BEGINNING OF THE REVOLUTION 作:スタイニー
中央6名・地方1名の総勢7名の日本の精鋭が、9名の世界の強豪たちに挑む。
過去2回、惨敗を喫している日本勢。
果たして今回は世界の牙城を崩すことができるのか!?
「みなさん!日本の意地をアイツらに見せてやりましょう!道はあたしが切り拓きます!」
「頼むよ、カムイオー。さあ、行こう!」
オー!
ゲート入り直前。
ハギノカムイオーの掛け声で日本勢の7人が円陣を組んで気合いを入れる。
「おー、おー、雑魚が励まし合ってるぜ。雑魚は何人集まっても雑魚だ。まっ、せいぜい頑張れよ」
それを見ていたエスプリデュノールがチャチャを入れくる。
「うるせーな。今に見てろよ!」
それに反応したのはハギノカムイオー。
相変わらずの威圧感でエスプリデュノールにメンチを切りに行く。
「あー、雑魚に雑魚がチャチャ入れてる!ウケるー」
そんな小競り合いにさらにチャチャを入れてきたのがハイホーク。
「あん?なんだ?クソチビ!やんのか?」
そんなハイホークに今度はエスプリデュノールがメンチを切りに行く。
「そうだよ、やるよ!ウチ、言ったよね、キミを潰すって。覚悟しときなよ!じゃあね!」
そんなエスプリデュノールの詰め寄りをハイホークはサラリと交わして、ゲートへと歩いて行った。
「はん!あのクソチビもオメェらも全員叩き潰す!勝つのはアタシだ!」
「アンタなんかに負けないよ。アタシらが必ず勝つ」
ハイホークへの威圧が空回りに終わったエスプリデュノールが、再び日本チームに矛先を向ける。それに対して今度はキョウエイプロミスが応戦する。
「威勢だけは褒めてやるよ。じゃあな!」
キョウエイプロミスの応戦にエスプリデュノールは不適な笑みを浮かべ、ゲートへと向かって行った。
「気を取り直して、アタシたちはアタシたちのレースをしようね!頑張ろう!」
うん!
晴れた秋空のもとでの第3回ジャパンカップ。
これから、いよいよスタートです!!
ガシャン!
ズルっ!
「あっ!?」
さあ、スタートが切られました。
綺麗なスタート……おっと、しかし、内の方で僅かにハイホークが立ち遅れたか!?
「うわ〜、やらかした!何なのよ、この芝!?固すぎて滑った〜。さいあく〜」
綺麗なスタートを切ったかと思いきや、1番人気のハイホークが慣れない芝で脚を滑らせていきなり立ち遅れる。
「ハイホークのヤツ、だっさ!もう終わりじゃん!やっぱ、口だけだなアイツ!」
因縁の相手の早々の離脱をエスプリデュノールは嘲笑いながら好スタートを切る。
ハギノカムイオーが華麗な逃げを見せるか!?
まずは先頭に立ちました!
「よし!スタートは完璧!このまま飛ばして行くぜ!」
最内からロケットスタートを決めたハギノカムイオーが一気に加速して先頭に立つ。
真ん中からトンボスが行きました。
そして、快速ウマ娘、マクギンティが3番手!
[日本には『逃げ』という戦術があると聞いたけど、あんなに飛ばすものなの?うーん、とりあえず、ついて行くべきかしら…]
[あんなペースで最後まで持つかは疑問だけど、あの子は支持率が日本人で一番高い。捨て置くわけには行かないわね]
好スタートを決めたドイツ代表のトンボスとオセアニア代表のマクギンティ。ハギノカムイオーの猛ダッシュに戸惑い、迷いつつも好位追走を選択する。
内を通って8番のエスプリデュノール!
「良い位置は取れたが、あの金髪はバカなのか?あんなペースじゃ潰れるだろ。付き合うだけ無駄だな。ペースを落として様子を…」
立ち遅れてしまったハイホークと違い、言動に見合うだけの素晴らしい出足を見せたエスプリデュノールが4番手付近に位置取る。ただ、ハギノカムイオーの逃げに関しては早々に無視を決め込み、マイペースに持ち込もうとするが……
「申し訳ないですが、楽なペースでレースが出来ると思わないでくださいね♪」
「!?」
さらにその内からタカラテンリュウ。
その外目を通ってすーっと、アンバーシャダイが上がって行きました!
「アンバーシャダイ…。へー、アタシを
「さすが、フランス代表。察しが良くて助かります。では、私とあなたとで
4番手に付けたエスプリデュノールの背後に素早く付いたのはアンバーシャダイ。どうやら、徹底マークの構えのようで、消耗戦を仕掛ける。
そして、アンバーシャダイの内に付いているのが、カナディアンファクターであります。
後方から3名はかなり離れました。
その中に1番人気のハイホーク、内側にはチェリオルーフォが付いていきます。
そして、最後方にダーリンググラスが付いています。
「あ〜、せっかくの引退レースが〜。ウチ、ちょーダサいじゃん…。もう、帰りたい…」
前方からかなり離された後方勢3名。その中に1番人気のハイホークがいるが、スタートの失敗を未だに引きず続けていて、既に戦意を完全に喪失していた。
さあ、まもなく向正面の直線コース!
早くもハギノカムイオーが10バ身くらいの差をつけました。2番手にはトンボスがいます。
それから3バ身くらい離れました。エスプリデュノール。
ハギノカムイオーが大逃げをし、2番手のトンボスに10バ身の差を付けてレースが進んで行く。そのトンボスからさらに3バ身ほど離れた位置にいるのは2番人気のエスプリデュノールだ。
[あのチビがやらかしたことで、楽なレースになるかと思ってたが、やたらと日本のウマ娘たちが目立つ動きをしやがる。まあ、論外もいるが、後ろの生徒会長と前の金髪は厄介だ。しかし、あの啖呵切ってきたヤツは実は脚部不安とはな。コンディション最高とかハッタリもいいとこだろ]
エスプリデュノールは頭の中で警戒順位を整理しているが、中でも日本勢の動きには警戒を強めているようだ。
ただ、キョウエイプロミスに関しては脚部不安があるということを既に突き止めているため、アンバーシャダイやハギノカムイオーに比べれば、彼女の中の警戒順位は低めだ。
内、内を通って快速ウマ娘のマクギンティ。
その後にアンバーシャダイが付けている!
「イギリスの子が脱落してくれたのはラッキーね。それ以外も予定通り。カムイオーが大逃げをして、ハイペースを作り出す。私はフランスの子をマークする。他のみんなもいいポジションは取れたみたいね」
エスプリデュノールの背後に付いているアンバーシャダイもレース状況の把握に努める。そして、日本のウマ娘たち全員がいいポジションを取れていることがわかると、安堵の表情を浮かべる。
内を通ってキョウエイプロミス。
「結局、カムイオーのペースについていった外国人は2人か。もう少しついて行くかと思ったけど、まあこんなもんか。とりあえず、アタシはアンバーの真後ろで様子見です」
アンバーシャダイの後ろ、中団の前目に位置取ったキョウエイプロミスも戦局を見計らっている。
やや外目を通りましたエリンズアイルがこの位置。その内側にタカラテンリュウ。
これから1バ身半くらい離れてハーフアイストがおります。昨年のチャンピオン、ハーフアイストは中団を進んでおります!
[あの金髪の子の逃げに付き合ってしまえば、最後に待ち構える上り坂で失速する。去年、このコースで走ったからわかる。この展開なら中団で機を待つ方が得策ね…]
昨年の覇者ハーフアイストも中団で待機する。どうやら、昨年のレース経験から最適なレースプランを導き出したようだ。
[やっぱり海外の子は駆け引きのレベルが違うな。私のプレッシャーを受けてもペースを乱さない。むしろ、ペースを上げたり下げたりして私のペースを乱そうとしてくるんだから、やっぱり海外の子たちはハイレベルね]
エスプリデュノールの真後ろに入っているアンバーシャダイは改めて海外勢の実力の高さに驚嘆する。それはアンバーシャダイ自身が長年トゥインクルシリーズの一線級で戦ってきたからわかることだった。
[しっかし、後ろのヤツはちょこまかと動くな…。スカウティングだと、スタミナに優れていて、叩き合いが得意なんだっけ。まあ、ある程度の圧のある突っ掛け方してくるから、実力自体はあるんだろうな。って言っても、簡単には並ばせてやんねぇけど!]
レースは特に大きな変化もないまま、向正面の直線に入っている。ただ、エスプリデュノールとアンバーシャダイは水面下では熾烈な心理戦を繰り広げていた。
並びかけに行く素振りを見せてプレッシャーを掛けるアンバーシャダイ。一方のエスプリデュノールはアンバーシャダイが寄せてくるたびにペースチェンジを繰り返し、距離感を狂わせようとしていた。
後続の集団からはチェリオルーフォ、ダーリンググラスあたりが押し上げて行く。
[金髪がもうすぐ第3コーナーに入る。まさか、ホントにこのまま行くのか?あと、意外と後ろのヤツがしつこいな。さっきから振り払うつもりでペースを上げてんだけど、粘りやがってウゼェな…]
第3コーナーが近づき、エスプリデュノールは後ろのアンバーシャダイを振り払うべくペースを上げていく。ただ、それでも引かないアンバーシャダイに対して、若干苛立ち始めていた。
さあ、第3コーナー坂の頂上から早くも坂の下りに差し掛かりましたハギノカムイオー!
このままゴールまで先頭を切って駆け抜けて行くことが出来るのかどうか!?
「ハッ、ハッ、ハッ…。ダメだな。アタシはもうここまでだ…。後は先輩たちに任せるしかねぇか…」
先頭で第3コーナーを通過したハギノカムイオーだったが、坂を下る途中で急激に失速し始める。まだ、1600mを通過したばかりではあるが、スタミナが底をついてしまったようだ。
[おっ、先頭の金髪のペースが落ちた。そりゃ、そんなペースじゃ最後まで持たねぇよな。マジでバカだな。まあ、アタシも後ろのマークのせいで楽なレース運びが出来たわけじゃないけど、このまま押し切れるだけの余力はまだ残してるさ]
ハギノカムイオーの失速が明らかになったことでエスプリデュノールが抜け出しの準備を図る。
これも終始2番手であります。トンボス。ドイツの代表ウマ娘が2番手をキープ。
[何これ…。日本のウマ娘のレースはスローペースが基本じゃないの?こんなハイペースな展開が"ずっと続く"ことになるなんて予想してないわ…]
3番手を走るエスプリデュノールに動きが出てきた頃、スタートから常に2番手を維持していたドイツ代表のトンボスに異変が起きる。
どうやら、ハギノカムイオーが作ったハイペースに惑わされてしまい、自分のペースを狂わせてしまっているようだ。
[ドイツのヤツはもう限界か。バカだな。あんな金髪ほっときゃあいいのに、バカ正直についていきやがって]
一杯になりつつあるドイツのトンボスにエスプリデュノールが横に並びかけ2番手に順位を上げる。
さあ、この辺からペースが早くなって、後続勢がグッと追い上げてきます!
「よお!金髪!もうガス欠か?」
急激な失速をしたハギノカムイオーに2番手のトンボスを抜いたエスプリデュノールが並びかけ、声をかける。
「うるせぇ〜な。話しかけんな…。アタシはまだやれるよ…」
強がる素振りを見せるハギノカムイオーだが、明らかに顔色が悪く、確実に限界を迎えている。
「強がりはよせ。あんなペースで走って大丈夫なわけねぇだろ?つーか、お前の頭の中には『ペース配分』って言葉はねぇのか、ばーか!さっさと沈め!」
限界を迎えたハギノカムイオーをエスプリデュノールは嘲笑いながら抜いていく。
「うっせぇ…調子に乗れるのも、今のうちだからな…」
エスプリデュノールに抜かれ、落ちていくハギノカムイオーだが、その目から闘志が消えることはなかった。
さあ、内、内を通ってマクギンティもいますが、既に一杯か!?そして、アンバーシャダイも来ています!!アンバーシャダイがいい脚で上がって来ています!
[やられた…。支持率が高いから本命だと思っていたのに、何も考えずに逃げていただけなんて…。こうなるんだったら、もっと後ろから行くべきだったわ…]
第3コーナーの半ば過ぎ、エスプリデュノールの少し後ろを追走していたオセアニアのマクギンティが急激な失速こそしないが、かなり辛そうな素振りを見せる。
[オセアニアのヤツも粘ってはいるが、かなりキツそうだな…。つーか、このハイペースのせいで、前はほとんどが潰れてるじゃねーか。そう考えると、アタシに付いてき続けてる後ろのコイツはなかなかやるな…。まあ、日本のウマ娘のレベルを少しくらいは認めてやるか…」
それを見ていたエスプリデュノールはこのハイペースの中で、脱落することなく付いてきているアンバーシャダイの実力を見直しているようだ。
12番のアンバーシャダイと8番のエスプリデュノールが競り合いながら最終コーナーを回っていきます!
ここまで、アンバーシャダイが大健闘!
日本の代表に恥じない走りをしています!!
「おい!生徒会長!なかなかやるじゃんか!って言っても、もうキツいだろ?そろそろ落ちろよ」
「ハッ、ハッ…まだ、私は落ちるわけにはいかない。でも、これくらい頑張っても
執拗に付いてくるアンバーシャダイにエスプリデュノールが声をかける。それに対してアンバーシャダイはかなりキツそうな表情で必死に喰らいつくとともに、海外勢の実力の高さを賞賛する。
「だから言ってんじゃねぇか!アンタらじゃ、アタシらには勝てねぇって。それでもまあ、こんなハイペースの中でアンタは頑張ったよ。それは褒めてやる。だから、安心して落ちろよ!」
「一応、ありがとうと言っておきます。ところで、あなたはどうしてレベルの低い日本のレースに参加したの?」
お世辞に一応の感謝をしたアンバーシャダイが、エスプリデュノールになぜレベルが劣る日本のレースに参加したかを尋ねる。
「あん?そりゃあ、招待されたからだよ。あとは、日本のレースのルールがおもしれぇからだ」
「ルールが面白い?」
「ああ。ヨーロッパのレースは基本、チーム戦だ。『ラビット』って言う各チームのペースメーカーが1、2人出場することが多い」
「『ラビット』?それは何?」
「そいつらはチームのエースを勝たせるための"捨て駒"だ。だから、有力チームがいくつも出てるレースになると、GⅠでもガチで勝ちにくるヤツは出場者の半分くらいしかいねぇ」
「へー、ヨーロッパのレースは難しいそうですね」
「難しそうかどうかは知らねぇが、ヒリつきは足らねぇな。けど、日本は違う。"捨て駒"なんていなくて、全員がガチの勝負をしないと"いけない"ルールなんだろ?それって、おもしれぇじゃねぇか!誰の助けもねぇ!自分の実力を証明できるガチの
「なるほど、日本のレースのことはある程度調べてるんですね。じゃあ、せっかくなのでこれも聞いておきましょう。この東京レース場の名物って知ってますか?」
「息が上がってるのに、よく喋るな。名物ってなんだよ。美味い食いもんの話か?」
「いえ、違いますよ。このレース場の"構造"の話です。東京レース場には『だんだら坂』という長い坂が最終直線にあることを知っていますか?」
「ああ、なんかトレーナーが言ってたかもな。で、それがなんだ?」
「この坂、数字的には想定できていても、実際のレース中に坂下から頂上を見上げると結構メンタルが堪えるんですよね。特に"スタミナ的に"辛くなってると…。ほら」
アンバーシャダイが東京レース場の坂についての解説をして、エスプリデュノールの視線を誘導する。
「あん?それが……」
ドン!
[確かに威圧感あるな…。まあ、坂のキツさでいったらロンシャンの方がキツい。でも、あの坂は"向正面"にあるし、こんなに長くない。でも、この坂は…]
アンバーシャダイの視線の誘導に合わせてエスプリデュノールが上り坂を見上げる。すると、アンバーシャダイの言っていることがいくらか理解できたのか、少しだけ上り坂の圧に気圧されたようだ。
「ね?物理的にも精神的にも辛い上り坂が最後の直線に立ちはだかるって、結構メンタルにきますよね?だからですけど、東京レース場は逃げと先行の戦術には不利で、差しと追い込みの戦術が有利なんです」
エスプリデュノールの戸惑いを感じ取ったアンバーシャダイが続けて解説を入れる。
「ハッ!じゃあ、なんでアンタは後方に控えておかなかった?アタシに付いてきたばっかりにアンタは潰れかけてるとか、バカじゃねぇの?これじゃあ、アンタは自爆したも……!?」
エスプリデュノールがアンバーシャダイの解説と今回採用した戦術に矛盾があると指摘するが……
[ニコッ]
「なんだ?その気味の悪い笑いは?疲れすぎて、頭がおかしくなったのか?」
アンバーシャダイの不自然な笑顔にエスプリデュノールが違和感を感じたその時だった…。
「別に頭がおかしくなんかなってないよ。アンバーはアンタに同情して笑っただけ。『散々見下した相手に負けたら、この人は発狂するんじゃないかな』ってね!」
「テメェ!いつの間に!?どっから出てきやがった!?」
アンバーシャダイの後方からキョウエイプロミスが突然伸びて来たことにエスプリデュノールが驚く。
それは風前の灯かと思われていた日本のウマ娘たちの反撃の合図だった。
初登場時の描写からやたらとキャラが変わってしまっているエスプリデュノールですが、これは『フランスのティアラウマ娘なのに勝ち気が過ぎるので、日頃からトレーナーにお淑やかな振る舞いを心掛けるように矯正されている』という裏設定のためだったりします。
ちなみにですが、この第3回ジャパンカップの上位人気馬3頭は全て牝馬です(1番人気のハイホークのキャライメージは『クソ生意気で可愛げのないヴィブロス』・2番人気のエスプリデュノールは『よりグレちゃったニット帽なしのナカヤマ』・3番人気のスタネーラは『外見はダンツ・中身はカフェ』)。
日本では『牝馬は牡馬に勝てない』と言われていた時代ですが、海外の牝馬のレベルの高さが伺えますね。