BEGINNING OF THE REVOLUTION   作:スタイニー

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宝塚記念に快勝し、見事にGⅠウマ娘となったカツラギエース…だったのだが、どうやらいきなりトラブルがあったようで…。

一方のミスターシービーは秋シーズンの復帰へ向けてトレーニングに励む。そして、その中で『領域』についてとそれに到達し得るウマ娘たちについてを語っていた


手掛かり

 

 

 

「カツラギさん?」

 

「はい…」

 

GⅠ宝塚記念を勝ち、ようやく大きなタイトルを獲得したカツラギエースと土浦。そんな2人は今、土浦のトレーナー室にいる。

 

「もう一回、説明をしてくれるかな?」

 

「はい…」

 

宝塚記念だけでなく、前哨戦2戦も含めて重賞3連勝。一部では『中距離のエース』という呼ばれ方をするなど、世代だけでなく学園全体の中での実力者として注目され始めている。

 

ミスターシービーが不在ということもあり、今学園内で最も勢いがあるウマ娘であるカツラギエースは今……

 

「なんで、高松宮杯に出たんだ!?そして、なんで5着なんだよ!?」

 

「ほっっっんとーーに、すみませんでした!!!」

 

トレーナー室にて土下座しながら土浦に謝罪していた…。

 

「宝塚記念に勝って3連勝で春シーズンを終われば、万全の状態で秋に行けると思ったのに…。この負けでケチがついて、調子落としましたなんてシャレにならないからな!」

 

「そうならないように、夏のトレーニングは全力で精進します…」

 

今、土浦はトレーナー室でカツラギエースに説教をしている。実はカツラギエースは宝塚記念の3週間後に出場したGⅡ高松宮杯であろうことか5着に敗退していたのだった。

 

「そもそもの話、俺は前もって言ったよな?出る必要のないレースだって!だから、言ったよな!勝つことが大前提(・・・)で許可してやると!」

 

「はい…全く出る必要のないレースでした…。それとあたしは言いました。『絶対勝てます』って…」

 

土浦が問題視しているのは、カツラギエースが土浦の反対を押し切って高松宮杯に"強行出場"したことだった。

 

ことの発端は宝塚記念に勝利して数日後。カツラギエースからの急な提案からだった。

 

 

 

 

 

「トレーナーさん。お願いがあるんですけど…」

 

「エースがお願いとか珍しいな。なんだ?」

 

「実は夏シーズンの間にもう1レース出たいんですけど…」

 

「は?なんで?」

 

春に4戦も走っているので、夏シーズンの全休を考えていた土浦。もちろん、それをカツラギエースにも事前に伝えていた。にも関わらず、カツラギエースはもう1レース出場することを直談判してきたのだ。

 

「この間の宝塚記念なんですけど、なんか勝った気になれなくて…。でも、走り自体はすごい調子が良かったんで、この感覚をなくさないうちに、もう一回だけレースに出たいなって思うんです…」

 

「それはどういうことだ?」

 

「実は、レースの中盤あたりから最終コーナーまで記憶がないんですよね。集中して走れてたとは思うんですけど、あたしどんな感じで走ってましたか?」

 

「記憶がない?本当か、それ?中盤から最終コーナーまでの走りは、ラップも正確で先頭を捉えに行ったタイミングもいい意味で強気な『実力者のレース運び』が出来てた。記憶が飛んでてあんな強い走りができるのか?」

 

カツラギエースの話と実際のレースに内容を照らし合わせても、不自然な点が多すぎるため、普段からカツラギエースに全幅の信頼を寄せている土浦といえど、懐疑的になるしかないようだ。

 

「いや、それがわからなくて…。いくらトレーナーさんでもこんなフワフワした話で信じてくれっていうのも無理だとは思うんですけど、本当にそんな感じだったんです」

 

自分の言っていることが信憑性に欠けているというのはカツラギエースもよくわかっているようだが、それでも信じてもらうための意を決した直談判だったようだ。

 

「まあ、真面目なお前が適当な話をするわけないから、信じないつもりはない。それにあれだけのレースができた感覚を忘れたくないという気持ちもわからなくもないが…。春に4つ走ってるから、これ以上疲労を溜めたくないし、不用意な怪我もしたくないしなぁ…」

 

そんなカツラギエースに、土浦は申し訳なさそうな表情をしながらも反対の態度は崩さない。

 

「あたしもそう思うんですけど、夏を全部休むとこの感覚を忘れそうな気がするんで、走っておいた方がいい気がするんです!だから、どうか!!」

 

そんな土浦に対してカツラギエースはグイグイと押し込んでいく。

 

「うーん、しかしなぁ〜」

 

「お願いします!これからシービーと戦うにはこの感覚がないと戦えない気がするんです!」

 

「いや、やっぱり許可できないな…」

 

「じゃあ、休養もできるように6月最後の高松宮杯に出るでどうですか?」

 

「いや、それは無理だろ。宝塚記念から3週間しか空いてないんだぞ?」

 

「さっきも言いましたけど、宝塚記念の疲れは全然ないんですよ!だから、行けます!それに高松宮杯に出れば、秋の復帰戦まで3ヶ月もあります!これでどうですか?」

 

「う〜ん…。しかし、万が一負けた時にメンタルにも影響が出るかもしれないからな…」

 

「それってつまり、勝てばいいってことですか!?あたし、勝つ自信があります!だから、出させてください!」

 

「まあ、勝つなら…いや、やっぱりダメだ!」

 

今までにないほどに積極的にせがんで来るカツラギエースを前に土浦が徐々に押され始めていく。

 

「あのメンバーの宝塚記念で勝てたんですよ!GⅡなら相手関係も緩くなります!勝てる自信があります!!」

 

「……本当に勝てるのか?」

 

「宝塚記念から3週間しか空きませんから、あの感覚は体に残ってると思うんです!それを思い出せば絶対に勝てます!!だから、なんとか!!」

 

「わかった、わかったよ…。日頃のお前に免じて許可してやる。ただし、勝つことが大前提(・・・)で、どんな理由があっても負けたらダメだからな!」

 

「ありがとうございます!!!任せてください!トレーナーさんの信頼に絶対に必ず応えて見せますから!!」

 

こうして、カツラギエースは土浦を強引に説得して高松宮杯への出場を勝ち取ったわけだが、結果は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、出場を許した俺にも責任はある。だが、あれだけ『勝てる』と言っていたのに、なんだ、あの不甲斐ない走りの5着は!」

 

結果は見せ場なしの5着。しかも、宝塚記念で勝ったスズカコバンにも負ける始末だった。

 

「それについては、あたしの奢りでした…。本当にすみません…」

 

土浦の説教に対して、カツラギエースは萎縮しながら謝るばかりで、普段の元気さは微塵もない。

 

「その奢りは今回限りだ!二度目はないぞ!で、お前は『宝塚記念の感覚を思い出せば、絶対勝てる』って言ってたはずだが、結局その感覚は思い出せなかったのか?」

 

「すみません…思い出せませんでした…」

 

土浦の問いにカツラギエースは床に頭をつけながら、感覚を思い出せなかったことを白状し、謝罪する。

 

「ったく…。まあ、頭ごなしにでまかせとは言わないが、感覚はあくまで感覚だ。もう少し論理的に考えた方がいいだろう。もう一度聞くが、宝塚記念はどんな感じで走ってたんだ?」

 

呆れた表情自体は変わらない土浦だが、気を取り直して建設的な話し合いをしようとする。

 

「いつも通りにスタートして、いつも通りに頭の中でリズムを取りながら走ってました」

 

「まあ、そこまではいつも通りだな」

 

「それで600を過ぎてペースを落とした後、頭の中のリズムと体のリズムがぴったり合い始めたんです。そこから1000を過ぎた後から最終コーナーまで記憶がないんです…」

 

「なるほどな。で、最後の直線は?」

 

「気が付いたら最後の直線に入ってました。そこからは余ってる体力を全部使ってスパートしました。それで勝てました。そんな感じです…」

 

「うーん、わからないなぁ…。俺も今までいろいろなウマ娘を教えてきたが、そんな話は聞いたことがないな」

 

土浦の問いに対して、カツラギエースは出来る限り覚えていることを話したが、やはり漠然とした話にしかならず、記憶がない原因を突き止めるまでには至らない。

 

「他には何かないか?この際だから、感覚的なことでもいいぞ」

 

曖昧な話しかできずにうなだれるカツラギエースに対して、土浦が抽象的な観点から手掛かりを見つける方法に切り替える。

 

「うーん…。あっ、リズムを取ってる時に時計の針みたいな音がし始めました。なんていうか、こう…秒針が動いてる音みたいな感じです。で、その音が聞こえてからしばらくして記憶がないです…」

 

何か手掛かりがないかと必死になるカツラギエースからようやく1つ話が出る。

 

「その感じだと、走りのリズムに具体的なイメージが付いた感じか…?他には?」

 

ようやく出てきた手掛かりに食いつく土浦が、その話をより詳しく尋ねる。

 

「そうですね、あとは…あっ、始めは意識してリズムを刻んでたんですけど、その内リズムを刻む音が頭の中に響き渡ってきたんですよね。なんか、身体全体でリズムが刻めてる感覚ですかね?そしたら、身体の疲れも無くなってきたんです。そんな感覚に入ったと思ったら、いつの間にか記憶がなくなったんです」

 

「うーむ、その話が本当なら、集中力が極限まで高まって無意識状態になった感じに近いのか?あくまで他の競技の話だが、トップアスリートの中にはそんな感覚に入れるヤツもいるという話を聞いたことがあるが、もしかしたら、それなのかもな」

 

ようやく出てきた手掛かりに対して土浦は自身が持ち得る知識からそれに近しい事柄を見つけ出す。

 

「それ、本当ですか?じゃあ、あれは完璧な集中状態ってことですかね?トレーナーさん、そういう完璧な集中状態を維持するトレーニングはありませんか?」

 

少しずつではあるが、希望の光が見え始めたことでカツラギエースの表情にも力強さが戻り始めている。

 

「しかし、あれは意識的にできるものじゃないとも言われているみたいだ。だから、トレーニングでどうにかなるかはわからないな…」

 

「そうですか…。でも、あたしのもともとの課題は集中力ですから、今まで以上に感覚を研ぎ澄ませていけば、少しくらいはあの感覚に近づけませんかね?」

 

「まあ、そうなればいいが、理屈で考えたい俺からすれば、そんな曖昧で宝くじみたいな感覚をアテにするのは、とてもじゃないができないな…。だから、一旦この話は置いておこう」

 

「まあ、そうですよね…」

 

少しだけ手掛かりが見つけられそうな気配はあったが、曖昧なことには変わらないので、一旦この話は据え置かれることになり、カツラギエースは悲しそうな顔をする。

 

「まあ、いい。エース、これ以上は気にするな。俺も気にはしないから前を向こう。きっと、この話はお前が成長してきているからこその新しい壁なんだろう。俺はそれ自体はポジティブに捉えている。これからもトレーニングに励めば、またあの感覚を再現出来るかもな!」

 

悲しげな表情のカツラギエースに土浦はいつも通りの笑顔で肩に手をやり、励ます。

 

「はい。本当にすみませんでした。でも、あたしこのままじゃ絶対に終わりません!これからのトレーニングを1秒たりとも無駄にはしません!今日もトレーニングよろしくお願いします!!」

 

それに対してカツラギエースも悲しげな表情をやめ、いつも通りのまっすぐな表情に戻り、決意を新たにする。

 

「おう!頑張ろうぜ!さて、とりあえず、復帰戦だが、予定通りにあのレースに出るぞ」

 

「はい!任せてください!復活したシービーと当たる最初のレース…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シービー。走りの感覚はどうだ?」

 

いくらかのトレーニングを終え、歩いて戻ってきたミスターシービーに寺永は走りの感覚を尋ねる。

 

「これぐらいなら、まだ問題はないよ」

 

「そうか…なら、いいんだが…」

 

問題ないと回答するミスターシービーに対して、寺永は少し不安そうな顔をする。

 

「そんな不安そうな顔しないでよ、寺さん。こんなことで、アタシの物語は終わらない。アタシはまだまだ、仲間たちとのレースを楽しむんだから!」

 

「…」

 

明るい声色のミスターシービーに対して、寺永の表情は冴えないままだ。

 

「本当に心配性だなぁ〜。とにかく、アタシは今、次のレースが楽しみで仕方がないんだ!次のレースで強くなったエースと本気で走れると思うと、不安よりもワクワクが止まらない!」

 

不安そうな顔つきの寺永に、ミスターシービーはまるで寺永を励ますかのように、爽やかな笑顔で語りかける。

 

「それは、あの宝塚記念で彼女も『領域』に入っていたということか?」

 

満面の笑みを浮かべるミスターシービーに対して、寺永がカツラギエースが『領域』に入れているかどうかを尋ねる。

 

「『領域』に入れてたと思うよ。たぶん、アタシの皐月賞の時(・・・・・)と同じ感じかな。だから、まだまだ頑張ってもらう必要はあるけど、あと少しで、"本当の意味で"アタシの隣に走れるようになると思う!」

 

ミスターシービーはカツラギエースが『領域』に入れていた可能性を示唆する。

 

「お前の皐月賞の時と同じか。確かに、まだ使いこなせてはいないようだが、今後使いこなせる可能性は十分にあるんだな」

 

「可能性は全然あるよ。いつでも(・・・・)『領域』に入るための"コツ"をエースなら必ず見つけてくれるって、アタシは信じてる!」

 

寺永の問いかけに対してミスターシービーは、カツラギエースへの期待と信頼をストレートに口にする。

 

「そうだな。あの子なら必ずやり遂げてくれるだろう。そういえば、"彼女"の走りはどうだった?この間のレースは圧巻の走りだったが、彼女は『領域』に至れてるのか?」

 

カツラギエースへの期待と信頼を口にするミスターシービーに対して、寺永もまた大きな期待を寄せているようだ。どうやら寺永はカツラギエースとは違う『領域』に至る可能性のあるウマ娘を発見しているようだ。

 

「彼女?ああ、あの子のこと?すごいんじゃない?あの子はこの間のレースで完璧に『領域』に入れてたよ。このままいけば、秋くらいには使いこなせるレベルになるんじゃないかな?」

 

寺永が発見したウマ娘の素質の高さをミスターシービーは素直に賞賛する。

 

「やはり、彼女の素質は歴代のウマ娘の中でも最上位に位置するな。彼女もまたお前にとっての良いライバルになるだろう。喜ばしいことだな」

 

「まあ、あの子はすごいと思うよ。ある意味ではアタシよりもすごいものを持ってる。ただ、アタシはあの子を『ライバル』とは言いたくないな。だって、あの子はただの『敵』だから」

 

カツラギエースとは別の『領域』に至ったウマ娘の出現を喜ぶ寺永。ただ、ミスターシービーはそのウマ娘の才能を評価し、認めてはいるが、そのあり方には否定的なようだ。

 

「『敵』か…。お前にしては珍しく、強い否定的な言葉を使っているが、同じ『領域』に至った者同士なのに『ライバル』と呼ぶカツラギエースと『敵』と呼ぶ彼女との間にどんな違いがあるんだ?」

 

他人の行動や考え方を否定的に見ないミスターシービーが珍しく否定的になる理由が気になる寺永は彼女に対してさらに突っ込んだ質問をする。

 

「アタシにとって『ライバル』っていうのは同じ価値観を持って競い合う"仲間"だと思ってる。でも、もし、その子の価値観がアタシとは真逆だったとしたら、それを"仲間"とはいえないと思うんだ。だから、『敵』って表現したんだけど、なんか違ったかな?」

 

「いや、お前の表現は的確だ。ならば、さらに聞くが、お前と彼女の価値観はどう違うんだ?」

 

予想以上の明確な理由に感心する寺永はさらに核心に迫る質問をする。

 

「たぶん、あの子とアタシはレースに対する価値観が真逆なんだ。レースを"すること"に価値を見出すアタシと"勝つこと"に価値を見出すあの子。アタシはあの子の価値観に共感しないし、魅力も感じない。だから、レースで戦う分にはいいけど、プライベートで一緒に走りたいとは思わない。だって、あの子は『他の誰かと一緒に走ること』に楽しさを感じていないからね」

 

ミスターシービーは淡々としかし、どこか寂しげに自身とそのウマ娘との価値観の違いを語る。

 

「実力は認めるにしても、お前の"嫌いな走り"を体現するのが彼女というわけか。なるほど、確かにそれなら彼女はお前の『敵』でしかないな」

 

「まっ、そんなとこだね」

 

寺永の要約した感想に対してミスターシービーはあっけらかんとした表情で肯定する。

 

「しかし、相容れる者・相容れない者の差はあれど、同時期にトレセン学園に『領域』に至れる可能性を持つウマ娘が、お前も含め3人もいるとはなかなかないなことだ。この秋シーズンのレースはどれも白熱した闘いにな……」

 

価値観の違いはあれど、特別な才能を持つウマ娘が一堂に会する今の状況に寺永は楽しみを感じているようだが……

 

「いや、4人だよ」

 

そんな寺永を遮るようにミスターシービーが訂正を挟む。

 

「4人?お前ら3人以外にも『領域』に至れるウマ娘がいるのか?それは初耳だが?」

 

突然の訂正に寺永は驚きを隠せない。

 

「あれ?寺さんはまだ気付いてなかったんだ…。まあ、"まだ"『領域』には辿り着けてないけど、今年の秋にはいけるでしょ」

 

驚く寺永を尻目にミスターシービーは楽しそうに4人目のウマ娘のことを語る。

 

「知らないな。そんなウマ娘がいたなんて。なら、秋には4人の『領域』発現者が覇を競うというわけか?」

 

「ううん。その子はたぶんアタシたちとは走れない(・・・・)よ」

 

「走れない?それはどういう意味なんだ?」

 

「その子はアタシたちと同じ"レベル"で走ることはできるけど、アタシたちとは同じ"世界"では走れないんだ。残念だよね…。アタシはその子の価値観が好きだし、尊敬もできるし、共感もできるんだけど、走れる世界はどうしても別になっちゃうんだ…」

 

「なんだ、その意味深な話は?一体、それは誰なんだ?」

 

続々と出てくる新しい情報。しかし、そのどれもが抽象的であり、なかなか対象を絞ることが出来ない寺永が、単刀直入に4人目が誰なのかを尋ねる。

 

「フフッ。それは教えられないよ。いくら寺さんでもね。フライングしたらその子に失礼でしょ?まあ、秋になればわかるから。ちょっと待ってなよ!」

 

そんな寺永に対してミスターシービーは小悪魔的な微笑みで答えをはぐらかす。

 

「生意気なヤツめ…。まあ、いいだろう。さて、休憩は終わりだ。復帰に向けたトレーニングを続けるぞ」

 

その小悪魔的な微笑みに『絶対に教えない』という意志を感じた寺永は追求を諦め、トレーニングの再開を促す。

 

「はい、はい。ねぇ、そういえば復帰戦はあのレースだよね?」

 

「そうだ。予定通りにいく」

 

「OK。楽しみだな…。きっと、復活したエースも出るはずだから…」

 

 

 

 

 

 

「「毎日王冠!!」」

 

 

 

 




ぶっちゃけ、私的にはカツラギエースの高松宮杯の敗戦は物語を作る上で非常に"邪魔な"史実でした。

春シーズンの連勝で絶好調のカツラギエースと完全復活のミスターシービーとの激闘の毎日王冠!という綺麗な流れの展開に水を差すカツラギエースのこの敗戦の扱いに困りすぎて、一時期この敗戦を"無かったこと"にしてやろうかとも考えました。

最終的にこの敗戦をカツラギエースには成長の余地がまだまだあるという描写のエピソードとして完成させましたが、危うく私のポリシーを捻じ曲げてしまう可能性があった『難関エピソード』だったりします。
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