異世界探偵は推理をしない(仮)   作:赤レンガ

4 / 7
ボツ4

 

 朝日の光が窓から入り込み、あまりの眩しさに男は目を覚ます。

 

 異世界探偵――カイの一日の始まりである。

 

「おはようございます」

 

 ベットの脇から声がし、顔を向けると見知った顔があった。

 

「おはようレイ」

 

 金髪メイド、レイである。

 いつから控えていたのか、等と考えていた時期がカイにもあったが、長い付き合いにもなるとあまり気にしなくなる。

 

 いつも通りの朝。身支度をし、レイの用意した朝食を済ませるといつものデスクに向かう。

 

 レイに用意してもらったブラックコーヒーを飲みながら黒革の手帳を読むのがいつもの日課だ。

 

(苦い……)

 

 カイは甘党である。その為、砂糖やミルクが入ったコーヒーでないと飲めない。しかし、渋い探偵はブラックコーヒーを好んで飲むという勝手なイメージから、レイに一度ブラックコーヒーを頼んで以降、ずっと同じものを入れてくれている。

 ついでに言うと、カッコイイからという理由で我慢して飲んでいるのだ。

 

(でもやっぱり慣れないな……)

 

 などと心の中で愚痴(ぐち)りながら、手帳をペラペラとめくる。

 しかしそこには何も書いてはいない。

 幾つかめくると、やっと記述のあるページを見つける。

 

『今日の依頼主は迷宮図書館の司書、レテリア』

『彼女はあまりコーヒーが得意ではないようで、ミルクと砂糖が必須』

 

 そう。この手帳には未来に起こる出来事が書かれているのだ。

 

「レイ、もうすぐ客人がくる。ミルクと砂糖も用意して欲しい」

 

 そういうと、レイは直ぐに準備に取り掛かった。

 

(今日も手帳で依頼解決しないとなー)

 

 カイは異世界探偵などと銘打っておきながら、推理はからっきしであった。

 しかし、なんだかんだこの手帳を使って色々な事件を解決してきたのだ。

 

 すると、下の玄関の方から扉の軋む音がした。客人のようだ。

 カイは慌てて準備をする。

 探偵足るもの、かっこよくミステリアスな雰囲気を出さなければならない。カイのこだわりである。

 

(最初は後ろを向いておいて、依頼主が来たタイミングで振り向く)

 

 自身の脳内で何度もイメージ、練習したカッコイイ探偵像を思い出す。

 

「ようこそ、『異世界探偵事務所』へ」

(ふっ……。決まった)

 

 目の前の依頼人――レテリアの困惑する表情に、思惑通りの演出が出来たのだと満足するカイ。もちろん、顔には出さず心の中でだ。

 

 まずはレテリアをデスク前の席に促す。

 いつもの流れ。これでも探偵として多少は名が知れてると自負するカイだが――そもそも、探偵を名乗っている者は彼のみである――これまで幾つも依頼を受け持ってきたのだから、依頼を受けるまでの流れはカイの中で出来ていた。

 

 二人が席に着くと、タイミングよく現れたレイがコーヒーを二人の目の前に運ぶ。

 やはりレテリアは、先にミルクと砂糖が用意されている事に少し驚いたようだ。

 

「さて、今回の依頼についてお話頂けるかな?」

 

 いつもの流れで依頼主から依頼内容を聞く。

 

(と言ってもいつも話長いんだよね)

 

 語り始めた依頼主(レテリア)に対し、懐から取り出した黒い手帳を開き、適当に相槌(あいづち)をうつ探偵(カイ)

 

(新しいページ、出てきたかな?)

 

 この黒い手帳には未来の出来事か記される。

 しかし、それはどのページのどこに記させるか分からない。いつの間にか書かれて、いつの間にか消えている。そんな感じだ。

 

(お、あった)

 

 幾つかページを捲っていると、新たな記載がされたページを見つけた。それと同時に、レテリアの話も終わっていたようだ。

 

「あの……。お話は聞いておられたでしょうか?」

 

「あぁ、聞いてる聞いてる」

 

 もちろん、全く聞いていなかった。

 あまりのタイミングの悪さに、カイはてきとうな返事をしてしまう。

 

 カイがなにか返事をしようと、咄嗟に手帳に書かれていたことを思い出す。

 一瞬のことであまり詳しく見ていなかったが「猫を見つけた」という一文があった事を思い出す。

 

「つまり、猫探しの依頼ってことだよね?」

「え……」

 

 レテリアが困惑した表情を浮かべ、カイは察した。

 

(絶対違うやーん)

 

 レテリアは「この人何を言ってるんだ」とでも言いたげな表情を浮かべる。これでは、最初に彼女に与えたミステリアスな探偵というイメージが崩れてしまう。

 

(それだけは避けねば……!)

 

 カイは何とかこの状況を打開しようと思考を巡らせる。

 

「えっと猫って――」

「よし」

 

 わざと言葉を被せるように声を張り、立ち上がるカイ。

 

(ここは強引に行くしかない……!)

 

「早速現場に行こう」

 

 レテリアに何も言わせる間もなく、準備を始めるカイ。そして、いつの間にか扉の前で準備を終えたレイが待機していた。

 

(どうにかなるだろう)

 

 強引に話を進めたカイに、流される形で現場へ向かうこととなった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。