BEGINNING OF THE REVOLUTION   作:スタイニー

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三冠ウマ娘、ミスターシービー不在の春シーズン。

大本命が不在とはいえ、シニア級の春の王座決定戦たるGⅠの宝塚記念にはたくさんの有力ウマ娘が参戦してきていた。

中でも、注目は『シービー世代』と称されるシニア級1年目組。

それに対するは歴戦の先輩たち。

果たしてカツラギエースたちは歴戦の先輩たちを打ち破れるのか!?


世代交代

 

 

 

グローバルダイナのゲートインが終わりまして、まもなくスタートです。

 

 

 

 

ガシャン!!

 

 

 

ゲートが開いてまずまずのスタートであります。

さあ、スタートを切りました14人。

 

 

 

[とりあえず、スタートはまずまず。ここから先頭を…]

 

悪くないスタートを切れたカツラギエースが先頭を取ろうとすると…。

 

「エース!悪いけど、最初からマークさせてもらうよ!!」

 

 

 

 

おーっと、外からグローバルが行くのか!?

グングン、グングン、グローバルダイナが行きました。外からずーっと真ん中の方へ入っていきます。

 

 

 

 

その横に大外枠からグローバルダイナが積極的に並びかけてくる。

 

「グローバル、どうした?今日はやたらと積極的だな」

 

「それはそうでしょ。京阪杯はアンタを楽に行かせすぎて負けたんだから。今日は最初から徹底マークするのは当たり前だって!」

 

前走のGⅢ京阪杯でグローバルダイナは4バ身差の3着と敗れていた。その敗因がカツラギエースをマークしなかったことだと考えた彼女は、スタートからカツラギエースを徹底マークする構えを取る。

 

「だったら、あんたとあたしで根比べと……」

 

「その根比べ!」

「私らも混ぜてもらえる?」

 

 

 

 

その外からカツラギエース、その内にブルーギャラクシーであります。それからドウカンヤシマ。

 

 

 

 

「おいおい、ギャラクシーとヤシマも来るのかよ…。いつもクラスで一緒なんだから、本番くらいは並んで走るのやめようぜ…」

 

「別に、私も並んでは走りたくはないけど、やるべきことはやらないと、ね?ヤシマ?」

 

「そうそう。と、言うわけで、お付き合いよろしくね!」

 

「まったく、めんどくさいクラスメイトたちだぜ…。いいぜ!まとめてかかって来いよ!」

 

スタートして100mほど。カツラギエースの内側からブルーギャラクシーが競りかけ、さらにその後ろからはドウカンヤシマもついてくる。

 

グローバルダイナとブルーギャラクシー、そしてドウカンヤシマと見事なまでに"クラスメイト"たちに囲まれたカツラギエースは愚痴りながらも売られたケンカを買うようだ。

 

 

 

 

すーっと内へ入って行ったのが、ヤマノシラギク。ホリスキーは果たして何処にいるんでしょうか?ホリスキーがちょっと見当たりませんが…ホリスキーは後ろから4番目のところにいました。

 

 

 

 

「初めはシービー世代たちに好き勝手やってもらって、私は最後に貰ってくよ」

 

ホリスキーはポジション争いに加わることなく、後方待機を選択する。どうやら、先頭集団を形成するシービー世代たちを後方から狙い撃つ構えのようだ。

 

 

 

 

「ねぇ、エース!先頭もらっていい?」

 

第1コーナー手前でブルーギャラクシーがカツラギエースに先頭を譲ってくれるように頼む。

 

「あん?別に好きにしろよ!あたしはここで十分だ!」

 

それに対して、カツラギエースはすんなりと譲る。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて、先頭いただきます!」

 

 

 

 

先頭はブルーギャラクシーです。ブルーギャラクシーが先頭に立ちました。

 

 

 

 

 

[よし、よし。梅永さん、奈瀬トレーナー、先頭を取れました!予定通りです!]

 

予定通りに先頭を取れたブルーギャラクシーは内心喜んでいた。

 

 

 

 

 

「奈瀬さん!ギャラクシーさんが予定通りに先頭を取れましたね!」

 

観客席から見守るブルーギャラクシーのサブトレーナーの梅永も作戦通りに先頭を取れたことを喜ぶ。

 

「うーん、そうだね…」

 

しかし、作戦を立案したはずの奈瀬の表情は硬いままだ。

 

「あれ?『先頭が取れるかどうかが勝敗の分かれ目』とおっしゃていたのは、奈瀬さんじゃないですか?ダメなんですか?」

 

喜んでいた梅永だったが、冴えない表情の奈瀬を見て不安そうな顔つきで理由を尋ねる。

 

「カツラギエースが無理にハナを主張してこない。諦めたのか…それとも狙い通りなのか…」

 

梅永に理由を尋ねられた奈瀬だが、理由を答えることはせずに、ぶつくさと疑問点を呟く。

 

「京阪杯より200m長いですからね。距離の延長分無理をしないのでは?」

 

そんな奈瀬に対して、梅永がレース条件の違いがハナを主張しない理由ではないかと意見する。

 

「…。梅永、ラップを測っておきなさい」

 

「は、はい。わかりました」

 

梅永の推測を聞いた奈瀬は顎に手を当てながら思案する。そして、梅永にラップタイムを測っておくように言い付けた。

 

 

 

 

 

そして、その外にカツラギエースが早々と2番手の絶好の位置!カツラギエース2番手であります!

 

 

 

 

 

[アイツらに絡まれた時はどうしようかと思ったけど、ギャラクシーが前に出てくれて走りやすくなった。予定通り、このままペースを維持していくぜ…]

 

ブルーギャラクシーに先頭を取られたカツラギエースだが、どうやらそれ自体に問題はないようで、むしろ、マークが緩んだことを喜んでいる。

 

 

 

 

内を通りまして、同じ枠番のドウカンヤシマとヤマノシラギク。その外へグローバルダイナ。

 

先頭は4番のブルーギャラクシーです。果たして、奈瀬英人はどんな逃げを演出するのか?

 

 

 

 

「梅永。600までのラップは?」

 

「は、はい!200〜400が11秒3。400〜600が11秒6です」

 

「なるほど…。それは自信か、或いは…」

 

「奈瀬さん?」

 

「やはり、面白い世代だな、"シービー世代"とは…」

 

「?」

 

奈瀬にラップタイムを尋ねられた梅永が200m〜600mまでのラップタイムを告げると奈瀬は少しだけ笑顔を見せながら、呟く。その意図がわかりかねている梅永の頭には?マークが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

そして、2番手にカツラギエースであります。カツラギエース2番手の絶好の位置。今日はいい感じで行っています!

 

 

 

 

 

チッ

 

 

 

 

チッ

 

 

 

 

チッ

 

 

 

 

チッ

 

 

 

 

[ポジションの確保は出来た。ここらで一旦ペースを落とすぜ…]

 

ブルーギャラクシーが600mを通過した頃、その3バ身後ろにカツラギエースはいた。既にポジション争いが落ち着いたことでカツラギエースは一旦ペースを落とすようだ。

 

 

 

 

チッ

 

 

 

チッ

 

 

 

チッ

 

 

 

チッ

 

 

 

 

[ああ、かなりいい感じでリズムを刻めてる。これだったらもう少しペースを上げてもいいかな]

 

スタート直後こそ、クラスメイトたちに絡まれていたカツラギエースだが、向正面に入る頃にはその包囲網がいくらか解けていて、非常に走りやすい状況が出来ていた。

 

[前にはペースメーカー。後ろからはノープレッシャーで、かつ単独2番手。これは運が良い。エースにとって一番走りやすい状況が出来上がった。これなら…]

 

観客席でレースを見守る土浦もまた今のカツラギエースの状況に手ごたえを感じていた。

 

[寺永さんとの話し合いのおかげでエースのメンタルは完全復活した。いや、それだけじゃない、以前以上にモチベーションも上がった。そのおかげでクラシック期にやり残した課題も一気に解決できた。その成果が大阪杯と京阪杯の2連勝。さあ、エース!時は来たぞ!獲ろうぜ、GⅠを!]

 

寺永との話し合いを経て完全復活したカツラギエースはこの短期間で驚くべきスピードで成長していた。そして、その成長の成果はGⅡ大阪杯とGⅢ京阪杯の重賞2連勝というカタチですぐに表れた。

 

クラシック期にあった弱点を完全に克服したカツラギエースが満を辞してGⅠ制覇へと邁進していた。

 

 

 

 

 

チッ

 

 

チッ

 

 

チッ

 

 

チッ

 

 

 

 

 

[やっぱり、かなりいい感じだ…。体の動きが刻んでるリズムとバッチリ合ってるからか?まったく、体が疲れねぇ!これならまだペースを上げれるな!]

 

いつになくリラックスして走れているカツラギエース。初めて訪れる感覚に戸惑うカツラギエースだが、その表情には確かな手ごたえがあった。

 

 

 

 

 

さあ、その後ろでありますが、ドウカンヤシマ。それからヤマノシラギク。その外へグローバルダイナ。

 

 

 

 

レースは中間地点を超えて、いよいよ後半戦に入っていくが、ここでレースに動きが出始める。

 

 

 

 

 

それから3番ミサキネバー。かなり早め。その後ろ、ミヤジダケオーとスズカコバン。怖い怖い、5枠の2人。

 

 

 

 

[さてと。『ゆったり走ったろ!』と思とったんやけど、思ったよりもペースが上がっとんな…。そんで、前には先行力のあるカツラギがおる。疲れるから嫌やけど、これは付いていかなあかんやろな…]

 

先行集団の最後尾から行くのはスズカコバン。どうやら、ペースが上がったことで、もともとのレースプランから変更を余儀なくされているようだ。

 

「な、奈瀬さん…ラップが…」

 

「落ち着きなさい、梅永。で、何秒上がった(・・・・)んだい?」

 

ラップを測っていた梅永が狼狽した表情で奈瀬に話しかける。ただ、そんな梅永とは対象的に奈瀬の表情は至って冷静で、梅永に聞き出したい情報を尋ねる。

 

「800m〜1200mのたった400mでラップが1.2秒も上がってます…。これは、どういうことでしょうか?」

 

レースの中間地点であるにも関わらず、まるでスパートを掛けたかのようなラップの急上昇に梅永は狼狽えている。

 

「簡単なことだよ。ペースを作っているのがギャラクシーじゃない(・・・・)ってことさ」

 

「え?ペースは先頭にいるギャラクシーさんが握っているんじゃないんですか?」

 

「見てればわかるよ。カツラギエース、なかなかに食わせ者だ…」

 

狼狽える梅永を尻目に奈瀬は淡々としかし、どこか楽しげな表情でレースを見守っていた。

 

 

 

 

[うーん、奈瀬トレーナーの言う通りに、エースとの距離を気にして走ってはいるんだけど、エースのプレッシャーが強すぎて、ペースが吊り上がってる気がする。でも、まだ先頭を譲るわけにはいかないし…。このまま行くしかないかな]

 

先頭を走るブルーギャラクシーは自分のペースがカツラギエースによって釣り上げられていることに気付いていた。ただ、ここで先頭を明け渡してしまえば、それこそカツラギエースの思惑通りになってしまうと踏んで、不本意ながらもペースの釣り上げに付き合うしかなかった。

 

ペースの釣り上げに巻き込まれている先行集団。それに対して後方集団にも動きが出始める。

 

 

 

 

 

中団からダイセキテイが行った!

 

 

 

 

[内輪でわちゃわちゃとやって、ペースが勝手に釣り上がってるじゃねぇか。シービー世代と持ち上げられててもバカはバカか。このまま共倒れしてくれれば、こっちのモンだな!]

 

中団に控えていた4番人気のダイセキテイが若干ポジションを上げにかかる。どうやらハイペースでの前潰れを予期して、抜け出しのポジションの確保に動いたようだ。そして…

 

 

 

 

 

シャダイソフィア。そして、オーバーレインボー。13番のノーベルダンサー。ようやく、モンテファスト。

 

 

 

 

[最初はどうなるかと思ったけど、予想通りペースは上がってきた。シービー世代とか言われてるけど、まだまだ詰めが甘いわね!]

 

そして、ダイセキテイの後ろに控えていた今年の春の天皇賞ウマ娘モンテファストもようやく動き出す。すると…

 

 

 

 

 

その外からホリスキー。ホリスキーが外に出して、早くも差を詰めに掛かりました。

 

 

 

 

[やっぱり、モンテファストさんも気付いていたわ。ダイセキテイも行ってるし、少し早いけど、私も行くわ!]

 

スタートから後方待機を選択していたホリスキーも前2人の動向に合わせてポジションを上げて行く。

 

 

 

 

おーっと、ホリスキーも上がって行く!ホリスキーも上がって行くぞ!グングン、グングン、ホリスキーが行った、ホリスキーが行った!天皇賞とは違うぞ!第3コーナー、ホリスキーが中団に上がった。ホリスキー中団!

 

 

 

 

「ダイセキテイ!抜け駆けなんてやらせないからね!」

 

「チッ…来たか、ホリスキー。まあ、さすがに気付くか…。漁夫の利を独り占め出来たら良かったが、仕方ねぇ。もう一つペースを上げるぜ!」

 

「なっ!?強気に行くわね、アンタ…。なら私も!」

 

 

 

 

それと一緒にダイセキテイも上がって行く!ダイセキテイも上がって行く!

 

 

 

 

 

第3コーナーを前にして後方待機していた上位勢が、まとまって先団を捉えにかかる。どうやら、全員がハイペースによる前崩れを予想したようで、今を好機と見て仕掛けた始めたようだ。

 

 

 

 

 

チッ

 

チッ

 

チッ

 

チッ

 

 

 

 

 

さあ、中団勢が前へと上がる中、カツラギエースは2番手か!?カツラギエースは2番手か!?

 

 

 

 

チッ

 

チッ

 

チッ

 

チッ

 

 

 

 

 

[よし、第3コーナーで息を入れよう。じゃないと、最後まで持たないし…。まあ、エースも息を入れるだろうから、先頭はキープできるでしょ……]

 

第3コーナーに差し掛かったブルーギャラクシーが最後のスパートに余力を残すため、息を入れようとする画策する。その画策はカツラギエースの行動を予測した上での安全牌のはずだったのだが……

 

 

 

 

 

ブルーギャラクシー、ブルーギャラクシーの外へカツラギエース。カツラギエースが並びに行った!

 

 

 

 

[えっ?エース!?こんなタイミングで並び掛けるの!?]

 

ブルーギャラクシーの予測を覆してカツラギエースが並び掛けてきたのだ。この行動にはさすがのブルーギャラクシーも驚きを隠せない。なので…

 

「ちょっと、エース!アンタ、無茶しすぎじゃない?」

 

「…」

 

「えっ、ちょっ、無視!?なんか言ってよ!」

 

並び掛けられたブルーギャラクシーがカツラギエースを心配して問いかけるが、なんとカツラギエースは応えない。なので、ブルーギャラクシーはもう一度問いかけるが……

 

「…」

 

「ちょっと、さらに無視!?感じ悪っ!クッソ〜、負けないからね〜」

 

ブルーギャラクシーの2回目の問いかけにもカツラギエースは応えない。2回も無視されたブルーギャラクシーが、仕返しとばかりにカツラギエースに競りかける。

 

 

 

 

 

そして、スズカコバン。スズカコバンが3番手であります!

 

 

 

 

[シカトされたギャラクシーがメンチ切りにいきよった。何やっとんねん、アイツは。しかし、カツラギのヤツは不気味やの〜。3角で強気に競りかけに行くんは毎度のことやけど、今日の仕掛けはなんか違うな…]

 

カツラギエースとブルーギャラクシーの少し後ろに付いているスズカコバンが2人の競り合いにツッコミを入れながら、機を伺う。ただ、カツラギエースと何度となく戦ってきたスズカコバンは今日のカツラギエースの走りがいつもと違うと感じているようだ。

 

「やっと追い付いたぜ…。テメェら!覚悟はいいか!?」

 

「ああ、ダイセキテイ先輩、お疲れ様です!」

 

 

 

 

 

ダイセキテイが来ている!ダイセキテイが来ている!

 

 

 

 

不気味な雰囲気を醸し出すカツラギエースを警戒するスズカコバンの後ろにダイセキテイがようやく追い付く。

 

「お疲れ様です!じゃねぇよ!余裕振りやがって…。お前、状況わかってんのか?」

 

レース中にも関わらず、軽い口調のスズカコバンにダイセキテイがツッコミを入れつつ、今の状況についてを問いかける。

 

「状況?ああ、わかってますよ。中盤の急なペースアップと、その後のハイペースのせいで、地力のない人から落ちていってはる消耗戦ですね。まあ、ウチはまだ大丈夫ですけど、先輩は大丈夫ですか?」

 

ダイセキテイの問いかけにスズカコバンは淡々と答え、かつダイセキテイの身を案じる。

 

「おう!気遣いありがとうな!アタシはまだなんとか……って、人の心配してんじゃねぇよ!ちょっとは焦れよ!」

 

「先輩のノリツッコミ、ええですね!」

 

スズカコバンの気遣いに一瞬感謝してしまったダイセキテイがキレのあるノリツッコミを披露する。そんなダイセキテイのノリツッコミにスズカコバンは満面の笑みで褒め称える。

 

「こんな時にノリツッコミを褒められても嬉しくねぇよ!つーか、お前、本当に状況わかってんのか!?もう後ろは来てんだよ!ちょっとは焦れよ!」

 

能天気な発言をするスズカコバンにダイセキテイは少しキレながら、状況を理解しろと説く。

 

「そないなこと言うても、先輩の後ろには誰もいてはりませんよ(・・・・・・・・)?」

 

「はっ?そんなことあるか!?モンテファスト先輩もホリスキーもすぐ後ろに……!?」

 

 

 

 

おーっと、ホリスキーがちょっと後ろ!?

ホリスキーが来ているが、手ごたえが良くない!

 

 

 

 

「アレっ!?なんで!?ホリスキーもモンテファスト先輩もいない(・・・)!?」

 

後ろを見たダイセキテイは驚愕する。先ほどまで一緒に押し上げをしていたはずのホリスキーもモンテファストも既に失速していて、中団勢から抜け出していたのが、自分だけだったからだ。

 

 

 

 

ホリスキー、懸命に腕を振っていますが、これはピンチか!?ホリスキー、ピンチ!!ホリスキー、もう一度差を詰めようと懸命に腕を振りますが、これ以上は伸びないか!?

 

 

 

 

「ハッ…ハッ…ハッ…。ちょっと待ってよ…。このペースでなんで先行組は潰れないの?」

 

ダイセキテイから離れること3バ身後ろでホリスキーはもがいていた。中盤から急激なハイペースになったことで、最終コーナーまでに先行勢が潰れる可能を考えたホリスキーは早めにポジションを上げにかかっていた。

 

その選択自体は決して悪くはなかったのだが、失速すると見込んでいたシービー世代(先頭集団)はほとんどが脱落することなく、最終コーナーへと差し掛かっている。

 

「まさか、去年の有馬の結果もまぐれじゃないっていうの…。一体、なんなのシービー世代(コイツら)の強さは…」

 

懸命にホリスキーは追走を試みるが、無情にも差は開いていくばかり。ホリスキーは世代間の実力差を痛感しながらバ群に沈んでいった。

 

「おい…ウソだろ…。前よりも後ろが先に潰れてるじゃねぇか…」

 

「いや、だから言うたじゃないですか。"地力のない人"から落ちていってはるって。シービー世代(ウチら)にとってはなんとかなるペースですけど、先輩方にはキツイんとちゃいますか?」

 

驚きを隠せないダイセキテイに対してスズカコバンは淡々とそして"冷酷"に現実に起きている世代間の実力差を突きつける。

 

「クソっ!!なんなんだよ、テメェらの強さは!」

 

「さあ、わかりまへん。さてと、勝つためにウチもそろそろスパートとせなあかんので、先に行きますわ。ほな、さいなら!」

 

「結局、おめぇも余裕なのかよ…。チクショー…」

 

明らかになった世代間の実力差。それでもダイセキテイは抗おうと必死に追い縋る。それを見たスズカコバンはいともあっさりと振り切ってダイセキテイを突き放しにかかるのだった。

 

 

 

 

さあ、カツラギエースが第4コーナーをカーブする!

 

 

 

 

「ハッ!あれっ?いつの間にここまで走ってたんだ?今、あたしは…」

 

第4コーナーを回るカツラギエース。どうやら、ここまで走ってきた"過程"を覚えていないようだ。

 

 

 

 

おっと、カツラギエース、後ろを見た!

 

 

 

 

「あれ?もしかして、あたしが先頭か?」

 

そんな状況に戸惑うカツラギエースは後ろを振り返る。すると、自分がいつの間にか先頭に立っていると気付く。

 

 

 

 

カツラギ先頭か!?カツラギ先頭か!?

 

 

 

「やべぇ、何にも覚えてねぇ…。一体、何が…」

 

「ちょっと、エース!さっきはよくもシカトしてくれたわね!」

 

「えっ?シカト?なんのことだ?」

 

「ムカつくー!しらばっくれてさ!」

 

「いや、そんなこと言われても、覚えてないもんは覚えてないし…」

 

「ムキー!さらにムカつくー!あー怒った!絶対に負けない!」

 

第4コーナーまでの記憶がなく、先頭に立っていることすら、今し方気付いたカツラギエースは困惑する。

 

そんな困惑しっぱなしのカツラギエースにブルーギャラクシーが先程のシカトのことを咎める。ただ、全く身に覚えがないカツラギエースはただただ覚えてないと言うばかりで、その様子が白々しく見えたブルーギャラクシーは仕返しとばかりにさらに闘志を燃やして競りかける。

 

 

 

 

スズカコバン!スズカコバンが先頭に迫る!

 

 

 

 

「よぉ!カツラギ!見事に先輩たちを潰したな!やるやないか!」

 

「先輩?潰した?何のことだ?」

 

ダイセキテイを競り落としたスズカコバンがブルーギャラクシーとカツラギエースの先頭争いに加わる。そして、先輩勢を全員すり潰したことを讃える。ただ、当のカツラギエースはそんなつもりはなかったようで言われていることの意味が分からないままだ。

 

「なんや?覚えとらんのか?まあ、ええわ。さて、最後の直線は同い年対決といこか!!」

 

状況がわかっていないカツラギエースを不思議に思うスズカコバンだったが、それはそれとして、優勝の可能性が同期だけに絞られたことを喜びながら最後の追い比べを提案する。

 

 

 

 

 

内からもう一度、ブルーギャラクシー!内からもう一度、ブルーギャラクシー!

 

 

 

 

「ええ、受けて立つわ!」

 

スズカコバンの追い比べに応じたブルーギャラクシーが内側から競りかける。

 

 

 

 

グローバルダイナも伸びてくる!

 

 

 

 

「アタシもまだ終わってない!行くよ!」

 

一度は失速し掛けたグローバルダイナが再び競りかける。

 

 

 

 

 

しかし、カツラギエース先頭だ!カツラギ先頭!カツラギ先頭!

 

 

 

 

「なんか、よくわかんねぇけど、ここまで来たら勝ちは譲れねぇ!行くぜ!」

 

スズカコバンの問いかけはわからなかったが、今の状況がレースの勝負所と理解したカツラギエースがスパートし、後続を突き放しにかかる。

 

 

 

 

 

そして、スズカコバンが来ている!スズカコバンが外から来ている!

 

 

 

 

 

「まだまだ負けへんで!ウチの底力見せたるわ!」

 

スズカコバンもまた3人に触発されるようにスパートを掛ける。

 

 

 

 

 

うぉー

うぉー

うぉー

うぉー

 

 

 

 

 

ホリスキーは大ピンチ!後ろから3番目くらい!

 

 

 

 

 

[見てるか?シービー?あたしはここまで帰って来たぜ!]

 

 

 

 

 

さあ、先頭はカツラギ!カツラギエース先頭だ!

 

 

 

 

 

[早く戻って来い、シービー!あたしは…強くなったぞ!]

 

 

 

 

 

カツラギエース!1着!!

 

 

カツラギエース、スズカコバン、グローバルダイナ、ミサキネバー、ブルーギャラクシーの順です!

 

ホリスキーは後ろから5番目くらい!ホリスキーは後ろから5番目くらい!

 

勝ったのはカツラギエースです!

 

勝ち時計は2分12秒4!

 

昨年のハギノカムイオーは勝ち時計2分12秒1でしたが、それに迫る好時計!!

 

上がりの3ハロンは35秒8!

 

勝ったのはカツラギエースです!そして、2着にはスズカコバンです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった?彼女の走りは?」

 

「最高だったよ。さすが、アタシのライバル…」

 

「そうか…。なら…」

 

「さあ、帰るよ!寺さん!」

 

「表彰式は見ていかないのか?」

 

「必要ないでしょ。それよりも早く走りたい♪」

 

「ああ、わかった…。行こうか」

 

「うん!」

 

 

 

 

6月3日 阪神レース場 2200m

第25回宝塚記念 GⅠ

 

 

1着 カツラギエース

 

 

 




この年の後半のレースの全てが伝説的なレースばかりなので、ほとんど印象に残らない84年の宝塚記念ですが、レース結果を見ると完全な『世代交代』を告げるレースであり、シービー世代全体の強さが際立ったレースのように思います。

レース内容としてはレコードにコンマ3秒に迫るハイペース。なのに前崩れは起きずにそのまま押し切り。しかも、その前残り組の5頭中4頭がシービー世代という内容でした。

レース結果自体にはいろいろな要因があると思いますが、主役不在の中でもキッチリと実力を証明したシービー世代の層の厚さを裏付けるレースになっていますね。
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