ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

6 / 88
06_対策委員会の始まり

きっかけはシロコから発せられた一言だった。

 

「わたしも借金返すために何かしたい」

 

 アビドスに保護され入学も決まったシロコであったが正式な入学は来年度からであり、まだ正式にアビドスの高校生という立ち位置ではなかった。そのためユメやノノミと遊んだり、ホシノやウルフウッドに訓練を付けてもらっていたりはしていたものの、アビドス生徒としての活動はしていなかったのだ。

 

「うへ~、シロコちゃんえらいね~お姉さんうれしいよー。でも今の立場だとバイトもできないし……どうしようかなぁ……」

 

 シロコは現状まだなんの学籍もない状態である。そのため仕事があっても受けられる資格が無かった。

 

「せめてうちと何か繋がりがあれば……でも正式に入学してない子を生徒会に入れることもできないし……」

 

「あ、そうだ! ホシノちゃん! 生徒会が駄目ならシロコちゃんが入れる委員会をつくっちゃえばいいんじゃないかな?」

 

「……ああ、確かに外部生も参加できるように制定すれば……いけますね。ちょうどそこに何の役職にもついてない奴もいますし」

 

 ホシノは生徒会室のパイプ椅子でコーヒー片手にくつろいでるウルフウッドを見る。

 

「……ワイになにやらそうっちうねん? 」

 

「別に、これから作る委員会の会長になってもらってもらうだけだよ。ついでにたまにでいいからさ、シロコちゃんを仕事に連れて行ってあげてよ」

 

「ん! ニコ兄とお仕事!!」

 

「シロコをかぁ? う~ん、ワイらがしごいとるだけあってそこそこやれるけどなぁ……」

 

「ん、私は役に立つ」

 

「ほら、シロコちゃんも乗り気だしさぁ」

 

「まあ、考えとくわ。んで、なんちう委員会やねん? 賞金稼ぎ委員会か?」

 

「ニコラス君、それはちょっと直接的すぎるっていうか……もうちょっと、こう、ないかな?」

 

「はい!」

 

 最近ほぼ毎日遊びに来ているノノミが手を上げる。

 

「アビドス廃校対策委員会というのはどうでしょう? ……それで、できたら私も参加させていただけませんか?」

 

「うへ~、いい名前だねぇ。それにノノミちゃんなら歓迎だよぉ。ニコラス会長、二人のこと面倒見てあげてね」

 

「勝手に歓迎してワイに投げるなっちうねん……まあええけど」

 

「あれ、意外。もっと嫌がるかと思ってた」

 

「人が嫌がることを振るなや……一応こないでも子守の経験あんねん」

 

「ん、私はそんなに子供じゃない!」

 

「わたしもです!」

 

「五年早いわジャリども。まあええ。今狙っとるナヨナヨヘルメット団ならちょうどええやろ。こんど遠足連れてったる」

 

「二人とも、ケガだけは気を付けるんだよ。ニコラスはケガしてもいいから二人を守ってね」

 

「ほんまこいつ……」

 

 ユメは目の前の喧噪を微笑みながら眺めていた。もうしばらくしたら、自分は卒業していなくなってしまう。少し前まではそれが不安だった。ホシノを一人にしてしまうから。でも今は違う。ホシノには頼れる同級生とカワイイ後輩がいる。こんなにも希望がある。

 

 ホシノちゃんが生徒会に入ってくれて、それだけでも奇跡だったのに、本当に今の光景は夢みたい。ここを去らなければいけないのはとても寂しいけれど、こんなにも希望をもって卒業できる私は本当に幸せ者だ。みんなも幸せでいてくれたらいいな。

 

 ユメはそんな願いを胸に、アビドス廃校対策委員会の申請届に印を押した。

 

◇ ◇ ◇

 

「ひい、ふう、みい……ええ額やな。やったで二人とも」

 

 ヴァルキューレにナヨナヨヘルメット団の一団を引き渡し、振り込まれた額を確認する。大物はいなかったが数が多かったためそれなりの額になっていた。この手の相手の場合はシロコとノノミがいた方が楽かもしれない。そんなことを思いつつ二人の頭を撫でる。

 

「はい、頑張りました!」

 

「ね、ニコ兄、役に立ったでしょ」

 

「まーな。ただ、調子乗ったらあかんで。二人ともちょい危ない場面あったやろ」

 

 今回はウルフウッドがナヨナヨヘルメット団のアジトに襲撃を仕掛け、そこから零れた団員を二人が捕えるという仕事の振り分けであった。早々にアジトを壊滅させたウルフウッドが二人の様子を見に行くと逃げ出した団員をうまく迎撃していたものの、リロードの時などに敵の接近を許してしまい苦戦していた二人の姿があった。それでもストックで殴るなどしてなんとかさばいていたのでウルフウッドは静観を決めていたが。

 

「あれやな、サブでハンドガンぐらい持っとった方がええで。二人とも獲物が長物やしなぁ」

 

 流石にパニッシャーほどではないがシロコはアサルトライフル、ノノミに至ってはミニガンという比較的大型の銃器を扱っているため閉所や近接戦ではどうしても取り回しが悪くなってしまう。その弱点がモロに出るパニッシャーを扱っているウルフウッドはそれを補うためにハンドガンも愛用していた。それ故のアドバイスである。

 

「せや、初仕事達成祝いかねてお前らのハンドガン買いに行こか。金も入ったしな」

 

「やった。ニコ兄、ありがと」

 

「ええ、そんな悪いですよ……」

 

「気にせんでええでノノミ。お守りみたいなもんや」

 

「ん、それにこれは私たちの達成記念だから、ノノミと一緒がいい」

 

「シロコちゃん……分かりました、じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいますね☆」

 

 三人は並んでガンショップへと歩みを進めて行く。

 

「ふふ、楽しみですね~。銃の名前なんにしましょう」

 

「私はもう決めてるよ。『LITTLE FANG』にする。それで『WHITE FANG』と一緒に装備して――」

 

「ダブルファングっちうならやめてくれへんか。ワイ的にそれ縁起悪いねん。特にシロコにやられるとホンマな……」

 

「えと……そうなの? ニコ兄がそう言うならやめる。『WHITE CLAW』なら大丈夫?」

 

「ファングじゃなければええよ」

 

「ニコラスさん、一体なにがあったんですか……?」

 

 そんな雑談を交えつつ、ハンドガンの購入は無事完了した。

 

◇ ◇ ◇

 

「お帰りニコラス。仕事うまくいったんだって? 引率お疲れ様」

 

 遠足から戻り屋上で一服しているウルフウッドへホシノが声をかける。ウルフウッドは吸っていた煙草を灰皿へ押しつけ、口に含めるものを棒付きのアメに切り替えた。

 

「ホンマやで。まあ二人とも筋ええし、誰かさんとちごうて素直やから思うたより楽やったけどな」

 

「そうやって誰かさんが余計な一言を言わなければ、私ももうちょっと素直になれるんだけどねぇ~」

 

 皮肉を言いつつホシノはウルフウッドに向けて手を差し出す。

 

「……なんやねんこの手は? アメちゃんでも欲しいんか?」

 

「いやそうじゃなくってさ~、私には何かないのかなって。シロコちゃんたちにハンドガンプレゼントしてあげたんでしょ? さっき下で自慢されちゃってさぁ、お姉さんにもなにかないかなぁ~って」

 

「あんなぁ、あれは記念やし必要やったから買うてやったんやで。大体おどれは自前のハンドガンあるやろ」

 

「うへへ~、わかってるよぉ。冗談だって――」

 

 そう言いつつホシノは手を引っ込めようとするが、意外な一言でそれが止められる。

 

「しゃあないからこれやるわ」

 

「うへ!?」

 

 予想外の返答に固まっているホシノの手のひらに木彫りの鳥が添えられる。それはいかにも手彫りで、紐も通してあり簡素なネックレスになっているものだった。

 

「えと、これは?」

 

「お守りや、お守り。暇つぶしにワイが彫ってん。どや、なかなか上手やろ?」

 

「ニコラスの手作り……う、うへぇ、ありがと。……い、意外な特技があるんだね」

 

「ホンマなら有料なんやで。大事にしいや」

 

「……うん、そうするよ」

 

「なんや、妙に素直やな。調子悪いんか?」

 

「だから一言余計なんだってさぁ~」

 

 ホシノはそんなことを言いつつ、お守りを首にかけ服の内側へと大切そうに仕舞った。

 




アメはスタンピート版からの輸入要素。
ユメとホシノに色々言われて生徒の前だとアメに切り替えることにしたニコラス君。

1/24 誤字修正
報告ありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。