊する。そんな彼にアリスがスーパーノヴァをためらい無く向けた。

 

「……プロトコル実行の妨害を確認、武装のリロード開始」

 

「お前ホントにアリスか? それは悪手や教えたやんけ」

 

 いつぞやの訓練の時と同じようにウルフウッドがアリスのスーパーノヴァをパニッシャーで弾く。

 

「歯ぁ食いしばっとけよ」

 

 そしてそのままパニッシャーの短辺部でアリスを殴った。アリスは地面を数度バウンドしながら転がり、起き上がってくる様子は無い。

 

“ アリス!? ”

 

「落ち着けやセンセ、気絶させただけや。それよりまず状況確認せな」

 

 ウルフウッドに言われ、はっとしながらも周囲を確認する。ヴェリタスの部室は倒壊してしまっていたが、マキ、コタマ、ハレは無事なようだ。

 

“ みんな大丈夫!? ヒマリやチヒロは!? ”

 

 マキが答える。

 

「あたしらは無事。部長も副部長も不在だったから大丈夫。ただ……」

 

「お姉ちゃんッ!! 」

 

 瓦礫の向こう側から悲痛な叫びが聞こえる。この声は……ミドリの声だ。そうだ、アリスがいたんだ。なぜ想像できていなかった。

 鼓動が早まる。ミドリの声がした方へ走る。なにもないで欲しいと祈りながら。……しかし、その祈りは届かなかった。

 

「せっ、先生!? お姉ちゃんが……お姉ちゃんがっ!! 」

 

 ミドリが私に駆け寄ってくる。そして、彼女が指差すその先には、頭から血を流しその場に倒れているモモイの姿があった。




次話が重いというかエネルギーを使う話なので今回は短め。

ブルアカ原作と違いすでに先生たちは不可解な軍隊を知っているので、モモイの怪我イベントを起こすには先生達がヴェリタスの部室に行くのが遅れる必要がありました。でないとウルフウッドがすぐ機械破壊してイベント起きないので。
リオとの打ち合わせを優先した結果生じてしまった出来事です。

ちなみにリオも想定していなかったガチの事故。
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