BEGINNING OF THE REVOLUTION 作:スタイニー
その2日前に各国の代表が集う公式記者会見の場が設けられる。
開催国としての誇りを胸に壇上に立つキョウエイプロミスたち日本勢。
しかし、海外勢からすれば、その誇りなどは大したものではなく、終始侮られたまま会見が進む。
そして、あることをきっかけに会場の雰囲気は……。
「ねぇ、そろそろアタシのスピーチの番だよね…。ヤバい…ちょーきんちょーしてきた…」
「別に大丈夫だろ。ミスったからといっても笑われるだけだ」
「いやいや、テレビカメラも来てるんだから、笑われるだけじゃ済まないでしょ!?しかも、こんな雰囲気の中で、外国人に囲まれて、これでミスったら、正しく『日本の恥』だって!」
「ミスらなくてもテンパってたら恥ずかしいから、冷静になれ。はい、深呼吸」
「もー、自分は喋らないから冷静にいられるんでしょ!アタシの身にもなってよ!」
「はいはい」
ジャパンカップ本番の2日前。
東京の某所でジャパンカップの公式記者会見が行われていた。
スピーチの順番が迫っているキョウエイプロミスは隣にいる政男に不安を吐露するが、当の政男は冷静に淡々と一般論を述べるだけだ。
「続きまして、現在のトレセン学園の生徒会長のアンバーシャダイ選手!よろしくお願いいたします」
「はい!」
司会者に呼ばれたアンバーシャダイが、壇上へと歩いていく。その姿は、さすが生徒会長といったところで、緊張感を微塵も出さない堂々とした佇まいだ。
「まずは、海外から来られた皆様。遠い日本の地までお越しいただきありがとうございます。日本トレセン学園の生徒会長として、まずは感謝の言葉を述べさせていただきます」
「ほら見ろ。会長さんはあんなに堂々としてるじゃないか。お前もあれくらいやってみろ」
「いや、アンバーはああいう場に慣れてるんだよ。アタシは無理だって」
「じゃあ、笑われるしかないな。腹を括れ」
「…」
壇上で堂々としたスピーチをするアンバーシャダイを見習えと政男が言うが、キョウエイプロミスは自分には無理だと即答し、そんなキョウエイプロミスに対して政男が半笑いで覚悟を決めるように促す。
「さて、私は今回が2回目のジャパンカップ出場となります。2年前は私もまだまだ経験不足で不甲斐ない走りとなってしまいましたが、あれから私自身実績を作り、一昨年の有馬記念に勝ち……」
「ねぇ、トレーナー。アリマキネンて何?」
「ハイホーク、声が大きい…。日本のトップグレードのレースの一つだ」
[あっ、ごめん。でも
[日本は来年から導入だ。とりあえず、静かにしろ…]
[はーい]
アンバーシャダイのスピーチに小言を言ったのはイギリス代表のハイホーク。今年のイギリスのクラシック級のウマ娘で、このレースが引退レースになると公言している。
トレーナーの指摘で、最初に比べれば声のトーンは落としているが、それでも周りには丸聞こえである。
「ん、んん…えー、今年は春の天皇賞に勝ちました」
ハイホークの小言に一瞬戸惑うアンバーシャダイだが、咳ばらいを入れて仕切り直しをはかり、スピーチを再開するが……
「テンノウショウ?さっきの人も言ってたけど、何それ?」
「ハイホーク、やめろ。スピーチ中だ…」
「あっ、ごめん」
またしても小言を言ってしまったハイホークに対して横にいるトレーナーが先ほどより強い口調で制止する。トレーナーに苦言を呈されたハイホークはちょっとだけばつが悪そうにする。
「えー、私自身の成長をみなさんにお見せすると共に日本のウマ娘の力を皆さんにお見せしたいと思います。よろしくお願いします!」
パチパチパチ
「アンバーシャダイ選手、ありがとうございました」
アンバーシャダイは度重なる小言にもほとんど動揺することなく、見事にスピーチを終えた。
「では、続いてキョウエイプロミス選手!前へ」
「はっ、はい!うわー、もう来た…」
そして、呼ばれるキョウエイプロミス。司会者の呼びかけに体を震わせながら返事をする。
「まっ、頑張れよ!」
「くそ〜、マサさんの笑顔がムカつく…」
その姿に対して政男は笑顔で励ましを入れるが、キョウエイプロミスはその笑顔が馬鹿にされているように感じたのか、政男に軽く睨みを効かせながら、壇上へと歩いて行く。
「えー、みなさん、えー、こんにちは、えー、私は、えー、キョウエイ、えー、プロミスです」
登壇して、マイクのそばについたキョウエイプロミスが話し始めるが、目は泳ぎまくり、会話はしどろもどろだ。
["えー"が多すぎて、もはや何を言ってるかわからないな…。普段は冷静なのに、このスピーチだけはビビりまくっていたからな。まあ、精一杯の努力は認めてやるとして、景気付けに今日の夕飯は美味しいものを奢ってやろう]
キョウエイプロミスのスピーチの酷さに、政男は笑いが堪えられない。
普段は冷静で何事もそつなくこなすキョウエイプロミス。しかし、今回の記者会見のスピーチに関しては、普段の雰囲気からは想像がつかないくらいの取り乱している。付き合いの長い政男は初めて見るキョウエイプロミスの異常な取り乱し方が完全に"ツボ"に入ってしまっていた。
一応、政男も笑うだけでなく、あの手この手でキョウエイプロミスから緊張を取り除こうとしたが、まったく落ち着くことが出来なかったので、政男はむしろ、生暖かく見守る方針に切り替えていた。
「えー、私は。今年の秋の天皇賞に勝っていて」
「また、テンノウショウ?それに勝てるって、そんなに凄いの?」
「ちょっと、あなた!いい加減うるさい!」
三度のハイホークの小言に、今度は隣にいたウマ娘が立ち上がり苦言を呈する。ハイホークに苦言を入れたのはエスプリデュノール。フランス代表でハイホークと同い年のウマ娘だ。
「えっ?なに?なんか文句あるの?」
エスプリデュノールの苦言にハイホークがちょっとイラつきながら反論する。
「文句も何も、人のスピーチ中にうるさいと言ってるの!トレーナーにも言われてたでしょ?イギリス人は黙って人のスピーチも聞けないの?」
「はっ?なに?ウチに説教してんの?
そんなエスプリデュノールの苦言に対してハイホークは以前のレースで勝ったことを口に出し、エスプリデュノールをあしらおうとする。
「それは今、関係ないでしょ?負けたから揶揄してるわけじゃありません!マナーがなってないから言ってるだけでしょ?」
「あっ、今ちょっとキレた!やっぱり、気にしてるー!だっさー。ってかさ、なんでキミ猫被ってんの?レース中はもっとオラついてたじゃん!」
「はっ?こっちが抑えてりゃあ、調子に乗りやがって!いい加減黙れよ、チビ!」
「あっ、今チビって言ったな!絶対に潰す!」
ハイホークのあしらい方に怒ったエスプリデュノールも応戦し、場の雰囲気はますます険悪になっていく。
「あ、あのー、お静かに…」
「ハイホーク!いい加減にしろ!」
「はしたないからやめなさい、デュノ」
「…はい。ごめんなさい」
「すみませんでした…」
ヒートアップする2人を見かねたそれぞれのトレーナーがさすがに口を出し、二人を叱りつける。トレーナーに怒られたことで2人はようやく矛を収めた。
「公式の場ですから、
「場の雰囲気を壊す?それは聞き捨てならないフレーズですね」
司会者の一言にエスプリデュノールのトレーナーが反応する。
「あっ…」
なんとか場が収まろうかというところで、司会者が何気なく発した一言で、会場に再び緊張が走る。
「確かに今、この場は我々の粗相ですが、元はと言えば、そちらが記者会見の雰囲気を悪くするような弁明をするからでは?もっと言えば、この大会のモチベーションを下げた責任はそちらにないですか?それを棚に上げて、今この場のことだけを指摘をされるのは、さすがに心外ですね」
エスプリデュノールのトレーナーが自身の担当の非礼を詫びはするが、URA側の落ち度に関して鋭く指摘する。
ザワザワ
「いや、そういうつもりで言ったわけでは…申し訳ありません…」
何気ない発言がきっかけとなってしまった司会者の顔は見る見るうちに狼狽していく。
確かにもともと、このようなピりついた雰囲気で会見が行われていたわけではなかった。ただ、記者会見中の質疑応答の時間に出たある記者の"ある"質問から雰囲気が一変してしまっていた。
今年、日本ではミスターシービーというトリプルクラウンが誕生したそうですが、なぜ今回のジャパンカップに出場していないのか?
この質問に対して、司会者は『コンディション不良による辞退』という"事実"を伝えるが、その際に会見からは大きなどよめきが起きる。そして……
一番強いウマ娘を寄越せと言っておいて、自分たちからは出せないなんて、我々をバカにしている。
司会者の説明に対し、納得が出来なかったどこかの記者の愚痴が会場に響き渡った瞬間に会場内の雰囲気は一気に悪くなる。
それは会場内の全ての者が思ってはいても、口にしてはいけない『タブー』であった。そのような雰囲気に会場内が変わってしまったため、今の会場内のピリつきは最高潮だった。
「私も彼の肩を持つわけではないが、この場の雰囲気の悪さの責任全てを課せられることは腹立たしい。先程誰かが言っていたが、我々は招待を受けてここに来ている。『世界各国の"一番強い"ウマ娘を選りすぐった大会を開催したい』との要請を受けたからだ。しかし、肝心の"開催国"の一番手が辞退とは、我々に失礼では?」
エスプリデュノールのトレーナーの意見に同調するかのようにハイホークのトレーナーも意見を述べる。
「それは先程申したように、コンディションが…」
「コンディションが悪いのはわかりましたよ。我々としても過密スケジュールで貴重な才能に何かある事態は避けたいので。ただ、私が問いたいのは日本の最高格レースは"9つしかない"というのに、なぜ過密スケジュールになるのか?ということです」
「それは…」
「ヨーロッパ各国を転戦しているならわかりますが、国内のたった9つのレースのスケジュール管理すらできないとは、これではレース規模はパート1級でも、日本はいつまで経ってもパート1級にはなれないですよ」
クスクスクス
言い逃れができないURA側の明らかな失態に対して、エスプリデュノールのトレーナーが正論を述べると会場内からは失笑が起きる。
「それはこちらの落ち度です…。申し訳ありません…。ただ、今この場にいる日本代表選手たちは今の日本における最高レベルの選手たちです。ミスターシービー選手が不在とはいえ、白熱したレースができることはお約束します…」
場の雰囲気の悪さに困った司会者が参加する選手たちの擁護をするが……
「日本の最高レベルが
その擁護に再び、ハイホークが物申すが、その態度は完全に日本のレベルを見下している。
「あん?黙って聞いてりゃぁ、うるせ〜な!このチビ!」
「ちょっと!カムイオー!落ち着いて!」
「いや、会長!いくらなんでもアイツ、あたしらをバカにしすぎてませんか?さすがに頭にきますって。一言言わせてください!」
そんなハイホークの態度に怒ったのはハギノカムイオー。アンバーシャダイの静止を振り切り、金髪のド派手な風貌に見合った迫力ある剣幕でハイホークに詰め寄る。
「なんなの?この金髪?キミはそのテンノウショウにすら勝ってないんでしょ?だったら、出てこないでよ。はい、論外」
そんなハギノカムイオーに動じることなく、ハイホークは実績の無さを逆手に取り、ハギノカムイオーをあしらおうとする。
「うっせーな!あたしのことはどーでもいいよ。でもな、日本じゃあ、天皇賞に勝てるってのは名誉なことだ。アンタらの言うGⅠってヤツにもレベルは劣らねぇ!そんで、今スピーチしてる人は1ヶ月前の天皇賞に勝ってる。対戦相手としてそれで十分だろ?」
[ちょっと!カムイオー!アタシを巻き込むな!]
悪気があったわけではないとはわかっているが、突然矛先を自分に向けるような発言をしてきたハギノカムイオーにキョウエイプロミスは驚き焦る。
「なに?あの子が今一番勢いがあるってこと?だったら、ウチの方が上でしょ?今、ウチ3つの国の重賞で7連対中。まあ、どっちにしてもキミよりもここにいる人たちの方がレベル高いよね?」
そして、ハギノカムイオーの発言を間に受けたハイホークが、視線をキョウエイプロミスに向け、問いかける。
「えっ?あっ…まあ…それは…」
「ほら、認めちゃってるじゃん!はい、これでおしまい!やっぱり日本のウマ娘のレベルは低いでーす」
対応に困ったキョウエイプロミスの曖昧な回答を裏付けとして、ハイホークがこの論争を終わらせるかのような振る舞いをする。
「いや、そこまでは言ってない…。確かに、アタシは大したことないけど、過去の選手で凄い人はいますから…」
さすがにそこまでの事は言っていないと、拡大解釈を訂正してもらおうとキョウエイプロミスが口を開くが……
「あのさ!私は今年の調子が悪すぎて、何か言うのは失礼かなって思って黙ってだんだけどさ……」
キョウエイプロミスの訂正に対して、今度は壇上の端にいたハーフアイストが口を挟む。
「別にさ、ハイホークも適当なこと言ってないと思うよ。だって、実際に去年私はこのレースに勝ってるからわかるけど、正直参加選手のレベルは低かった。確か、5着の子がその年の日本の『年度代表』だったんでしょ?それも"万全の状態"で5着。それがリアルな日本のレベルじゃないの?」
シーン
昨年のジャパンカップに出場し、勝っている『前回王者』の説得力のある一言に場が一旦静まる。
「あっ、でもそちらのお二人さんは去年辞退してたんだっけ?じゃあ、万全の布陣じゃないのか。まあ、もしビビって"逃げた"んだったら、それはそれで恥ずかしい話だけどね」
「…」
「…」
ハーフアイストから名指しを受けたアーバンシャダイとメジロティターンが気まずそう黙ってしまう。
「ちょっと!それは言い過ぎでしょ?2人とも辞退した理由は"ベストコンディション"で出場しないと海外の皆さんに失礼だと思ったからだよ。別に逃げたわけじゃない。だから、今回は……」
「いい加減、何言っても言い訳が通じねぇって気付けよ!」
友達を批判されたキョウエイプロミスが反論するが、エスプリデュノールが荒い口調でキョウエイプロミスの反論に異議を唱える。
「コンディションが良くても悪くても、誰が出てきても、レースは過去最高で5着までってのが現実だ。今のアンタらじゃあ、実力に関しては
「う…それは…」
エスプリデュノールの正論にキョウエイプロミスは黙ってしまう。
「実績だってそうだ。言っとくけど、ヨーロッパ圏内っていっても、国外のレースに勝てるヤツらは国内でもそれなりの評価をされる。その時点でアンタらみたいな"国内だけ"の実績しかないヤツらとは比べもんにならねぇ!それが『世界の常識』だ。実力も実績も日本がレベル低く見られるのは当然だろ。いい加減受け入れろよ!」
「…」
「つーか、ハイホークのトレーナーも言ってたけどよ。アンタらが私らを"呼んだ"んだろ?だったら、責任持って最高の対戦相手を最高の状態で用意しろよ!それが『格下』の礼儀だろ!?」
そーだ!そーだ!
エスプリデュノールの正論に会場内の外国人が一斉に賛同の声を上げる。
「あっ、ですから、今回はミスターシービーは欠場していますが、来年は……」
「来年?ミスターシービーだって来年も日本最強でいられるかはわかんねぇだろ?そんな保証もないのに『来年は〜』とか何の弁明がしたいんだよ。レベルを低く見られたくないなら"今"いるメンバーでなんとかして見せろって!」
いいぞ、言ってやれフランスの!
弱いと言われて悔しいなら日本のウマ娘が勝てばいい!
こちらはレース先進国だ。あなたたちが実力を証明するべきだ!
ガヤガヤ…ガヤガヤ
エスプリデュノールの一言に対して、会場にいる外国人が一斉に同調し、会場内は更に混沌とする。
[ああ、何か意見を言う度にバカにされる…。確かに、外国人の言ってることは正しいよ…。でも、このまま笑われっぱなしなんて、悔しすぎる…]
会場内の嘲笑が高まっていく中で、キョウエイプロミスは海外勢の言い分に正当性があることを認めながらも、一方的に侮られる状況に不満を抱いた。
「お静かに……各国の方々の言い分も重々わかります。こちらの不手際もあったことは深くお詫びいたします。ですから…」
トリプルクラウンのウマ娘も可哀想に。頑張って達成したんだろうが、日本のトリプルクラウンになんの価値もないのだからな!
クスクスクス…
司会者の一言に対して、会場のどこからか心無いヤジが飛び、そのヤジに共感をした人たちからは笑いが漏れる。
[ああ…今、日本のトゥインクルシリーズがバカにされてるんだ。先輩たちが作り上げてきたトゥインクルシリーズが…。黙ったままで、いいのか?後輩として…]
ドクン
「つーか、ミスターシービーってヤツも、周りのレベルが低いからトリプルクラウンを取れただけだろ?」
[シービーが、後輩たちがバカにされてる…。黙ったままで、いいのか?友達として、先輩として…]
ドクン
「見てみなよ!結局、正論を言われて黙りこくっちゃってんじゃん!そんな弱虫が
[バカにされたまま、何も言わないままで、本当にいいのか?日本のウマ娘として、それで……]
ドクン
会見場の外国人たちは皆笑い、蔑み、会場内の嘲笑が最高潮に達した、その時だった…。
「……してやるって…」
「ん?なに?何か言った?」
「アタシが相手してやるって…」
「あん?よく聞こえねー。もっとデカい声で喋れよ!」
「だ〜か〜ら〜」
キーン!
シーン……
突然叫んだキョウエイプロミスの声でマイクが破裂し、びっくりした人々が一瞬にして静かになる。
「だ・か・ら!このアタシ、キョウエイプロミスが"日本最強のウマ娘"として、アンタらの相手をしてやるって言ってんだよ!!」
ザワザワ
突然啖呵を切ったキョウエイプロミスに会場がざわつく。
「プロミス…お前…」
そして、キョウエイプロミスの徹底抗戦の姿勢に政男もまた驚きを隠せない。
「いつまでも上から見下ろしてんなよ!確かに今までは負けてるよ!それは認めるよ!だから、明後日アタシがそれは"過去の話"だって証明してやる!そっちこそ、御託はいいから、かかってこいよ!!」
再び口を開いたキョウエイプロミス。普段は冷静な彼女ではあるが、その表情は珍しく怒りに満ちていた。
「あん?言うじゃねぇか!レベルの低い国の大レース1つ勝ったくらいでよくそんな大口叩けるな!天皇賞?有馬記念?ヨーロッパじゃあ、そんなレース知られてねぇ〜よ!」
キョウエイプロミスの宣言にエスプリデュノールが詰め寄る。
「悪い。アンタの勝ったレースも日本じゃ知られてないよ。ブリーダーズカップか凱旋門賞くらい勝ってからデカいツラしてくんない?」
「テメェ〜!」
詰め寄ってきたエスプリデュノールに対して、キョウエイプロミスは皮肉のカウンターをお見舞いする。
「やめろ!プロミス。もういい!申し訳ない。こちらの担当も熱くなってしまった。行くぞ、プロミス」
場が収まらないと感じた政男が慌てて間に割って入る。
「君が彼女の担当か?矛先を向けたのは私の担当の方からだが、そちらももう少し冷静になっていただきたいな。来賓であり、"レースの中心"になる我々に対しての配慮というものを……」
引き上げようとするキョウエイプロミスと政男にエスプリデュノールのトレーナーが苦言を呈する。
「レースの中心?その言い振りですと、プロミスは"蚊帳の外"でしかないと?」
その苦言に政男が反応し、歩みを止める。
「いや、まあ『実績』でいうのならそうなるでしょう?」
「また、『実績』の話ですか…。あなた方もしつこいな。結局、レース中は実績など関係ないでしょう?勝敗を左右するのは"今"の『実力』であり、"今"の『コンディション』だ。ウチのプロミスはそのどちらもが今の日本で"最も"充実している。この子も十分にレースの中心になりうる存在です」
歩みを止め、振り返った政男はハイホークのトレーナーに反論する。ただ、その反論はエスプリデュノールのトレーナーだけでなく、会場にいる外国人全員に宣言しているかのような話ぶりだ。
「ほー、彼女なら今までで"一番いい"レースが出来ると?」
そんな政男に対して、ハイホークのトレーナーは余裕の笑みを浮かべながら、その真意を尋ねる。
「違います。我々は、今回のジャパンカップに『勝ちに行く』と言っているのです。来場された海外のみなさん!!いいですか?今回ジャパンカップに出場する
「言ってくれるじゃないか…2日後が楽しみだ…」
エスプリデュノールのトレーナーに対して政男は即座に否定し、訂正する。その表情に恐れは微塵もなく、政男の強い意志が感じられる。
「ごめん、マサさん…。アタシ、これ以上は黙っていられなくて…」
激情に駆られて宣戦布告のような発言してしまったことをキョウエイプロミスは謝罪する。
「気にするな。むしろ、良くやった。立派な"スピーチ"だった」
そんなキョウエイプロミスを政男は賞賛する。
「ねぇ、マサさん」
「なんだ?」
「前に言ってたことがようやくわかった気がするよ…」
「前に?なんのことだ?」
「この世界の"やりがい"を持つってことがなんなのかってのがさ、少しわかった気がするんだ。今アタシは自分の言ったことを成し遂げたい…。それこそ、アタシの全てを賭けてね…」
「ああ、それが親父が言っていた"やりがい"ってやつだ。やるぞ、プロミス。私とお前で。いや、このレースに関わる"日本人"全員で世界から勝利をもぎ取るぞ!」
「うん!」
キョウエイプロミスと政男は静かに、しかし、断固たる決意を胸に壇上から立ち去った。
記者会見の描写が某B○状態になっていますが、実際はそんなわけありません(笑)
ですが、実際の出場者そっちのけで、出場しない者の話をされ続けたら、さすがに『無視してんじゃねぇ』と言いたくなると思います。
確かに実績も実力も世界規模でみたら大したことない当時の日本。
それでも、キョウエイプロミス陣営が啖呵を切ったこと、まさに『日本の未来』の分岐点になったと思います。
さあ、本日からシンデレラグレイの2期が始ました!
アニメでは37年前のウマ娘世界でのジャパンカップをこちらの物語では41年前のジャパンカップをお楽しみください!