BEGINNING OF THE REVOLUTION 作:スタイニー
キョウエイプロミス・ミスターシービー・カツラギエースの夏シーズンの成長の成果はいかに?
10月9日 東京レース場
重賞 毎日王冠
残り300m地点、最後に坂があります。
タカラテンリュウ、タカラテンリュウが僅かに先頭か!?
そして、イーストボーイはタカラテンリュウの内に入ろうかというところ。
外の方からはキョウエイプロミス!
「外への持ち出しのタイミングはOK。あとはスパートをかけるタイミングだけど、この距離感なら本番でもタカラテンリュウを捕まえられるかな…」
さあ、200を切りました!
タカラテンリュウ先頭!
イーストボーイが来た!
イーストボーイが来た!
イーストボーイが届くかどうか!?
イーストボーイが内から詰めるが、届きません!
勝ったのはタカラテンリュウ!!
逃げ切りました!
「復帰戦は3着か。勝てなかったが、成果は思った以上だったな」
観客席からレースを見守った政男はキョウエイプロミスの出来に手ごたえを感じる。
10月2週目、キョウエイプロミスの復帰戦。10ヶ月の休み明けということもあり、戦前に政男はキョウエイプロミスにこう伝えていた。
レース勘の取り戻しを最優先に考えろ。特に最終直線の入り方と先頭との射程距離を正確に測ることを第一優先にして、スパートはかけずに8割くらいの力で追いかけるだけでいい。
政男としては毎日王冠の連覇よりも、天皇賞のための予行演習が重要だった。そのため、必要以上なスパートはしないという制約をかけてレースに臨ませた。
スパートをかけないので、当然勝てるとは思っていないのだが、勝者とのタイム差が0.5秒以内に収まったことは、政男の期待をいい意味で裏切る結果となった。
「プロミス。お疲れ。どうだった、10ヶ月ぶりのレースは?」
レースを終え、地下道を通って帰ってきたキョウエイプロミスに政男が声をかける。
「楽しかったよ。まあ、それはそれなんだけど、とりあえずスパートまでの位置取りと先頭との距離感は掴めた。レース勘を取り戻す目的もしっかり出来たかな」
政男の問いかけに対して、キョウエイプロミスは淡々とした口調で答えるが、その表情にはどこか満足感がある。
「楽しかったか…。本当に変わったな、お前。前だったら負けたことにもう少し感情的になっていたはずだが、今は良い意味で余裕がある」
キョウエイプロミスの表情に何かを感じ取った政男が優しい表情で語りかける。
「どうだろうね。そもそも完走すればいいって思ってたし、勝つことにこだわってないだけだよ。それに1800の毎日王冠を勝てたって、3200の天皇賞に勝てる保証もないから、負けて悔しいも何もないでしょ」
感慨深そうな政男をよそに、キョウエイプロミスは淡々とした口調で冷静な見解を述べる。
「まあ、それはそうなんだが…[自覚はないのか…。お前からレースの感想の第一声に『楽しかった』なんてフレーズを聞くのはかなり久しぶりなんだが…]」
本人に自覚はないが、明らかな変わり身があるキョウエイプロミスに政男は期待を抱く。
「とりあえず、あと3週間は呼吸の整え方とペース管理を意識したロングランを中心にトレーニングしていけばいいでしょ?」
「ああ、そうだな。本番は末脚勝負じゃなく、消耗戦に持ち込みたいからな。そっちの方がお前の持ち味を活かせるし、何より脚に負担がかからない。勝つことも大事だが、残りの3戦の完走を目指すなら過度な負荷は避けるべきだろう」
キョウエイプロミスの希望通りに、引退までの4戦全ての完走ができるようなレースプランを政男は提案する。
「そうだね…マサさん、いつもありがとね。アタシに気を遣ってくれて。感謝してる」
そんな政男の気遣いにキョウエイプロミスが若干改まった感じで、感謝の意を表する。
「なんだ?いきなり改まって。いつも通りのことだろ?礼を言われるようなことじゃない、当たり前のことだ」
政男はいきなり改まったキョウエイプロミスの態度に驚きつつ、大したことではないと謙虚な姿勢をとる。
「…まあ、それはそうなのかもしれないけど、なんかね…。久しぶりにレースをして思ったんだ。アタシは"1人で"走ってないんだなって。誰かに支えられて、誰かに見守ってもらって走れてるんだなってさ。とりあえず、あと3ヶ月よろしくお願いします」
そう言ってキョウエイプロミスが深々と頭を下げる。
「本当に、お前は変わったよ…。頑張ろうな、あと3つ…」
深々と頭を下げるキョウエイプロミスを政男は感慨深げな表情で見つめていた。
天皇賞まであと3週間。なんとなくだけど、いい状態で本番を迎えられそうな手応えがあったアタシの前哨戦。ただ、悲しいかな、世間的にはどーでもいいんですよね。
なんでかって?それはアタシらの前哨戦は"前座"なんですから。前哨戦の"メインイベント"が2週間後にあるんですから。
10月23日
重賞 京都新聞杯
クラシック第3戦、菊花賞の前哨戦。
カツラギエースにとってトライアル2戦目となるレースだが、それ以上に注目を集めた理由が…
ミスターシービーの復帰戦
夏の順調さを欠いていた春の二冠ウマ娘、ミスターシービーがついにターフに戻ってきたのだ。
10月に入り、もともと復帰戦と仮定していたセントライト記念への出場が不可能だと判断したミスターシービー陣営は、復帰戦を京都新聞杯に変更した。
ミスターシービーのようやくの復帰戦に加えて、もともと揃っていたメンバーもなかなかに豪華だったため、秋のトライアルの注目度は瞬く間にこのレースに集まった。
ミスターシービーの対抗筆頭は、もちろんカツラギエース。それに続くのは前走でカツラギエースを破り、評価を高めてきているスズカコバン。その後には西のジュニアチャンピオンのダイゼンキングと今年の函館記念でシニア級の選手たちを破ったドウカンヤシマと続いている。
世間的にはミスターシービーの勝利が期待はされてはいるが、ミスターシービーが夏を順調に過ごせていない情報が広まっているので、楽なレースにはならないだろうと予想されていた。
「シービー、調子は?」
「最悪だね。楽しみなレースの前にこんなにコンディションが悪いことは生まれて初めてだと思うよ…」
レース直前の控え室。室内は重苦しい雰囲気が充満していた。
そんな中、寺永は調子のほどをミスターシービーに尋ねるが、当の本人は苦笑いしながら、出来栄えの酷さを淡々と自虐する。
「お前がそこまで言うほどなのだから、よっぽど酷いのだな。しかし、そんな状態でなぜこのレースを走る?セントライト記念はあっさりとパスしたのに、なぜこのレースに出ることには拘ったんだ?」
そんなミスターシービーに対して寺永は怒るわけでもなく、呆れるわけでもなく、暖かい眼差しで彼女を見つめる。
「…エースが出るんだ、このレースは…。だから、どうしても出たかったんだ。たとえ、コンディションが悪くても、勝ち目が薄いとわかっててもね…」
寺永に理由を尋ねられたミスターシービーは少しはにかみながらポツポツと理由を語る。
「コンディションが良くても、勝てるレースだったとしても出場をごねることが日常茶飯事なお前の口からそんな言葉が出るとは意外だな。一応聞くが、お前がそうまでして、走る理由はなんだ?」
そんなミスターシービーを見て寺永は少し笑う。そして、より深い理由を聞く。
「エースと走るととにかく楽しいんだ。理由は一番の理由はそれ。それと…」
「それと?」
「それと、エースがこの夏で成長してると思ったから、走りたかった。エースはいずれアタシの"ライバル"になる。アタシはそんなエースとのレースを1レースだって逃したくない。だから、コンディションがどうであっても走りたかったんだ」
続けて理由を語るミスターシービーの表情は先程とは違い、少しだけ悔しさが滲んでいる。
「そうか…。なあ、シービー。お前はこの学園での生活を楽しんでいるか?」
「えっ?なんか、その質問昔も聞いたよね?」
「たぶん、聞いたが今は今だ。どうなんだ?」
「もちろん、今も変わらずに楽しいよ」
「そうか。それはよかった。さあ、そろそろ時間だ。行きなさい。無理はしなくていい。怪我だけは気をつけろよ」
「うん…行ってきます…」
寺永の励ましを受け取ったミスターシービーは静かに控え室を出て行った。
「おう!シービー!調子はどうだ?って言っても、今更ダメか。まあ、無理はすんなよ!」
ゲート前。準備運動をするミスターシービーにカツラギエースがいつものように元気に話しかける。
「そうだね。見ての通り、調子はすこぶる悪いよ。今日は全然いい走りは出来そうにない。ごめんね…せっかく久しぶりのレースなのに…」
そんないつも通りのカツラギエースにミスターシービーは少しだけ、気まずそうな表情をし、カツラギエースに調整の失敗を謝罪する。
「あん?なんで謝るんだ?調子が悪くても、いい走りが出来なくても、楽しめるだけレースを楽しもうぜ。あたしらはいつもそうやってきたろ?」
気まずそうにするミスターシービーに対して、カツラギエースはあっけらかんとした表情で気にしていないようだ。
「ハハハ…。相変わらず、エースは気持ちがいいね。アタシも精一杯楽しんではみるよ」
「おう!それでいいんじゃねぇか?とりあえず、今日のあたしは絶好調だ!シービー!見ておけよ!今日はこの夏の成長をお前に見せつけてやるからな!」
「わかった。見ておくよ」
「おい!その感じ、全然信じてないだろ!?舐めやがって!その余裕な感じを今日なくさせてやるからな!」
「アハハ…舐めてはないよ。アタシはエースがアタシのところまで来てくれることをずっと待ってるんだから。それが少しでも早くなってくれた方がいいんだ。だから、見せてよ。今日、君がアタシのところまで来ることころを」
「おう!任せとけ!じゃあ、また後でな!」
「うん」
やっぱり、誰かと一緒に走るって楽しい。
アタシの脚がどんなに速くても、やっぱり独りで走るのはつまらないから。
そして、この学園でエースと出会えたことでその想いはより強くなった。
まあ、出会いのきっかけは笑っちゃうような話だったけどね。
それでも、アタシはエースに感謝してる。
本当に、ありがとう…。
準備が整いました、15名!
距離2000m、菊花賞トライアル、京都新聞杯!
ガシャン!
さあ、ゲートが開いた!
ちょっと内の方で2名が出遅れました。
さあ、先行争いでありますが、カツラギエースが行くのか?ずーっと外からドウカンヤシマ、栗東の逃げウマ娘か?
おっと、リードホーユーが行った!リードホーユーが行った!
「スタートは上手くいったが、ホーユーのヤツ、今日はホントに逃げんだな…。じゃあ、あたしはその後ろから…」
好スタートを決めたカツラギエースだったが、内側からダッシュをつけたリードホーユーが行くとみると、無理に先頭には立たず、2、3番手の位置で様子を見ることを決める。
「ポジションはいつも通り、でも脚は重いまんま…。とりあえず、アクシデントだけは避けないとね…」
一方のミスターシービーはいつも通りのスタートにいつも通りのポジションを確保する。ただ、調子の悪さと不慮のアクシデントを気にして、いつもと違うレースの進め方を考えていた。
さあ、ちょっと早いペースかもしれません!
前がビュンビュン、ビュンビュンと飛ばしていきます!
先頭は依然として、リードホーユー。
2番手にドウカンヤシマ。
3番手にカツラギエース。
リードホーユーが作った速い流れに全員が乗ったことで、大きな動きもないまま、あっという間に第3コーナーへと差しかかる。
[少しペースが早い気がするけど、リズムは一定だったから走りやすかったな。かなり脚も溜まってる。4コーナーを抜けたら外に出て、ホーユーとヤシマを捕らえに行くぜ!]
3番手を走っていたカツラギエースが勝負所と仕掛け方を決める。本人的にも道中をいいリズムで走れていたことで、仕掛けにはかなり自信を持っていた。
そして、ミスターシービーは外へ行った!
ミスターシービーは外へ行きました!
青い体操服ただ一つ、グングン上がって行く!
外からずーっと差を詰めようとするミスターシービー!
「とりあえず、仕掛けてはみるけど、どこまで行けるかな…。なんとか、エースの側までは行きたい…」
カツラギエースがスパートの仕方を決めていた頃、後方待機していたミスターシービーが仕掛けはじめる。
さあ、青い体操服が一気に差を詰めてきた!
調子が悪いため、皐月賞やダービーで魅せた力強い脚色はまったくない。しかし、そこは腐っても二冠ウマ娘。調子が悪いとはいえ、決して平凡ではない天性の加速力で一気に捲りをかけていく。
さあ、第4コーナー!ミスターシービーはどこへ行くのか!?
[いつもの感じならここから中央突破を狙いなんだけど、今日はバ群の中に"道筋"が見えてこない…どうする?]
本来であれば、中央突破を狙いたい。
しかし、今日のコンディションではいつもは見えている道筋が見えてこない。そんな中でミスターシービーがとった行動は……
おーっと、ミスターシービーはちょっと、ちょっと、内側に差さっている!!
これから届くのかどうか!?
ミスターシービーは届くのかどうか!?
[何やってんだろ、アタシ。やっぱり、どう考えても中央からは無理だよね…。結局、前が詰まってゲームオーバーだ。あーあ、身体が思うように動かないし、息が上がって頭も回らない…。我ながら酷い走りだ]
最終コーナーを回り、直線を向いたミスターシービーは道筋が見えないまま行き当たりばったりに内側へ突っ込むが…。案の定、前詰まりを起こしてしまい、袋小路から出れなくなってしまう。
ミスターシービーは中団か!?
ミスターシービー!ちょっとピンチか?
ミスターシービー!これはピンチか!?
[これはさすがに無理だ…。アタシは勝てそうにないけど、エースはどうかな…]
袋小路で身動きが取れなくなり、万事休すのミスターシービーがカツラギエースを探すために前に目をやると…
さあ、先頭はカツラギだ!!
[ああ、エースはあんなところにいる…。本当に強くなってるな…。このまま粘れば、十分勝てるね]
ミスターシービーの見上げた先には、先頭を走るカツラギエースがいた。そして、その脚色はかなり良く、このまま失速がなければ間違いなく勝てそうな状況にあった。
「シービーのヤツは来ないか…。わかってたことだけど、やっぱりあんたが来ないと、勝ててもつまんないぜ…。でも、だからって、手は抜かねぇ!これならどうだ、シービー!?あたしはあんたに近づけてるか!!?」
グン!!
「!!?」
カツラギエースが先頭だ!
カツラギエースが先頭だ!
カツラギエースが"完全に"先頭に立った!!
その末脚はカツラギエースの実力が世代のNo.2の位置にあることを知らしめるには十分なものだった。
先頭で粘っていたドウカンヤシマをジリジリと追い詰めていたカツラギエース。その追撃だけでもカツラギエースの実力が非凡であると証明できるものであったが、周囲を驚かせた出来事は、ドウカンヤシマを捉えた直後に起きた。
ドウカンヤシマを捉え、単独先頭に躍り出たカツラギエース。その姿を見守る者たちは皆思っていた。『このまま粘りこんで押し切るだろう』と。
会場の誰しもがそう思った瞬間にカツラギエースは渾身の末脚を披露する。その末脚はそれまで先頭集団でレースを引っ張っていた者とは思えぬほどの切れ味があり、以前、彼女がNHK杯で魅せた"中団から"の鮮やかな差し足と同等の切れ味を発揮していた。
カツラギエースがドウカンヤシマを捉え、身体を半身ほど抜け出した地点はゴールまで残り200mの位置。そこからカツラギエースはたったの200mで2番手に6バ身もの差をつけたのだ。
先頭を捉えた時点でカツラギエースが勝つと予想した者は多数いたが、ここまで差を広げる圧勝劇になると思った者は会場内には"ただ1人"しかいなかった。
「そうだ、エース。全員に見せつけてやれ。ミスターシービーの『ライバル』になりえるのはお前しかいないってな!!」
カツラギエースを受け入れて2ヶ月。土浦はカツラギエースにハードなトレーニングを課しつつ、あることを覚えさせた。
自身の身体の精密なコントロール
もともとカツラギエースの実力を高く評価していた土浦。
一方でカツラギエースを間近で見るようになったことで、カツラギエースの欠点が気性面にあることを土浦もハッキリと理解した。
ただ、カツラギエースの気性面の荒さが自身の感情の昂りから来るものではなく、周囲に敏感になりすぎる繊細な気質からくる集中力の乱れが原因だと土浦はある時に気付く。
原因がわかった土浦はその集中力の乱れを改善するために、カツラギエースに身体の関節や筋肉、重心移動などを意識させるトレーニングを徹底した。自分の身体に意識を通わせることで、周囲の余計な情報を遮断しようとしたのだ。
結果、そのトレーニングは功を奏し、カツラギエースは走る際に自身の身体に意識を巡らせる癖がつき、多少の周囲の環境では心を乱されることがなくなった。そのため、適性距離の中距離においては、先行しながらでも鋭い末脚を発揮できるようになったのだった。
2番手、2番手にはドウカンヤシマ!
内から内からはリードホーユー!
ミスターシービーは現在4番手!
レースの勝敗は既に決していた。
粘るリードホーユーにもドウカンヤシマにも独走するカツラギエースを捉える余力はもうない。
2番手3番手でさえ、そのような状況なのだから、そこから更に離されている4番手以下の選手たちにも当然カツラギエースを捉える術はなく、皆流し気味に走っている。
しかし、そのような状況下で"1人だけ"全力の末脚を発揮する選手がいた。
「やっぱり、エースは最高だ!」
それは先程、袋小路に突っ込み身動きが取れないままレースを投げていたミスターシービーだった。
「ああ、アタシは何をやってるんだ!待ち望んでいたことが今起きたのに、アタシは何も出来ないなんて!」
まるで、カツラギエースの渾身のスパートに居ても立っても居られないかのように、ミスターシービーの身体は反応していた。
その息の吹き返しは、たったの100mではあった。しかし、バ群をこじ開けながら力強く抜け出す姿は、彼女の完調時のパフォーマンスとなんら遜色なく、復調の兆しを観客に植え付けるには十分だった。
「エース!今日のアタシはこれが限界だけど、次のレースは完璧なアタシでいくよ!見ててね!」
ミスターシービーがものすごい脚で抜け出してきたが、これは4番手まで!
勝ったのはカツラギエース!
6バ身差の圧勝で菊花賞への弾みを付けました!
「やったぜ!エース!」
「やってやりました!トレーナーさん!」
レースを終えて意気揚々とターフを後にしたカツラギエースを土浦がハイタッチで出迎える。
「完璧なレースだったぞ、エース!やっぱり、俺の見込んだ通りのヤツだ!この世代がミスターシービーの1強じゃないってことを魅せつけてやれたな!」
カツラギエースを褒める土浦の表情は満面の笑みだ。
「ありがとうございます!でも、まだまだですよ。アイツは次のレースは完璧に仕上げてきます。完璧なシービーに勝って初めて勝ったって言えますから。まだまだ、気は抜かないです!」
土浦の称賛に対して、カツラギエースは謙虚な回答をするが、その表情には充実感が溢れていて、このレースがいかに手応えが良かったかを物語っている。
「いい心構えだ。よし、さらにトレーニングを積んでいくぞ!」
「はい!!」
土浦のチームに移籍しての初戦。
カツラギエースは見事なパフォーマンスで勝利を飾った。
「お疲れ。どうした?無理はしなくていいと言ったはずだが?」
寺永がターフから帰ってくるミスターシービーを迎える。ミスターシービーの担当となって初めての着外を喫してしまった寺永だが、その表情はまるでレースに勝てているかのように穏やかで笑顔に満ちていた。
「トレーナー。あと1ヶ月、アタシはアタシの限界まで追い込みたい。菊花賞を完璧なコンディションで臨めるトレーニングを作って!」
笑顔の寺永に対して、ミスターシービーもまた充実した表情で引き上げてきた。そして、寺永に菊花賞までのハードトレーニングを申し込む。
「珍しいな。いや、初めてか?お前がトレーニングに意見するなんて。どうした?ついに三冠を獲りたくなったのか?」
「いや、
「お前は変わったな…。お前がそこまで言うのなら、そうしよう。トレーニングはかなり厳しくなるぞ。弱音は受け付けないから覚悟しとけよ」
「大丈夫だよ。アタシを誰だと思ってるの?アタシはミスターシービーなんだから」
デビューして初めての勝ち負けにも絡めない大敗。しかし、寺永とミスターシービーに悲壮感はなく、むしろ手ごたえを感じているようだった。
キョウエイプロミス、ミスターシービー、カツラギエース。秋シーズンの主役になりうる面々の前哨戦はそれぞれがそれぞれの充実感の中で終わった。
トゥインクルシリーズの歴史が大きく動く、激動の1ヶ月がまもなく始まろうとしていた。
今回のレースで遂にカツラギエースがミスターシービーから勝利をもぎ取ります。
もちろん、ミスターシービーの調整不足があるため、実力通りかと言われるとなんとも言えませんが、それでもカツラギエースが2番手につけた6バ身差は同馬の実力を示すには十分なものだったと思います。
さあ、次回からいよいよ秋の八大競走戦線がスタートします。
よろしくお願いします。