ウルフウッドアーカイブ   作:タニシ・トニオ

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ブルアカツチノコイベントをプレイしました。
なんでイオリのことになると急にキモくなるんだよ先生……
あ、ちなみにエデン条約のエピローグはこの話で終了です。
幕間の話を挟んで次は最終章!
今回はその布石みたいなお話


10_エピローグ04

 百合園セイアは目を閉じていた。ベットの上で横になり、まどろみの中にいる。

 

 深く、深く、意識が沈んでいく。

 現実と夢との境が曖昧になり、今はいったいどちらなのかもわからない。

 それでも、深く、明晰夢へと潜っていく。

 エデン条約での一連の騒動で、私は何もできなかった。悪意に塗りつぶされる未来に恐怖し、ただ眠っていただけ。

 皆は仕方ないことだと言ってはくれている。私自身も状況が状況であり、起きていたとて何ができたわけでもないことも理解している。

 ――しかし、だからといって納得しているわけではない。

 

 確かに一連の騒動の発端はミカにある。しかし彼女の思惑を利用し、ヘイロー貫通弾という凶器を用いて引き戻せない状況を作り出したのはベアトリーチェとマスター・チャペルだ。ナギサもずっと怯えていた。友人も自分も殺されてしまうかもしれない恐怖、トリニティ崩壊の可能性。そんな重責を彼女一人に負わせてしまった。その原因も全ては悪意を持つ者たちのせいだ。

 ――私は、怒っているのだよ。

 

 友人たちを傷つけた者を……そして、恐怖に屈し惰眠を貪っていた自分自身に。だからこそ、私にしかできない方法で行方不明のマスター・チャペルを見つけてみせる。それが私にできる贖罪だと信じて。

 周囲の景色が歪み、形を成していく。

 

「ここは……」

 

 崩壊した古い建物……ここはアリウス自治区の奥にある至聖場、だろうか。

 黒いスーツに黒い体をした男、双頭の木製人形、首無しの体で顔が描かれた絵を持つ者……

 三人の異形が肩を並べている。確か、あれらはゲマトリアと呼ばれる者たちだったはずだ。ベアトリーチェに関する予知夢でその姿を見たことがあった。

 

「……マエストロの報告通り、彼女はやはり『色彩』に手を出していたようですね」

 

「ふむ、やはりそうであったか。しかし、とすると……この痕跡は……」

 

「見つかっているかもしれません、『色彩』に。……幸いそれを確かめる手段が来ました」

 

「そういうこった!」

 

 三人の異形が私に視線を向ける。私が……観測されている⁉

 

「怯えることはありません、予知の守護天使。少々あなたに予知してもらいたいことがあるだけです。貴方はそのまま深く潜ってくれれば構いません……」

 

 黒服の男に声を掛けられ、落下するようにさらに深淵へと私は堕ちていく。

 奈落の底から断片的な情報が私にぶつかるように侵食してくる。

 

 ――天から刺さる巨大な塔、緋色に染められた虚空、削り取られていく世界、黒い光、割れたヘイローを持つ少女、そして……

 

 

 ――緋色の光を放つ羽

 

 

「それ以上はいかんぞ」

 

 眼を覚ますと……いや、夢の中で目を覚ますとは矛盾しているが……とにかく再び目を開けると、其処には先ほどまでと全く変わった景色が広がっていた。ここは……百鬼夜行、だろうか? 目の前に私と同じ背丈程度の狐耳の生徒が佇んでいる。

 

「いわんことではない。本来『見えてはいけぬモノ』を見てしまったせいで崩壊が進んでおるではないか。だが……しかし……」

 

「君は一体……?」

 

 私の言葉を無視しその生徒は私を値踏みするかのような視線で見つめてくる。

 

「色彩に触れればそもそも崩壊は間逃れぬもののはず……ああ、成程。色彩を利用し、身体を変化させようとした者が居たのか。愚かな……。色彩を呼び寄せる儀式を行ったものの……幸いにして、儀式そのものが途絶した、と。……そうか。其方は色彩と直接相対したのではないのじゃな。『白昼夢』を通し、『儀式』という窓からアレを垣間見た。――しかし、『今見た光景』が崩壊を加速させてしまった。これでは長くは保たぬじゃろう」

 

「ちょっと待ってくれ。さっきから何を言っているんだ? 『色彩』とはなんだ?」

 

「ふむ……『色彩』とはキヴォトスの外にある存在。神秘を侵食し、恐怖に変容させてしまうもの。見るだけでも危うい災禍、崩壊の極光、そういった類のモノじゃ。先ほど言ったように其方は間接的にではあるがそれに触れてしまった。其方の精神は此方に在るが、肉体は崩壊の一途を辿っておる」

 

「そんな……私は、今倒れる訳には……先ほど情報を待ち帰らなければならない。どうにかその崩壊を留める方法はないのか?」

 

「無い……本来なら、な。しかし、其方は一つの幸運と巡り会えた。この妾――百鬼夜行の預言者、クズノハとまみえる事ができたのじゃ」

 

「クズノハ……」

 

「妾が其方を導いてやろう。しかし、其れには代償が伴う」

 

「代償?」

 

「其方を構成する本質を一つ手放さねばならぬ。此の場合、『未来視』じゃろうな。色彩は、我らの本質を歪曲する。より正確にいうのであれば――根源を反転させるというべきかのう。いずれにせよ、今の自分でなくなることに変わりはない。じゃが、代償さえ支払えば、其方は色彩の侵食から抜け出す事ができよう。さあ、如何する?――トリニティの預言者よ」

 

「他に選択肢はないのだろう? であれば迷う余地はない。……これ以上、友人達に心配をかけさせるわけにはいかないからね」

 

「ふむ、迷いなく断じるか、お見事。……では、此れにてさらばじゃ、セイア。言っておくが現世に戻っても妾を探そうとするなよ? 妾はもう、其処には居らぬからの。嗚呼。そうじゃ。最後に、本質を喪う過程で最後の予知が発動するかもしれぬ。其れは必要な痛みじゃ――我慢せい」

 

 クズノハが告げ終えると同時に、意識が急浮上していく感覚に襲われる。

 

 そしてその過程で、おそらく私の最後の予知になるであろう一つの情報とぶつかる。

 

(――ここは、どこだ?)

 

 見覚えのない景色。しかしそこに見覚えのある二人が写っていた。

 

(なぜ、なぜ君たちが……⁉)

 

 私が最後の見た予知、その光景。

 

 

 ――それは先生とウルフウッドが銃を向けあっているというものだった。

 

◇ ◇ ◇

 

 

「――以上が、私の見た予知だよ。すまない、終ぞマスター・チャペルについての情報は分からなかった。しかし新たな脅威が、それもキヴォトスの終焉をもたらす規模のものが迫っている……」

 

 先生とウルフウッド、二人が入院している病室へ特別に入れてもらい予知の内容を告げる。先生は深刻そうに考えてくれているが、対してウルフウッドはダルそうにお見舞いのモモ缶を突っついていた。

 

「……君は信じてくれていないのかい?」

 

「……一応信じてはおんねんで? ただなぁ……食傷気味っちうか、なぁ」

 

「食傷気味って……世界の終焉がかい? しかも君たちが銃を向けあっていたんだぞ?」

 

「あ~センセがワイに銃向けるのは今までなかったな」

 

「驚くところはそこではないと思うんだが……」

 

「ちゅうてもなぁ……何度目やこれ? ワイの故郷でやろ、ミレニアムで二回……今回の事件もカウントすると……四回か。……四回やぞ四回! 世界が終わるとかいうレベルの騒動に巻き込まれたんは‼ 食傷気味にもなるっちうねん!」

 

「ど、どんな人生送ってきたんだ君は? しかも私の予知が本当になれば五回目になるじゃないか⁉ ……もしかして君、ひどいトラブルメーカーだったりするのかい?」

 

「トラブルメーカーはワイちゃうわ‼ むしろ巻き込まれる側やっちうねん‼ どっちかいうたらトラブルメーカーは隣にいるこいつや! ……センセも黙ってないでなんか言え‼」

 

“ ――ん、ああ、ごめん。少し考え事してて…… ”

 

 先生は神妙な顔のまま、ウルフウッドの愚痴を無視して私に向き直る。

 

“ セイア。予知の中で『紅く光る羽』を見たのは本当? ”

 

「あ、ああ。トリニティやゲヘナの生徒が持つ羽とは違うものだが……アレを形容するなら確かに『羽』だった」

 

“ ……それってこんな色? ”

 

 先生が私物の手帳から緋色の付箋を取り出し私に見せる。

 

「多分、こんな色だったと思う。恐ろしく綺麗な……いや、綺麗すぎて恐ろしい、そんな緋色の光だった」

 

“ ……わかった。教えてくれてありがとう ”

 

「君は……何か知っているのかい?」

 

 先生は少しばかり押し黙った後、再び口を開いた。

 

“ セイアの見た『緋色に光る羽』に心当たりがあってね。といっても、私もそれを直接見たことは無いしセイアが見たものと本当に同じものかどうかは分からない。ただもし私の想像通りのものだったら、未曽有の災禍であることは間違いないよ。……でも、困ったことに本当にそうだったとしたら対処できるのは私だけだ ”

 

「もしかしてそれ、センセが()()()()()()()()()()()()?」

 

“ うん。――血界の眷属(ブラッドブリード)、もしセイアが見た羽が彼らのものだとしたら……最悪も最悪だ。ヒントは羽しか無いし、私の思い過ごしであることを祈るよ ”

 

 あのマスター・チャペルすら退けた先生が弱音を吐いている。ブラッドブリードというものはそれほどまでに恐ろしい存在なのだろうか? しかも先生にしか対処できないとはどういうことだ?

 ――私はまた、力になれないのだろうか?

 

「先生……仮に訪れる終焉がそのブラッドブリードというものだったとして、私達に何かできることはないのだろうか? ……私はまた、見ているだけしかできないのかい?」

 

“ セイア、それは…… ”

 

「お前らにはやってもらうことぎょーさんでてくると思うで」

 

 ウルフウッドが口を挟む。先生は驚いた顔でウルフウッドに視線を向けた。

 

“ ウルフウッド⁉ ”

 

「お前もお前でビビりすぎやこのボケ。だいたいコイツら頼るのなんか今さらやろが」

 

“ でももし血界の眷属(ブラッドブリード)だったら…… ”

 

「あれやろ、お前の『なんちゃらアーツ』やないと倒せへんっちう話やろ? それこそパニッシャーにしたのと同じ事すればええだけちゃうんか?」

 

“ いや、あれやると貧血に…… ”

 

()()()()()()()。……『()()()』聞いとる手前ガキ共を遠ざけたい気持ちも理解するけどな、出し惜しみできる相手ちゃうんやろ? ()()()()()()()()()()()()()()

 

“ ……それ、アビドスの時の当て付けかい? ”

 

「せやで、お前の言葉や」

 

“ ッ……はああぁぁ ”

 

 先生が観念したような表情を浮かべながら大きく息を吐く。そして気合いを入れ直すかのように自身の両手で両頬をはった。ピシャンという音が病室に響く。

 

“ ――ごめん、セイア。情けないとこ見せて不安にさせちゃったね。セイアが教えてくれた終焉の予知、これはなんであれきちんと情報を集めてみんなで協力してやる事だ。……だからセイアも一人で探ったりしちゃ駄目だよ? ”

 

「わかっているよ。そもそもその力は失ってしまったしね。それに一人で抱え込もうとする愚かさも君が今教えてくれた」

 

“ は、はは……手厳しいなぁ ”

 

「なに、君が今見せてくれた姿はここだけの秘密としよう」

 

“ そうしてくれると助かるよ ”

 

「お前の情けない姿なんぞ今さらやと思うけどな」

 

“ う、うるさいなぁ〜もうっ ”

 

 二人の大人が笑っている。

 それを見て不思議と、私の心を重くさせていたキヴォトス終焉の予知への不安が薄れていた。

 

 ――もう大丈夫だ。

 

 私の直感がそう告げる。根拠も無いのにそれはなぜか確信めいたものだった。

 

(……いや、確信ならあるか。先生とウルフウッドがいてくれる。エデン条約の騒動を乗り越えアリウスという新たな友人ができ……ミカ、ナギサ、私達三人が足並みを揃えることもできた。今の私達であれば奇跡の一つや二つ起こすことも造作ないだろう。私が予知に怯える理由は何一つないのだから)

 

 二人の大人が子供みたいな言い争いを繰り広げているのを尻目に、私は二人のお見舞いの品をつまんでいた。

 




というわけでセイアの予知の話でした。
ウルフウッドが言っていた先生が話してくれた「あの話」はこれから書く先生の過去話のことです。なのでまだどんな話なのかは載っていないので「あれ、話飛ばしたっけ?」と不安になられた方がいたらっしゃったらすみません。

ネタバレだけど最終章、ブラッドブリードでてきます。
マスター・チャペルに勝るとも劣らない敵ってなったらこいつら出すしかねーよな!!
本編の最終章なぞるのも面白くねーし!!
っていうテンションで出す事決定してたんですけど、実はまだ具体てな話は決まってません!!
ガンバレ、未来の私!! 生徒に死者出さないで済む方法あるのかよ!?
なんか色々問題あるけど、マジでガンバレ、ひねり出せ、私!!

……ちなみに血闘術ってほんのちょっぴりブラッドブリードが混ざってないと使えないらしいですね。つまり最終章の敵はそういう事です。
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