異世界探偵は推理をしない(仮) 作:赤レンガ
ボツ1
『探偵』
それは、隠された真実を探る者をいう。
人に依頼を受け、時には探し物や調査も行う。
それは異世界でも変わらない。
この世界に構える唯一の探偵事務所、そして唯一の探偵である青年の元に今日も依頼が舞い込む。
とある日の朝方。いつものように、人の賑わいが始まる繁華街にまだ人が
一人の女性が大通りから薄暗い路地に入って行く。
女性の名前はレテリア。彼女はとある用事でここに訪れていた。
「この先かな……」
レテリアはメモを頼りに路地を進む。
少し進むと、突き当たりを右に曲がる。
すると、少し開けた場所に出た。
空き地には朝日が差し込み、中央にはこぢんまりとした建物が建っており、その場の雰囲気も相まってまるで隠れ家を思わせる見た目をしていた。
「ここかな……」
上にかかる看板に書いてある文字を読んだ女性は、扉に付いたノッカーで三回ほどノックした。
しかし、返事は無い。
「お留守なのかな……」
諦めて帰ろうとした時――
――扉がひとりでに開いた。
というより、元々少し空いている事に彼女が気付いた。
レテリアはふとした時には扉を開けていた。
目の前にある階段に導かれるように進み、登っていく。
階段を登りきると、先程と同じく少しだけ開いた扉があった。
その扉を恐る恐る開ける。
奥にはデスク越しに椅子に座る、男の姿が見えた。
「やぁ、待っていたよ」
その男性はまるで彼女が来るのを予め把握していたかのような態度であった。
だが、彼女は事前に約束をしていた訳でもない。
彼の態度はまるで、彼女がこの時間ここに来ることも、勝手に上がり込み、この部屋を訪ねることも。まして、
「ようこそ、『異世界探偵事務所』へ」
「待っていた……?」
男の発言に驚愕する。
「君が来ることを、ただ知っていただけだよ」
男は続ける。
「君の事も知っているよ。迷宮図書館の司書さん?」
男はまるで「あっているだろう」とでも言いたげな表情で彼女を見ている。後ろの窓から注ぐ朝日がその表情を引き立てていた。
レテリアが呆気に取られていると、男が声をかける。
「こんにちは、僕はカイ。一応探偵をやっている」
男が席から立つと彼女の前に移動してくる。
「まぁ、まずは座りなよ。話はちゃんと聞くからさ」
「あ、はい! 失礼します!」
デスクの前にある、テーブルを挟んで置かれたアンティークなソファ。レテリアが座ると、男もゆっくりと移動し、目の前に座った。
すると、いつの間にそこに居たのか、腰まで伸びる金髪が特徴的な女性が立っていた。
「この事務所でメイドをしております」
名前は名乗らず、挨拶をしてきたメイドはレテリアの前にコーヒーを出す。
「あ、私は苦い飲み物は――」
「――苦手なのですよね?」
メイドはレテリアよりも先に答えた。
「お砂糖とミルクも用意しました」
先程のまるで先を読んでいたかのような発言や、あまりの準備の良さに少し恐怖すら感じる。
そんなレテリアの心情を知ってか知らずか、目の前の男が本題を切り出した。
「さて、今回の依頼についてお話頂けるかな?」