ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

65 / 88
04_本当の意味

「ヒナタのおかげで説教やることになってもうたわ。ちう訳でお前らには練習付き合ってもらうで」

 

「まあ、それは良かったです! もちろん協力させていただきますね!」

 

 ワイの皮肉にヒナタはニッコニコの笑顔で答えてくれた。あかん、これ分かってへん顔や。心の中でため息をつく。

 

 にしても葬儀やったら今まで数えきれんほどやってきたが、説教頼まれたんはホンマ初めてやな。故郷では説教聞きたい奴はちゃんとした教会に通ってちゃんとした牧師や神父の言葉を聞くもんやったし、流れの牧師に頼まれることなんてない。それに、そもそも聖書の有無以前に人殺しのワイにこないなこと語る資格は無い思うとった。

 それでも「お互い未熟であるからこそ主の教えについて語り合うべき 」なんて言われてしもうたらやるしかない。えらい殺し文句やで、あれは。流石はシスターフッドのトップやいうべきか。

 

 サクラコはあの後「パスターニコラスの解釈を聞かせていただきたいのです。ですから先ほどあなたが私に言ってくれたように『肩肘張らずに』で構いませんよ」なんて言ってくれたが、とはいえ流石にぶっつけ本番は無理や。最低限の体裁を保つためにも練習はいるなと思ってヒナタとメリィに練習相手をお願いした。ヒナタはまあ予想通り引き受けてくれたが意外だったのがメリィの反応やった。

 

「はい……私も協力します」

 

 適当な理由付けて断られてもおかしないと思うとったが、おずおずとしながらも引き受けてくれた。どうもメリィ自身、ワイとの今の状態を改善したいと思うて歩み寄ろうとしてくれとるみたいに見える。ホンマありがたいことやで。

 

 そんなこんなで荷物の仕分けの仕事が終わった放課後、ワイら三人しかいなくなった聖堂の講壇に上がらしてもろうて、徹夜して書き上げた原稿を広げる。こないな経験ないから流石に緊張してまうな。復学支援部立ち上げの際にセンセが教壇に立ってテンション上げとったが、今はそのメンタルを少し尊敬してまう。やっぱセンセは先生なんやな。

 軽く呼吸を整え原稿を読み上げる。

 

――今回、縁があって説教をやらせてもらうことになったニコラス・D・ウルフウッドや。よろしゅうな。説教いうても今回のは聖書を一から読み上げるものやないし、そもそも語る内容はワイの故郷の聖書、つまりは宗派違いの内容や。せやから肩肘張らんと気軽ぅに聞いてくれてええ。そもそも故郷の聖書が手元に無くて内容も覚えてるところの抜粋でしかないしな。

 で、今回話す内容は『コヘレトの言葉』っちうもんや。コヘレトっちうんはどこかのエライ王様でな。めっちゃ国を繁栄させてありとあらゆるものを手にした人物らしい。でもな、そないな中で悟るんや。どんな凄いことしてもいずれ忘れ去られる。賢い人間も愚かな人間も最後に待っとるのは等しく死や。賢い人間の労苦から受ける恩恵は労苦しなかった人間にも与えられ、知恵はいくらつけても悩みが深まる一方。世の中は理不尽に溢れとって、それによってもたらされる運命はどんなに賢くなってもワイら人間には理解することはできへん。

 せやからコヘレトは言った。vanitas vanitatum et omnia vanitas (空の空 一切は空である)

 

 その言葉を聞いた瞬間、メリィがビクリと反応する。なんや? 様子がおかしい。隣に座っとるヒナタもメリィの顔を覗き込んでいる。

 

「おいメリィ、大丈夫か?」

 

「メリィさんひどい脂汗ですよ!? 保健室に――」

 

「大丈夫です! ……大丈夫、ですから……ですから、お願いですニコラスさん……続きを、聞かせてください……」

 

 明らかに大丈夫そうには見えへんが、続きを訴えかけるメリィの目になにやら必死さを感じさせられた。せやから一呼吸置いて原稿に目を戻す。

 

「……わかった、続き話すで」

 

―― vanitas vanitatum et omnia vanitas

 要は、全ては虚しいということや。主の作られたこの世界に対して、ワイら人間はどこまでいってもちっぽけな存在やからな。でもな、だからといってコヘレトは生きることを絶望しとったわけやあらへん。せやからこうも述べとる。

――見よ、私が幸せと見るのは、神から与えられた短い人生の日々、心地よく食べて飲み、また太陽の下でなされるすべての労苦に幸せを見出すことである。それこそが人の受ける分である。神は、富や宝を与えた全ての人に、そこから食べ、その受ける分を手にし、その労苦を楽しむよう力を与える。これこそが神の賜物である。人の人生は日々をあまり思い返す必要はない。神がその心に喜びをもって応えてくれる。――

 つまり全ては虚しい、全ては束の間である、()()()()()()()()()()()()()と語っとるんや。神様が与えてくださった食事を楽しみ、その労苦の結果を楽しめ。そうやって神様はワイらに喜びを与えてくださる。運命っちう神様の領域を呪ってもしゃあないし、人間の短い生で得られる喜びはそれやっちうことやな。……辛い人生の中にも喜びはちゃんと存在するし、どんなにつらい過去があっても幸せ見つけてわろうてええねん。今を懸命に生きる事、それがそれが大切やっちうことや。

 

 ここまで語った時点でメリィが震えた足で立ち上がる。動悸を起こしていて苦しそうな様子で、目に涙を溜めながらワイに訴えかけてきた。

 

「ニコラスさん……私は、その言葉の意味を、こう教わってきました。……全ては虚しい、だから幸せも、希望も、全ては無価値だと……それが真理だから、それらを持ってはいけないと………それは……嘘なんですか……!? デタラメなんですか!?」

 

「はぁ? 当たり前やろ、誰やそないなパチ教えたアホウは? ()()()()や。これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()やで」

 

 メリィがその体の震えを強める。

 

「…………お姉ちゃんの言ってたことは…本当だったんだ……それが、本当の……………あ、あ、あ…ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァ~ッ!!」

 

「おいメリィ!?」

 

「メリィさん!?」

 

 メリィが突如として泣き崩れ、ワイは駆け寄った。アカン、ワイの話の何かがメリィのトラウマを刺激してもうたみたいや。過呼吸を起こしてしまいそうな勢いで泣きじゃくっとる。

 

「おね゛えちゃん、おねえちゃん……ッ」

 

「大丈夫、大丈夫ですよ、メリィさん……大丈夫です」

 

 そんなメリィを引き寄せ、流れる涙や鼻水も気にせずヒナタが抱擁した。ワイにはしてやれへんそのやり方で、徐々にではあるがメリィは落ち着きを取り戻しているように見える。

 多分、入学当初にパニック症状起こしてもうた時もそうしてやったんやろなっちうのが垣間見える光景やった。

 

 十数分してやっとの事、メリィは会話できる程度には落ち着いてくれた。

 

「……すみません、でした……急に取り乱したりして……」

 

「ええって。ワイの話がなんか悪かったんやろ?」

 

「いえ、続きを頼んだのは私ですから……本当にすみません」

 

 お前の過去に何があったんや? お姉ちゃんてなんや? その言葉を飲み込む。

 

「……聞かないんですか?」

 

「……シスターサクラコとの約束や。お前から話してくれるまで無理に聞いたりせんでくれ言われとる。ワイかて人にいいとおないことがある人間やしな、その気持ちは理解できるし無理に聞く趣味もあらへん」

 

「……」

 

 メリィは再びだんまりして体を震わせていた。その震える手をヒナタがやさしく握ると、メリィは何か決心した表情でワイに視線を合わせる。

 

「ニコラスさん。私の過去に何があったか、聞いてもらえますか。……いえ、聞いてください。……もっと早くに話すべきでした。…………あなたの師、マスター・チャペルも関係していることです」

 

「ッ!? ……ゆっくり、お前のペースで喋ったらええで」

 

 放った言葉とは裏腹に焦る気持ちをなんとか抑えつつ、ワイはメリィの話に耳を傾けた。

 

◇ ◇ ◇

 

 私には一つ上のリリィという名の姉がいた。残飯の中から食べれるものを見つけられたとき、ゴミ箱の中からまだ着れる服を見つけた時、そうした些細な良いことがあった際に「ついてるね」なんて言葉にする随分と前向きな性格をしている姉だった。

 凍えるような寒い夜に身を寄せ合った時「私にはメリィがいてくれて本当についてるね。暖かいよ、ありがとう」なんて言ってくれる、そんな優しい姉だった。

 

 私たちの住んでいるアリウス自治区は限られた物資を巡って紛争が起きてるろくでもない自治区で、私達みたいな子供たちはありふれている場所だった。

 だがある時状況が変わった。ベアトリーチェという大人がアリウス分校の生徒会長に就き、アリウスを掌握したのだ。そして私達はアリウス分校の生徒となり、ベアトリーチェの『教育』を受けることになった。

 

――それが『vanitas vanitatum et omnia vanitas』

 

 全ては虚しく、無価値である。それが世界の真実であり、幸せや希望を持つことは教義に反する悪であると。

 当時、アリウスの生徒になったばかりの姉はその教えに反発していたらしい。それによる『指導』を受け、体中を痣だらけにした姉は私に「マダムに逆らうな」と言った。

 そのころから姉の優しい笑みを見かけることがなくなった。

 

 マダムは私達にこうも教えた。この苦しみに自分たちを追いやったのはトリニティとゲヘナである。その二校を許すな。――憎め、憎め、憎め、憎め、

 

「――殺し方は私が教えてやろう」

 

 私の代の戦闘訓練が開始されるのと同時期に、新しい指導教官がアリウスに着任した。

 それが、マスター・チャペルという人物だった。

 

 ……この人も恐ろしい人だった。

 私たちの代はマスター・チャペルの選抜試験を受けさせられ、血反吐を吐くようなシゴキを受けさせられた。

 でも本当に恐ろしかったのはそれじゃない。それで選抜された四人の同期がマスター・チャペルへ召し上げられ、彼女たちを再び目にしたその時だ。四人は人格を失くし、マスター・チャペルの命令だけを聞く機械人形へと豹変していた。『チャペル儀仗隊』と呼ばれる存在に作り替えられてしまっていたのだ。

 これに恐怖しない方が無理だった。私たちはこの人に逆らえないのだと理解させられた。

 

「すべては虚しいのだろう? きさまらの『()』に価値は無い。『報復』のための機能こそがきさまらの存在の全てと知れ」

 

 マスター・チャペルは私達にそう言い聞かせた。そして、その『報復』の先にトリニティとゲヘナに加え、ある人物が付け加えられていた。

 

「きさまらの兄弟子、ニコラス・D・ウルフウッド。奴は必ず報復の邪魔をするだろう。故にその男は敵だ」

 

 だから憎め。敵を憎め。トリニティを、ゲヘナを、ニコラスを憎め。自分たちを空っぽにしたのはそいつらだ。無価値にしたのはそいつらだ。報復するのだ。殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、

 

 毎日のように繰り返されるその『教育』に染まり、私たちはマダムとマスターの求める『使命を完遂するための機能』となった。

 

――そんな日々のある日、ミレニアムから特殊合金を盗んでくる遠征任務を終えてからいくばくか経ってから、姉が人目のつかない所へ私を呼び出し言った。

 

「ここから逃げよう、メリィ。あの大人たちが言っていることは全部嘘だったのよ。『vanitas vanitatum et omnia vanitas』の教えの中身もデタラメなの」

 

「急に何言い出すの、お姉ちゃん!? ……誰かに聞かれたら大変だよっ

 

「いいから聞いて。……この前の遠征の時、本当の意味が書かれてる書物を見つけたの。内容も難しかったし、ここに持ってこれなかったから詳しいことは分からないけど……でも、マダムが言ってることはデタラメだったっていうのは分かった。……きっとマスターの言ってることもデタラメなのよ。私たちはあの二人に騙されてるの。ここに居続けたらこれからもずっと騙され続けることになる。だから逃げよう、二人で」

 

「だからって何!? 仮にお姉ちゃんが言ってることが本当だとして、どこに逃げるの!? マダムが言ってたじゃない、『私達人殺しに、ここ以外の居場所は無い』って!!」

 

「それがもう矛盾してのよ。じゃあ私達の兄弟子、ニコラス・D・ウルフウッドはどこにいるの? あの遠征任務で、見たことのない景色をいっぱい見たでしょ? ……きっと世界はもっと広くて、私たちの居場所もここ以外にきっとあるのよ」

 

「……だとして、どうするの? 外には伝手も何もないんだよ?」

 

「……ニコラスさんを探しましょう。もしかしたら力になってくれるかもしれない」

 

「ニコラスは私達の敵だって教えられてるじゃない!?」

 

「きっとそれも嘘なのよ。『私達の報復を邪魔する』って言われているけど、そもそも『私達の報復』ってなに?」

 

「それは、トリニティとゲヘナが……」

 

「その二校のこと私達全然知らないじゃない! 私達を追いやった? 私達を苦しめた? どっちもマダムとマスターが私達に強いてることじゃないの!? ……もう、うんざりなのよ……貧しくても、メリィと一緒に路地を巡ってたあの時の方が私は幸せだった。あのころに戻りたい……メリィがそばにいてくれれば、私はそれでいいの。幸せなの。……だから、二人で逃げましょう」

 

 その姉の言葉に、私は逆らうことができなかった。きっと心の奥底で、同じことを思っていたからだ。

 私達は手を取り、アリウスの外へと駆け出した。まだ遠征任務の時に使えたルートは残っているはず。――外に出ることができる。大人たちに禁じられていた希望が私たちの胸に湧き上がっていた。

 

――でも結局、それも虚しいことなのだと分からされた。

 

「……想定よりも遅かったな。まあ出来損ないならその程度か」

 

 一番目立たないはずの用水路に沿った抜け道のその奥に、マスター・チャペルとチャペル儀仗隊が待ち構えていた。チャペル儀仗隊はその手に見慣れない巨大な十字架を携えている。

 

「これはパニッシャーといって、貴様らが運んでくれた特殊合金から作られたものだ。最強にして最高の個人兵装だよ。これに『ヘイロー貫通弾』を装填すればどうなるか……光栄に思え、その見せしめにお前たちを使()()()()()

 

 マスターチャペルの合図と共にチャペル儀仗隊が一斉に十字架を構える。その十字架が半分に割れ、機関砲が姿を現した。

 

――これから私は死ぬ。そう直感的に理解した、その時だった。

 

「この道でついてたね」

 

 ドンッ、と私は姉の手で用水路へと突き飛ばされていた。用水路に落ちるまでに私の目に映ったのは、久々に見た姉の笑顔と、その笑顔が真っ赤に爆ぜた瞬間だった。

 

◇ ◇ ◇

 

「……その後のことはよく覚えていません。半ば溺れながら道の先に流れ着いて、訳も分からず逃げまどって倒れていたところをサクラコ様に保護されました」

 

「……そか。よう話してくれたな。お前もワイの後輩やったんやな。……ほれ、口の中苦いやろ、アメちゃんやるわ」

 

 懐から棒付きのアメを差し出すと、メリィは手を震わせながらも今度はそれを受け取ってくれた。メリィがおずおずと飴の包装を解く横で、今度はヒナタがさっきのメリィみたくメソメソと泣いとる。

 

「め、メリィさ~ん……グスッ、ズズッ」

 

「あ~あ~、ヒナタまでそないなってどうすんねん。ほれ、お前もアメちゃん咥えとけ」

 

 半ば突っ込むようにヒナタにもアメを咥えさせていると、メリィが話し出す。

 

「……本当に、もっと早くあなたに話すべきでした。すみません……でも、分からなかったんです。ニコラスさんが本当に敵なのかどうか……」

 

「なんで信じてくれたん?」

 

「……あなたが正しいことを教えてくれたので。……マスターやマダムとは違うと、示してくれたので……。ニコラスさん、私の知っていることは何でも話します。ですから、アリウスの生徒たちにも教えてあげてくれませんか。『vanitas vanitatum et omnia vanitas』の本当の意味を」

 

「言われんでもしたるわ。……せやから、いくつか教えてくれへんか?」

 

「はい、答えられることはなんでも」

 

「まず、マスター・チャペルとそのマダムって呼ばれてるやつの特徴教えてくれへん?」

 

「?……マダムは分かりますが、マスター・チャペルもですか?」

 

「あ~、あいつワイの知っとる姿から変わっとる可能性が高いねん」

 

「そうなんですね、分かりました。……まずマスターチャペルは身長百六十センチぐらいのヘイローを浮かべた女です。常に髑髏のマスクをかぶっていて変声機も着けているためそれ以外のことは分かりません。指導を終えると行方が分からなくなる人物でした」

 

(……ちうと、マスター・チャペルに関しては雷泥と同じタイプか。捕えられるやろか? ガワが弱いなら可能性はあるが、どやろな……)

 

「マダム……ベアトリーチェは私もほとんど見かけたことが無かったのでうろ覚えなのですが……長身で赤い肌をした女? でしたね」

 

「ん、なんで疑問形やねん?」

 

「頭が花の蕾みたいな……なんか変な形で同じ人間に見えなかったので。被り物かもですが、そこまで間近で見る機会もなかったので何とも……。彼女からの指令はいつもダブルファングを通して伝えられていたので……」

 

 ダブルファングという言葉にウルフウッドは反応する。

 

「そのダブルファングはどないな奴やねん? 実はワイ、そいつに遭遇したことあってな。ただ寸でのところで取り逃がしてしもたんや」

 

「だ、ダブルファングをそこまで追いつめたことがあったんですか!? すごい……。ダブルファングは名前を錠前サオリといって、アリウススクワッドのリーダーです。先ほど話で出たチャペル儀仗隊がマスター・チャペル直下の部隊だとすれば、アリウススクワッドはベアトリーチェの直轄の特殊部隊の一つです。特に錠前サオリは儀仗隊と同じくマスターから直接指導され、白兵戦においてはアリウス随一の実力を持つと聞いていたのに……」

 

「ああ、通りでよう知っとる動きだったわけや。ようわかったわ。……ほな、次の質問が最後で一番重要なことや。……そのベアトリーチェとかいうクソと、マスター・チャペルのクソはどこにおる」

 

「……ッ」

 

 メリィは一瞬言葉に詰まる。それはウルフウッドから漏れ出ていた圧によってだった。

 

「……ああ、すまへんなぁ」

 

「いえ……。あれらは、トリニティ自治区の地下にあるカタコンベ、そのアリウス自治区にいるはずです……ですが……」

 

「ん、なんかあるんか」

 

「カタコンべは膨大な広さを誇り、しかもそこに至る経路が毎回変わるんです。私達も任務の度にカタコンベの出口が示された地図を渡されていました。なのでもはや私ではそこに至る経路はもうわかりません……」

 

「な、なんやて……」

 

 せっかくここまで情報を聞き出せてあと一歩、というところで躓いてしまう事態に流石に落胆の色が隠せないウルフウッド。しかしメリィの話はまだ終わっていなかった。

 

「ですが経路を知っている可能性が高い生徒を知っています。……白洲アズサという生徒を探してください。このトリニティ総合学園にいるはずです」

 

(ん? 白洲アズサ……どっかで覚えが……)

「そいつもアリウスの生徒なんか?」

 

「はい。そして私と違い、彼女は恐らく任務でここに潜伏させられているはずなんです」

 

「ちょい待ち、なんでそこまでわかんねん?」

 

「彼女を直接見かけたことがあるのですが、彼女はアリウスの校章を身に着けていました。アリウスの校章は外には知られていないので、潜入先でアリウス生徒かどうかを判別するために身に着けたりすることがあるんです。だから、何かしらの任務でここにいる可能性が非常に高い」

 

「なるほどなぁ……。しかしそない接近して、お前よう気づかれんかったな?」

 

「実はお互い目が合った時があったのですが、あちらは私のことを知らなかったのでしょう、気づかれませんでした。関係としては私が一方的に彼女を知っていただけなので……。彼女は先ほど言ったアリウススクワッドの一員で、色々と有名だったんです」

 

「なるほど、じゃあそいつからカタコンベのルートを聞き出したらええっちうわけか」

 

「はい。……すみません、私が知ってることでこれ以上有益そうな情報はもう……」

 

「そんなことあらへんよ。おかげであの外道どもに大きく近づけたわ。ホンマ、おおきにやで……」

 

 ウルフウッドはメリィの頭を撫でると、おもむろに立ち上がり二人に背を向ける。

 

「すまんけど練習の空気やないし、今日はこれで終いや。ワイはあっちで一服してから帰るから、戸締りよろしゅうな」

 

 そう言って二人に向けて手をヒラヒラさせながら聖堂を出て、少し離れた所定の場所で煙草を咥えた。そしてそのまま煙草を噛みしめる。正直言ってもう限界だった。

 

――空へ向けて吠える。

 

「ええ加減にせえよ! あのクソ外道がッ!!」

 

 彼の叫びは空しく空へと溶けていった。




今のウルフウッドの気持ち

アホのニコラスへ
ミカエルの眼みたいなのができました。ざまーみろ。
おみやげを持って来い。
いいおみやげを持って来い。
マスター・チャペル
P・S
女子のパンツってなんかスースーする。

こんな手紙を受け取った気分
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。