ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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アリウス新章読みました。
なんであそこで切るのよぉぉぉ! 続きが気になりすぎる!
なんかスバルもマイアも不憫すぎる……
みんなに幸せになって欲しいなぁ……

あ、あとトライガン・スタンビードの最終章も1月に放送決定しましたね!
うーん、楽しみが多い


エデン条約編3章:私達の物語
01_新しい居場所で


「駄目……ですね。このルートも使えません」

 

「……嘘じゃないだろうな?」

 

「おい、ツルギ。センセが撃たれて気が立っとるんはわかるがスバルに当たるな。騙すんなら誘い込んでズドンがあのクソッタレのやり方や。こいつは嘘ついてへん」

 

「……すみません」

 

 私達はカタコンベの入り口まで来ていた。正確には入り口だったものになるのか。カタコンベ……アリウス自治区へのルートは定期的に変化する。私達が訪れた時には既にルートが変化しており入ることができなくなっていた。

 

「……入り口のルートを急に変更することはできません。どうやら私達に渡されていたルート情報自体が嘘だったみたいですね……」

 

 シャーレの先生が狙撃され、緊急案件としてアリウス自治区への調査がされることになった。

 

 アリウス生徒がヘイロー貫通弾を装備している可能性を加味して少数精鋭——案内役として私と私の小隊、ニコラス先輩、正義実現委員会の剣先ツルギ、仲正イチカ、そしてなぜか混じっているアビドス生徒会長の小鳥遊ホシノ(ガスマスクを着けてアリウス生徒に変装中)、という現状組める最強の布陣で挑むことになったのだが……それは空振りに終わってしまったようだ。

 

「多分、ナギサ襲撃自体がでかいブラフやったんやろな。ホンマの目標はハナからセンセやったわけか」

 

 つまり、あの作戦に投入されたアリウスの生徒は負けること前提の捨て駒だったらしい。そして自治区の場所を吐いても良いように嘘の情報を渡されていた、と。

 

 ……メリィの言っていた通りですね。マスター達は私達のことを信用するどころか何とも思っていなかったのだと痛感しました。

 

「——ただ、アリウスの戦力半分捨ててまでセンセを狙った理由がわからん。センセも言っとったがベアトリーチェっちうやつの狙いはなんや?」

 

「ここで考えてても仕方ないっすよ。とりあえず戻って対策の練り直しっす。ニコラスさん、すみませんが会議に同席願えないっすか?」

 

「しゃあないな、わかった」

 

「……私達は?」

 

「あ〜……すみません、スバルさん達の同席は無理っす。すみませんが私達の部室で待機していてもらえませんか?」

 

「すぐ済む話でもちゃうやろ。必要な話あれば通信機で聞けばええし、スバル達は先に帰したれや」

 

「帰しとけって……引率者無しで彼女らだけでっすか!? それはちょっと——」

 

「——うへぇ、大丈夫だよ。お姉さんが代わりにスバルちゃん達を引率するからさ〜」

 

 私の横にいたホシノさんがガスマスクを外しながら正義実現委員会に話しかける。

 

「え!? えっと、どちら様っすか?」

 

「お姉さんはアビドス高等学校生徒会長の小鳥遊ホシノ。よろしくね〜」

 

「アビドスって確か、アリウスを預かってるとこの………え、そこの生徒会長!?」

 

「……通りで一人雰囲気が違ってたわけだ。お前、なかなかやるな? きぇひゃひゃひゃっ」

 

「殺気飛ばすのやめてよ〜ツルギちゃん。お姉さんやる気はないよ」

 

「つ、ツルギ先輩がそこまで言うなら任せても大丈夫……ですかね?」

 

「そゆことそゆこと、任せてよ」

 

 そこまで言うとホシノさんは急に雰囲気を変え、イチカに尋ねる。

 

「……ところでイチカちゃん、先生の容態……なにか聞いてる?」

 

「それは………お、丁度速報が届いたっす。………朗報っすよ、一命は取り留めたみたいっす。まだ眠ったままみたいっすけど、命に別状はないみたいっすよ」

 

「……よかった〜、ずっと気になってたんだよね」

 

 皆がシャーレの先生の無事にホッとした様子を見せていた。あのツルギでさえ目に涙を滲ませている。ニコラス先輩がバスの中で冗談ながらに「面倒臭いからお前はたらしこまれるなよ」なんて言っていたが、そんな冗談がでるほどシャーレの先生は生徒に慕われていることがよくわかった。

 

「補習授業部の子達の応急処置がよかったんでしょうね。出血が少なかったのが功を奏したみたいっす」

 

「ヒフミちゃんには後でお礼言わないとね〜。とりあえず一安心かな。……じゃあ、今日のところは帰ろうか、スバルちゃん」

 

「そう……ですね」

 

 正直かなりの決意を持って挑んでいたこともあり、この肩透かしな結果に後ろ髪を引かれながらも私達はトリニティから去った。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 アビドス行きの電車に揺られている間、終始私達は無言だった。肩透かしな結果に意気消沈していたのもそうだが、何を話せばいいかわからなかったからだ。だが車両に私達しかいなくなったころ、見計らっていたのかどうかは知らないがホシノさんが話しかけてきた。

 

「……残念だったねスバルちゃん。でも大丈夫だよ。友達を取り戻すチャンスはきっとあるから」

 

 私達を気遣ってくれる言葉。きっと励ましてくれているのだろう。しかし正直、その心遣いにうれしさよりも困惑が勝る。

 

「……なんでそんなことを言えるんですか? 貴方達はアリウススクワッドに襲撃されてたじゃないですか。ホシノさんは足も撃たれて……それなのになんで、私達に優しくできるんですか?」

 

 ホシノさんがアリウスの制服に着替えている時に見かけた足にある痛々しい銃痕。

 

 私達を恨むなら理解できる。なのにこの人は……いやアビドスの皆は私達を迎え入れてくれた。その理由が、わからなかった。

 

 ホシノさんは少しばかり困った表情をしながら唸る。

 

「うへ〜……そうだねぇ。……生徒会長としての理由と私の個人的な理由があるんだけど、どっち聞きたい?」

 

「そう聞かれたら普通両方聞きたくなると思いません?」

 

「うへへ、そうだよね〜」

 

 小隊のメンバーも気になっているのかホシノさんに集中していた。私達の注目を浴びる中、ホシノさんが口を開く。

 

「まず生徒会長としてだけど……軽く説明した通りアビドスは貧乏でね〜、借金が三億近くあるんだ。まあこれでも大分減ったんだけど……返済するにしても六人じゃできることも限られててさ〜。しかも一人はシャーレに出ずっぱり。……だから単純に人が来てくれるのがありがたいんだよね。数は力ってやつ。それに良いとこアピールしておけばウチに転入してくれる子もいるかもだしね。まあそんな下心かな」

 

 確かにわからない理由でもない。実際私達はアビドスに訪れて早々に「悪いけど貴方達を養える余裕はここには無いから一緒に頑張ろうね!」みたいなことを言われて驚いていた。

 いやまあ別に良い待遇を期待してた訳じゃないですが、なんかこう……違くないです? いや、期待してなかったんでいいんですけど……。

 

 ただこの理由だけでは私達への態度の答えとしては少し弱い気がした。

 

「……わかりました。それでホシノさん個人の理由は?」

 

 恐らくこちらが本命なのだろう。

 

「うへえ……やっぱり話さなくてもいい?」

 

「えっ!? ここまできてそれはないでしょう!?」

 

「そうなんだけど、言葉にしようとしたら恥ずかしくなってきちゃって……」

 

 よく見るとホシノさんの顔が若干赤みを帯びていた。むしろ気になってしかたないんですが。

 

「ここまできたらちゃんと話してくださいよ。あなたが振った話でしょ」

 

「そ、そうだよねぇ〜。うへぇ、話すよ〜」

 

 ホシノさんが少しだけ姿勢を強張らせる。

 

「えっとね……私はニコラスの夢を叶えてあげたいんだ」

 

「ニコラス先輩の夢?」

 

 それが私達にどう関係しているのだろうか?

 

「うん。……ニコラスの夢はね、『楽園』を作ること。ちょっと前のスバルちゃん達みたいな、昔のニコラスみたいな……何もなくて明日の行き先も不安な子供たちが、どぶ泥にまみれないで、明日を不安に思わないで過ごせる……そんな場所を作ること。それが、ニコラスの夢なんだ」

 

「……」

 

 ニコラス先輩の夢を疑う余地はなかった。

 あの人は戦闘中、私達に殺気を向けたことはなかった。その気になれば、きっとあの人は私達を一方的に虐殺できる力もあるだろうに……自分を殺害しようとしている相手にそれをしなかった。

 

——救いたいんは本当やねんか

 

 その言葉が本音なのだと、理解させられていたから。

 

「……私はね、アビドスをニコラスにとっての『楽園』にしたいんだ。……ニコラスは昔、色々しててさ。心のどこかできっと自分自身を許してない。だからどこか私達に線を引いてるところがあってね。……そんなものは無いんだって、ニコラスが『ただいま』って言える場所に、アビドスをしたいんだ。……だからニコラスが頭を下げて頼んできた貴方達を受け入れてあげたいと思ってね。それを断っちゃったら、きっとニコラスの望む楽園じゃ無くなっちゃうような気がしてさ。……うへぇ、今思ったけど理由が下心ばっかりだねぇ〜」

 

 下心……まあ確かにそうかもしれない。でも私はその理由を嫌いになれなかった。生徒会長としての理由よりもずっと納得できる理由だったから。

 

「ホシノさんはニコラス先輩が好きなんですね」

 

「うへっ!? いや、その……だから恥ずかしかったんだよ〜」

 

 

「……ホシノ先輩、カワイイです」

「そういうのまだよく分からないけど……憧れるなぁ」

「あの、ニコラス先輩とのエピソードとか聞かせてくれませんか?」

 

「え、えぇ〜〜」

 

 隊員達の言葉にホシノさんは顔を真っ赤にしていた。その様子を見ていて思う。

 

 

(——『私達と変わらない、みんな同じ人間だった』……でしたか。メリィの言ってたこと、本当でしたね……)

 

 ホシノさんも……そして私達も、コイバナで会話に花を咲かせるような普通の女の子だったんですから。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「それじゃあ報告を始めるよ〜」

 

 アビドスの対策委員会部室の一角でホシノさんが手を叩きながら皆を取りまとめる。

 部屋にはニコラス先輩を除くアビドスの生徒達、そして私を含むアリウスの小隊長達が集められていた。

 ホシノさんと私の口からトリニティでの出来事、先生の容態について等の説明を済ませ、これからどうするかを話し合うこととなった。

 

 私の話が終わると肩を震わせていたセリカさんがテーブルを叩く。

 

「〜っ!! 先生までっ……ほんっと許せない!! 皆で乗り込んでマスター・チャペルをとっちめましょう!!」

 

「だからセリカちゃーん、入り口わからないからそれができないっていったでしょー」

 

「でも皆で草の根分けて探せば……」

 

「ダーメ。それはもうトリニティがやってるだろうし、何よりこれはトリニティ自治区の問題だからね。スバルちゃん達も書類上はここに勾留中ってことになってるから勝手に動けないし、残念だけどアリウス自治区に対して今私達ができることは無いよ。私が変装して紛れて行ったのだって本当はアウトだしね」

 

「じゃあニコラス先輩は……」

 

「ニコラスはシャーレを介した依頼でシスターフッドに留学中ってことになってるから色々融通がきくんだよ。だからこの件に関してはニコラスからの情報待ちかな。……大丈夫、きっとチャンスは来るよ。だからそれまではその気持ちを我慢しておこーね」

 

「………わかった」

 

 ホシノさんの説得にようやくセリカさんが引き下がる。……しかし、なぜですか?

 

「……あの、そもそもなんで貴方達はアリウス自治区に乗り込む気満々なんですか? 言ってはなんですが、貴方達関係無いですよね?」

 

 私の言葉にアビドスの方々がキョトンとした表情を浮かべていた。

 ……なんで「何言ってんだこいつ?」みたいな視線を向けるんですか? 私おかしなこと言ってないですよね?

 

「ん、マスター・チャペルは私達の敵。あなた達もマスター・チャペルを裏切った。だから、敵の敵は味方だよ」

 

「それにこれからアビドスで一緒に過ごすんです。それなら私達は友達じゃないですか☆ お友達の手助けをしたいと思うのは普通のことでしょう?」

 

 シロコさんとノノミさんがそう言い切る。アヤネさんに目配りすると「強引な先輩達で困っちゃいますよね」と苦笑いしながら答えた。その笑みに嫌な感情は滲んでいない。

 なんでこんなに強くいられるのか、そう思ってふと気付く。

 

 ああ、そうでした。この人達もニコラス先輩の後輩でしたね。

……同じ後輩なら、私達も彼女達みたいに逞しくなれるでしょうか?

 

——彼女たちが少し眩しく見えた。

 

 

 ホシノさんが手を叩いて一旦会話を締める。

 

「はいっ、というわけでさっきも言ったけど、私達が今アリウス自治区にどうこうすることはできないっていうわけ。だから私から提案なんだけど、まずはスバルちゃん達の生活基盤を整えない? いざって時にヘロヘロだったら目も当てられないしさ。健康的な生活送って鋭気を養っておくべきだと思うんだよね〜」

 

「はいっ、ホシノ先輩。その事で報告があります」

 

「どしたのアヤネちゃん?」

 

「アリウスの皆さんが住むために使えそうな建物をいくつかピックアップしておきました。あいにく一人一部屋とはいかなくて申し訳ないのですが、掃除をすれば直ぐに住むことができる物件です。後でアリウスの皆さんに建物のリストをお渡ししますので住む人の割り振りをしていただければと思います」

 

「お〜、流石仕事が早いねえ〜」

 

「え、部屋……? 私達部屋に住めるの?」

「窓があまり割れてないといいな」

 

 まさかの朗報に小隊長たちが色めき立つ。分からなくもない。私もつい期待してしまう。

 

「あの、アヤネさん。その物件、水場は近くにありますか? それだとありがたいのですが……」

 

「えっ、あの……近いもなにも、ちゃんとどの物件も水道は生きてますよ? 電気もガスも問題ないのですが……」

 

「……まさか、自由にお湯を飲んでもいいんですか?」

 

「お、お湯? えと……お風呂もちゃんと使えますが……」

 

「おふろ!?」

「嘘でしょ……!?」

「そんな贅沢許されるんですか!?」

 

「……ちょっと待った。ストップ」

 

 私達が歓喜に震えているとホシノさんに制止させられる。

 

「すみません、少し騒ぎ過ぎましたね」

 

「いや、それはいいんだけど……ちょ〜っと確認させて。スバルちゃんたち、普段どんなとこに住んでたの?」

 

「廃墟ですが?」

「そこで皆で雑魚寝してました」

「夜冷えるから皆で身を寄せあったりしてたねー」

 

「……普段の食事は?」

 

「? レーションですが?」

 

 それを聞いてなぜだか頭を抱えだすホシノさん。続けてノノミさんが質問してくる。

 

「あの、おやつとかは……?」

 

「おやつ?」

「……あ、たまに角砂糖もらえたね」

「角砂糖甘くて美味しいよね〜」

 

「かく、ざとう……?」

 

 なぜだかノノミさんも絶句していた。わ、私達なにか不味いことを言ってしまったのでしょうか……? 復活したホシノさんが再び喋りだした。

 

「スバルちゃん達の生活改善が必要なのはよ〜くわかったよ。ニコラスから『アビドス来たての自分ぐらいだ』って聞いてたけど、正直それより酷いかな」

 

「ニコラス先輩よりもですか!?」

 

「残念だけどね」

 

 私達よりも酷い目に会っていたニコラス先輩以下とは……。あ、そう言えばバスでニコラス先輩が孤児院での生活も少し話してくれていましたが……これが出会えた大人の差だというのでしょうか……虚しい……。

 

「と、とりあえず大丈夫だから! ここでなら最低限健康的で文化的な生活は保証するよ〜」

 

「最低限は余計よッ! ホシノ先輩!! ……ああ、でも否定しきれないのが悲しい……」

 

「ん、とりあえずローテーション組んでアリウスの皆には柴関ラーメンを食べてもらう。話はそれから」

 

「シロコちゃん、それからじゃないから。あ、でもローテーション組む案は採用かな。ここにいる小隊長さん達にはそのまま班長になってもらって、学校の整備とかバイトとか手分けしてやってもらおうか?」

 

「はいっ、ホシノ先輩!! それなら給食係も作りましょう! みんなでご飯を作るんです☆」

 

「いいね〜、確かにこの人数なら食事はまとめて作ったほうが経済的だしね〜。必要そうな係を挙げていこっか?」

 

 私達がニコラス先輩以下だったことに打ちひしがれている間に、アビドスの皆さんがどんどん話を進めていた。話している内容は半分ぐらいしか理解できてないけれど、皆さんが笑顔で話している様子を見るときっと悪いことにはならないだろうとは思えた。

 




ここからちょっとスバル視点が続きます。

元々スクワッド含むオバの下に残っているアリウス生徒を迎えに行く立場の味方のアリウス生徒を作る予定だったので、そこに当てはめたスバルの光堕ちが爆速で進んでしまっている……。

スバル光堕ちの原因としては原作と以下の違いがあるため。
・(恐らく)最上級生として皆を引っ張っていかないといけない中、今作では頼れるニコラス先輩がいること
・先輩の夢が自分の望みと似ていること
・そもそもアリウス追い出されてること
・トリニティと違いアビドスには何の恨みも無いこと。なんならスクワッド襲撃の負い目もあるのに迎え入れてくれたこと

ホシノが半分おばちゃん化していてアビドスの雰囲気が孤児院に似ていることも大きいかと。空っぽの子供たちには暖かい家が必要なんや。


スバルが原作で『巣を作りたい』みたいなことを言っていましたが、多分あれは本心だとは思うんですよね。ただその良いお手本を知らずドツボにはまってしまっている感じなんじゃないかなと。だからこそ陽だまり放り込んで「暖かい場所っていうのはこういうところやぞ」って教えこんでやるんですね。
おらっ、光堕ちしろおら!
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