BEGINNING OF THE REVOLUTION 作:スタイニー
そして、始まるカツラギエースとミスターシービーの併走。
ピーちゃんが見た2人の実力とは…。
「おう!シービー!今日はよろしくな!」
「待ってたよ、エース。で、こちらの方は…誰?」
「ああ、生徒会の先輩だ。お前に取材したいんだって」
「取材…。あれっ?なんか、誰かから聞いたフレーズ…。誰だっけ?」
「いや、担任の先生とかウイナーたちが前から言ってたろ!?校内新聞の取材に協力しろって。あとはお前だけだって。先輩に迷惑掛けるなよ!」
「そんなこと言ったって、アタシ忙しいから。エースが適当に答えといてよ」
「ふざけんな!なんで、あたしがシービーの代わりをやらなくちゃいけないんだよ!あと、忙しくないだろ!ウソつくな!このヒマ人!」
「えー、めんどくさいなぁ〜。まあ、いいや。取材、併走終わったらでいい?」
「あっ、う、うん。大丈夫…。先に併走やっちゃって…」
「シービー!先輩に失礼だろ!すみません…ホントにコイツ適当で。とりあえず、併走が終わるまで、待っててください。おら、さっさとやるぞ!」
「よし!やろっか!エース、今日のアタシは一味違うからね。ついに"完成"したから、『アタシだけの走り』が!エースには悪いけど、今日はエースは併走相手っていうよりも実験台だから!」
「うるせぇ!こっちこそ、あんたを新しい走り方の実験台にしてやる!そんで、今日こそ勝ってやるからな!」
「いいね、それ!エースの新しい走りを見せてよ!」
「…」
ピーちゃんの存在感をないものにするほどの軽快なやりとりがミスターシービーとカツラギエースの仲の良さを伺わせる。
[なんなの、あの子…。自由過ぎる…でも、それに見合うだけの『何か』はあるよね。なんか、只者じゃないって感じが溢れ出てる]
2人のやり取りに置いてけぼりを食らっているピーちゃんだが、ミスターシービーから漂う只者ではない雰囲気を感じ取る。
「すみませーん!先輩!2000mのハロン棒のところに立っていてもらえませんか?そこを今回のゴールにするので!」
「オッケー!いいよー![この位置だと『皐月賞』を想定ってとこか…。まあ、今の時期なら当たり前か…]」
グラウンドの向こう側からカツラギエースがピーちゃんに呼びかける。どうやら、今回の併走は右回りの2000mのようで、時期的に『皐月賞』を想定した併走のようだ。そして、カツラギエースから指示を受けたピーちゃんは言われた場所に歩いて行った。
[さて、お手並み拝見。2人ともどんな走りをするんだろ?]
指定の場所に着いたピーちゃんはウォーミングアップをする2人を遠目で見守りながら、どんなレースになるのかと期待に胸を膨らませる。
「よし!アップオーケー!行くぞ、シービー」
「オッケー!エース!」
「「よーい!ドン!」」
「おりゃあー!」
準備が整った2人が一斉に駆け出し、レースが始まる。好スタートを切ったのはカツラギエース。初速から飛ばして、先手を奪う。
「おっ、始まった。へー、いいスタートだ。自分で自分を『アリンコ』とか言ってたけど、全然そんなことないでしょ」
ピーちゃんはカツラギエースのスタートに感心する。さっきは自分の実力を自虐していたが、走り出しを見るだけでも、それなりの実力があるとわかる。
「好スタートのカツラギエース。で、ミスターシービーは…えっ?何あれ?」
ピーちゃんは好スタートのカツラギエースから目線を移し、ミスターシービーを見やると…。
「いやいや、何であんなにチンタラ走ってるの、あの子?早く追わないと。いきなり離されまくってるけど、大丈夫?」
ピーちゃんが見たのはジョギングかと見間違うほどにゆったりと走るミスターシービーの姿。そして、ピーちゃんの言葉通りにあっという間にカツラギエースとの差は広がり、既に10バ身ほどの差をつけられていた。
[おいおい、シービー。これが、お前の"完成した"走りなのか?そんなに余裕かましてるなら、置いてくぞ!]
ミスターシービーが想像以上についてこないことにさすがのカツラギエースも驚くが、だからといって逃げの手を緩めることなく、さらに差を広げに掛かる。
「いやいや、速いなぁ〜、エース。出会った時に比べて、どんどん強くなってるね!でも、"まだ"何とかなるかな」
加速するカツラギエースを見守るミスターシービーの顔には笑顔が溢れている。どうやらカツラギエースが以前に比べて強くなっていることを喜んでいるようだ。ただ、そのような成長があっても自分が負けるとは全く思っていない。
「ハッ、ハッ、ハッ。とりあえず、飛ばしまくって半分まできたけど、ここからが本当の勝負だよな!?シービー!」
しばらくして、カツラギエースが中間地点を通過する。2人の差は先程よりもさらに離れている。
「もう少しで半分。さて、そろそろかな。じゃあ、今から行くからね、エース。アタシを飽きさせないでよ!」
その頃、ミスターシービーもようやく仕掛け出す。しかし、その仕掛けポイントは……
「ミスターシービーが動いた!って、まだ半分あるけど、ここから仕掛けて持つの??セオリー無視しすぎじゃない??」
ミスターシービーが仕掛け始めたのはまさかの中間地点から。さすがのピーちゃんもこのような仕掛けは見たことがないと、目を丸くしながら見守る。
「ハッハッ…。シービーのヤツ今からスパートか…。あと、800…踏ん張れよ!あたしの脚!うぉー!」
「いいね、エース!さあ、アタシも少しずつギアを上げるよ!」
「カツラギエースがスパートした??あれだけ前半飛ばして、まだ加速するの?えっ、ミスターシービーも加速?えっ、捲りのスピード速っ!マジで追いつく気だ…。何コレ…2人ともヤバっ!」
残り800mからレースが一気に動く。が、その動きが尋常ではないことにピーちゃんは呆気にとられる。
前半を飛ばしまくったカツラギエースだが、シービーの追撃に備えてさらに加速しようとする。決して楽ではないハイペースなはずなのだが、カツラギエースは加速をやめない。それはまるで猛獣にロックオンされた草食動物が必死になって生き延びようとするかのような鬼気迫るものがある。
一方のミスターシービーもカツラギエースを捉えるべく、ギアを少しずつ上げる。ただ、その加速力は異常で、足取りは軽やかながら、一完歩の伸びが尋常ではなかった。
それ故、本来ならば残り800mを切って20バ身差など、位置取りとして『絶望的な状況』といっても過言ではないのだが、一歩また一歩と確実にカツラギエースとの距離を縮めていくミスターシービーの尋常ではない伸びのスパートは、不思議と『勝つかもしれない』という希望を持たせさえするほどだ。
[ちょっと、ちょっと、併走なのに、なにこの迫力…。でも、2人とも楽しそうだ…。アタシがもしあの中に入ってたらどんなレースが出来るかな…]
2人の本番さながらの気迫がこもった併走にピーちゃんは圧倒される。ただ、その一方で、『もし、自分がこのレースを走っていたら』という想像も掻き立てられるほどにピーちゃんは2人のレースに釘付けになっていた。
「ヤバイな…そろそろキツい…。何とかゴールまで…」
最終コーナーを回って残り200m。必死に逃げ続けてきたカツラギエースだが、遂に脚が止まり出す。それでも気迫で脚を動かすが…
「エース!もう終わり?これじゃあ、足りないよ。もっとアタシを楽しませて!」
それはあっという間の出来事だった。逃げ粘るカツラギエースの背後に彼女は"いつの間にか"いた。
「クソっ!もう来やがった!バケモンめ!」
残り800m地点で20バ身は離れていたであろうカツラギエースとの距離を、ミスターシービーは僅か600mで1バ身差まで縮めてみせていた。
[マジか…。あれだけの差を捲り切ったよ、あの子…。しかも、まだ余裕がある。もう、どっちが勝つかは決まったね…]
ミスターシービーの豪快な捲りにただただ驚愕するピーちゃん。そして、ミスターシービーがカツラギエースに追いついた時点でピーちゃんはどちらが勝つかを悟った。
「エース!なかなか頑張ったけど、今日もアタシの勝ちだね!じゃあね!」
「クッソォ〜。次は負けねぇからなぁ〜」
100mほど競り合いが続いていたが、残り100mでミスターシービーはトドメとばかりにカツラギエースを振り切る。振り切られたカツラギエースは悔しそうな表情をしながら沈んでいく。
「よーし!ゴール!アタシの勝ちー!」
ミスターシービーがカツラギエースを振り切って数秒後、ミスターシービーが会心の笑顔でピーちゃんの前を駆け抜ける。
「はぁ〜、はぁ〜、チクショ〜。また負けた〜」
そして、ミスターシービーのゴールから1秒ほど遅れてカツラギエースもヘロヘロになりながら、ピーちゃんの前を通過した。
「2人ともお疲れ!いやー、すごいレースだった。まるで本番のレースみたいだったよ。見てて楽しかった」
レースを終えた2人に駆け寄りピーちゃんが賞賛の言葉をかける。
「そう!楽しんでくれたならよかった。アタシも楽しかったから、今日の走りは完璧だ!」
ピーちゃんの感想にミスターシービーは満足そうに笑う。
「ハー、ハー、ハー…くそ〜。爽やかに笑いやがって…。つーか、前半を遊んで走ってたヤツに負けるなんて、あたし弱すぎだろ!」
爽やかに笑うミスターシービーによそに、息も絶え絶えなカツラギエースは自分の不甲斐なさを嘆く。
「そんなことないよ!"まあまあ"だったよエース。あと"少し"で負けそうだった。次はきっと勝てるよ♪」
そんなカツラギエースに対して、ミスターシービーは健闘を讃える。
「うぜー!天才、うぜー!『まあまあ』と『少し』の言葉の使い方がおかしいだろ!ってか、シービー!あんた、これからはああやって走るのか?今日は併走だから問題ないだろうけど、本番はもっとたくさんのヤツらと走る。あんなに後ろからじゃ、距離のロスやら不利を受ける確率が酷くならないか??」
ミスターシービーの"讃え方"に文句を言うカツラギエースだが、それはそれとして、ミスターシービーの走り方の危うさを気にかける。
「確かに、あんなに後ろからだとインコースは取れないけど、大丈夫なの?一歩外側を走るだけでも、数メートルは距離を損するっていうのが"常識"でしょ?それに前の状況次第じゃあ、狙い通りのルートを走れるかわからないし…。あれじゃあ、自分でハンデ付けてるようなもんだよ?」
ピーちゃんもカツラギエースの意見に同調し、ミスターシービーの走り方の問題点を心配する。
「あぁ、距離のロスとか不利があるとかは考えてなかったなぁ〜。アタシはただ、"自分が楽しめる"走り方をしたかっただけだから。ほら、あれだけ離されてたら負けるかもって、ドキドキするでしょ?で、それをひっくり返したら最高によっしゃー!って感じがするでしょ?ほら、楽しい!」
2人の懸念に対して、ミスターシービーはどこ吹く風と言わんばかりにあっけらかんとしている。
「いやいや、自分が楽しいのはいいけど、それで負けたら元も子もないでしょ…」
競技者としてあまりにも呑気な発言にさすがのピーちゃんもツッコミを入れる。
「みんなはそう言うけど、アタシはそれが嫌い。レースはさ、走る自分が一番楽しめていないとダメでしょ?自分自身の楽しさを犠牲にして勝てて何が楽しいの?『勝つために走る』なんてアタシはごめんだね!」
ピーちゃんのツッコミに対して、ミスターシービーは即答で拒絶する。
「ハハハ…自分が楽しむか。まあ、そうあれたら理想だけど、なかなかそうもいかないのがトゥインクルシリーズのレベルの高さだからねぇ…。あっ、そうだ!併走も終わったし、取材いいかな?」
「いいよ。約束だったしね!なんでも聞いていいよ!」
ミスターシービーはピーちゃんのお願いを快諾する。
「じゃあ、お願い。あっ、カツラギエースも一緒にどう?」
「えっ?あたしもいいんですか?」
急に話を振られたカツラギエースは少し驚く。
「うん!大丈夫でしょ。もともとリストにはないんだけど、アタシが会長に載せさせるように言っておくから!君もいずれクラシックの有力候補になる気がするし!」
「じゃ、じゃあ、お願いします!」
カツラギエースは少し照れながら取材を承諾する。
「じゃあ、取材をはじめます。最初の質問は…、せっかくだからこれ!あなたの一番気になる同期の子は誰ですか?」
ピーちゃんはペンとノートを鞄から取り出し、2人に対して質問をする。
「あたしはもちろん、シービーです!シービーが走るとあたしはいつもその姿に釘付けなんです。常識を置いてきぼりにして、どんどん先へ行く、コイツの走りは同期の誰よりも注目しちゃいますね!」
カツラギエースは即答でミスターシービーと答える。
「カツラギエースはやっぱりミスターシービーなんだね!じゃあ、ミスターシービーは?」
「うーん、難しい質問だなぁ〜。走りの才能っていうだけなら、ウイナーかな?あとは…ノリの良さならダイナカールがいいね!顔の良さとスタイルの良さはソフィアがダントツ!お笑いの才能ならやっぱりコバンだね!あっ、一番居心地がいいのはエースね!」
「おい!なんだ、あたしのそのついで感は!」
ミスターシービーはスラスラととても楽しそうに同期の名前と気になるポイントを挙げていく。
「ハハハ。気になる子多いね。ミスターシービーは同期の子たちが好きなんだ」
楽しそうに話すミスターシービーに釣られてピーちゃんも笑顔になる。
「うん!同期の子はみんな好きだよ。みんな個性的だし、レースに対してはギラついてるし、一緒にいて飽きない。最高の仲間。で、エースはその中でアタシを一番楽しませくれる。アタシに勝つために何度も挑んでくる子なんて今までいなかったから、"程よい"刺激になって毎日が楽しいよ!」
「おい!取材なんだから、もう少しいい表現をしろよ!それじゃあ、あたしの絡みが『足ツボマッサージ』みたいじゃないか!」
カツラギエースがミスターシービーの表現に苦言を呈する。
「えっ、でもホントにそんな感じだしなぁ…。あっ、じゃあ、『高級マッサージチェア』で。エースはアタシの望む心地のいい刺激をくれてるから!」
「あたしの絡みを本当にマッサージに例えるな!失礼だろ!『友達』とか『ライバル』とか、いくらでも表現方法はあるだろ!?」
訂正が訂正になっていないことにカツラギエースがさらにツッコミを入れる。
「ああ、そういうこと?もちろん、『友達』だよ。アタシのことを一番甘えさせてくれる大切な『友達』。いや、『親友』だね!『ライバル』には……まだ足りないかな。でも、いつかアタシの"一番の"ライバルになってくれるって"一番"期待してるよ!」
「…ったく、そんな当たり前みたいな顔すんな…照れるだろ…」
ようやく意味を理解したミスターシービーが改めてカツラギエースの存在を表現するが、あまりにもストレートな表現にカツラギエースが恥ずかしがってしまった。
「ホントにいいコンビだね!じゃあ、次の質問にいこうかな…」
その後もピーちゃんはミスターシービーとカツラギエースにいろいろな質問をしていくが、2人ともどんな質問でも楽しそうに即答していく。
[ああ、なんかいいな…。2人とも本気で今を楽しんでる。どこまでも、真っ直ぐ、先を目指して走ってるんだ]
どんな質問に対しても純粋に本心で答える2人にピーちゃんは羨望の眼差しを向ける。それはピーちゃんがいつしか忘れてしまった感覚を思い出させてくれた。
「じゃあ、最後の質問。あなたがこのトゥインクルシリーズで成し遂げたい夢や目標はなんですか?」
「さっきも言ったんですけど、あたしは自分の強さをみんなに証明したいです。そのためにもまず、あたしの理想であり、憧れのシービーを超える。それがあたしの目標であって、夢でもあります!」
カツラギエースは堂々とそう宣言する。その表情に迷いや不安はなく、必ず成し遂げるという強い意志を感じる。
「いいね!ありがとう。じゃあ、ミスターシービーは…あれ?どうしたの?」
「…」
「あれっ?そんなに悩ませる質問だった?」
賑やかな雰囲気で会話が続く中、ピーちゃんの最後の質問にスターシービーは先程までの笑顔からいきなり真顔になり、回答につまる。
「ごめんね。その質問には答えたくないな…。もう何度も聞かれたら質問だから、いい加減うんざりしてるんだよね」
ミスターシービーは険しい顔で回答を拒絶する。
「えっ?"何度も"ってどういうこと?」
「デビュー前からさ、トレーナーがわんさかアタシのとこに来て、聞くんだ。『目標はなんだ?』『目指すものはなんだ?』『夢はなんだ?』って、そして、みんな言うんだ『君の才能があればなんでもできる。一緒に叶えよう』って。まあ、みんなアタシに期待してくれてるんだろうけど、困るんだよね…。そんな期待を押しつけられても…。だって、アタシには叶えたい願いも夢も"ない"んだから」
ミスターシービーは苦笑いしながら、過去にあった出来事を彼女に話す。
「えっ?何もないの?じゃあ、君は何のために走ってるの?」
まさかの回答にピーちゃんが驚く。
「『何のために』なんてないよ。走ること"そのもの"が楽しい、それだけが至上の幸福。それ以上の価値なんてアタシは求めない。なのに、トレーナーたちはずっとアタシに『何か』を求めるんだよね。まあ、そんな人たちのスカウトはめんどくさいからみんな断ったけどね!まっ、そういうことだから、回答するなら『何もない』が本心かな」
「そ、そうなんだ…。なんか、ごめんね。気を悪くするような質問をして…」
それまで楽しそうな顔しか見せなかったミスターシービーの嫌そうな顔を見たピーちゃんが謝る。
「いや、アタシの方こそ、ごめん。先輩は"仕事"でその質問をしてるだけっていうのはわかってるけど、アタシはウソを答えたくないんだ」
正直に本心を話すミスターシービーだが、自分の主張がピーちゃんを困らせる回答だとは理解しているのか、申し訳なさそうに謝る。
「いいよ、気にしないで[言ってることは変わってるんだけど、すごい自然な感じがして嫌味もない。なんだろう?この子の振る舞いや言葉にすごい引き込まれる…]」
ミスターシービーの発言にピーちゃんは彼女だけの独特の感性と生き方を見い出すとともに、その姿に徐々に引き込まれつつあるようた。
「とりあえず、アタシに目指すものはないよ。まあ、目指すものがないからこそ、アタシはただ単にレースの中にある『自由』を楽しむんだ。だから、アタシに何も期待はしないで欲しい。わかってくれるかな?」
ミスターシービーは凛とした表情でピーちゃんに同意を求める。
「なるほどね。アタシはいいと思うよ。でも、これだけの才能があれば、『ファン』は必ず君に期待する。そうなったらどうするの?」
ピーちゃんはミスターシービーの問いに同意するが、代わりに一つの疑問を投げかける。
「どうもしないかな。それをどう思うかはその人の"自由"。好きでいてもらっても、嫌いでいてもらってもいい。まあ、強いて言うなら、アタシが出るレースを楽しんでくれるだけでいいよ!」
そう言うとミスターシービーの表情に再び笑顔が戻る。きっと今の発言はミスターシービーの本心なのだろう。
「本当に君は自由だね。でも、きっとそれが君の魅力なんだね[思い出した。この子はあの人に似てるんだ。トウショウボーイ先輩に。言葉も振る舞いも独特なんだけど、とにかく人を惹きつけるカッコよさがあったんだよね。いわゆる"カリスマ性"ってやつかな。それがこの子にもあるんだ。だから、アタシはこの子に引き込まれてるんだ]」
嘘偽りのない自然で嫌味のない回答をするミスターシービーにピーちゃんはある人物の姿を重ねる。それはかつて自分が憧れ、目標にした大先輩の佇まいを彷彿させるものだとピーちゃんは気付いたようだ。
「2人とも本当に面白いね。性格も考え方も全然違うけど、人を惹きつける魅力みたいなものがある。アタシはますます君たちに興味が湧いたし、応援したい。これからアタシは君たちのレースを注目して観るよ」
「うん!ぜひ、どうぞ!」
「あっ、ありがとうございます!精一杯頑張ります!」
そう言うピーちゃんの表情はとても明るく、心の底から2人へ好感を持っているようだ。そして、2人もピーちゃんが応援してくれることにかなり喜んでいるようだ。
「さてと、取材終わり!2人ともありがとうね!じゃあ、また!」
「「はい!ありがとうございました!また!」」
こうして、取材は終わった。
アタシとしては凄く楽しい時間で、これからこの2人を中心に下の世代を見守りたいなって思ったんだ。この子たちなら今のトゥインクルシリーズを変えてくれるんじゃないかなって気がしたから。
そして、アタシの期待通りにここから一気にトゥインクルシリーズの歴史が動いていったんだ…。
アプリにおけるミスターシービーとカツラギエースのやり取りが自分はとても好きなので、私の作中のやりとりも出来るだけ『アプリでもありそう』と思われるような描写を心がけてます。
作中では端折っていますが、私の物語でもエースが宣戦布告してシービーが三冠レースに参戦する流れになっています。ただ、アプリのような記者会見乱入みたいなアグレッシブな宣戦布告はしてはいませんので、悪しからず(笑)