異世界探偵は推理をしない(仮) 作:赤レンガ
「ちょっとお遣いを頼みたいんだけど」
自らの主である、目の前の青年。
メイドは彼の言葉の裏を瞬時に読み取った。
(お遣い、つまり情報収集指示の隠語……)
(彼はいつも、周りに悟られないように
メイドは一瞬にして思考を巡らせ、カイが求めるものを脳内にリストアップする。
「はい、承知しております……」
(彼が求めるものを迅速に集める。これが私の役目……)
彼女は『家政派遣サービス』のメイドで、交代制でこの異世界探偵事務所で家事等の代行を行ってる。というは、表の顔である。
実際は
もちろん、これについては助手であるレテリアの知るところではない。
つまり、彼女はメイドという表の顔を持ちながらカイの為に暗躍する「裏の世に生きる者」ということでもある。
彼女はいつものように、主からの命を受けて行動を開始する。
(全ては彼のため……)
カイが黒と言えば黒であり、白と言えば白である。
つまり、カイが今回の事件にヘルメス家の関わりがあると言うのであればそうなのだ。
彼女が行動するのには理由など要らない。
早速メイドは行動を開始する。
まずは組織のアジトへ向かい、組織の幹部を緊急招集する。
幹部はそれぞれの管轄の仕事が立て込んでおり、基本的に揃う事はないのだが、今回は必要なだけの人数は揃っていた。
「さて、今回はヘルメス家について……。確か、ここは"百鬼"が調べてるはずでしょう……?」
「ああ"零"」
「ああ、今回掴んだ情報を基本情報を含めて話そうと思う」
ヘルメス家は代々、ヘルメス商会という大商会を営む家系でありある特徴を持った家系でもある。
それが家系スキルと呼ばれるものである。
スキルとは、この世界に生まれた者ならば誰もが持つ天から与えられた恩恵である。という考え方が一般的であり、それこそが個性であり才能であるという認識だ。
しかし、一部において継承という条件があるスキルを持つ者がいる。
例えば、ひとりが生まれ持ったスキルを継承という形で近親者に受け継ぐことでのみ発現させることがでこる。
つまり、本来は人それぞれ違うスキルを持って生まれる事が普通なのだが、この家系スキルは普遍的に代々受け継ぐことの出来る異端なスキルである。
さて、そんな家系スキルがあるヘルメス家であるのだが、この度その家系スキルの継承の義を行うという。
ヘルメス家において、伝統的に代替わりの度に行われてきた継承の義であるのだが、毎度新しい代の人間が目利きし自ら手に入れた品物を先代に見て貰うというものである。
「そして、その品物が恐らくその事件に関わっているとね……」
「そういうことだ」
ガタイのいい男――百鬼はさらに続ける。
「この件には、アルテア教団が関わっていると考えられる」
「アルテア教団……」
アルテア教団とは、この大陸全土に強い影響力をもつ宗教組織であり、全ての
通称A教団と呼ばれる組織であるのだが、百鬼や零が所属する組織とは敵対している。
彼らとの関係については、また後々語るとする。
強大な影響力と知名度を誇るそのA教団であるが、彼らには影がかった部分もあり、それが今回の件と関わりがあると言うことであった。
「零、今回もあの方は……」
「ええ百鬼。彼はいつだって私達に道を示してくれる……」
零――彼女にとっては何ら意味のない、ただ個体を識別するための名前。彼女にとって大事なことは自身の主人であるカイの役に立つことだけ。『家政派遣サービス』という表向きな関わりだけではなく、自身の命すら彼の為ならば惜しむことは無い。
二人の関わりは人間の時間でずっと昔からの付き合いである。
しかし、
もちろん、彼女の人生において彼との出会いが一番の転機であり、最も印象深い出来事だからでもある。
「我々は時の管理人――クロノス。我々の時は彼の為にある……」
(メモ)ここをもう少し伸ばしたい。
【零(あの金髪メイド)】
・裏組織クロノスの幹部で、クロノスはアルテア教団(通称A教団)と敵対している。
【アルテア教団】
・大陸全土で認知される宗教組織であり、スキルは神アルテアによってもたらされた恩恵であると考えられている。