異世界探偵は推理をしない(仮) 作:赤レンガ
一通り話終えた、レテリアは目の前のコーヒーに手を付ける。
(甘くて、飲みやすい……)
レテリアは一息をついたあとに目の前男を見る。
(それにしても、この人に頼ってどうにかなるのかな?)
レテリアは図書館の館長に言われ、この探偵事務所を訪ねた。しかし、正直に言って彼が何とかできるとは全く思っていなかった。
そもそも、探偵という物語等でしか聞いたことの無い職業を名乗る男をすぐ信用なんて出来るわけもなかった。
(館長があれほど信用してるのだから、全く信用していない訳では無いけれど)
目の前の男は突然、懐から黒革の手帳らしきものを取り出す。
「ふむ……」
手帳を読みながら、再び考える素振りを見せた。
「あの……。お話は聞いておられたでしょうか?」
「え、ああ。聞いてる聞いてる」
手帳をパタンと閉じ、レテリアの目の前に向き直った。
その表情はまるで全てを悟ったかのようで、彼の赤黒い瞳がレテリアの心まで覗き込んでいるかのようにすら感じる。
何もかも見透かされそうな雰囲気にレテリアは思わず息を飲んだ。
「つまり、猫探しの依頼ってことだよね?」
「え……」
予想外の言葉にレテリアは言葉が詰まった。
一体話のどこに猫が出てきていたのだろう。彼女は脳内で思考を巡らせるが、全く分からない。
「えっと猫って――」
「よし」
レテリアの言葉を遮るように探偵――カイ――は立ち上がった。
「早速現場に行こう」
突然の流れにレテリアが戸惑っていると。
「では参りましょう」
いつの間にか、机の上のカップ等が片付けられていた。準備を終わらせたのか、手にカバンを抱えた金髪メイドが扉の前で待機していた。
「えぇ……」
恐ろしく早く、自然な流れに反応する間もなく現場に向かうことになった。
現場――迷宮図書館――に着いた一行は早速調査を行う事となった。
「どーも! ワタシはこの迷宮図書館のアイドル。リリィちゃんでぇーす!」
迷宮図書館は名前の通り、迷宮のように広い図書館である。その為に探偵一行は案内役としてレテリアの先輩であるリリィと一緒に行動することになった。
「分からないことがあったら、このリリィちゃんにお任せお任せ!」
キラッ! という効果音でも着いてきそうなウィンクとと共に決めポーズをキメる彼女に、レテリアは「またか」とでも言わんばかりの表情を浮かべる。
「して……」
リリィは額に手をかざし、わざとらしく辺りを見渡す。
「
その場には、メイドとレテリアのみ。カイの姿が見当たらない。
「いえ、その……。入ってくる時には居たんですけど……」
迷宮図書館の受付は入口か少し進んだ先にある。
そこまで長い通路ではないのだが、その受付に行くまでの間に居なくなっていたのだ。
誰も気付く間もなく。
「彼は……」
すると、メイドが口を開いた。
「まぁ、よくある事です」
よくある事らしい。
「うーん。探しに行ってもいいけど、入口からここまでは殆ど一直線だしここで待って置いた方がいいよ!」
という事で、少し雑談でもしてカイを待とうという事になった。
「そういえば、金髪メイドさんのお名前はなんて言うの? なんて言うの?」
そういえば、レテリアも彼女の名前を聞いてはいなかった。
「私はメイドですので、名前なんて名乗るほどでも……」
「そういうのいいから〜。教えて教えて!」
控えめな態度の金髪メイドに対してもリリィは食い下がる。
「では、
「それじゃ、レイちゃんね!」
などと話していると何故か受付の先から待ち人の姿が現れた。
「お待たせ」
「にゃん」
謎の黒い猫を抱えていた。
「ん〜。ここペット禁止だけど、そのニャンちゃんはなに? なに?」
「それに、どうして奥から?」
「まぁまぁ……」
「あれ? その猫って……」
すると、レテリアが何かに気づいた。
「その猫って確か、希少な
レテリアが前に『希少な魔獣集』で見たものにそっくりだった。
「へぇー、この子迷い猫って言うんだね! ね!」
「はい。そしてその空間を飛ぶ能力は時に周りにも及ぼす事があると、本には書いていました」
「なるほど! つまり、探偵さんはこの迷い猫のせいで図書館の奥に飛ばされちゃったと! でも見つかったし、安心安心!」
リリィの発言に、レテリアははっとした。
「もしかして、この猫が禁書庫への侵入者?」
「ああー! 確かにそうかも! そうかも!」
迷い猫はどんな場所や空間でも飛んでいける。そのため、迷い猫が普通侵入出来ないはずの禁書庫に入り、直ぐに出たのなら全てに説明がつく。
防犯システムにエラーが出たのも納得である。
「まぁ、猫は見つけたし事件は解決かな」
レテリアは思い出した。
探偵は依頼内容を聞き「猫探しの依頼」と言った。てっきり、彼女は探偵が話を聞いていないのだと思っていた。しかし、そうではなかった。
(彼は、ここまで読んでいた……?)
レテリアの依頼内容や当時の状況、それらを聞いた上でこれが迷い猫の仕業であると気付いてたのかもしれない。
思えば、レテリアが探偵事務所を訪れた際もまるで
まさか彼は。
(未来が見えている……)
そこまで考えてレテリアは自分の考えを否定した。
いくらこの世界が、魔法やスキル溢れるファンタジーな世界であったとしてもそんな事が有り得るわけがないと。
(異世界探偵……)
レテリアは少し、彼に対して興味が湧いた。