BEGINNING OF THE REVOLUTION   作:スタイニー

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時は流れて10月。
トゥインクルシリーズは秋シーズンを迎えていた。

秋のGⅠ戦線に入る前の前哨戦たる毎日王冠。

そこには長期休養から復帰した『三冠ウマ娘』と春シーズンで実力を証明した『中距離の王者』がいた。

現在のトゥインクルシリーズを牽引する2人の対決に胸を躍らせるファンが大勢いる中で、1番人気を背負っていたのはなんと、どちらでもなかった…。


大井の太陽

 

10月7日 東京レース場 1800m

第35回毎日王冠 GⅡ

 

ゲート前

 

 

 

 

 

 

 

 

土曜日開催のGⅡレースではあるが、場内の賑わいはGⅠレース並みである。

 

その要因となっているのは……

 

 

 

「やぁ、エース」

 

『ターフの演出家』ミスターシービー。

 

「よぉ、シービー」

 

『中距離の王者』カツラギエース。

 

今、トゥインクルシリーズを牽引する同期の2人の秋の初戦がここ、東京レース場で行われるからだ。

 

「待たせて悪かったな…。あたしはもう、あんたを独りにはしねぇから…。これからはずっと一緒だ!」

 

カツラギエースは少し気恥ずかしそうにしながら、ミスターシービーに想いを伝える。

 

「ううん…。アタシこそ、ごめんね…。やっぱり、アタシはエースがいなきゃダメみたいだ…。でも、だからってアタシはキミを待たないよ。アタシにずっとついてきて」

 

ミスターシービーもまた少し照れながら、想いの丈をカツラギエースに伝える。

 

 

 

 

 

ガシッ

 

 

 

 

想いを伝え合った2人がガッチリと握手を交わす。それは些細なすれ違いによって止まってしまった時間が再び動き出す合図だった。

 

「とりあえずなんだけど、一緒にレースを走るのは1年ぶりくらい?」

 

「ああ、そんなもんじゃないか?つーか、あたしは今年5レース目だから、気にならないが、シービーはマジで1年ぶりだろ?レース場はやっぱり、気持ちがいいだろ?」

 

「そうだね…。まあ、もともと気持ちがいいとは思ってたけど、今はまた前とは違う気持ちよさがあるね。それにキミもいる。気分は最高さ!」

 

「そりゃ、よかった。これならレースも最高に楽しめそうだ」

 

「そうだね。最高のレースになりそうだ。でも、勝ちまでは譲らないから、よろしく!」

 

「はん!それはコッチのセリフだ!1年ぶりだろうが、三冠ウマ娘だろうが、親友だろうが、勝負は勝負だ。負けるつもりはねぇ!」

 

空白の時間を埋めるように2人の軽快なやり取りがゲート前で繰り広げられる。それは2人だけでなく、トゥインクルシリーズのファン全員が待ち望んだ光景であった。

 

「あー、あー、仲睦まじくやってるとこ、悪いが、オレも混ぜてくれよ!」

 

「「??」」

 

親友2人の軽快なやり取りを遮るように1人のウマ娘が2人に声をかける。

 

「ミスターシービー、カツラギエース。今日のレースの盛り上がりは中央の現役トップ2人の復帰戦てこと"だけ"で盛り上がってると思ってるみたいだが、今日の声援の三分の一くらいは"オレの客"のおかげだ。人気者はアンタらだけだと勘違いすんなよ?」

 

「えーっと、キミは……誰?クラスにいたっけ?」

 

「いや、アンタとは違うクラスだ。まあ、そもそも今年入ってきたばっかりだから、長期休養してて、学校に大して来てなかった"中央の"三冠ウマ娘がしらねぇのは仕方がねぇ。オレはサンオーイ。大井からの転校生だ。よろしく頼むぜ」

 

「サンオーイ……。ああ、"南関東の"三冠ウマ娘ってキミのことね。名前は聞いてたよ。大井じゃ、だいぶ凄かったんでしょ?」

 

「まあ、騒がれ方はアンタほどじゃないがな。あと、一応訂正しておくが、オレは『三冠ウマ娘』じゃない。今は『"四冠"ウマ娘』だ」

 

「ふーん、タイトルの獲得数だけなら、アタシの負けだね」

 

 

 

 

サンオーイ。

昨年まで大井トレセン学園に在籍し、今年から中央に移籍してきたミスターシービーやカツラギエースと同期のウマ娘。

 

大井トレセン所属時代の戦績は13戦9勝。

 

9勝の中には南関東における『クラシック三冠』にあたる羽田盃・東京ダービー・東京王冠賞が含まれており、サンオーイは南関東史上4人目の『南関東三冠ウマ娘』となった。

 

そして、三冠達成後は年末の南関東締めの大一番東京大賞典に出場。並み居るシニア級の先輩ウマ娘たちを抑えて1番人気に推され、2着に2バ身半差を付け見事勝利。『南関東四冠ウマ娘』となった。

 

南関東最強の地位を確立したサンオーイは大井のファンや関係者の期待を背に、満を持して今年の年明けから中央に移籍。ここまで3戦1勝2着1回3着1回と安定した成績を納めている。

 

ちなみにサンオーイの地元の人気と期待は非常に高く、今回の毎日王冠の異例の賑わいも『中央三冠ウマ娘VS南関東三冠ウマ娘』という史上初の対決を一目見ようと、大井から大応援団が押し寄せていることが主な要因で、それを後押しするかのように、今日のレースはミスターシービーとカツラギエースを抑えて1番人気に推されるほどに期待されている。

 

 

 

「でも、地方のダートだと敵なしかもしれないけど、ここは中央だからね。まずはオープンレースでもいいから芝の感触に慣れた方がいいんじゃないの?」

 

「敵にアドバイスとか、ずいぶんと余裕かましてんな。さすがは中央(エリート)様ってわけか?」

 

不意にアドバイスをしてきたミスターシービーに、サンオーイが、少し不機嫌そうな表情をする。

 

「気を悪くするなよ。別にシービーは地方から来たってだけで見下したりはしないヤツだ。今のはちょっとしたアドバイスさ。地方で鳴物入りで来ても芝適性がなくて早めに引退したり、出戻っちまったしヤツもいたから心配になっただけだ。実際、ここで戦うには芝適性は必要だろ?あんた、大丈夫なのか?」

 

唐突にピリつき出した場の空気感を察したカツラギエースが、仲裁に入る、

 

「心配してもらってすまねぇが、生憎と中央の芝はもう慣れたんだ。これでも今年の安田記念は3着だった。初めての(・・・・)芝レースにしては上出来だろ?」

 

カツラギエースの仲裁により、ミスターシービーに侮りがないとわかったサンオーイが機嫌を持ち直す。そして、自身にはアドバイスが必要ない理由を話す。

 

「初めての芝だってのに、ハッピー先輩とダスゲニーについていけたのか?あんた、すげぇな!こりゃ、あたしらも気合い入れないとダメだな!なあ、シービー!」

 

「へー、いいね、キミ。楽しい仲間がまた1人増えた♪歓迎するよ。よろしくね!」

 

サンオーイが初の芝レース、しかも中央の最高格のレースでいきなり着を拾えていることにカツラギエースが、素直に称賛し、それに釣られて、ミスターシービーもまた楽しそうな表情で、サンオーイに握手を求める。

 

「なるほどな。確かにアンタらは、南関東(オレ)を対等に見てくれえるみたいだな。噂通りに本物の実力者だな。大井からわざわざ乗り込んで来た甲斐があったってもんだ。いいレースにしようぜ!」

 

サンオーイはカツラギエースとミスターシービーの表情に、本物の実力者としての"余裕"’を感じ取る。そして、ミスターシービーの手を握り返しながら、闘志がこもった鋭い眼差しで2人を見つめ直す。

 

「ああ、正々堂々とやろうぜ!じゃあな!」

 

「三冠ウマ娘対決か…。いいね!ワクワクしてきた!じゃ、またあとで!」

 

2人もまた、サンオーイの実力者としての覇気を感じ取り、笑顔を見せる。そして、3人は別れ、それぞれのゲートへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

さあ、今日は土曜日開催のGⅡレースではありますが、会場の熱気はGⅠに勝るとも劣りません!

 

勝つのは中央の三冠ウマ娘か?それとも南関東の四冠ウマ娘か?はたまた春の中距離王か?

 

注目の毎日王冠、まもなくスタートです!

 

 

 

 

 

ゲートが開いてスタートが切られました!

本当に揃った綺麗なスタートを切ります!

 

ミスターシービーがスッと抑えて、最後方に下げました。

 

 

 

 

[まずは位置取り。いつも通りに一番後ろから。今日はハイレベルなメンバーだけど、出場選手は少ないから、後ろから行くアタシにとっては好都合だね]

 

ミスターシービーは出だしから位置取りを一気に最後尾まで下げて、定位置に収まる。

 

 

 

 

先頭に立つのは何か?トウショウペガサス。

真ん中からカツラギエースが押し出されるようにして先頭に立つか?まだ、シンボリヨークと1番のトウショウペガサスとほとんど並んでおります。

 

 

 

 

[スタートは上手くいったが、両脇がついてきた。単独で逃げたいからもう少しペースを上げるか…」

 

 

 

 

おっと、ここでシンボリヨークとカツラギエースが行きました。

 

 

 

 

[一枚は剥がしたが、もう一枚がついてきた…。仕方がねぇ、もう一つペースを上げるぜ]

 

競りかけてきたトウショウペガサスを振り切ったカツラギエースだったが、競りかけてきたもう1人のシンボリヨークを振り切ることができなかったため、もう一つペースを上げて、振り切りにかかる。

 

 

 

 

 

ここで、カツラギエースが単独先頭、ミスターシービーは一番最後。そして、サンオーイが中央を進んでいきます。

 

 

 

 

 

カツラギエース、ミスターシービーの両雄がいつも通りのポジションでレースを進める中、サンオーイはその中間に位置する場所でレースを進めていた。

 

[2人とも迷いなく自分の定位置を取りやがった…。マークされようが、研究されようが、自分のスタイルを貫くなんて、マジもんにしかできねぇことだ。やっぱり、中央のトップはスゲェ奴しかいねぇな…。でもだからこそ、コイツらに何がなんでもぜってーに勝つ!!南関東は中央なんかに負けてねぇって証明するためにな!!]

 

大井で圧倒的な成績を残し、中央に移籍してきたサンオーイにはある野望があった。

 

日本のレース界には2つの運営組織がある。

 

『トゥインクルシリーズ』と呼ばれる中央トレセン学園に所属するウマ娘たちが主に出場するレースを管理するURA。

 

全国に拠点を置く地方トレセン学園に所属するウマ娘たちが主に出場するレースを管理するNAU。

 

この2つの運営組織に便宜上の格差はないのだが、現実においては【URA(中央)>NAU(地方)】という格差があることが、周知の事実になってしまっている。そのため、地方から中央へ移籍することは事実上の"出世"にあたり、逆に中央から地方に移籍することは"都落ち"という風潮も根強く残ってしまっていた。

 

そんな風潮を打破すべく、過去に地方で名を挙げ、中央に挑んでいった者は過去にもたくさんいた。その中には重賞レースに勝つほどの実力者もいくらかいたが、その中で八大競走を制し、"本当の意味で"中央の猛者たちと渡り合えた者はごくわずかしかいない。

 

 

 

 

【空前絶後のアイドルウマ娘】

ハイセイコー

 

 

【史上初、地方出身のURA年度代表ウマ娘】

ヒカリデユール

 

 

 

 

ハイセイコーは皐月賞を、ヒカリデユールは有馬記念をそれぞれ勝っており、それ以外にも重賞勝ちが複数あり、その実力は当時の中央のウマ娘たちの中でも上位に位置することに疑いの余地はない。

 

そんな確かな実力を備えていた両名ではあるが、その実力がURAの"歴代選手"の中でも傑出したものであるかと言われれば、それは難しいと言わざるを得ない。

 

両名ともに勝利できた八大競走はわずかに1つのみに留まり、敵なしの強さを誇った地方時代の成績を鑑みれば、中央での成績は地方時代ほどのインパクトを残すことはできず、この両名を持ってしても地方と中央の格差をひっくり返すまでには至らなかった。

 

そういった厳しい現実がある中でも、地方トレセン所属のウマ娘たちは中央トレセンに挑むことをやめない。なぜなら、中央トレセンの打倒は地方トレセン所属のウマ娘たちにとって『永遠の夢』であるからだ。

 

そして、今年。大井トレセンならびに、南関東の期待を一身に背負い、地方トレセンの『永遠の夢』を叶えるべく中央トレセンに乗り込んで来たのがサンオーイだった。

 

 

 

 

 

行けー!サンオーイ!

 

 

中央のヤツらをぶっ倒せー!

 

 

頼むぞ!"大井の太陽"!

 

 

南関東四冠の実力を見せつけてやれ!!

 

 

 

 

 

[間近で見たからわかる。ミスターシービーもカツラギエースもオレなんかよりも圧倒的に格上だ。『勝てる可能性がある』なんてさえ軽々しく言えねーくらいの実力差もある。だけど、だからって勝つことは諦めたくねぇ。今日は大井から俺の勝利を信じて、みんなが応援に駆け付けてくれてんだ!やるべき時にやるのが"江戸っ子の心意気"ってもんだろ!!]

 

 

 

 

 

先頭はカツラギエース、半バ身リード。

続きまして、3番のシンボリヨーク。

やや外目を通りましてミサキネバーが行っております。

 

内、内を通りまして1番のトウショウペガサス。

 

その後にサンオーイがいる。

 

 

 

 

[今、600を過ぎたか?カツラギエースが先頭でペースを作ってるが、このペースなら脚は十分に溜められるし、直線に入る前に先団までポジションを上げるのにも苦労はしなさそうだ。先を見越して、安田記念に出ておいた(・・・・・)のは正解だったな!]

 

中団に位置取るサンオーイにはかなりの余裕があった。なぜなら、既に中央の安田記念(最高格のマイルレース)を経験しているからであり、その経験は今日の毎日王冠、そして1ヶ月後の天皇賞秋を見越した『周到な準備』に他ならなかったからだ。

 

『南関東四冠』という確かな実績を残し、その称号に誇りを持っているサンオーイ。しかし、だからといって中央勢に勝てるという奢りは一切なかった。

 

 

 

 

今までの地方の先輩たちが上手くいかなかった原因の一つは、『功を焦りすぎた』ことが原因だ。

 

どんなに芝適性があるっていったって、当たり前のように毎日芝で練習してる中央のヤツらに『適性はあるんだし、"芝での練習"を十分にすれば勝てるだろう』なんて思うのは、奢りが過ぎる。

 

そんで、そんな浅い考えて挑んで、返り討ちにあって『こんなはずじゃなかった…。中央のレベルに勝てる気がしない…』なんて思い知らされて、『自信喪失しました…。もう諦めます…』なんてことになったら、目も当てられねぇだろ?

 

オレに賭けてくれてるみんなの期待の重さは軽くねぇ!だから、オレはGⅠを獲ることだけを目指す。そのためなら半年いや、1年かけて下準備したって構わねぇ!

 

 

 

 

 

サンオーイにとって大井のファンや仲間の期待は重かった。だからこそ、目先の重賞レースではなく、GⅠ(本物の輝き)を手に入れることでその期待に応えたいと思っていた。

 

その謙虚さ、用心深さは転校当初から徹底していて、調整の遅れが少しでも見てとれるや『功を焦せるは愚の骨頂』の信念に従い、得意な長距離の天皇賞春をアッサリと回避し、それ以降の5ヶ月間を再調整期間に充てた。

 

そして、入念な再調整の上で挑んだ安田記念。いきなりのGⅠへの出場だったが、サンオーイにとってそれは"本番"ではなく、"予行演習"でしかなかった。

 

そういった挑戦者としての謙虚な自信を胸に出場した安田記念の結果は、既に短距離で名を馳せていたハッピープログレスと、昨年のティアラ路線上位の実力者であるダスゲニーに次ぐ3着と、十分な成果をあげた。

 

この予行演習により、中央での芝適性に"確実な"自信を持つと、そのあとも無駄な格上挑戦はせずに、得意のダート戦を2戦戦い、1着1回2着1回とコンディションとモチベーションの維持に努めた。

 

調整の遅れを契機として、サンオーイは秋の天皇賞の奪取に心血を全て注いだ。その周到さは自身のコンディションに揺るぎない蓄積となって表れていて、今日の状態はサンオーイ史上最高の状態に仕上がっていた。

 

 

 

 

 

そして、わずかに遅れましてアローボヘミアンがいる。

 

そして、4番のダスゲニーがいて、最後の方からミスターシービーが行っております。ミスターシービーは現在シンガリです。

 

 

 

 

[中央NO,2のカツラギエースが単独先頭でレースを引っ張る展開で、ミスターシービーは後ろも後ろのドンケツかよ…。あんなチンタラした走りで『勝って当たり前』だと思われてるとか、バケモン過ぎるだろ…]

 

中団でレースを進めながら、カツラギエースとミスターシービーの観察に余念がないサンオーイ。ただ、間近で見るミスターシービーのポジション取りの異質さと、それでも『勝って当たり前』と期待されてしまう実力の規格外さに、さすがのサンオーイも驚きを隠せないようだ。

 

 

 

 

3コーナーから坂の下りにかかりました。

 

先頭はカツラギエース。カツラギエースからミスターシービーまで30mくらいの差があります。

 

 

 

 

[もうすぐ、1000mを過ぎる。やっぱりオレの調子はいい!このペースなら少し早くてもポジションを上げて問題ないな!行くぜ!]

 

自身の調子の良さを再確認したサンオーイが勝利を確かにすべく動く。

 

 

 

 

先頭はカツラギエース。ちょうど中間にはサンオーイがおりますが、サンオーイがスッ、スッと上がって行きました!

 

 

 

 

[1000mを通過した。ここからの下り坂でカツラギエースは息を入れるはずだ。その隙にオレの射程圏内にヤツを入れる。カツラギエースを潰す算段はもうついた!そんで……]

 

 

 

 

 

ミスターシービーは最下位です!

 

 

 

 

[出来ればマークを外したくはないが、残り800でドンケツのヤツを気にしてたら、カツラギエースを捕らえられねぇ可能性がある。ここは腹を括ってカツラギエース一本に絞るが上策だろ!]

 

1000mを通過し、勝負所と見たサンオーイはポジションを上げていく。その中で彼女はミスターシービーへ回していた警戒をカツラギエースにあてることを決断する。

 

中央トップの実力者へのマークを外すなど危険極まりない行為ではあるが、先頭でレースを引っ張るのはミスターシービーと双璧をなす実力者であるカツラギエース。

 

最強格2人をマークしながら、自身の勝機を失わずにいられるわけがないと謙虚な姿勢を崩さないサンオーイは"確実に"勝利を手にするために苦渋の決断を下す。

 

 

 

 

 

さあ、800を過ぎております。

 

カツラギエースが先頭だ。

 

サンオーイが4番手。

 

ミサキネバーが2番手

 

 

 

 

 

[つーか、よくよく冷静に考えたら、ミスターシービーは休養明けか。800過ぎて先頭まで20バ身とか、無駄なケガをしないためとしか考えられねーよな。早めにマークを外して正解だっ……]

 

 

 

 

ザワザワザワザワ

 

 

 

 

[観客席から騒めき?何だ?何が起こってる…。なんなんだこの騒めきは…。なんでこんなに観客は沸いてるんだ?]

 

 

 

 

 

おーっと!ミスターシービーは後ろの方から1人抜いた、2人抜いた!3人目を抜こうとしている!

 

 

 

 

 

「さてと、レースの"本番"はこれからだよ!四冠ウマ娘!そして、エース!!」

 

「あっったりめぇだ!!シービー!つーか、"準備運動"に1000mも費やすんじゃねぇよ!待ちくたびれて、寝かけたぜ!さあ、楽しんで行こうぜ!!」

 

[ここからが"本番"?今までが"準備運動"?何言ってんだ、コイツらは…]

 

冷静に、客観的な情報の整理が出来ていると思っていたサンオーイ。しかし、残念ながら、サンオーイが導き出した想定は全てが"的外れ"だった。

 

なぜなら、このレースは"ただの"GⅡではなかったからだ。

 

後に、『伝説』と称されるこの日の毎日王冠は、ゴールまで残り800mを切った今、この時から始まったのだった…。

 

 




『三強対決の毎日王冠』といえば、98年または89年が有名ですが、この84年もかなり激アツなレースだと思ってるので、結構気合いを入れて描きました!みなさんお楽しみください!

それにしても、シービー世代はタレント揃いですね。
中央の三冠馬が登場したと思えば、地方にも三冠馬が生まれてしまうのですから。

主役を際立たせる脇役が揃っている世代、私は大好きです!
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