ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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11_エピローグ

 

 アリスを巡るリオとの騒動からしばらくして、先生達はリオから緊急の依頼がかかり彼女の元へと訪れていた。

 

“こんにちは、リオ。……頬の腫れ引いたんだね。良かった”

 

「ええ、まあ。……腫れてる間、会う人会う人に聞かれて大変だったわ」

 

「それぐらいはしゃあないやろ。むしろそれで済ましてくれたネルに感謝するんやな。あれのお陰であの後もスムーズに回ったわけやし」

 

 先生達の言うリオの頬の腫れとは、ネルに殴られた痕のことだった。

 

 

 先生達がアリスを救出した後、C&Cと合流した際にリオは「けじめ」と称してネルから殴られていたのだ。それも気絶しない程度に手加減されてはいるがメチャクチャ痛いのを一発。ネルはそれで自身に対するリオの所業への手打ちとしてくれていた。

 

 そしてそのネルの拳によりリオは左頬を真っ赤に腫らし、食らった直後は生まれたての小鹿のように足もガクガクさせていたのだが、その痛々しい姿は他のメンバーの溜飲も下げる結果となりミレニアムに戻ってから直接頭を下げたユウカ達には心配され、チヒロ達からも「いや、もういいよ。それよりも医務室行ったら?」なんて言われる始末だった。

 そういう意味ではウルフウッドが言っていた通り、ネルの手打ちのお陰で他のメンバーへの謝罪がスムーズにいった面は確かに存在していたのだった。

 

 ちなみにそんなリオの姿がツボに入っていたヒマリはいいぞもっとやれと暗にほのめかす様に、ネルに「たった一発でいいんですか? あなたが負った傷に釣り合いがとれているとは思えませんが?」と尋ねていたが、ネルは「この怪我はあたしの力不足の結果だ、リオは関係ねえよ。嘘ついた分としてならさっきので十分だろ」と突っぱねていた。

 

 実際のところネルはネルでウルフウッドとの戦闘で左腕骨折に全身打撲、裂傷多数といった有り様で立っていられるのも不思議な状態であり、ヒマリの言うとおりその傷を鑑みればもう数発殴ったところでリオ含めて誰も文句はないだろうが、ネルはそれは違うと考えていたのだ。

 あくまでウルフウッドとの戦闘で負けたのは自分の力不足であり、だからこそ怪我に関してはリオは関係無い。許せなかったのはあくまでウルフウッドがアリスを殺そうとしていると嘘をついて依頼を出したことだ。

 今まで気に食わない任務は多々あったが、任務に対して一部情報が伏せられていたことはあっても嘘をつかれたことはなかった。しかし今回は嘘を、それも誰かが誰かを殺すという悪質なものをつかれた。その信頼関係を壊す行為がネルとしてはどうしても気に入らなかった。

 

 だからネルはリオを殴り、その理由なら一発で十分だとしていたのだ。

 

 なおエリドゥに駆けつけた時のネルは医務室から脱走して来ていたらしく、ミレニアムに戻ってから彼女はすぐさま医務室にブチこまれ現在入院中である。

 

 

 閑話休題

 

 

「ごめんなさい、今は緊急事態だからその話はまた今度。現場に向かいながら要件を話すわ」

 

 リオに連れられミレニアムの地下へと向かっていく先生とウルフウッド。

 

「先生達は『デカグラマトン』を覚えているかしら? 」

 

” 覚えているよ ”

 

「黒服が言っとったあのでかい蛇やろ?」

 

” ウルフウッド、その蛇はデカグラマトン自体じゃなくて、確か三番目の預言者『ビナー』だよ ”

 

「分かったって。で、リオ。それがどないしたん?」

 

 先生達は以前、久々に再会した黒服からデカグラマトンとビナーについての情報がもたらされ、アビドス砂漠に出現したビナーをアビドスの生徒たちと共に撃退したことがあった。

 ビナーは蛇と鯨が混ざったような巨大な構造体で地中を移動し口からビームを吐き出したりと驚異的な能力を持つ相手であったが、途中でウルフウッドのヘイロー貫通能力が通用することが分かり頭の角をへし折るところまで追いつめたものの逃がしてしまった相手である。

 そしてそのビナーをビナーたる存在へと変質させたのがデカグラマトンと呼ばれるものだった。黒服からもたらされた情報によれば『神を研究し、その存在を証明できれば、その構造を分析し、再現できるであろう。すなわち、これは、新たな神を作り出す方法である』という馬鹿げた仮設を元に作られた、対・絶対者自立型分析システム。『神性を探し出す人工知能』、それがデカグラマトンという存在だ。

 

「……貴方達が遭遇したそれらについてこちらでも捜査を進めていたのだけれど、終ぞなんの情報も得ることができなかったわ。……ついさっきまでは」

 

 デカグラマトンとその預言者、それとの接触報告があったのはシャーレからだけであった。リオ達はアリスのことを調べていく上でその報告書にたどり着きそれについても調査を進めていたのだが、デカグラマトンについての情報を得ることはできなかったのだ。リオの言う通り、ついさっきまでは――

 

「先ほど、ミレニアムの通信AI『ハブ』が正体不明のAI……恐らくデカグラマトンにハッキングされたわ。いえ、ヒマリの言葉を借りるなら『感化』されたというべきなのかしら。そして『ハブ』は第八の預言者『ホド』を名乗りミレニアムに対しての侵略を開始し始めたの。電子上の侵略に対しては今セミナーとヴェリタスの総力を上げてなんとか食い止めてはいるけれど……『ハブ』は元々通信ケーブル補修用のAI、その真価は物理的な工事能力にある。インベイトピラーを建ててミレニアムを侵食してきているわ」

 

 リオの説明を聞いて先生は冷や汗を流す。

 

” それって、大分不味いんじゃない? ”

 

「ええ、非常に危険な状態よ。このままではミレニアムがホドの支配下に置かれてしまうと言っても過言ではないわ。それどころか閉鎖したエリドゥまで掌握されたら……」

 

「おい待て、まさかまたキヴォトスが滅ぶとか言わへんやろな?」

 

「その通りよ、キヴォトス全土を揺るがす未曾有の災禍に発展するかもしれないわ」

 

 頭を抱えるウルフウッド。

 

「なんで……なんでお前の案件はいつも世界の滅亡とかに肉薄してくんねん!! どんだけ厄ネタ抱えとるんやお前は!?」

 

「ご、ごめんなさい……でもネルも入院中でアビ・エシュフも性能を発揮できない今、頼れるのが貴方達しかいなくて……」

 

“ まあ確かに……大丈夫だよ、リオ。頼ってくれてありがとう ”

 

「はぁ、もうええわ。やるしかないんやろ、やるしか」

 

 施設の奥、ホドがいる手前まで来ると、ネル以外のC&Cがすでに揃っており先生達を出迎える。

 

「あはっ、ご主人様にウルフウッドさんじゃん! やっほ〜!」

 

「ご主人様、私たちC&Cも協力します。エリドゥの時とは違い、今度こそ活躍して見せますわ」

 

「リーダーが不在だからウルフウッドさんがいてくれると心強い」

 

「先輩方とは初の共同作戦ですが問題はありません。ご指示を」

 

「揃っとるみたいやし、ほないこか。ワイはネルと違ってチーム戦は苦手や。指揮は頼むでセンセ」

 

“ 任せてよ。それじゃあ手始めにみんなで世界を救おうか ”

 




 というわけでパヴァーヌ編のエピローグ兼、デカグラマトン編のプローログ的なやつでした。といってもデカグラマトン編はぶっちゃけ書きません。
 まだ原作もデカグラマトン編完結してないし、ウルフウッドの物語として書きたい内容ではないので。

 とりあえずリオは家出せず、誰かに頼ったりすることも覚えてきたよというお話。
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