異世界探偵は推理をしない(仮) 作:赤レンガ
依頼の内容は一ヶ月前に遡る。
場所は迷宮図書館と呼ばれる、王都内で一番の大きさを誇る図書館内で起こった。
「レテリア、『海に住む魔物の生態系について』っていう本を探して欲しいんだけど頼める?」
「わかりました」
「ありがとう。よろしく! よろしく!」
レテリアはこの図書館で働く職員であり、一番の下っ端のためよく雑用を任されていた。
この日もいつものように、先輩であるリリィから頼まれた本を探すため迷宮のように広い図書館内を歩いていた。
「うーん。見つからないな〜」
国の内外から集められた多くの書物の中から一つを探すのはやはり難しく、レテリアは自力で探すのを諦めた。
「やっぱり、コレで探すのが早いのかな」
彼女は水晶の柱の前に立つ。水晶は人よりひと回りほど大きく、文字のようなものが浮かんでいた。
これは、迷宮図書館内の幾つかの魔法的システムにアクセスする為の魔法具――魔法的な道具の総称――と呼ばれるものだ。
「私、これ使うの苦手なんだけどなぁ」
レテリアは不満を
しばらく操作をしていると、システム内に妙なエラーを見つけた。
「これって……」
「随分時間がかかってるみたいだけど、どうした? どうした?」
すると、後ろからリリィが声をかけてきた。
「リリィ先輩……」
自身の仕事を済ませたリリィはレテリアの様子が気になって見に来たようだった。
「で、どしたの? どしたの?」
「実は変なエラーが……」
「んー? どれどれ?」
「あれれ? 魔法警備システムが作動してるね。でも、これはこれは……」
リリィの話によると、迷宮図書館の最奥にある禁書庫の魔法警備システムが作動したした履歴があったらしい。しかし、その魔法警備システムがエラーを起こしていたのだという。
これは迷宮図書館の長い歴史の中で、一度も起こったことの無い出来事だという。
「これは、カンチョーに相談かな〜」
「分かりました。館長に報告してきます」
「うん、ワタシはもう少し端末を調べてみるから」
レテリアは「よろしく、よろしく」と手を振るリリィを背に、急いで館長を呼びに行った。
「どうやら、禁書庫に侵入者があったみたいね」
館長は端末を操作しながら呟いた。
禁書庫とは、迷宮図書館でも希少かつ危険な書物を保管している場所である。禁書庫は他の書物とは別で隔離し、厳重に魔法によって管理されている。そこに侵入者となれば大問題のはずである。
しかし、館長はあまり焦った様子がなかった。
「防衛システムが作動していないようだね」
「というと?」
「侵入者は居るが、禁書庫の棚に全く触れていないということだよ」
そもそも何度か侵入した痕跡はあるものの、それ以外は何も無かった。
魔法警備システムのエラーを考慮して、館長が禁書庫の確認を行ったが、特に異変もなかった。
禁書庫の魔法警備システムは迷宮図書館の最重要機密である為、一般の魔術師に警備システムをみてもらう訳にもいかなかった。
「それに
「それは、大変大変!」
リリィは大袈裟に騒ぐ。
「仕方ない」
館長は後ろに控えていたレテリアの方へ振り返った。
「レテリア、ちょっとお使いを頼まれてくれないかい?」
「お使いですか?」
「ああ、ここは探偵さんにお願いしよう」