ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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TRIGUN STARGAZEが相変わらず面白い!
第三話でパニッシャーの新機構が出来てましたね。やっぱカッケーな~ウルフウッド。


04_人でいられなかったもの_★

 二人の男がこちらに向かってきている。マスター・チャペルが用意したという門番は一体なにをしているのやら。彼に問いただしても「キヴォトストップクラスの戦力を足止めしているのだ、役目は果たしている」と返答があるだけ。やはり最後に信じられるのは自分だけのようですね。

 しかし、問題はありません。儀式は既に開始しています。祭壇から私に力が……光が流れてくるのを感じます。儀式を前倒しした関係で万全なものとは言いがたいですが、完全に至るのはあの二人を始末してからでも遅くはありません。この力があれば、それは容易いでしょう。

 

 ――ああ、光が満ちていく。今なら分かる。今までの肉体がいかに不完全だったかを。分かる。私は今あの光に近づいている。

 

 儀式の試行をしていた際に偶然にも繋がった外の世界へのパス。マスター・チャペルがこちらに来た道の先に見えた、あの崇高なる天使の光。黒服はそれを『万物を創造し、滅ぼす、根源へ繋がる門』と言っていましたが……ええ、確かにその通り、あれこそまさに崇高といえるもの。今私に流れてくる力はあれとは違う光ですが、根源に至りさえすれば結局は同じ。道筋が違うだけ。

 

 ――ああ、崇高へ近づいていくのを実感する。

 

 そして、その恍惚を邪魔する羽虫どもは叩き潰さなければなりませんね……

 

◇ ◇ ◇

 

 目の前に至聖所の入り口と思われる扉がある。それをウルフウッドと共に蹴り破る。

 

「……ノックにしては下品ではありませんか、先生」

 

“ ベアトリーチェ!! ”

 

 蹴り破った扉の先にはやはりというべきか、通信機で見たままのベアトリーチェの姿があった。祭壇に目を向けると張り付けにされている生徒、アツコの姿も目に入る。

 

“ ッ!! ”

 

「待てや。アツコは生きとる。よう見てみい。呼吸しとるやろ。今は気失っとるだけや」

 

 駆け出しそうになったところを再びウルフウッドに止められる。そうだ、今は冷静にならなければ……

 ベアトリーチェへ体を向き直して告げる。

 

“ ……ミメシスを止めて生徒達を解放しろ ”

 

「くどい。その問答は既に終わっているはずです。あなたと私は敵対者。であれば、どうすべきかは分かっているでしょう?」

 

 悪辣な笑みを浮かべるベアトリーチェ。彼女から凄まじい圧が放たれる。……なるほど、これ程の力を持っていれば自信満々になるわけだ。でも……

 

「残念ですねぇ、先生。儀式は既に進行中です。ロイヤルブラッドの神秘を搾取し、キヴォトス外から到来する力を借りて……私は自分の存在をより高位のものへと昇華しています」

 

 その言葉を言い終えると同時にベアトリーチェは肉体を変容させていく。その体は樹木の様に巨大になっていき、蕾のようだった頭部が満開に花開いた。そして羽の様な何かを生やし、巨大なヘイローを背負っている。まるで何かの絵画に描かれていそうな巨大な怪物へと変貌していた。

 その様子を前に、隣にいるウルフウッドが耳打ちしてくる。

 

(センセ、どないする? ワイがやるか?)

(“ ……いや、ウルフウッドはアツコを保護して欲しい。マスター・チャペルの動向が読めない……警戒していて欲しいんだ ”)

(ちょい待て、ちうとアレとはセンセがやるつもりか!?)

(言ったろ。大丈夫。()()()ああいう相手にはすこぶる強いって)

 

「何をヒソヒソと!! この姿をその目にしかと映しなさい! これが私の……高位の存在となった姿です!これこそ本来の姿――偉大なる大人の姿なのです!」

 

 僕らの反応が思っていたのと違うのが気に食わないのか、ベアトリーチェは自分を見ろと言ってくる。まるで新しい玩具を自慢する子供みたいだ。どうせだ、その反応を利用させてもらおう。

 

“ はぁ……どこが偉大なのかさっぱり理解できないよ ”

 

 ベアトリーチェを僕に集中させる為に挑発する。彼女のプライドが高いことは今までの会話で分かっている。だからこれを無視することはできないはずだ。

 

「ふふ、高位過ぎて理解が及びませんか? 仕方ありません。猿が釈迦の手のひらを見渡せないのと同じ。先生のレベルではこの……」

 

“ 違うよベアトリーチェ。貴方は偉大とは程遠い、ちっぽけで弱っちい存在だよ ”

 

「………すみません、猿語は理解できないものでして……今、なんと?」

 

“ くどい。お前は弱い。お前は人でいることの弱さに耐えられなかっただけの臆病者の雑魚だと言ったんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()? 無様過ぎて見てられないよ ”

 

 この場に生徒がいないせいか普段なら言わないであろう汚い言葉がスラスラと僕の口から発せられる。子供達がいなくて本当によかった。流石にこれは聞かせたくない。

 そしてそんな悪口は効果抜群のようで、ベアトリーチェの何かが明確にキレた音を感じる。同時に強大な掌が僕に迫ってきた。丸太が高速で飛んできているみたいだ。当たったら僕の肉体では凄惨なことになるだろう。

 

 全身の血流を操作し身体機能を強化する。技名も付かない基本技能。これを使えて初めて牙狩りのスタート地点に立てる基礎的な技術。しかし()()()()()()()この技の持続可能時間は三分程度が限界だ。

 でも彼女だけならそれで十分。何かを企んでいるだろうマスター・チャペルに対してはウルフウッドがいてくれる。だから今の僕の役割は、単身でこの化物を倒すことだ。

 

 股を大きく開き上体を下げることで迫り来る攻撃をスレスレでかわす。頭の上をトラックが通過しているような風圧を体に受けながら、既に抜いていたベレッタの銃口を彼女に向けた。

 

“ 954血弾格闘技(ブラッドバレットアーツ) Electrigger 1.1GW ”

 

 血界の眷属(ブラッドブリード)を倒すため編み出した人類の技、その流派の一つ。弾丸に付着した血液が着弾と同時に敵の細胞に染みわたり雷に属性変化することで、相手の芯の芯から身を焼き焦がす対生物特化の技法。

 

「ギィヤァァァァァァッ!!」

 

 その雷がベアトリーチェの体を駆け巡りその身を焼き焦がす。怪獣の咆哮のような彼女の悲鳴が至聖所を震わせた。

 痛いだろ、ベアトリーチェ。……なぜその痛みを理解できるのに、お前は子供達を傷つけられるんだ。

 

「き、傷が、再生しない!? な、なんなのです!? なんですかその力はぁぁ!?」

 

“ 不死を殺すという矛盾を叶えるために、人間が研鑽してきた技だよ。生憎、僕が扱えるのはその末端も末端だけど、それでも…… ”

 

 再び雷をベアトリーチェに撃ち込む。

 

「ガアアアアッ!!」

 

“ お前を倒すのには十分な力だ ”

 

 ベアトリーチェは痛みで身を悶えさせながら手に力を集中させる。

 

「崇高に至る私にッ! 人間の技などとぉッ‼ ふざけた真似をぉぉッ!!」

 

 ……初動がバレバレだよ、ベアトリーチェ。やはり貴方自身は戦闘経験が乏しいのだろう。どうせ弱い者虐めしかしたことがないのだろう。だから力の大振りしかできない。

 ベアトリーチェの攻撃の起点に弾丸を撃ち込む。走る雷が溜まっていた彼女の力に流れて誘爆を引き起こす。それに焦り彼女の動きは更に精細を欠く。そしてそのバレバレの初動をまた潰す。次の初動も潰す。その次も、その次も、あらゆる起点を潰し尽くす。

 

 彼女の行動の一切合切を許しはしない。お前に許すのは痛みに叫ぶことだけだ。

 

 その叫ぶ声すら枯れたのか、ついに棒立ちになった彼女は落雷を受けた枯木のようにくずれ伏せた。床を擦り付けている彼女の顔にベレッタの銃口を突き付け、問う。

 

“ 答えろ、ベアトリーチェ。こんな程度の力の為に、お前は子供達を踏みにじったのか? その命を嘲笑ったのか? ”

 

 先生は『先生』のペルソナを外していた。その声色は鈍く重い。

 先生は人を撃つことができない。しかし()()()()()()()()()()()()()()()()。故に問う。

 人か外道か、お前はどっちだ? 当然、人から外れた者であれば容赦をする道理はない。

 

「あ、ああ……」

 

 ベアトリーチェは混乱していた。

 なぜ私は震えている? なぜ私は恐怖している?

 今の私は恐怖を従える存在の筈だ。崇高に限りなく近い存在となったはずだ。それなのになぜ、目の前にいるヘイローすら無い人間風情に怯えなければならないのだ!?

 なぜ、なぜなぜなぜなぜッ!?

 

 

――残念だ、ベアトリーチェ。そなたがもう少し物語というものへの造詣が深ければその理由にも気付けたろうに。

 

 たった一人の観客として舞台を眺めていたマエストロが呟く。

 

 ()()()()()()()()()()()()。古今東西どの様な物語でも、化物は『歩みを止めぬ者』に討ち滅ぼされる定めなのだ。ましてやそなたの前に立つ者は、その極地に手を掛けている一門に連なる人間。その程度の化物では敵対者にすら成れはしない。その選択をした時点でそなたは舞台装置へと成り下がってしまったのだ。

 さあ、残された出番をそなたはどう演じる、ベアトリーチェ? ……願わくば賢い選択を。

 

 高みの見物でこの舞台の行く末を見守るマエストロ。ベアトリーチェが頭を垂れ謝罪を演じれば、彼らは命までは取らないだろう。そうしてくれればまだ回収する余地ができるというものだ。故に、賢い選択を。

 だがマエストロの願いは届かない。ベアトリーチェのプライドがその選択を許さなかった。だからこそ彼女は最も愚かな選択肢を取ってしまう。

 

「あ、ああ…………ッ、私を助けなさい! マスター・チャペル!! 私を見下すこの男を、そこにいる牧師も……私を見下す全ての者を殺すのです!!」

 

 その言葉が発せられると同時に、突如として先生とベアトリーチェの間に四つの十字架が舞い降りる。反射的にウルフウッドが救出していたアツコに銃口を向けるが、アツコは気絶したままだ。

 

 

「……ワシはこっちだ」

 

 

 ベアトリーチェから……いや、()()()()()()()()()()()()から声がする。

 

「センセ!!」

 

 ウルフウッドの声に反応し先生はその場から飛び退く。同時にウルフウッドがパニッシャーの弾丸をその声に向けて放った。しかしそれはチャペル儀杖隊のパニッシャーによって防がれてしまう。

 

「――しかし、ベアトリーチェも愚かな女だ。ナイブズの万分の一にも満たぬ力で崇高を語るとは、愚かにも程がある。力の使い方もなってはいない。そんなことだから、そこの男にすら及ばぬのだ……」

 

 ベアトリーチェだった巨体がチャペル儀杖隊の影に隠れるほど圧縮されていく。枯木の様だった巨大な四肢は筋骨隆々な人の体を形作り、背中にあった羽の様な何かは腕の形へと変貌を遂げていく。そして、四つ腕の人型がそこに立っていた。

 四つ腕の者、マスター・チャペルは告げる。

 

「こんな力では神には至れん。そもそも人が神に至ろうなどと考えること自体がおこがましい。にもかかわらず、神の様に力を振るおうとするから駄目なのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。この力はそう振るうべきなのだ……そうは思わんか、ニコラス?」

 

 先生とウルフウッドは凄まじい悪寒に襲われていた。ベアトリーチェとは桁違いの、コールタールの様などす黒い殺意が二人を絡めとる。

 それは化物のモノではない。人を殺す人のモノ。底知れぬ悪意の顕現。

 

「――ああ……そうだったな、ベアトリーチェ。体を頂いた礼だ、最後の契約は履行してやろう。この二人とそれに連なる者はワシが()()()()()()鏖殺(おうさつ)してくれる」

 

 マスター・チャペルの四本の腕それぞれが儀杖隊に掲げられたパニッシャーへ手を伸ばす。

 四本のパニッシャーを構えるソレは、元の造形が残っている顔と相まって一輪の花が咲いたようだった。

 

 

『チャペル・ザ・FOURTH-P(フォースパニッシャー)

 

【挿絵表示】

 

 

 

「……では、始めようか。簡単にブチ殺されてくれるなよ」

 

――絶望が開花する。

 




ついにパワーアップしたマスター・チャペル顕現。
ちなみに簡単にベアオバとチャペカスの今までの流れを解説すると、

 ベアオバが儀式の実験をしていたら偶然にもトライガン世界線へのパスが繋がる。ちょうどその時はウルフウッドが死亡してナイブズとヴァッシュの力がぶつかり合ったところ。二人の力がぶつかりあって世界の境界が歪んでいた関係で他の世界と繋がり易くなっていた。そこでベアオバはプラントの崇高なる力を目撃する。そしてその時のパスを通って儀式の媒体にしていたアツコにマスター・チャペルの魂が憑りついてしまう。
 ↓
 色々とマスター・チャペルが有用なことが分かってベアトリーチェは『契約』を使ってマスター・チャペルを利用することにした。
 ↓
 ぶっちゃけやる気がないが契約に縛られていたため渋々従っていたマスター・チャペル。ただある時ウルフウッドがキヴォトスにいることを知って『自らの手』でウルフウッドへの復讐を果たせないか画策し始める。(実はベアトリーチェやアリウスではウルフウッドを殺すことはできないと確信していた。せいぜいがウルフッドへ嫌がらせするための舞台装置が関の山だろう、という考え)
 ↓
 アツコの体ではウルフウッドに勝つのは無理。だったらベアトリーチェが狙っている力を自分のものにすればいいのではと企むようになるマスター・チャペル。ラズロのミメシスに二人を通すように命令していたのはベアトリーチェが自分に泣きついてくるように仕向けるため。それがまんまと上手く行ってハッピーおじいちゃん状態←now

ちなみに『チャペル・ザ・FOURTH-P』のスペックですが、
・ラズロを超える身体能力
・全ての攻撃がヘイロー貫通能力持ち
・パニッシャー四丁装備(兵装はラズロ・ウルフウッドのと同じもの)
・中身はマスター・C=パニッシャーを与えられるほどの実力者、なので超絶技巧の持ち主
とかいう超厄介ボス。……実はどうやって倒せばいいか作者の私も現時点で詰め切れてないんですよね。マジでどうやって勝てばいいんだ、これ。
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